
2025年1月17日金曜日
令和7年国立劇場初春歌舞伎公演

2023年1月12日木曜日
未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 通し狂言「遠山桜天保日記」
2022年1月5日水曜日
初春歌舞伎公演「通し狂言 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)」
2022-01-05 @国立劇場大劇場
犬山道節⇒尾上菊五郎
犬坂毛野⇒中村時蔵
網乾左母二郎/犬飼現八⇒尾上松緑
犬塚信乃⇒尾上菊之助
犬田小文吾⇒坂東彦三郎
犬川荘助⇒坂東亀蔵
蟇六娘浜路⇒中村梅枝
犬村大角⇒中村萬太郎
横堀在村⇒市村竹松
甘利掻太⇒市村光
犬江親兵衛⇒尾上左近
軍木五倍二⇒市村橘太郎
大塚蟇六⇒片岡亀蔵
馬加大記⇒河原崎権十郎
蟇六女房亀笹⇒市村萬次郎
簸上宮六⇒市川團蔵
足利成氏⇒坂東楽善
扇谷定正⇒市川左團次
ほか
国立劇場開場55周年記念
曲亭馬琴=作/渥美清太郎=脚色/尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん) 五幕七場
序 幕 (武蔵) 大塚村蟇六内の場
本郷円塚山の場
二幕目 (下総) 滸我足利成氏館の場
芳流閣の場
三幕目 (下総) 行徳古那屋裏手の場
四幕目 (武蔵) 馬加大記館対牛楼の場
大 詰 (上野) 扇谷定正居城奥庭の場
毎年、お正月らしい派手な演目で、7年前も同じ「八犬伝」だった。
今日、プログラムを買ったら、配役と筋書きの一部変更の1枚紙が入っていた。ギリギリまで練り直していたという訳だが、7年前も同様だったというのがおかしい。
帰宅後、残してある過去のプログラムも読み直してみたが、7年前のプログラムに印刷された筋書きとその一部訂正、今回のプログラムの筋書きとその一部訂正という計4種類の筋書きがほぼ同じで、宿敵をその場で倒すか後日譚に任せるかの違いを毎回、手直ししている。
どうせ、スペクタクルが売り物の演目なので、そんなに拘ることもなかろうと思うけど…。
見どころの多い芝居だが、やはり、1番の見ものは菊之助と松緑の芳流閣の大屋根での立ち回りではないか。
灰色の瓦と白い漆喰の網目模様。
その上で真っ赤な着物の菊之助と金襴緞子の松緑が絡んでは見得を切る。
その姿が絵に描いたように美しい。
ところで、菊五郎御大の動きに力がなかったが、大丈夫だろうか。
国立劇場の歌舞伎として、久々の大入りは同慶の至り。
2020年1月11日土曜日
初春歌舞伎公演「通し狂言 菊一座令和仇討」
四世鶴屋南北=作『御国入曽我中村』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「菊一座令和仇討」

国立劇場美術係=美術
序 幕 鎌倉金沢瀬戸明神の場
飛石山古寺客殿の場
六浦川堤の場
二幕目 朝比奈切通し福寿湯の場
鈴ヶ森の場
三幕目 下谷山崎町寺西閑心宅の場
大音寺前三浦屋寮の場
元の寺西閑心宅の場
大 詰 東海道戸塚宿境木の場
同 三島宿敵討の場
(主な配役)
幡随院長兵衛/寺西閑心実ハ蒲冠者範頼⇒尾上菊五郎
三日月おせん実ハ佐々木の娘風折/頼朝御台政子御前⇒中村時蔵
笹野権三⇒尾上松緑
白井権八⇒尾上菊之助
大江志摩五郎/梶原源太景季⇒坂東彦三郎
