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2019年11月19日火曜日

国立文楽劇場開場35周年記念11月文楽公演 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第Ⅲ部

2019-11-19 @国立文楽劇場


通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
八段目から十一段目まで 4時間30分(正味3時間50分)

 八段目 道行旅路の嫁入
  津駒太夫・織太夫・南都太夫・亘太夫・碩太夫/
  宗助・清志郎・寛太郎・錦吾・燕二郎
 九段目 雪転しの段-山科閑居の段
  芳穂太夫/勝平
  前 千歳太夫/富助
  後 藤太夫/藤蔵     
 十段目 天河屋の段
  口 小住太夫/寛太郎
  奥 靖太夫/錦糸
   十一段目 花水橋引揚より光明寺焼香の段
  睦太夫・津國太夫・咲寿太夫・碩太夫/清𠀋

人形役割
  妻戸無瀬⇒和生
  娘小浪⇒一輔
  大星由良助⇒玉男
  妻お石⇒勘彌
  大星力弥⇒玉佳
  加古川本蔵⇒勘十郎
  天川屋義平⇒玉也
  原郷右衛門⇒分司
  矢間十太郎⇒勘一
  寺岡平右衛門⇒簑太郎
  桃井若狭之助⇒玉志
         ほか

3年前に国立劇場開場50周年記念の「仮名手本忠臣蔵」…2部構成の11段通しを観たのが、恥ずかしながらナマ文楽の最初で、これで嵌ってしまった。
その後は東京の公演は1回も欠かさず。今年は大阪遠征も3回・4公演を楽しんだ。

今年の3部構成の忠臣蔵も今回で全段終幕。

本場大阪では、国立文楽劇場開場35周年行事として時間をたっぷりかけたので、東京では演らなかった2段目冒頭、力弥使者の段と11段目の最後の最後、光明寺焼香の段も観られて良かった。
やはり焼香の段は泣かせる場面だ。花水川引き揚げで終わるよりカタルシスが得られて満足感が高い。

この本格的全段通し、次回はいつか。
もう一度くらい観たいね。
3回皆勤賞で手拭GET。

♪2019-182/♪国立文楽劇場-3

2019年9月21日土曜日

人形浄瑠璃文楽令和元年09月公演 第2部

2019-09-21 @国立劇場


嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)
 花菱屋の段
  織太夫/清介
 日向嶋の段
  千歳太夫/富助

 人形役割
  花菱屋女房⇒文昇
  花菱屋長⇒玉輝
  肝煎左治太夫⇒簑二郎
  娘糸滝(花菱屋)⇒簑紫郎
  悪七兵衛景清⇒玉男
  娘糸滝(日向嶋)⇒簑助
    ほか

艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
 酒屋の段
  靖太夫/錦糸
  藤太夫/清友
  津駒太夫/藤蔵
 道行霜夜の千日
  睦太夫・南都太夫・咲寿太夫・
  碩太夫・文字栄太夫/
  勝平・清馗・友之助・清公・清允

 人形役割
  半兵衛女房⇒簑一郎
  美濃屋三勝⇒一輔
  舅半兵衛⇒玉志
  親宗岸や玉也
  嫁お園⇒清十郎
  茜屋半七⇒玉助
    ほか

①嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)
忠義一徹が仇で日向嶋に流された平家の武将・景清の元に父の仕官の費用を持参する娘糸滝との再会。しかし景清は武士の矜持が邪魔をして娘を蹴散らすように追い返す。

後で、そのお金は我が身を売って拵えたものであると知り既に岸を離れた糸滝の船に向かって「ヤレその子は売るまじ。娘よ、船よ返せ、戻せ」と慟哭。

このくだり、千歳大夫の叫びとも聞こえる渾身の義太夫が日本人DNAを鷲掴みにして胸を締め付ける(日向嶋の段)。

前段の「花菱屋の段」も、身を売らなければならなくなった糸滝の話に、店の面々が厚い情愛を寄せるところが、これまた胸が熱くなる。

②艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
茜屋の若主人半七は女房お園を迎える前から芸者三勝に入れ上げ子供まで設けていたが、ひょんなことから恋敵を殺してしまう。その罪を被った父半兵衛、心ならずも離縁されたお園、行き詰まった半七と三勝は我が子をそっと半兵衛らに託し、霜の夜、自害する。

冒頭「酒屋の段」。店の留守を任された丁稚の能天気さ。そこに酒を買いに来た子連れの女。頼まれて酒を運んでやる丁稚。この謎めいた場面から始まる。

半兵衛が代官所から戻り、丁稚がなぜか子供を背負って店に戻る。そこに離縁されたお園が父親とともに茜屋を訪ねてから話は急展開し、引き込まれる。

ただ、この時点でも半七・三勝は登場しないというのが凝った作劇で面白い。

実話に基づいているというが、誰一人真の悪人はいないのに、歯車が少し欠けたか、登場人物の人生を狂わせてゆく人間の情のおかしさ。

♪2019-143/♪国立劇場-12

2019年8月1日木曜日

国立文楽劇場開場35周年記念夏休み文楽特別公演 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第Ⅰ部

2019-08-01 @国立文楽劇場


通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)五段目から七段目まで 
4時間18分(正味3時間33分)

