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2023年10月25日水曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら特別公演 通し狂言「妹背山婦女庭訓」その2

2023-10-25 @国立劇場



蘇我入鹿⇒中村歌六
漁師鱶七実ハ金輪五郎今国⇒中村芝翫
宮越玄蕃⇒坂東彦三郎
烏帽子折求女実ハ藤原淡海⇒中村梅枝
荒巻弥藤次⇒中村萬太郎
入鹿妹橘姫⇒中村米吉
大判事清澄⇒河原崎権十郎
杉酒屋娘お三輪/采女の局⇒尾上菊之助
豆腐買おむら/藤原鎌足⇒中村時蔵
 ほか

近松半二=作
通し狂言「妹背山婦女庭訓」<第2部>三幕四場
(いもせやまおんなていきん)

  戸部銀作=脚本
  高根宏浩=美術

序 幕  布留の社頭の場
          「道行恋苧環」竹本連中
二幕目  三笠山御殿の場
大 詰  三笠山奥殿の場
     同  入鹿誅伐の場





先週観たばかりだけど、どうも、面白みが分からず、このまま、初代国立劇場での歌舞伎鑑賞を終えるのもすっきりしないので、ちょうど夜にN響Bが入っているので、この日のチケットを買った。

今月の歌舞伎公演はこれで初代国立劇場の見納めということもあって、いつになくお客さんが大勢で、良席は全然残っていなかった。

今月の公演は9月「妹背山婦女庭訓」第1部の続き(第2部)だが、その前半と部分と今月の後半部分は、どうも木に竹を継いだような展開で、釈然としない。

文楽でも通しで観ているけど、文楽版の方が、見どころが多かったように思う。

かくして、2ヶ月にわたる大作を気合を入れて観た割には消化不良で終わったのが誠に残念。

明日で、初代国立劇場は事実上閉館になって、再開場は2029年だ。もちろんその間も、あちこちの劇場を借りて歌舞伎公演は継続されるが、舞台機構(歌舞伎専用劇場ではないから花道、回り舞台、すっぽん、セリもない)の制約から演目も限られてくるね。

♪2023-183/♪国立劇場-13

2023年10月19日木曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら特別公演 通し狂言「妹背山婦女庭訓」その2

2023-10-19 @国立劇場


近松半二=作
通し狂言「妹背山婦女庭訓」<第2部>三幕四場
(いもせやまおんなていきん)

  戸部銀作=脚本
  高根宏浩=美術

序 幕  布留の社頭の場
          「道行恋苧環」竹本連中
二幕目  三笠山御殿の場
大 詰  三笠山奥殿の場
     同  入鹿誅伐の場


蘇我入鹿⇒中村歌六
漁師鱶七実ハ金輪五郎今国⇒中村芝翫
宮越玄蕃⇒坂東彦三郎
烏帽子折求女実ハ藤原淡海⇒中村梅枝
荒巻弥藤次⇒中村萬太郎
入鹿妹橘姫⇒中村米吉
大判事清澄⇒河原崎権十郎
杉酒屋娘お三輪/采女の局⇒尾上菊之助
豆腐買おむら/藤原鎌足⇒中村時蔵
 ほか





先月に続いて、通し狂言「妹背山婦女庭訓」の後半だ。
この公演が、初代(つまり、現在の)国立劇場の掉尾を飾る。この後、2029年の第二代国立劇場の完成まではあちこちの劇場を渡り歩くことになる。寂しいことだ。それに6年後なんて、足腰は大丈夫だろうかと心配。

「妹背山婦女庭訓」は文楽では19年に、こちらも2公演にわたる通し狂言として観ている。
歌舞伎公演の先月の前半は、見処たっぷりなので先に観た文楽の内容も結構覚えており楽しめたが、今回の後半は、文楽でもややこしい話で、4年以上経過していることもありなかなか思い出せなかった。

しかし、役者陣は歌六、芝翫、時蔵、菊之助を中心に、病気による菊五郎の休演をはね飛ばさんと気合の入った様子。芝翫はますます貫禄が付いた。彦三郎は相変わらずよく通る声。梅枝が珍しく立役。菊五郎の代役も務めた時蔵は最後は藤原鎌足役で髭を生やしていたのも初めて観たよ。
米吉は今も可愛らしい娘役が似合うが、6年後はどうなっているだろう。菊之助も美しい娘役(二役)だったが、少し太っていたな。