江間小四郎義時/おせんの手下長蔵⇒坂東亀蔵
権八妹おさい⇒中村梅枝
大江千島之助/笹野の家来・岩木甚平⇒中村萬太郎
安西弥七郎景益⇒市村竹松
権三妹八重梅⇒尾上右近
新貝荒次郎実重⇒市村光
万寿君源頼家⇒尾上左近
茶道順斎/湯屋番頭三ぶ六⇒市村橘太郎
同宿残月/判人さぼてんの源六/和田左衛門尉義盛⇒片岡亀蔵
今市屋善右衛門/秩父庄司重忠⇒河原崎権十郎
白井兵左衛門⇒坂東秀調
遣手おくら⇒市村萬次郎
笹野三太夫/大江因幡守広元⇒市川團蔵
家主甚兵衛⇒坂東楽善
ほか
国立劇場の正月公演は、毎年、菊五郎劇団の奇想天外な芝居と決まっている。
今年は「菊一座令和仇討」。
槍の権三、白井権八、幡随院長兵衛、頼家、北条政子など知った名前が蘇我の仇討ちを拝借しながら時空を超えて絡み合う。令和は取ってつけただけ。
正月にふさわしい華麗な舞台。
いつもながら、彦三郎・亀蔵兄弟の滑舌の良さが気持ち良い。
松緑も久しぶりに大きな役で菊之助といいコンビだった。
国立劇場での両花道は8年ぶりだそうな。僕は観ているはずだが、思い出せない。
その両花道は下手が松緑、上手が菊之助で、同時に出たり引っ込んだりするのだが、右を見て左を見てと忙しい。
♪2019-002/♪国立劇場-01
2019年12月4日水曜日
12月歌舞伎公演「近江源氏先陣館―盛綱陣屋―」/「蝙蝠の安さん」
①近松半二=作
『近江源氏先陣館』(おうみげんじせんじんやかた)
「盛綱陣屋」(もりつなじんや)一幕
国立劇場美術係=美術
佐々木三郎兵衛盛綱⇒松本白鸚
高綱妻篝火⇒中村魁春
信楽太郎⇒松本幸四郎
盛綱妻早瀬⇒市川高麗蔵
後室微妙⇒上村吉弥
四天王⇒澤村宗之助
四天王⇒大谷廣太郎
竹下孫八⇒松本錦吾
伊吹藤太⇒市川猿弥
和田兵衛秀盛⇒坂東彌十郎
古郡新左衛門⇒大谷友右衛門
北條時政⇒坂東楽善
ほか
②チャールズ・チャップリン生誕130年
チャールズ・チャップリン=原作『街の灯』より
木村錦花=脚色
国立劇場文芸研究会=補綴
大野裕之=脚本考証
大和田文雄=演出
『蝙蝠の安さん』 (こうもりのやすさん)
国立劇場美術係=美術
花売り娘お花⇒坂東新悟
上総屋新兵衛⇒市川猿弥
井筒屋又三郎⇒大谷廣太郎
海松杭の松さん⇒澤村宗之助
お花の母おさき⇒上村吉弥
大家勘兵衛⇒大谷友右衛門
ほか
高麗屋一門による「近江源氏先陣館―盛綱陣屋―」/「蝙蝠の安さん」。国立にしては珍しい2本立て。
「盛綱陣屋」はいかにも義太夫歌舞伎らしい本格派。
彌十郎がかっこいい。
「蝙蝠の安さん」はチャップリン「街の灯」を翻案した異色作だが、案外と良くできていた。
幸四郎と猿弥のやりとりの場面で、幸四郎のちょび髭が落ちてしまった。慌てる幸四郎に猿弥が「髭なしで何か面白いことをやれ」と囃し立てる。この場面は客席も大笑いだったが、てっきり、そういう演出だと思って観ていたが、実はそうではなく、髭が落ちたのは予期せぬ事故だったが、猿弥も幸四郎もアドリブで乗り切ったのだという。まあ、喜劇だから、どんな失敗が起こっても笑って済ませるからいいが、「盛綱陣屋」で白鸚のカツラが落ちたりしたらどうにも取り繕いもできないだろうな。
♪2019-193/♪国立劇場-15
2019年4月23日火曜日
四月大歌舞伎 昼の部
藤間勘十郎 演出・振付
一 平成代名残絵巻(おさまるみよなごりのえまき)
常盤御前⇒福助
藤原基房⇒権十郎