 五段目 山崎街道出合いの段
                      小住大夫・勝平 
     二つ玉の段
       靖太夫・錦糸・燕二郎
 六段目 身売りの段
       咲太夫・燕三
            早野勘平腹切の段
       呂勢太夫・清治
 七段目 祇園一力茶屋の段

       由良助⇒呂太夫
       力弥⇒咲寿太夫
                     十太郎⇒津国太夫
       喜多八⇒文字栄大夫
       弥五郎⇒芳穂太夫
       仲居⇒亘太夫
       おかる⇒津駒太夫
       仲居⇒碩太夫
       一力亭主⇒南都太夫
       伴内⇒希太夫
       九太夫⇒三輪太夫
       平右衛門⇒藤太夫
     前 宗助
     後 清友

人形役割
       
       早野勘平⇒和生
       千崎弥五郎⇒玉勢
       百姓与市兵衛⇒亀次
       斧定九郎⇒玉輝
       女房おかる⇒一輔
       与市兵衛女房⇒簑二郎
       一文字屋才兵衛⇒簑太郎
       原郷右衛門⇒玉也
       斧九大夫⇒勘壽
       鷺坂伴内⇒文司
       矢間十太郎⇒紋吉
       大星由良之助⇒勘十郎
       寺岡平右衛門⇒玉助
       大星力弥⇒玉翔
       遊女おかる⇒簑助

4月公演に続いて第2弾。今回は、五段目から七段目まで。

大序(一段目)から四段目までは、侍たちの四角四面の意地の張り合いのような物語だが、五段目〜六段目は、農家や商家の人々の人情話で、これがなかなか面白い。

五、六段目の主役は早野勘平(萱野三平重実がモデルと言われている。)だ。
彼氏、善良で忠義の男なのだが、ちょいとうっかりミスが多い。ほんのささいな失敗から不運が不運を呼んで、岳父を亡くし、恋女房は遊女に身売りし、挙句、自分は早まって腹を切ることになる。

ここは人間国宝に内定している咲太夫の名調子だったが、なんだか、一段とありがたく聴こえた。

おかるがその身を売られた後に、勘平が切腹をしたので、おかるはその事情を知らずに遊女として祇園「一力」で働いている。

七段目は、全段の中で、一番面白いかもしれない。
「一力」で放蕩を尽くす由良助の元に敵も味方も彼の本心を探りにくる。容易なことで内心を明かさない駆け引きがまずは面白い。

判官(内匠頭)の妻・顔世御前から由良助宛の密書を、ひょんなことからおかるは盗み見してしまう。それを知った由良助はおかるを身請けしてやるという。喜ぶおかるだが、おかるの兄・足軽の平右衛門は、それを聞いて由良助の仇討ちの決意を読み取り、おかるは密書を見た為に殺されるのだと説く。
驚くおかるに、亭主の勘平は切腹し、父親は殺されたことを伝え、「その命、兄にくれ!その命と引き換えに仇討ちの仲間に入れてもらえるよう嘆願する」と切りかかる。もはや、生きる希望を失ったおかるは兄の望みが叶うならと命を差し出すその刹那、陰で聞いていた由良助が平右衛門の覚悟のほどを知り、刀を納めさせ、平右衛門の仇討ち参加を許す。

と、ざっと書いたが、実際はこの段だけで1時間半もある。
いろんなエピソードがあって見どころ、聴きどころ満載。よくぞ、こんな面白い話を作ったものだと思う。

次回公演は11月だ。これで全段完了。また、行かねばなるまい。


♪2019-113/♪国立文楽劇場-2

2019年5月16日木曜日

国立文楽劇場開場35周年記念 人形浄瑠璃文楽05月公演 通し狂言「妹背山婦女庭訓」第2部

2019-05-16 @国立劇場


通し狂言「妹背山婦女庭訓」
(いもせやまおんなていきん)

●第二部(午後3時45分開演〜午後9時終演予定)
 三段目
  妹山背山の段
   背山:千歳太夫・藤太夫<文字久太夫改>/藤蔵・富助
      妹山:呂勢太夫・織太夫/清助・清治*・清公

 四段目
  杉酒屋の段
   津駒太夫/宗助
      道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)
   芳穂太夫・靖太夫・希太夫・咲寿太夫・
   碩太夫/勝平・清丈・寛太郎・錦吾・燕二郎
      鱶七上使の段
   藤太夫/清馗
      姫戻りの段
   小住太夫/友之助
      金殿の段
   呂太夫/團七
     
人形▶簑紫郎・簑助*・玉助・玉男・和生*・一輔・
   清十郎・勘十郎・分司・玉志・ほか

*人間国宝


第2部は「妹山背山の段」から始まる。話は、序盤で出会った若い久我之助と雛鳥の、両家(の親)が争っているが故に恋を成就できない悲劇の物語だ。どこが「大化の改新」と繋がるのか、これは相当無理がある。しかし、ここでは、そんなことはどうでも良い。最終的にはそれなりに繋がるのだから。