初代国立で最後に観る舞台としては消化不良だったのが残念だった。時間を作って再度挑戦するべ。

♪2023-177/♪国立劇場-12

2023年9月8日金曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら特別公演 通し狂言「妹背山婦女庭訓」

2023-09-08 @国立劇場大劇場


近松半二=作
通し狂言「妹背山婦女庭訓」<第1部>三幕
(いもせやまおんなていきん)

  戸部銀作=脚本
  高根宏浩=美術

序 幕  春日野小松原の場
二幕目  太宰館花渡しの場
三幕目  吉野川の場

太宰後室定高⇒中村時蔵
蘇我入鹿坂東⇒坂東亀蔵
久我之助清舟⇒中村萬太郎
腰元小菊⇒市村橘太郎
采女の局⇒坂東新悟
太宰息女雛鳥⇒中村梅枝
大判事清澄⇒尾上松緑
       ほか



「妹背山婦女庭訓」は文楽発祥の大作で、文楽では19年に《国立文楽劇場開場35年》の記念興行で、2公演にわたって(10:30〜21:00という長丁場!)通し狂言として演じられたのを初めて観て大いに感心した。もう一度観たいと思っていたが、今回は歌舞伎で観ることができた。

歌舞伎版は初めてだったが、やはり大作なので、何かの記念公演で演じられることが多いようだ。今回は、《初代国立劇場さよなら特別公演》ということで、今月と来月に2公演に分けて通し狂言として演じられる。

核となる場面は「妹山背山の段」で歌舞伎では「吉野川の場」とタイトルが変わっているが、舞台装置は文楽と全く同様で、桜満開の吉野に敵味方に分かれた両家の別荘が、吉野川を挟んで対峙している。その舞台の美しいこと。

文楽でいう、太夫が三味線に合わせて語る「床」は、文楽の「妹山背山の段」と同様上手・下手の両方に設えてある。

文楽では人形の寸法に合わせて舞台も小ぶりだが、歌舞伎では言うまでもなく人間サイズだから、特に豪華に見える。
そして、極めて珍しい両花道を使って舞台全体が立体的に構成してあって、製作陣の意気込みを感ずる。


物語は、説明不可だ。大勢登場し、我が子の首を切ったり、首が嫁入りしたりと荒唐無稽だ。
寛大な気持ちで臨まなければこの話を楽しむことはできない。

♪2023-151/♪国立劇場-09

2023年1月12日木曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 通し狂言「遠山桜天保日記」

2023-01-12 @国立劇場大劇場



竹柴其水=作
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「遠山桜天保日記」六幕十一場
    -歌舞伎の恩人・遠山の金さん-
      (とおやまざくらてんぽうにっき)
        国立劇場美術係=美術

序  幕 第一場  河原崎座楽屋の場
   第二場  花川戸須之崎政五郎内稽古所の場
   第三場  隅田川三囲堤の場
二幕目 安房国山中の場
三幕目 第一場  花川戸須之崎政五郎内の場
    第二場  山の宿尾花屋の場
    第三場  大川橋六地蔵河岸の場
四幕目 第一場  新潟行形亭座敷の場
    第二場  同    庭先の場
五幕目 北町奉行所白洲の場
大 詰 河原崎座初芝居の場

羅漢尊者⇒市川左團次
笛方六郷新三郎/旅の一座の座頭⇒市村橘太郎
捕手頭 佐藤清介⇒市村竹松
楽屋番紋助⇒市村光
行形亭女将お滋⇒市村萬次郎
待乳山のおえん⇒尾上右近*
尾花屋丁稚辰吉⇒尾上丑之助*
遠山金四郎⇒尾上菊五郎
尾花屋小三郎後ニ羅漢小僧小吉⇒尾上菊之助*
八州廻り宮森源八⇒尾上左近*
生田角太夫⇒尾上松緑*
尾花屋番頭 清六⇒片岡亀蔵
座元河原崎権之助/須之崎の政五郎⇒河原崎権十郎
角太夫女房おもと⇒中村時蔵*
政五郎養女おわか⇒中村梅枝*
若太夫河原崎権三郎/八州廻り咲島千介⇒中村萬太郎*
遠山家用人河原崎権三郎/与力大里忠平⇒坂東亀蔵*
佐島天学/⇒坂東彦三郎*
遠山家家老簑浦甚兵衛⇒坂東楽善
        ほか
小川大晴**
寺嶋眞秀**
坂東亀三郎**
*は大詰めの河原崎座役者を兼務*又はそれのみの出演**










