2018年1月10日水曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 世界花小栗判官」4幕10場

2018-01-10 @国立劇場


近松徳三・奈河篤助=作『姫競双葉絵草紙』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 世界花小栗判官(せかいのはなおぐりはんがん) 四幕十場

発端   (京) 室町御所塀外の場
序幕<春>   (相模)鎌倉扇ヶ谷横山館奥御殿の場
              同  広間の場
                江の島沖の場
二幕目<夏> (近江)堅田浦浪七内の場
           同 湖水檀風の場
三幕目<秋> (美濃)青墓宿宝光院境内の場
              同 万屋湯殿の場
                  同 奥座敷の場
大  詰<冬> (紀伊)熊野那智山の場

尾上菊五郎⇒盗賊風間八郎
中村時蔵⇒執権細川政元/万屋後家お槙
尾上松緑⇒漁師浪七実は美戸小次郎/横山太郎秀国
尾上菊之助⇒小栗判官兼氏
坂東彦三郎⇒横山次郎秀春/細川家家臣桜井新吾
坂東亀蔵⇒膳所の四郎蔵/細川家家臣七里源内
中村梅枝⇒浪七女房小藤/万屋娘お駒/横山太郎妻浅香
中村萬太郎⇒奴三千助
市村竹松⇒風間の子分鳶の藤六
尾上右近⇒照手姫
市村橘太郎⇒瀬田の橋蔵
片岡亀蔵⇒鬼瓦の胴八
河原崎権十郎⇒万屋下男不寝兵衛
坂東秀調⇒局常陸
市村萬次郎⇒万屋女中頭お熊
市川團蔵⇒横山大膳久国
坂東楽善⇒小栗郡領兼重 ほか

初めての狂言だった。国立劇場のサイトでも下調べはしたし、いつものようにプログラムを買って開幕前にざっと目を通して臨んだ。開幕を告げる館内放送が「〜4幕10場」を「よまくとおば」とアナウンスした。そこで少し引っかかった。
歌舞伎や文楽などの幕や場の数え方で、4を「よ」と読むなら1、2、3を「ひーふーみー」と読むのか、と言えばそんな読み方は聴いたことがない。10を「とお」と読むなら、7、8、9を「ななやーここのつ」と読むのか、と言えばこれも聞いたことがない。
普通に読めば「よんまくじゅうば」ではないのかな?などと考えていたら芝居の始まりに乗り遅れてしまった。

「よまくとおば」はこの世界の慣習的な読み方なのかもしれないな。

事前にプログラムに目を通しておきながら大切なことに気づくのが遅くなった。「よんまく」であれ「よまく」であれ「4幕」なのだ。そして、それぞれの幕は「四季」の移ろいを表現している。もちろん、各「幕」に幾つかの「場」が分けてあって、それぞれに舞台美術が変化するので、意識してみていないと幕毎に四季が変わっていくことに気が付かないだろう。僕は最後の冬の幕でようやく「そうか全体は四季を表していたんだ」と気がついた始末。

尤も、四季の変化に気が付かなくとも筋書きは楽しめる。
しかし、最後の幕のハット息を呑むような雪世界と舞台の早替わりの仕掛けで突如現れる那智の滝の見事さは、各幕の舞台美術の変化の仕上げだと思うとそれなりに話がまとまるように思った。

今回は菊之助の大立ち回りも宙乗りも無いが「馬乗り!」がある。かなり危なっかしいが、それなりの見どころだ。大立ち回りは菊の助に代わり、今回はこの菊五郎劇団の常連(2016年は出演していなかったが)である松緑が長丁場の立ち回りを演じてこれも見ものではあった。

物語は…というと、これがあんまり面白くない。まあ、それでもよいのか。大勢のスター役者が揃い、派手な舞台を楽しむのが正月興行の楽しさでもあるからな。

坂東彦三郎・亀蔵兄弟は滑舌良く気持ちが良い。右近がなかなかきれいだ。尤も梅枝も良く似ているので時々白塗りの2人が分からなくなるが。

♪2018-002/♪国立劇場-001