さて、第1部の開幕前に客席に入るとすぐ気がついたことは、太夫・三味線が座る「床」が、今回の公演では2カ所にあるということだ。通常は舞台上手側の客席に張り出している。今回は、下手にも全く同様の「床」が誂えてあった。左右対照に向かい合っているのだ。こんな形を見るのは初めてなので、どういう風に使うのだろうと、疑問に思っていたが、第1部では結局使われなかった。

第2部冒頭の「妹山背山の段」ではその両方の床に太夫と三味線が位置した。舞台上は中央に吉野川が舞台奥から客席側に向かって流れている。川を挟んで下手が妹山側で、こちらに雛鳥が住む太宰の館があり、上手は背山側で、大判事の館には久我之助が住んでいる。互いに顔は見合わすことができるが、川を渡ることは禁じられている。
この2人に、それぞれの家の立場の確執が元で悲劇が生ずる。
それを、左右の床で語り分け、掛け合うのが素晴らしい。
この段の三味線も義太夫も人形も、悲劇的な筋書きも相まって鳥肌ものの緊張が続く。この段だけで休憩なしの約2時間という長丁場。いやはや興奮の連続だ。

ここでは、千歳太夫、藤太夫、呂勢太夫、織太夫の義太夫も人間国宝・鶴澤清治ほかの三味線も迫力満点でゾクゾクしてくる。
人形の方も、吉田簑助・吉田和生と人間国宝が登場し、文楽界の3人しかいない人間国宝が全員、この段に投入されているのだ。この贅沢感は目眩がするほどの興奮をもたらしてくれる。

が、この段が終わると、物語はまた木に竹継いだような運びになる。

藤原鎌足の息子・藤原淡海(求馬)を巡る、彼の政敵・蘇我入鹿の妹・橘姫と酒屋の娘・お三輪の三角関係の話が続き、その過程で女性の守るべき教え=「婦女庭訓」のエピソードがほんの少し登場してタイトルの辻褄を合わせる。
橘姫を追って入鹿の屋敷に入った求馬をお三輪も追いかけたが、彼女にはその屋敷の中で思いもよらぬ運命が待っていた。

全体としてはかなり無理のある継ぎ接ぎだらけの話なのだけど、最終的には藤原勢が入鹿を追い詰めるということで、大化の改新の大筋は保っている。また、継ぎ接ぎを構成するそれぞれの話が、各個独立して面白いので、全体の整合性はともかく、大いに楽しめる。いやはやびっくりするほど楽しめる。

♪2019-065/♪国立劇場-07

2019年2月2日土曜日

人形浄瑠璃文楽平成31年02月公演 第3部

2019-02-02 @国立劇場


第三部
鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)
 中将姫雪責の段
     前⇒  靖太夫/錦糸
     奥⇒  千歳太夫/富助
     胡弓⇒    錦吾

  人形▶紋臣・一輔・簑二郎・文哉・紋秀・清五郎・簑助・玉也

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
 阿古屋琴責の段
     阿古屋⇒ 津駒太夫
     重忠⇒  織太夫
     岩永⇒       津國太夫
     榛沢⇒       小住太夫
     水奴⇒       碩太夫
          清助
     ツレ⇒       清志郎
     三曲⇒       寛太郎

  人形▶玉助・文司・玉翔・勘十郎・勘助・玉路・和馬・簑之

Ⅰ部、Ⅱ部は後日に回して。
Ⅲ部は「鶊山(ひばりやま)姫捨松」中将姫雪責の段と「壇浦兜軍記」阿古屋琴責の段。
2本とも若い女性が責められまくる話って、ちょっと興奮させる?
後者は歌舞伎の玉三郎で観たが人形では初めて。前者は歌舞伎も知らない。

「鶊山姫捨松」では、権力闘争の煽りを食って、無実の中将姫が雪の舞う庭で、継母岩根御前による殺害目的の折檻を受ける場面=雪責めがメインだ。

打掛を剥がされ竹刀でさんざの打擲に苦しむ姿を、豊澤富助の三味線に乗せ竹本千歳太夫が振り絞るように語り、人間国宝吉田簑助が人形に命を吹き込む。

「壇浦兜軍記」は傾城阿古屋が、源氏方代官重忠と岩永から、彼女が馴染みだった平家の重臣・景清の行方を聞き出そうと拷問を受ける一幕だ。
逸(はや)る岩永を制して冷静な重忠は阿古屋に琴・三味線・胡弓を弾かせその調子で阿古屋の本心を探ろうとする。
歌舞伎では一人の役者が3種を操る処が見どころ。

文楽でも同様だが、ここでは人に操られる人形が演奏するフリをするという屈折した面白さがある。
楽器の実演は三味線方(鶴澤寛太郎の見事な演奏)が担うが、それに合わせて、さも演奏しているかのようにピタッと合わせて阿古屋を遣うのが桐竹勘十郎の名人芸。見事でありおかしくもある。

観客は、寛太郎の演奏を横目で見ながら勘十郎が遣う人形のフリを同時に見るので、撥・弓・指遣いの微妙な仕草までシンクロするのがよく分かって只管感心するが、舞台上の憎まれ役岩永も阿古屋の名演につい惹き込まれる様子も傑作で、場内は笑い声が広がる。津駒太夫・織太夫らも名調子。