毎年、国立の正月公演は菊五郎劇団と決まっている。
いつもは見た目重視の派手な出し物が多いが、今年は初代国立の最後の正月公演なのに地味な世話物?

しかし正月らしい目配りが効いた芝居で大いに満足。

所謂遠山の金さんの話だが、裁きより人情噺に重点。

菊之助の長男、丑之助君を前回見たのは昨年10月だったが、今回は芝居も長く科白も多く、それを見事にこなしている。才能あるものが打ち込んでいるとこんなに早く成長するんだと、近年退化の一途を辿る身としては、驚くとともに反省頻り。
菊五郎も菊之助も同じ舞台に立って喜びこの上なしだろ。

遠山の金さんという人は、天保の改革で取り潰されそうになっている芝居三座を浅草猿若町への所替えで救ったそうで、謂わば歌舞伎の恩人でもある。
そこで今日の芝居では、一件落着後の終幕に主要な役者が、<歌舞伎役者>として登場し、桜尽くしの中、総出で踊って華やかに幕を閉じた。

ここで、本編には登場しなかった、
小川大晴(ひろはる=中村梅枝の長男 7歳)
寺嶋眞秀(まほろ=寺島しのぶの長男 10歳)
坂東亀三郎(かめさぶろう=坂東彦三郎の長男 9歳)が
尾上丑之助(うしのすけ=菊之助の長男 9歳)と共に揃いの衣装で登場した。まあ、可愛らしいこと。
揃って、セリフを先走ったので舞台上も客席も大笑い。
めでたし。

♪2023-004/♪国立劇場-01

2022年10月11日火曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 通し狂言「義経千本桜」【Bプロ】三段目

2022-10-11 @国立劇場大劇場


竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言  義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
 国立劇場美術係=美術

三段目
下市村椎の木の場
下市村竹藪小金吾討死の場
下市村釣瓶鮓屋(すし屋)の場


いがみの権太⇒菊之助
主馬小金吾武里⇒萬太郎
猪熊大之進⇒菊市郎
若葉の内侍⇒吉太朗
庄屋作兵衛⇒宇十郎
権太女房小せん⇒吉弥
鮓屋弥左衛門⇒権十郎
弥助実ハ三位中将維盛⇒梅枝
弥左衛門娘お里⇒米吉
弥左衛門女房おくら⇒橘太郎
梶原平三景時⇒又五郎 ほか


「義経千本桜」はそもそも義経は小さな脇役に過ぎないし、三段目に至っては義経のヨノの字も出ない。
ここでの主人公はちょいワルの”いがみの権太”という遊び人だ。

全体は所謂時代物だと思うが、この段だけは世話物風味で完全に浮いている。

が、多分一番面白い。

勿論、権太を演ずるのは菊之助。

一幕物として上演されることが多いのは「鮓屋(すし屋・鮨屋とも)」の場。

今回は”通し”と銘打っているので、前段も上演されたが、「椎の木の場」や「小金吾討死の場」は初めて観た。これが置かれることで「すし屋の場」が立体的になる。

物語は、相も変わらず、首実験や忠義の妻子犠牲だが、ドラマの布石が心憎い。
店先にたくさん並んだすし桶に、
権太は掠め取った金を隠す。
彼を勘当している父は小金吾の首を隠す。

その取り違え?がドラマを急転直下の感動に盛り上げる。

尤も、半世紀もすれば、このような時代錯誤の美意識は世間の批判に屈して観られなくなるかも(オペラも同様)。

菊之助は美形すぎてワルは似合わないように思うが、最近では髪結新三も良かったし、案外コワイ役も面白いかも。

♪2022-148/♪国立劇場-10

2022年7月8日金曜日

7月歌舞伎鑑賞教室(第102回 歌舞伎鑑賞教室)