平宗盛⇒男女蔵
平知盛⇒巳之助
平徳子⇒壱太郎
遮那王⇒児太郎
左源太⇒男寅
平重衡⇒吉之丞
右源太⇒竹松
平時子⇒笑三郎
建春門院滋子⇒笑也
鎌田正近⇒市蔵
平宗清⇒彌十郎
二 新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)
座摩社/野崎村
〈座摩社〉
油屋娘お染⇒雀右衛門
丁稚久松⇒錦之助
弥忠太⇒家橘
勘六⇒寿治郎
山伏法印⇒松之助
山家屋佐四郎⇒門之助
手代小助⇒又五郎
〈野崎村〉
久作娘お光⇒時蔵
油屋娘お染⇒雀右衛門
丁稚久松⇒錦之助
手代小助⇒又五郎
百姓久作⇒歌六
後家お常⇒秀太郎
坂田藤十郎米寿記念
三 寿栄藤末廣(さかえことほぐふじのすえひろ )鶴亀
女帝⇒藤十郎
亀⇒猿之助
従者⇒歌昇
従者⇒壱太郎
従者⇒種之助
従者⇒米吉
従者⇒児太郎
従者⇒亀鶴
鶴⇒鴈治郎
四世鶴屋南北 作
四 御存 鈴ヶ森 (ごぞんじすずがもり)
白井権八⇒菊五郎
東海の勘蔵⇒左團次
飛脚早助⇒又五郎
北海の熊六⇒楽善
短いのが4本。
1本目の「平成代名残絵巻(おさまるみよなごりのえまき)」は平成から令和への代替わりを、
3本目の「寿栄藤末廣(さかえことほぐふじのすえひろ )」はその名前が掛けてある坂田藤十郎米寿を、
それぞれ祝う長唄舞。
いずれも華麗な衣装や舞台装置などで賑やかに寿いだ。
藤十郎はほとんど舞うこともなく、形を決めるだけ。まあ、それでも存在感があるのは大したもの…かな。
お大事にしてくださいよ、と言いたくなる。
「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)」は、お染<雀右衛門>、久松<錦之助>、お光<時蔵>。
何れも悪くないが、今月の登場する役者の中で言えば、せめて猿之助、できれば米吉、児太郎、壱太郎等の世代でこの芝居を観たい。雀右衛門らのベテラン勢ではそろそろこの芝居は感情移入が難しくなってきた。
最後は「御存 鈴ヶ森 (ごぞんじすずがもり」。
滅法強い白井権八<菊五郎>と男伊達の幡随院長兵衛<吉右衛門>の出逢いを描く。
人間国宝2人の絡みと言っても多分に様式がかった演出で丁々発止の緊迫感は無い。
もう派手には動けない菊五郎<権八>の立回りが長過ぎだ。
歌舞伎役者も働き方改革しないと芸を消耗するよ。
♪2019-052/♪歌舞伎座-02
2019年1月10日木曜日
初春歌舞伎公演「通し狂言 姫路城音菊礎石」五幕九場
並木五瓶=作 『袖簿播州廻』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「姫路城音菊礎石」(ひめじじょうおとにきくそのいしずえ)五幕九場
国立劇場美術係=美術
序 幕 曽根天満宮境内の場
二幕目 姫路城内奥殿の場
同 城外濠端の場
三幕目 姫路城天守の場
四幕目 舞子の浜の場
大蔵谷平作住居の場
尾上神社鐘楼の場
大 詰 印南邸奥座敷の場
播磨潟浜辺の場

生田兵庫之助/碪(きぬた)の前⇒中村時蔵
古佐壁主水/百姓平作実ハ与九郎狐/加古川三平⇒尾上松緑
弓矢太郎実ハ多治見純太郎/主水女房お辰/小女郎狐⇒尾上菊之助
印南大蔵/奴灘平⇒坂東彦三郎
久住新平⇒坂東亀蔵
桃井陸次郎/桃井八重菊丸⇒中村梅枝
高岡源吾⇒中村萬太郎
庄屋倅杢兵衛⇒市村竹松
傾城尾上⇒尾上右近
平作倅平吉実ハ桃井国松⇒寺嶋和史