阿古屋琴責めでは中将姫雪責めと違って、三味線方も太夫も大勢で人形を演じ分け、責めるといってもこちらは優雅なもので傾城の見事な衣装も楽しめるし、賑やかで、おかしくてホンに楽しい一幕ではあった。

♪2019-010/♪国立劇場-02

2018年12月9日日曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年12月公演「鎌倉三代記」ほか

2018-12-09 @国立劇場


鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
     局使者の段⇒希太夫/清馗
     米洗いの段⇒靖太夫/錦糸
     三浦之助母別れの段⇒文字久太夫/藤蔵
     高綱物語の段⇒織太夫/清介
  人形▶和生・簑一郎・紋臣・紋秀・紋吉・勘彌・玉志・玉助・文哉

伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)
     八百屋内の段⇒津駒太夫/宗助
     火の見櫓の段⇒芳穂太夫・南都太夫・亘太夫・碩太夫/
            勝平・清公・錦吾・燕二郎
  人形▶玉勢・簑紫郎・一輔・勘市・亀次・玉翔・勘助・玉路

「鎌倉三代記」と「伊達娘恋緋鹿子」2本立て。

前者は、これまで歌舞伎で数回観ているが、歌舞伎ではもっぱら「絹川村閑居の場」のみが上演される。

今回の文楽公演では「絹川村〜」という名の「段」はないのだが、「三浦之助母別れの段」と「高綱物語の段」がそれに相当するのではないか、と観たがどうだか、確かなことは分からない。
いずれにせよ、この二段が話の中核だ。
だが、話の内容が結構複雑なことと、愛や忠義の為の究極の選択に素直な感情移入が難しい。

後者はまったくの初見。
所謂「八百屋お七」の物語だが、その「火の見櫓の段」こそ見もの。白黒世界に雪が舞い赤い振袖長襦袢。お七が梯を登るところが刮目の一工夫。火炙り覚悟の半鐘打ちの壮烈で美しいこと。


♪2018-166/♪国立劇場-18

2018年9月10日月曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年9月公演 第1部「良弁杉由来」、「増補忠臣蔵」

2018-09-10 @国立劇場


<明治150年記念>
南都二月堂
●良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)
 志賀の里の段
  睦太夫・小住太夫/鶴澤清友
 桜の宮物狂いの段
  津駒太夫・津國太夫・芳穂太夫・咲寿太夫/鶴澤藤蔵・ 
  清馗・寛太郎・清公・清允
 東大寺の段
  靖太夫・野澤錦糸
 二月堂の段
  千歳太夫・豊澤富助
◎人形⇒吉田和生・桐竹紋臣・吉田玉男

●増補忠臣蔵(ぞうほちゅうしんぐら)
 本蔵下屋敷の段
  呂太夫・咲太夫/竹澤團七・鶴澤燕三・燕二郎
◎人形⇒吉田玉佳・吉田玉志・吉田玉助・吉田一輔

1日で第1部と第2部を通して観た。歌舞伎座で昼の部と夜の部を通して見るようなものだ。11時から20時34分まで。もちろん数回の休憩と入れ替えの時間があるが、それらを含めて9時間34分も小劇場の椅子に座っていたことになる。

2部の「夏祭浪花鑑」については興行が別なので感想も別に書いたが、これは消化不良だった。

それに対比して、第1部の2本*はいずれも初見だったにもかかわらず、ほぼ完全消化できた。そしていずれも大いに楽しめた。

●「良弁杉由来」は、幼い子どもを鷲に攫われた渚の方が悲しみのあまり狂女となって30年。乗り合わせた船の中で東大寺の良弁上人が幼い頃鷲にさらわれたという噂を聞き、訪ねた二月堂で親子念願の再会を果たす。
「志賀の里の段」での大鷲の仕掛け、「桜の宮物狂いの段」では桜の花盛りの中、シャボン玉も登場して笑いを誘う。その華やかさの一方でやつれ果てた狂女のが川面に写った自分の姿を見て30年間失っていた正気を取り戻す。
「二月堂の段」では書割とはいえ、二月堂の威容が見事だ。感動的な名乗り合いと再会の前に、良弁の登場の先触れに登場する奴たちが長い槍を放り投げては受け取るというアクロバティックな見どころも用意されていて心憎い。
この段では千歳太夫の渾身の語りが観る者、聴く者の心を揺り動かした。

●「増補忠臣蔵」は「仮名手本忠臣蔵」の外伝の一つで、有名な九段目「山科閑居の場」の前日譚だ。
本篇(仮名手本〜)では家老加古川本蔵の主人、桃井若狭之助は短慮で直情径行な若殿という扱いになっているが、この増補版では本蔵の心情を良く理解し、本蔵の決死の覚悟を知って見送る英邁な若殿様に成長している。
後日にできた前日譚だろうが、この話を知ることで、本篇九段目に本蔵が虚無僧姿で山科の由良助の閑居を訪れること、高師直の屋敷の図面を持っていることなどが、ピシャリと嵌ってなるほどと思う訳だ。