2022-07-08 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた

河竹黙阿弥=作
新歌舞伎十八番の内
『紅葉狩』(もみじがり)
常磐津連中/竹本連中/長唄連中
国立劇場美術係=美術

●「解説 歌舞伎のみかた」
 解説 中村萬太郎/尾上緑

●『紅葉狩』
余吾将軍平維茂⇒尾上松緑
更科姫実ハ戸隠山の鬼女⇒中村梅枝
侍女野菊⇒中村玉太郎
従者左源太⇒尾上左近
従者右源太⇒坂東亀蔵/中村萬太郎
山神⇒中村萬太郎/坂東亀蔵
局田毎⇒市川高麗蔵
        ほか


今日は社会人の為の鑑賞教室で19時の開演。昼間の高校生相手の鑑賞教室に付き物のピチピチギャルなどは全然いない。寧ろ和服のお姐さんが多かった。

2階最前列に好みの席が取れなかったので、珍しく1階席のそれも花道のすぐ右側に座った。ミーハーのおばちゃんたちの大好きな席だ。手を伸ばせば、役者に触れそう。
尤も、結果的には(本来なら一番高価な席だけど)前の席に戸隠の鬼みたいにデカいのが鎮座ましまして視界すこぶる悪い。やはり歌舞伎は2階最前列がいい。

社会人の為、という触れ込みだし、開演時刻が遅いという事もあってか、ほぼ満席状態だった。

「紅葉狩」は亜流も含めると3回目なのだけど、恥ずかしながら、全く何にも記憶にございません…でした。

簡単な歌舞伎解説があって、愈々開演すると舞台は見事な紅葉の満開だ。これほど派手な舞台は珍しい。
そして普通は御簾の中で演奏する竹本(義太夫節)などの音曲が表舞台にズラリと並んだ。常磐津連中、竹本連中、長唄連中と賑やかなこと(三方掛合というらしい。)。

ということは、芝居の方も舞踊主体だ。

しかし、終盤は、梅枝扮するの更科姫が誠に恐ろしい面構えの戸隠山の鬼女に変化し、松緑の平維茂と激しく切り結ぶという見どころもあり、勝負が付かないまま双方睨み合って見得を切って終わる。

いつもお姫様の梅枝の不気味な隈取りをした鬼の姿と舞台ではまず聞けない本来の男の地声が怖かったな。

♪2022-099/♪国立劇場-06

2022年3月18日金曜日

令和4年3月歌舞伎公演『近江源氏先陣館-盛綱陣屋-』

2022-03-18 @国立劇場大劇場



佐々木盛綱⇒       尾上菊之助
高綱妻篝火⇒       中村梅枝
信楽太郎⇒         中村萬太郎
伊吹藤太⇒         中村種之助
盛綱妻早瀬⇒       中村莟玉
高綱一子小四郎⇒   尾上丑之助
盛綱一子小三郎⇒   小川大晴
古郡新左衛門⇒     嵐橘三郎
盛綱母微妙⇒       上村吉弥
北條時政⇒         片岡亀蔵
和田兵衛秀盛⇒     中村又五郎
                           ほか

入門 “盛綱陣屋”(もりつなじんや)をたのしむ

近松半二=作
近江源氏先陣館  一幕
-盛綱陣屋-
 国立劇場美術係=美術
        

「熊谷陣屋」は歌舞伎・文楽で何度も観たが、「盛綱陣屋」は初めて…と思っていたが、19年の暮れに松本白鸚の盛綱で観てたよ。ホンにこの頃の記憶力低下は自分でもゾッとするよ。

両者の話に共通点は多い。
偽頸実験。
うまく騙した後の一波乱。
何より極端なくらいの忠孝。

物語としては「熊谷」の方が上等な気がするが、「盛綱」も面白かった。と言うか、今回はちびっ子2人にやられた!

主人公盛綱の長男役を小川大晴(ひろはる=梅枝の長男)が。
盛綱の弟である高綱の長男役を丑之助(菊之助の長男)が演ずる。

この絵本の桃太郎のような2人が非常に可愛らしいので、登場しただけで癒される。

が、やがて悲劇に見舞われる丑之助の健気さに胸を掻きむしられ迂闊にも落涙!