福寿狐⇒寺嶋眞秀
金子屋才兵衛/早川伴蔵⇒市村橘太郎
飾磨大学⇒片岡亀蔵
牛窓十内⇒河原崎権十郎
中老淡路⇒市村萬次郎
近藤平次⇒兵衛市川團蔵
桃井修理太夫⇒坂東楽善
ほか
初春恒例は菊五郎劇団のスペクタクルな娯楽大作。尤も、近年は当方が歳のせいか、話がややこしくて、筋書き手元に舞台を見ても話を追えない。もう一度観ないと頭に入ってこないようだ。ま、そこは気にしないのが正しい鑑賞法かもしれないけど。
菊五郎、時蔵、松緑、菊之助、彦三郎、2亀蔵、萬次郎、團蔵、楽善など気心の知れた仲間内とのチームワークは抜かりなし。今回は菊五郎の孫2人(和史・眞秀)が揃って出演。オバ様方が黄色い声。個人的には彦三郎、片岡・坂東の両亀蔵、松緑が大きな役で活躍が嬉しい。
これも恒例の手ぬぐい撒きは、大方1階席に沈没。舞台両翼にいた松緑と彦三郎だけが2階席まで届くホームラン数本。自席は最前列なので、腕を伸ばしたが、あと30cmくらいのところで届かず。右近、梅枝など本来は腕力があるだろうが、役柄を引き摺っては遠投もできまい。
2018年11月4日日曜日
平成30年度(第73回)文化庁芸術祭協賛 明治150年記念 11月歌舞伎公演 通し狂言「名高大岡越前裁」
河竹黙阿弥=作
国立劇場文芸研究会=補綴
国立劇場美術係=美術
通し狂言「名高大岡越前裁」(なもたかしおおおかさばき)六幕九場
序 幕 第一場 紀州平沢村お三住居の場
第二場 紀州加田の浦の場
二幕目 美濃長洞常楽院本堂の場
三幕目 第一場 大岡邸奥の間の場
第二場 同 無常門の場
第三場 小石川水戸家奥殿の場
四幕目 南町奉行屋敷内広書院の場
五幕目 大岡邸奥の間庭先の場
大 詰 大岡役宅奥殿の場
大岡越前守忠相⇒中村梅玉
大岡妻小沢⇒中村魁春
法沢後二天一坊⇒市川右團次
田口千助⇒中村松江
吉田三五郎⇒市川男女蔵
下男久助/池田大助⇒坂東彦三郎
大岡一子忠右衛門⇒市川右近
お三⇒中村歌女之丞
僧天忠/久保見杢四郎⇒嵐橘三郎
土屋六郎右衛門⇒大谷桂三
伊賀亮女房おさみ⇒市川齊入
平石治右衛門⇒坂東秀調
名主甚右衛門⇒市村家橘
山内伊賀亮⇒坂東彌十郎
徳川綱條⇒坂東楽善
下女お霜⇒中村梅丸
ほか
昨日が初日で今日は日曜日。にもかかわらず客席は閑散としていた。
梅玉、魁春、右團次、彦三郎、彌十郎など渋い役者が渋い芸を見せてくれるのだけど華には不足するなあ。
越前守(梅玉)が天一坊(右團次)一味の騙りを鮮やかに裁くよくある話とは趣向を変えてあり、尻尾を掴ませない悪党たちの為に、越前守、その妻(魁春)、嫡男(右近)が切腹の危機に陥る。
この越前守の、奉行としてあくまでも自分の直感を信じて真実を見極めたいとする業のような真摯な人柄と、それによって思いもよらぬ窮地に落ち込むさまを通して、これまでの大岡裁きモノとは異質な、人間越前守を描こうとしているのだろう。
悪事の証拠を収集すべく遠国に派遣した家来たちが中々帰参せず、切腹の刻限が迫って来る。
屋敷で待ち受ける忠臣大介(彦三郎)は、気が気でならず、越前守に「今、暫くお待ちくだされ」と必死に頼みながら同士の帰りを今か今かと焦って待っている。
ここは、恰も「忠臣蔵」四段目の如し。
時事ネタ入れて笑える場面も。
悪党、天一坊を右團次が演じているが、この人がこんな大きな役を演じるのを観たのは初めて。梅玉との掛け合いで彼のセリフの出るのが遅い場面があって、これはヒヤッとしたが、全体としてはまずまずの出来かな。