主従の絆や親子の情愛がとても分り易く表現されて面白い。
この演目で、「前」の太夫は呂太夫(三味線は團七)、「切」は唯一の切場語りである咲太夫(〃燕三)という豪華版でしっとりと聞かせてくれた。

*第1部は「明治150年記念」という冠がついているが、2本とも明治期に初演された演目だ。

♪2018-109/♪国立劇場-12

2018年5月17日木曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年5月公演 第2部「彦山権現誓助剣」

2018-05-17 @国立劇場


彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
●須磨浦の段
  お菊⇒竹本三輪太夫
  内匠⇒豊竹始太夫
  友平⇒竹本小住太夫
  弥三松⇒豊竹咲寿太夫/鶴澤清友
 
●瓢簞棚の段 
 中 豊竹希太夫/鶴澤寛太郎
 奥 竹本津駒太夫/鶴澤藤蔵・鶴澤清公 

●杉坂墓所の段
 口 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 奥 豊竹靖太夫/野沢錦糸
 
●毛谷村六助住家の段
 中 豊竹睦太夫/野沢勝平
 奥 竹本千歳太夫/豊澤富助

人形役割
  娘お菊⇒吉田勘彌
  弥三松⇒吉田簑太郎
  友平 ⇒吉田文昇
  内匠 ⇒吉田玉志
  佐五平⇒吉田玉勢
  お園 ⇒吉田和生
  伝五右衛門⇒吉田玉佳
  六助 ⇒吉田玉男
  母お幸⇒桐竹勘壽
 ほか

一昨日、鑑賞したばかりだが、頭に入っていない部分があって、気になってもう一度観ることにした。

「毛谷村」の段で、お園は父の決めた許婚六助に出会い、急に女らしく振る舞うようになるのだが、夕飯の支度をする時にかまどに火吹き竹で息を送る際に、あまりに慌てていて尺八を口にするシーンが歌舞伎にはある。

最初の鑑賞の際、ボーッとしていて、それに気づかなかった。果たして尺八の場面はあったのかなかったのか、それが気になってならない。それで、第1部の鑑賞日に第2部のチケットがあるかどうか調べたら幸いなことに良い席が残っていたので即GETした。

ところが、朝から第1部4時間超を観た後に、続いて第2部を観るというのはなかなかしんどいものがある。
いよいよというところまで来てまたもや注意散漫になってしまった。
「彦山権現誓助剣」は休憩込みで4時間37分もあるので、最後の毛谷村迄行きつく頃は相当疲れが溜まっていたのだ。

結局、火吹き竹の場面は確認できずじまいだった。
六助がお園や姑の見送りを受け、梅の枝と椿の枝を背中に挿してもらって仇討ちに出かけるところは観ていたのだけど。どうも、その瞬間、エアポケットに落ち込んだみたいだ。

ま、2回観たので、全体像ははっきりしてきたので良かったけど。

しかし、朝から通せば9時間37分だ。
休憩が合計90分。第1部と第2部の間の切り替えの時間が38分あったとはいえ、1日で2部とも観るというのはかなりの体力勝負だ。

♪2018-056/♪国立劇場-08

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2018年5月15日火曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年5月公演 第2部「彦山権現誓助剣」

2018-05-15 @国立劇場


彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
●須磨浦の段
 お菊⇒竹本三輪太夫
 内匠⇒豊竹始太夫
 友平⇒竹本小住太夫
 弥三松⇒豊竹咲寿太夫
 /鶴澤清友
 
●瓢簞棚の段 
 中 豊竹希太夫/鶴澤寛太郎
 奥 竹本津駒太夫/鶴澤藤蔵・鶴澤清公 

●杉坂墓所の段
 口 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 奥 豊竹靖太夫/野沢錦糸
 
●毛谷村六助住家の段
 中 豊竹睦太夫/野沢勝平
 奥 竹本千歳太夫/豊澤富助

人形役割
  娘お菊⇒吉田勘彌
  弥三松⇒吉田簑太郎
  友平 ⇒吉田文昇
  内匠 ⇒吉田玉志
  佐五平⇒吉田玉勢
  お園 ⇒吉田和生
  伝五右衛門⇒吉田玉佳
  六助 ⇒吉田玉男
  母お幸⇒桐竹勘壽
  ほか

今月の文楽公演は第1部が吉田玉助襲名披露公演で出演陣もなかなか豪華だ。ま、そちらはあとの楽しみにして、まずは第2部から出かけた。
演目は「彦山権現誓助剣」。本来十一段構成から六段目から九段目までの半通し上演だ。
このうち、九段目に当たる「毛谷村六助住家の段」は、歌舞伎では何度か観ている。歌舞伎では、大抵「毛谷村」としてこの段だけが単独で上演され、稀にその前段の「杉坂墓所の段」も置かれる場合があるが、今回の文楽公演のように四段・半通しは多分ないのだろう。

「須磨浦の段」と「瓢箪棚の段」を前置することで話がわかりやすくなったかと言えば、どうもそうでもなかった。むしろ、複雑になって全体像を掴みにくかったように思うが、それは、これら前二段を観るのが初めてだったからかもしれない。