このところ、国立の3月は「菊之助劇団」で定着しそうだが、ところどころに、昨秋亡くなった吉右衛門を思い起こさせる雰囲気があった。

美形中の美形、莟玉の顔がえらく丸々としていた。まあ、いつまでも美少年ではいられないし、顔つきも変わってゆくのだろうか。あまり太らないのがよろしい…けど。

ところで、コロナも下火になりつつあるが、舞台と客席が双方向的に交流する歌舞伎では「大向こう(掛け声)」が復活しないと、本当の「歌舞伎」にならない。
拍手ではもどかしい。手練れの間合いの良い掛け声を聞いて役者も気持ちを乗せられるだろうし、声を掛けないお客もこの雰囲気を楽しめるのだが。

♪2022-038/♪国立劇場-02

2021年10月21日木曜日

10月歌舞伎公演「通し狂言 伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」

2021-10-21 @国立劇場


近松徳三=作
通し狂言「伊勢音頭恋寝刃」(いせおんどこいのねたば)
 三幕七場
 国立劇場美術係=美術       

序幕
 第一場 伊勢街道相の山の場
 第二場 妙見町宿場の場
 第三場 野道追駆けの場
 第四場 野原地蔵前の場
 第五場 二見ヶ浦の場

二幕目 
 第一場 古市油屋店先の場
 第二場 同 奥庭の場

福岡貢          中村梅玉
藤浪左膳/料理人喜助    中村又五郎
油屋お紺         中村梅枝
油屋お鹿         中村歌昇
奴林平          中村萬太郎
油屋お岸         中村莟玉
徳島岩次実ハ藍玉屋北六   片岡市蔵
藍玉屋北六実ハ徳島岩次   坂東秀調
今田万次郎        中村扇雀
仲居万野         中村時蔵
              ほか



2015年に梅玉の主演で国立劇場では初めて通し狂言としてかけられたのを観た。


今回は、同じく「通し」といっても初演時に比べて一幕少ない。

コロナ以降の芝居は、概ね短縮形になっている。


役者も梅玉の他は莟玉(当時は梅丸)が同じ役で出ている他は多分全員変わっている。


歌舞伎としては色々見処(二見ヶ浦の場、油屋奥庭など)があるが、主人公が妖刀のせいにして殺される程の罪もない者8人ばかりに斬りつけ、その部下が「切れ味お見事!」と持ち上げて幕という構成や演出にちょいと疑問あり。

返り血を浴びた梅玉の見得などは残酷美でもあるが陰惨な印象が残った。


中村莟玉が同じ役で出ている(前回は10代だった!)が、6年経って女の色っぽさが益々磨かれたようで同慶の至り。

梅枝もいい女方だし、いずれは父時蔵が演じた大きな役の仲居万野を演るようになるのだろう。


今回は歌昇が生涯初めての女方だそうだが、滑稽な味も出して初めてとは思えない良い出来だった。


♪2021-113/♪国立劇場-08

2021年3月9日火曜日

3月国立劇場 歌舞伎公演

2021-03-09 @国立劇場


令和3年3月歌舞伎公演『時今也桔梗旗揚』
《歌舞伎名作入門》

●入門 歌舞伎の“明智光秀”

●四世鶴屋南北=作
中村吉右衛門=監修
時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)三幕

序 幕 饗応の場
二幕目 本能寺馬盥の場
大 詰 愛宕山連歌の場


----------------
●「入門 歌舞伎の“明智光秀”」
ご案内                片岡亀蔵

●『時今也桔梗旗揚』
武智光秀              尾上菊之助
小田春永              坂東彦三郎
光秀妻皐月          中村梅枝
森蘭丸                  中村萬太郎
光秀妹桔梗          坂東新悟
森力丸                  中村鷹之資
山口玄蕃              中村吉之丞
住職日和上人        片岡亀蔵
連歌師宇野丈巴    河原崎権十郎
安田作兵衛            中村又五郎
                                          ほか


「時今也桔梗旗揚」(ときはいまききょうのはたあげ)

光秀が信長のパワハラに我慢ならぬと謀反を起こす物語。

初見だったが楽しめた。


主人公光秀役の菊之助(初役)のほかに信長役の彦三郎、片岡亀蔵、又五郎、梅枝、新吾などいずれも口跡の良いシャキシャキした中堅と若手が清新に舞台を引き締めた。


重鎮は一人も配役されていなかったが、役者の気合十分で、緩むところがなかった。


菊之助は白塗りがよく似合う。

彦三郎はホンに憎らしや!