若手役者ではいつもながら梅丸がよろしい。
まるで女性にしか見えない。
https://youtu.be/Do1quJB4pa8
♪2018-140/♪国立劇場-015
2018年1月10日水曜日
初春歌舞伎公演「通し狂言 世界花小栗判官」4幕10場
近松徳三・奈河篤助=作『姫競双葉絵草紙』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 世界花小栗判官(せかいのはなおぐりはんがん) 四幕十場
発端 (京) 室町御所塀外の場
序幕<春> (相模)鎌倉扇ヶ谷横山館奥御殿の場
同 広間の場
江の島沖の場
二幕目<夏> (近江)堅田浦浪七内の場
同 湖水檀風の場
三幕目<秋> (美濃)青墓宿宝光院境内の場
同 万屋湯殿の場
同 奥座敷の場
大 詰<冬> (紀伊)熊野那智山の場
尾上菊五郎⇒盗賊風間八郎
中村時蔵⇒執権細川政元/万屋後家お槙
尾上松緑⇒漁師浪七実は美戸小次郎/横山太郎秀国
尾上菊之助⇒小栗判官兼氏

坂東亀蔵⇒膳所の四郎蔵/細川家家臣七里源内
中村梅枝⇒浪七女房小藤/万屋娘お駒/横山太郎妻浅香
中村萬太郎⇒奴三千助
市村竹松⇒風間の子分鳶の藤六
尾上右近⇒照手姫
市村橘太郎⇒瀬田の橋蔵
片岡亀蔵⇒鬼瓦の胴八
河原崎権十郎⇒万屋下男不寝兵衛
坂東秀調⇒局常陸
市村萬次郎⇒万屋女中頭お熊
市川團蔵⇒横山大膳久国
坂東楽善⇒小栗郡領兼重 ほか
初めての狂言だった。国立劇場のサイトでも下調べはしたし、いつものようにプログラムを買って開幕前にざっと目を通して臨んだ。開幕を告げる館内放送が「〜4幕10場」を「よまくとおば」とアナウンスした。そこで少し引っかかった。
歌舞伎や文楽などの幕や場の数え方で、4を「よ」と読むなら1、2、3を「ひーふーみー」と読むのか、と言えばそんな読み方は聴いたことがない。10を「とお」と読むなら、7、8、9を「ななやーここのつ」と読むのか、と言えばこれも聞いたことがない。
普通に読めば「よんまくじゅうば」ではないのかな?などと考えていたら芝居の始まりに乗り遅れてしまった。
「よまくとおば」はこの世界の慣習的な読み方なのかもしれないな。
事前にプログラムに目を通しておきながら大切なことに気づくのが遅くなった。「よんまく」であれ「よまく」であれ「4幕」なのだ。そして、それぞれの幕は「四季」の移ろいを表現している。もちろん、各「幕」に幾つかの「場」が分けてあって、それぞれに舞台美術が変化するので、意識してみていないと幕毎に四季が変わっていくことに気が付かないだろう。僕は最後の冬の幕でようやく「そうか全体は四季を表していたんだ」と気がついた始末。
尤も、四季の変化に気が付かなくとも筋書きは楽しめる。
しかし、最後の幕のハット息を呑むような雪世界と舞台の早替わりの仕掛けで突如現れる那智の滝の見事さは、各幕の舞台美術の変化の仕上げだと思うとそれなりに話がまとまるように思った。
今回は菊之助の大立ち回りも宙乗りも無いが「馬乗り!」がある。かなり危なっかしいが、それなりの見どころだ。大立ち回りは菊の助に代わり、今回はこの菊五郎劇団の常連(2016年は出演していなかったが)である松緑が長丁場の立ち回りを演じてこれも見ものではあった。