物語性はともかく、「瓢箪棚の段」は、単独でもなかなか見どころがある。全体を通したヒロインであるお園が初めてここで登場し、仇役との対決場面だ。

お園は武術指南の娘として生まれたので武術全般に通じているだけでなく、180cmという偉丈夫(偉丈婦?)で怪力の持ち主でもある。鎖鎌まで使う剣戟、棚から遣い手もろとも人形が飛び降りる演出など、これはなかなかの見どころだ。

その彼女が「毛谷村六助住家の段」で、親が決めた彼女の許嫁でめっぽう剣術の巧い六助に出会い、その途端、しおらしくなり何くれとなく世話を焼くが、つい怪力の地が出てしまうところは、歌舞伎でも滑稽シーンが連続する楽しいところだ。

この「毛谷村」の「奥」を語ったのが千歳太夫。
人形は六助を吉田玉男、お園を吉田和生が遣った。
うまい下手は判断付けかねるが、みんな熱演で良かった。

♪2018-054/♪国立劇場-06

2018年2月19日月曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年2月公演 第3部「女殺油地獄」

2018-02-19 @国立劇場



近松門左衛門=作
女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)
 ●徳庵堤の段
  豊竹靖太夫⇒与兵衛
  豊竹希太夫⇒お吉(きち)/小菊
  竹本小住太夫⇒七左衛門/森右衛門/大尽蠟九
  豊竹亘太夫⇒小栗八弥/弥五郎
  竹本碩太夫⇒お清/花車 
 ●河内屋内の段
口 豊竹咲寿太夫
  竹沢團吾
奥 竹本津駒太夫
  鶴澤清友
 ●豊島屋油店の段(てしまやあぶらみせのだん)
  豊竹呂太夫
  鶴澤清介
 ●同 逮夜の段
  豊竹呂勢太夫
  竹澤宗助
  
 ◎人形
  吉田和生*⇒豊島屋女房お吉
  吉田簑之⇒豊島屋姉娘お清
  桐竹勘昇⇒茶屋の亭主
  吉田玉男⇒河内屋与兵衛
  吉田簑太郎⇒小栗八弥
  吉田玉輝⇒山本森右衛門
  吉田玉志⇒豊島屋七左衛門
  吉田玉也⇒河内屋徳兵衛
  吉田勘彌⇒徳兵衛女房お沢
  吉田幸助⇒河内屋太兵衛
  吉田簑助*⇒与兵衛の妹おかち
  吉田玉誉⇒綿屋小兵衛
          ほか(*は人間国宝)

2月公演の第3部は、一番楽しみの「女殺油地獄」だ。
僕が初めてこの作品を観たのは歌舞伎版で40年近く昔の事、国立劇場だった。多分、当時の片岡孝夫、現・15代仁左衛門の与兵衛だったように微かに記憶しているが、何にも記録していないので勘違いかもしれない。とにかく、その時に受けたインパクトは大きくて「豊島屋油店の場(段)」というタイトルはとっくに忘れていたがあの油まみれで舞台を滑りながらの刃傷沙汰は忘れられない。

その後、歌舞伎でも見る機会がなかったが、ようやく文楽の形で再見が叶うことになったが、一体、人形であの殺しの場面をどう表現するのかというところが興味深い。

久しぶりに(と言っても文楽としては初見だが)この演目を観ると4つの段はそれぞれによくできている。面白い。それは、3段目に大きな山場があることが分かっているから、今の出来事、人間関係がどう絡み合って愁嘆場を迎えることになるのかという関心が人形や語りに集中させてくれるからだろう。
そして、主役の与兵衛のキャラクターがいい。番頭上がりで主人亡き後婿養子に入った継父の河内屋徳兵衛が元の主人の実子である与兵衛には厳しく処すことができず、いわば甘やかし放題の結果、放蕩息子になってしまっているのだが、近松のほかの世話物(例:心中物)などでも登場する男たちはだらしのない情けない男ばかりだが、彼らにはどこか憎めないところがある。しかし、この「女殺油地獄」の河内屋与兵衛はもう徹底的な悪党で寸毫も同情の余地はない。さりとて大きなことができるほどの器量もないただの出来損ないの小悪党だ。継父や実母や豊島屋の女房お吉などの思いやりはまるで素通りして親も打擲するわ、最後に借金返済のために人殺しをして平然としている。
このようなキャラクター設定が、他の近松作品や文楽作品にも登場するのかどうか浅学のため知らないが、おそらくユニークな人物だろう。そう言えば、歌舞伎「霊験亀山鉾」(鶴屋南北作)の藤田水右衛門が近いか。でもこちらは侍だ。与兵衛は本来なら義理や人情で思いやりを交わしながら暮らしを営む市井の人物なのだからやはり、とんだ精神的畸形といえる。