この作品、本篇中に義太夫が全然使われていない。

鶴屋南北の作品には珍しくないみたいだが、寂しくもあり、一方で科白劇として分かり易かったのかもしれない。


本編に先立って、解説を片岡亀蔵が面白おかしく勤めたが、これもなかなかの見もの・聴きもので、夏の鑑賞教室のような構成だ。


それにしても、平日昼間なので、もとより観客層は限られるが、空席が目立った。こんな面白い芝居をもったいないことだ。


♪2021-022/♪国立劇場-03

2019年3月19日火曜日

三月歌舞伎公演(小劇場)元禄忠臣蔵/積恋雪関扉

2019-03-19 @国立劇場


(主な配役)
『元禄忠臣蔵』
徳川綱豊卿⇒中村扇雀
富森助右衛門⇒中村歌昇
中臈お喜世⇒中村虎之介
新井勘解由⇒中村又五郎
                     ほか
『積恋雪関扉』
関守関兵衛実ハ大伴黒主⇒尾上菊之助
良峯少将宗貞⇒中村萬太郎
小野小町姫/傾城墨染実ハ小町桜の精⇒中村梅枝

真山青果=作
真山美保=演出
●元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)二幕五場
 御浜御殿綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう)
      伊藤熹朔=美術
      中嶋八郎=美術
第一幕 御浜御殿松の茶屋
第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間
        同      入側お廊下
        同      元の御座の間        
        同      御能舞台の背面

宝田寿来=作
●積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと) 
 常磐津連中
 国立劇場美術係=美術

小劇場での公演は12年ぶりだそうな。僕は初めての経験だ。小劇場だから2階はない。故に、第劇場公演ならいつも決まって席を取るお気に入りの2階最前列花道寄り通路側で観ることもできない。で、どうせ1階で観るなら前方花道寄りがよかろうとその辺をとったが、これが大正解だった。

個々の役者の熱心なファンという訳ではないので、役者がよく見えるより、舞台全体を俯瞰したいというのが2階最前列の意図なのだけど、今回は、役者の近くに座ってみ、なるほどこういう楽しみ方もあるかと納得した。

やはり迫力がある。セリフが聞き取りやすい。

さて、小劇場での公演は、国立劇場の説明によると、「上演が途絶えていた名作の復活や、次代を担う俳優が初めて大役を勤める舞台など“挑戦する小劇場歌舞伎”として上演を重ねてきました。」そうだ。

なるほど、それで、大看板は出ていないが、ベテランに中堅を配し、かなり意欲的な布陣とみた。

「元禄忠臣蔵」では扇雀、又五郎というベテランに対し、歌昇と虎之介が担ったのは彼らがこれまで演じていた役より少し大きめの役であったように思う。そこでの彼らの熱演は、これまでの2人の印象をガラッと変えてしまった。
歌昇も虎之助も実にうまい。なるほど与えられたら大きな役もできる力を持っているのだ、と大いに感心した。

常磐津の大曲『積恋雪関扉』での菊之助と梅枝も同様で、菊之助の場合は既に中看板くらいの存在になっていると思うが、それでも大伴黒主は初役だそうだ。因みに、今回の歌昇、虎之介、梅枝が演じた役もすべて初役。)。

これまでにも大ベテランで観たことがある演目であるが、その面白さは分からないでいたが、この2人も実に熱の入った演技で目が覚めるように話がよく分かって踊りも楽しむことができた。