物語は…というと、これがあんまり面白くない。まあ、それでもよいのか。大勢のスター役者が揃い、派手な舞台を楽しむのが正月興行の楽しさでもあるからな。
坂東彦三郎・亀蔵兄弟は滑舌良く気持ちが良い。右近がなかなかきれいだ。尤も梅枝も良く似ているので時々白塗りの2人が分からなくなるが。
♪2018-002/♪国立劇場-001
2017年11月8日水曜日
11月歌舞伎公演「坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)」「沓掛時次郎(くつかけときじろう)」
平成29年度(第72回)文化庁芸術祭協賛
山本有三生誕百三十年
山本有三=作
二世尾上松緑=演出
坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)四幕
中嶋正留=美術
第一幕 茶臼山家康本陣
第二幕 宮の渡し船中
第三幕(一)駿府城内茶座敷
(二)同 表座敷の一室
第四幕 牛込坂崎江戸邸内成正の居間
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長谷川伸=作
大和田文雄=演出
沓掛時次郎(くつかけときじろう)三幕
釘町久磨次=装置
序幕 (一)博徒六ッ田三蔵の家の中
(二)三蔵の家の外
(三)再び家の中
(四)再び家の外
(五)三たび家の中
二幕目 中仙道熊谷宿裏通り
大詰 (一)熊谷宿安泊り
(二)喧嘩場より遠からぬ路傍
(三)元の安泊り
(四)宿外れの路傍
中村梅玉⇒徳川家康/沓掛時次郎
中村魁春⇒三蔵女房おきぬ
尾上松緑⇒坂崎出羽守成正/六ッ田の三蔵
中村松江⇒南部左門/大野木の百助
坂東亀蔵⇒本多平八郎忠刻/苫屋の半太郎
中村梅枝⇒家康の孫娘千姫
中村歌昇⇒松川源六郎
市村竹松⇒坂崎の小姓
市川男寅⇒松平の使者
中村玉太郎⇒坂崎の小姓
尾上左近⇒三蔵倅太郎吉
市村橘太郎⇒三宅惣兵衛/安宿の亭主安兵衛
中村歌女之丞⇒安兵衛女房おろく
嵐橘三郎⇒本多佐渡守正信
河原崎権十郎⇒本多上野介正純
市村萬次郎⇒刑部卿の局
坂東楽善⇒八丁徳
市川左團次⇒金地院崇伝
ほか
新歌舞伎2本立て。僕としては国立劇場では初めての経験。
竹本も三味線もなし。戦場のざわめき、風、雨、波などの自然音の録音(あるいは効果音?)が使われる。
幕は、普通は定式幕だが、今回はすべて暗転と緞帳が上ったり降りたり。
見得はない。
色々と普段の歌舞伎とは勝手が違うので、拍手のタイミングも難しく、僕は声を掛けたりしないけど、大向こうも出番に窮していたようだ。
かわった出し物であるせいか、今日の客席はせいぜい半分ほどしか埋まっていない。これじゃ役者も気合いが入らないだろう。
坂崎出羽守
無骨にして直情径行の男が、焼け落ちる大阪城天守から自らの顔面の半分を焼きながらも千姫を救い出す。家康が救いだせば嫁にやろうと言われ、急に恋心が芽生える。一旦芽生えると激しい性格ゆえに、千姫一途となるが、肝心の千姫は無骨な坂崎に振り向こうともせず、祖父の家康に縁談を断る。千姫は仏門に入るという理由で縁談を断り、その際、誰にも嫁がないという確認をとってなんとか承知したが、後日、恋敵に嫁ぐことを知ってその行列に狼藉に及ぶという話だ。
まったく、戦場でしか役に立たない男ゆえの悲劇だが、あまりに初心なので彼に感情移入できないのは残念。松緑は祖父のために書かれた芝居を父に次いで今回ようやく初役で勤めるので思い入れもあるだろうし、良い味を出しているけど、現代人が観るには芝居に無理があるなあ。