この性悪が悪さの限りを尽くすことで、観ている観客も一切何らの同情心も湧かず、突き放してみることができるところがある意味痛快でもある。

さて、件(くだん)の「豊島屋油店の段」での殺人だが、豊島屋の亭主の留守に女房お吉に金の無心。断られて持参していた脇差しをお吉に突き立て、斬り掛かり、断末魔のお吉が苦し紛れに店の油を与兵衛に投げつける。床は油とお吉の血だらけとなる…が、もちろん文楽の舞台は想像するだけだが。その床で与兵衛もツツーっと滑り、逃げるお吉もツツーっと滑り、なかなか身体が互いに思うに任せず。やがては動かなくなったお吉を「『南無阿弥陀仏』と引き寄せて右手(めて)より左手(ゆんで)の太腹へ、刺いては刳り抜いては切…息絶えたり」。
戸棚から金を盗んでその逃走中、脇差しを栴檀木橋から川へ捨てた…と太夫の語り。

まったくの余談だけど、かつての大阪勤務時代にこの粋な名前の橋は何度も渡った。北浜から中之島の図書館へ行くには土佐堀川に架かるこの橋を渡らなくてはならない。江戸時代初期に架けられた当時は橋の袂に栴檀の大木があったことから名づけられたそうだ。当然その頃は木橋だ。景勝地区にあって、橋もきれいだった。今ではもっと整備されて中之島公園と一体になっているのだろう。

今から400年ほど前の5月端午の節句の夜、河内屋与兵衛は血糊がべっとり付いた脇差しをこの橋から土佐堀川に捨てたのだ…と思うと、ロマンチックでなくなるな。
なお、実際にこのような事件があったらしい…とされている。

観応え、聴き応え十分な作品であった。

♪2018-022/♪国立劇場-04

2017年9月4日月曜日

人形浄瑠璃文楽平成29年9月公演 第一部「生写朝顔話」

2017-09-04 @国立劇場


●生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)
 宇治川蛍狩りの段
 明石浦船別れの段
 浜松小屋の段
 嶋田宿笑い薬の段
 宿屋の段
 大井川の段

豊竹咲太夫
竹本津駒太夫
豊竹呂勢太夫
鶴澤寛治
鶴澤清治
吉田簑助
吉田和生
吉田玉男
桐竹勘壽
桐竹勘十郎
 ほか

オリジナルは全五段構成らしいが、今日演じられたのは全六段だ。尤もこの場合の「段」は「幕」とか「場」の意味も兼ねているらしい。なので、六段合わせてもオリジナルには不足の場があるようだが詳しいことは分からない。
今回はヒロインである「深雪(盲いて後に「朝顔」)」を中心に構成したと解説してあったが、初見にもかかわらず、そのお陰で実に分かりやすく、また、どの段も趣向は異なるがそれぞれに面白い。文楽を初めて観る人でも十分楽しめるだろう。

武家の娘、深雪は16~7歳。美しいだけでなく詩歌管弦の嗜みもある。
宇治川の船遊びで酔客に狼藉されかかった折、近くで蛍狩りをしていた若い武士阿曾次郎に助けられるが、そこで互いは惚れあってしまう。
中でも深雪のぞっこんぶりが武家の娘としては不自然なくらいはしたなくさえあるのだけど、このような強力なキャラクター設定こそが、その後の激変のドラマを引っ張るエネルギーになっていることにやがて納得できる。
納得できるということは既に観客が彼女に感情移入できているということであり、その健気さ、いじらしさに哀れを誘われ、時に胸に迫るものがある。

やむをえず、離ればなれに出立した阿曾次郎と深雪は、偶然互いに異なる船旅同士で再び出会うが、喜びもつかの間、嵐が2人を隔ててしまう。
それでも、深雪は阿曾次郎に会いたさ一途に大胆にも家出して1人で阿曾次郎を追うが、か細い若い娘のひとり旅の苦労と悲痛が深雪の視力を奪うことになる。

瞽女となった深雪は嶋田の宿で朝顔と名乗り、泊まり客の求めに応じて三味線や琴を聴かせて生業としていた。そこに偶然宿をとった阿曾次郎は、部屋の衝立に宇治川で別れる際に深雪に与えた扇に記した朝顔の歌が貼り付けてあるのを見てもしやと思い、宿の亭主・徳右衛門に質して「朝顔」と言う名の瞽女を座敷に呼び琴を所望した。
阿曾次郎は既に駒澤家の家督を継いで駒澤次郎左衛門と改名をしており、朝顔にはその名で紹介される。朝顔に探し求めていた次郎左衛門(阿曾次郎)の顔は見えない。

阿曾次郎は、やつれたとはいえ朝顔のその顔、声、音曲にこと寄せる一途な恋心から、朝顔こそ深雪に相違なしと思うが、同僚の岩代(しかも、お家転覆を狙う悪党)の手前もあって、深く尋ねることができずまたもその場で別れざるを得なかった。

一方、深雪の方も、かの人こそ阿曾次郎様ではないかとの胸騒ぎから、再び、宿を訪れるが、時既に遅し。阿曾次郎一行は出立した後だった。

深雪は、髪振り乱し、裾の乱れもなんのその大井川の渡しまで、やっとの思いでたどり着いたが、嵐のために阿曾次郎を追うための次の船が出ない。

こうして、なんどか、再会、名乗り合う機会がありながらもことごとく果たせない運命に、遂に深雪は死を決するが、ここにきてようやくかつての部下や事情を知った徳右衛門らによって助けられ、ようように、文字どおり明るい展望が開けるのだった。