国立劇場ならではの企画だが、見事に成功したと思う。何年かに一度はこういう機会を若手に与えることは大切なことだと、観客にも納得させる内容だった。

♪2019-034/♪国立劇場-05

2018年3月3日土曜日

三月歌舞伎公演「増補忠臣蔵」/「梅雨小袖昔八丈」

2018-03-03 @国立劇場

●『増補忠臣蔵』


桃井若狭之助⇒中村鴈治郎
三千歳姫⇒中村梅枝
井浪伴左衛門⇒市村橘太郎
加古川本蔵⇒片岡亀蔵
        ほか

●『梅雨小袖昔八丈』


髪結新三⇒尾上菊之助
下剃勝奴⇒中村萬太郎
白子屋手代忠七⇒中村梅枝
白子屋娘お熊⇒中村梅丸
白子屋後家お常⇒市村萬次郎
紙屋丁稚長松⇒寺嶋和史
家主女房お角⇒市村橘太郎
家主長兵衛⇒片岡亀蔵
加賀屋藤兵衛⇒河原崎権十郎
弥太五郎源七⇒市川團蔵
         ほか

明治150年記念

一、増補忠臣蔵(ぞうほちゅうしんぐら)一幕二場
 ―本蔵下屋敷―(ほんぞうしもやしき)
     国立劇場美術係=美術
  
  第一場 加古川家下屋敷茶の間の場
  第二場 同        奥書院の場

河竹黙阿弥=作
尾上菊五郎=監修
二、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)三幕六場
 ―髪結新三―(かみゆいしんざ)
     国立劇場美術係=美術
  
  序幕  白子屋見世先の場
      永代橋川端の場
  二幕目 富吉町新三内の場
          家主長兵衛内の場
        元の新三内の場
  大詰    深川閻魔堂橋の場

国立の歌舞伎は通し狂言が多いが、昨年の秋に続いて今回は2本立てだった。
最初の「増補忠臣蔵」は僕には初モノだが、「仮名手本忠臣蔵」
の九段目(山科閑居)の前日譚だとは承知していたので楽しみだった。ここで主人公は加古川本蔵が仕える桃井若狭之助であるが、筋立てからは本蔵の方が重い役にも思える。「仮名手本〜」全体を通じても重要なキーパーソンであり、なかなか魅力的な人物だ。

「増補」と付いているのは、「仮名手本〜」の話の一部を膨らませたという意味だが、出来たのが明治の始め頃らしい。最初は人形浄瑠璃で、明治30年が歌舞伎版の初演。初代鴈治郎が桃井若狭之助を演じ、二代目も三代目(現・藤十郎)も得意とし、歴代鴈治郎が演じてきたが、当代の鴈治郎としては今回初役であり、先代までは東京では演じてこなかったので、東京での公演は65年ぶりなのだそうだ。

1幕2場で公演時間もちょうど1時間というこじんまりした作品だ。登場人物も少なく筋も簡単で分かりやすい。

ほとんど、若狭之助(鴈治郎)と本蔵(片岡亀蔵)の主従のやりとりで、若狭之助に見送られて虚無僧姿で出立するところでこの芝居は終わるが、忠臣蔵の物語としてはこの後に九段目が続くと思うと、なかなかその別れも味わい深いものがある。

今日は初日だったせいか、竹本と2人のセリフに少しズレというほどでもないけどぴったり感のない箇所があったような気がした。

また、これは本質的なことだけど、鴈治郎の芝居と亀蔵の芝居がそもそもタイプが違うというか、木に竹継いだようで、うまく噛み合っていなかったように思う。

2本めがいわゆる「髪結新三」だ。菊之助初役。
この人は美形過ぎてヤクザな新三には不似合いだと思っていたが、なかなかどうして、ほとんど違和感がなかった。
ただ、最初の方で忠七(梅枝)の髪を整えるところの仕草はちっとも髪結いには見えなかったな。誰だったか、現・芝翫だったか、松緑だったか思い出せないが、多分ふたりとも今日の菊之助より髪結いらしかったな。

まあ、こちらの腕も徐々に上がるだろう。
家主長兵衛とのやり取りなど、とてもおかしい。初役はひとまずは成功だと思う。

この長兵衛を片岡亀蔵が演じていて、ここではまことに嵌り役だ。この人は軽めの(こってりしない)芝居が合っているのではないか。

梅丸は既に何度か観て娘役として実にかわいらしいのでとても男が演じているとは思えない。

♪2018-026/♪国立劇場-005