2018年9月10日月曜日

人形浄瑠璃文楽平成30年9月公演 第1部「良弁杉由来」、「増補忠臣蔵」

2018-09-10 @国立劇場


<明治150年記念>
南都二月堂
●良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)
 志賀の里の段
  睦太夫・小住太夫/鶴澤清友
 桜の宮物狂いの段
  津駒太夫・津國太夫・芳穂太夫・咲寿太夫/鶴澤藤蔵・ 
  清馗・寛太郎・清公・清允
 東大寺の段
  靖太夫・野澤錦糸
 二月堂の段
  千歳太夫・豊澤富助
◎人形⇒吉田和生・桐竹紋臣・吉田玉男

●増補忠臣蔵(ぞうほちゅうしんぐら)
 本蔵下屋敷の段
  呂太夫・咲太夫/竹澤團七・鶴澤燕三・燕二郎
◎人形⇒吉田玉佳・吉田玉志・吉田玉助・吉田一輔

1日で第1部と第2部を通して観た。歌舞伎座で昼の部と夜の部を通して見るようなものだ。11時から20時34分まで。もちろん数回の休憩と入れ替えの時間があるが、それらを含めて9時間34分も小劇場の椅子に座っていたことになる。

2部の「夏祭浪花鑑」については興行が別なので感想も別に書いたが、これは消化不良だった。

それに対比して、第1部の2本*はいずれも初見だったにもかかわらず、ほぼ完全消化できた。そしていずれも大いに楽しめた。

●「良弁杉由来」は、幼い子どもを鷲に攫われた渚の方が悲しみのあまり狂女となって30年。乗り合わせた船の中で東大寺の良弁上人が幼い頃鷲にさらわれたという噂を聞き、訪ねた二月堂で親子念願の再会を果たす。
「志賀の里の段」での大鷲の仕掛け、「桜の宮物狂いの段」では桜の花盛りの中、シャボン玉も登場して笑いを誘う。その華やかさの一方でやつれ果てた狂女のが川面に写った自分の姿を見て30年間失っていた正気を取り戻す。
「二月堂の段」では書割とはいえ、二月堂の威容が見事だ。感動的な名乗り合いと再会の前に、良弁の登場の先触れに登場する奴たちが長い槍を放り投げては受け取るというアクロバティックな見どころも用意されていて心憎い。
この段では千歳太夫の渾身の語りが観る者、聴く者の心を揺り動かした。

●「増補忠臣蔵」は「仮名手本忠臣蔵」の外伝の一つで、有名な九段目「山科閑居の場」の前日譚だ。
本篇(仮名手本〜)では家老加古川本蔵の主人、桃井若狭之助は短慮で直情径行な若殿という扱いになっているが、この増補版では本蔵の心情を良く理解し、本蔵の決死の覚悟を知って見送る英邁な若殿様に成長している。
後日にできた前日譚だろうが、この話を知ることで、本篇九段目に本蔵が虚無僧姿で山科の由良助の閑居を訪れること、高師直の屋敷の図面を持っていることなどが、ピシャリと嵌ってなるほどと思う訳だ。

主従の絆や親子の情愛がとても分り易く表現されて面白い。
この演目で、「前」の太夫は呂太夫(三味線は團七)、「切」は唯一の切場語りである咲太夫(〃燕三)という豪華版でしっとりと聞かせてくれた。

*第1部は「明治150年記念」という冠がついているが、2本とも明治期に初演された演目だ。

♪2018-109/♪国立劇場-12