若い娘の一途な恋物語である。すれ違いの悲恋物語である。
あり得ないような激しい恋の物語だが、最初に書いたように、その健気さには心打たれてしまう。

ところで、この話には、「嶋田宿笑い薬の段」という変わった名前のエピソードが挟まれる。
所謂「チャリ場」で、滑稽なシーンだ。
阿曾次郎を亡き者にしようと企んでいる岩代は仲間の藪医者、萩の祐仙と図って、お茶と称して痺れ薬を飲ませようとするが、徳右衛門の機転で祐仙自らが笑い薬を飲んでしまい、笑い転げて計画は破綻する。

この場面で祐仙の人形を遣うのが桐竹勘十郎だ。
祐仙が茶を点てる作法は多少は省略してあるようだが、ほとんどホンモノのお点前どおり。自分では阿曾次郎に飲ませる痺れ薬のつもりだが、本当は笑い薬を点てているとはつゆ知らず、生真面目に茶を点てる仕草のおかしいこと。この場をいかついマスクの桐竹勘十郎が演ずるから余計におかしい。

そして、毒味だと言って自らは痺れ薬用の解毒剤をこっそり飲んでから痺れ薬(実は笑い薬)を飲んだものだから、もう、笑いが止まらず、苦しくて、七転八倒のありさま。観客も大いに笑う。
この段の語りは太夫最高格の咲太夫だった。
もちろんうまい。
しかし、こういうおかしな場面ではむしろ、咲甫太夫とか千歳太夫で聴きたかったな。

どの場面もホンに面白い。
浜松小屋の段では、畏れ多くも人間国宝3人(鶴澤清治・吉田簑助・吉田和生)の共演を楽しむことができる。

実に充実した文楽鑑賞であった。

♪2017-143/♪国立劇場-13

2017年8月2日水曜日

夏休み文楽特別公演 第三部「夏祭浪花鑑」

2017-08-02 @国立文楽劇場


並木千柳、三好松洛竹田小出雲合作:夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)

●︎住吉鳥居前(すみよしとりいまえ)の段
 豊竹咲寿太夫/竹沢團吾
 豊竹睦太夫/竹澤宗助
●釣船三婦内(つりふねさぶうち)の段
 竹本小住太夫/鶴澤清公
 竹本千歳太夫/豊澤富助
●長町裏(ながまちうら)の段
 豊竹咲甫太夫・竹本津駒太夫/鶴澤寛治

◎人形
 桐竹勘壽・吉田玉輝・吉田簑助・吉田玉也・桐竹勘十郎・吉田幸助

第2部は長尺だったが、こちらは3段構成約2時間。

江戸の侠客には馴染みが深いが、大阪も変わらないのが面白い。しかも姐さん方の筋の通し方が半端じゃない。引き受けたからには「一寸」も引かない。引けば「顔が立たない」。面目を無くせば生きているのは恥ずかしい。

最後「長町裏の段」は陰惨な場面。その終盤、三味線も義太夫もピタリと止まって、かすかな祭り囃子の笛が聞こえる中、歌舞伎でいうだんまり状態での殺し合いが不気味だ。
そして、やむを得ず仕事を終えた団七が、血しぶきまみれの身体に水を浴びて気持ちを切り替え、祭りの喧騒の中にひっそり紛れて消える、この幕切れの粋なこと。

♪2017-134/♪国立文楽劇場-2

2017年2月7日火曜日

国立劇場開場50周年記念 文楽公演 近松名作集<第二部> お初徳兵衛 曾根崎心中(そねざきしんじゅう)

2017-02-07 @国立劇場


近松門左衛門=作
 お初徳兵衛
   曾根崎心中(そねざきしんじゅう)
    生玉社前の段
    天満屋の段
    天神森の段

(主な出演者)
 竹本文字久太夫
 竹澤宗助
 豊竹咲太夫
 鶴澤燕三
 竹本津駒太夫
 豊竹咲甫太夫
 豊竹芳穂太夫
 豊竹亘太夫
 鶴澤寛治
 鶴澤清志郎
 鶴澤寛太郎
 鶴澤清公
 吉田玉男
 桐竹勘十郎
 吉田玉輝
 吉田文哉
  ほか


近松名作集全3作のうちでは一番有名な作品かな。
文楽で観るのは初めて。

歌舞伎では2014年4月に〜坂田藤十郎一世一代にてお初相勤め申し候〜という藤十郎がこれで最後のお初を演ずるという公演を観て、特に「天満屋の場」の床下に隠れた徳兵衛(鴈治郎=当時は翫雀)との件が非常に強い印象となって残っていたのが、良かったか、悪かったか。

とは言え、もともと文楽の方がオリジナル。
お初が足の先で徳兵衛に心中の決意を伝えるところなど、人形で演じた方が抵抗は少ない。生身の人間が演ると、やはり印象が強烈になる。

徳兵衛の甲斐性のなさにはじれったいが、この時お初19歳、徳兵衛25歳(数え年)。互いの愛を死を以て貫いたのは哀れかな。

〜未来成仏疑ひなき恋の手本となりにけり〜

♪2017-018/♪国立劇場-05