沓掛時次郎
うーむ。これはイマイチ良さが分からなかった。第一、梅玉のような品のある役者にヤクザものは似合わない。物語もピンと来ない。時次郎は一宿一飯の義理で、土地の博徒の頭を斬り捨てるが、その博徒には妻と幼い子供が居た。今際の際に「女房、子供を頼む」と言われた時次郎はそれを引き受けて以後3人で旅が始まる…。もう、この設定が理解不能だ。後は、人情噺としてそれなりに分からないでもないけど、とても共感できる話ではなかった。
演技のスタイルも、歌舞伎というより新派とか新国劇風だ。国立劇場向きとは思えない。
♪2017-173/♪国立劇場-17
2017年5月11日木曜日
團菊祭五月大歌舞伎 七世尾上梅幸二十三回忌 十七世市村羽左衛門十七回忌追善
初 代坂東楽善
九代目坂東彦三郎 襲名披露狂言
三代目坂東亀蔵
六代目坂東亀三郎 初舞台

〜劇中にて襲名口上申し上げ候
工藤祐経⇒菊五郎
曽我五郎⇒亀三郎改め彦三郎
近江小藤太⇒亀寿改め坂東亀蔵
八幡三郎⇒松也
化粧坂少将⇒梅枝
秦野四郎⇒竹松
鬼王家臣亀丸⇒初舞台亀三郎
梶原平次景高⇒橘太郎
鬼王新左衛門⇒権十郎
梶原平三景時⇒家橘
大磯の虎⇒萬次郎
曽我十郎⇒時蔵
小林朝比奈⇒彦三郎改め楽善

〈御殿〉
乳人政岡⇒菊之助
八汐⇒歌六
沖の井⇒梅枝
松島⇒尾上右近
栄御前⇒魁春
〈床下〉
仁木弾正⇒海老蔵
荒獅子男之助⇒松緑
〈対決・刃傷〉
細川勝元⇒梅玉
山名宗全⇒友右衛門
大江鬼貫⇒右之助
黒沢官蔵⇒九團次
山中鹿之助⇒廣松
渡辺外記左衛門⇒市蔵
渡辺民部⇒右團次
仁木弾正⇒海老蔵
戸崎四郎 補綴
三 四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり )
〈神功皇后と武内宿禰〉
〈三社祭〉
〈通人・野暮大尽〉
〈石橋〉
武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精⇒松緑
神功皇后/善玉/通人/獅子の精⇒亀寿改め坂東亀蔵
坂東家の襲名披露(楽善←彦三郎←亀三郎/亀蔵←亀寿/新・亀三郎初舞台)も兼ねていたせいか、どの演目も熱気があった。
特に「寿曽我対面」は初めてこの芝居の面白さが分かった気がする。血気にはやる五郎役の彦三郎の気合がいい。
十郎・五郎を彦三郎・亀蔵の実兄弟で演ずるのかと思い込んでいたが、十郎役は時蔵だった。菊五郎の祐経に対峙するには時蔵の貫禄が必要なのかも。
終盤に彦三郎(前亀三郎)の長男、新・亀三郎が登場し館内どよめく。まるで福助人形の如く可愛い。
基本的に、芸以前のちびっこには興味ないのだけど、この子に限っては、昼の部に強力ライバルの初お目見えもあって、ちょいと影が薄いが、ご本人はなかなか立派なお勤めぶり。その健気さに心打たれた。こういう子供達を応援するのも歌舞伎観客の勤めだものなあ。
「伽羅先代萩」。今回は「御殿〜刃傷」で見応えあり。
前半は政岡の菊之助、後半は勝元の梅玉と仁木弾正の海老蔵が見せる!
菊之助は、さあ、どうだったか。あまり情感が伝わってこなかったな。海老蔵は見る度に痩せてゆくような気がするが、目力は怖いほどだ。

<舞台写真は松竹のホームページから>
♪2017-81/♪歌舞伎座-03