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2025年4月27日日曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 広上淳一&日本フィル オペラの旅Vol.1 「仮面舞踏会」

2025-04-54 @サントリーホール



指揮:広上淳一
演出:高島勲
振付:広崎うらん
衣裳:桜井久美(アトリエヒノデ)
照明:岩品武顕
舞台監督:幸泉浩司

日本フィルハーモニー交響楽団
合唱:東京音楽大学

アメーリア⇒中村恵理
リッカルド⇒宮里直樹
レナート⇒池内響
ウルリカ⇒福原寿美枝
オスカル⇒盛田麻央
シルヴァーノ⇒高橋宏典
サムエル⇒田中大揮
トム⇒杉尾真吾

ヴェルディ:オペラ《仮面舞踏会》
(セミ・ステージ形式/全3幕/字幕つき)
<台本>アントーニオ・ソンマ
<作曲>ジュゼッペ・ヴェルディ





今年は東フィルのチョンさんのオペラがなくなったこともあり、東フィル定期は止めにしたが、代わりに日フィルが広上センセと組んでセミ・ステージでオペラを演るとは嬉しい。

実に面白かった。
いやはや不思議なことに、サントリーの響については文句ばかり言っているが、オペラとなると全く問題がなく良く鳴るのは今日だけではない。どういうことなんだろう?

とにかく、日フィルは聴かせてくれたし、歌手陣も素晴らしい。今をときめく最高のキャスト!とは言えないまでも、人気者を集めてよく通る・響くこと。特に僕は7列目という、オペラ聴くなら理想的?な席だったので、迫力のあること。

セミ・ステージだから演出が良かった、というほどに演出の出番はないのだけど、物語を分かり易く伝えるという意味では成功していたと思う。


アメーリアの恋の動機は不明なのだけど、彼女に加えてリッカルドとレナートの3角関係の厳しさはひしひしと伝わって、普段なら覚めて眺めることが多い、この種の確執劇に我ながら驚くほど感情移入していて、おかしい。

欲を言えば、サントリーのホールオペラ®️のように、もう少し踏み込んだ舞台作りができなかったか。
同じくピットのないミューザや芸術劇場で公演したミッキー最後の「ラ・ボエーム」のような舞台作りができなかったのかなと思うが、これも作品次第で、そこまで手間をかけても成功するとは限らないし、まあ、正装で譜面台の前で立って歌う演奏会形式に比べれば、ずっとドラマティックで良かった。いや、大成功だろうな。大満足したよ。


♪2025-054/♪サントリーホール-04

2024年12月25日水曜日

東京都交響楽団 都響スペシャル「第九」/「第九」⑩

2024-12-25 @東京文化会館



小泉和裕:指揮
東京都交響楽団
新国立劇場合唱団

ソプラノ:迫田美帆
メゾソプラノ:山下裕賀
テノール:工藤和真
バリトン:池内響

ベートーベン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125





小泉師の「第九」は少なくとも3回目。それに師のドイツもの、特にベートーベンは頻繁に聴いているので、なんとなくしっくりくる。
一昨日の大植劇場の超「第九」の後だから余計に「正統」さが際立つ。ケレンはないし遊びなんてとんでもない。求道者のような「第九」が喉越し良く、何の引っかかりもなく腹に収まった。こういう「第九」も素晴らしい。

2-3楽章の間に独唱者が入った。そこで客席から躊躇いがちな拍手が起こった。師はやや振り返ってそれを制したが、すぐには収まらなかった。
小泉師の時には余計なことして彼の神聖な時空を歪めちゃいけないんだよ。

♪2024-183/♪東京文化会館-09

2024年11月2日土曜日

全国共同制作オペラ プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」

2024-11-02 @ミューザ川崎シンフォニーホール




井上道義:指揮
森山開次:演出/振付/美術/衣裳

管弦楽:東京交響楽団
合唱:ザ・オペラ・クワイア
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団
バンダ・ペル・ラ・ボエーム

ミミ:中川郁文
ロドルフォ:工藤和真
ムゼッタ:イローナ・レヴォルスカヤ
マルチェッロ:池内響
コッリーネ:松中哲平
ショナール:ヴィタリ・ユシュマノフ
ベノア:晴雅彦
アルチンドロ:仲田尋一
パルピニョール:谷口耕平
ダンサー:梶田留以、水島晃太郎、南帆乃佳、小川莉伯

プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」
全4幕/イタリア語上演/日本語・英語字幕付き/新制作

予定上演時間:約2時間40分
第1/2幕  70分
---休憩    25分
第3幕     30分
----休憩  20分
第4幕     30分



ミューザでの上演は、演奏会形式を超えたかなり本格的な舞台だった。コンサートホールでもこのような形でオペラが上演可能であることは、県民ホールや文化会館が休館中でも、演目の制限はあるにせよ上質の舞台を提供できることを示しており、大いに評価できる。特に2幕では、多くのキャストが舞台に
登場し、賑やかな演出は新国や日生も顔負けだ。

しかし、一部の観客にとっては鑑賞環境が問題となった。僕は1階前方列の中央席を購入したが、客席の最前列から4列がオケ・ピットとして使われ、加えて前2列の中央席が非売席だったので、実質最前列状態。
その結果、ミッキーの背中は我慢できるとしても、楽譜照明がまぶしく、特に指揮台の光が強力で鑑賞に集中できなかった。
1階席だけでなく2階以上でも指揮台の照明は邪魔になったのではないか?

このような問題は事前に確認すれば解決できたはずであり、スタッフは準備不足だ。また、チケット販売時に非売席売却済みを明示する配慮も欠けていた。

ダンスの挿入も大いに疑問。
劇の流れを妨げ、集中を削ぐ一因となった。

歌唱は、池内マルチェッロのよく通る声が素晴らしい。工藤のロドルフォは3回目で安心感。中川ミミは初聴き、まずまず。ムゼッタ、いまいち。

♪2024-147/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-12

2023年12月28日木曜日

「第九」2023-❿ 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団「第九」特別演奏会2023

2023-12-28 @東京文化会館



高関健:指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
東京シティ・フィル・コーア

ソプラノ:中江早希
メゾ・ソプラノ:相田麻純
テノール:宮里直樹
バリトン:池内響

ベートーベン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125


高関氏は、指揮台に乗ってからオケと合唱団に客席へのあいさつの為に立つように促した。オケは立ったが、合唱団が立たない。振り向いて大きなジェスチャーで立ってくださいよ!と何度か促したが合唱は立つそぶりがない。そりゃそうだ。初めから立っているのだもの。舞台後方の雛壇が低いので立っているふうには見えなかったのだ。ようやく気がついてニヤリ頭を掻いて客席に向き直った。このコントで客席と舞台の笑いをとってから「第九」が厳かに始まった(このコントは終演後のCCでも再演された!)。

この「第九」が僕にとって、今年、10回目の「第九」であり、今年の鑑賞生活の掉尾を飾る演奏会だった。

昨年も「第九」はプロオケで10回聴いて、シティ・フィルは読響と並んでベストの出来だった。それだけに期待をしていた高関「第九」。
しかし、昨年の飯守泰次郎御大の人生最後の「第九」には何かが乗り移っていたのだろうか。あの見事さに比べるとやや力が出きっていない印象を受けた。スコア研究に余念のない先生、ギリギリまで迷っていたやに聞くが迷いは吹っ切れたのだろうか。

2楽章までは聴き慣れた音楽だったが、3楽章にかつて聴いたことのない表現があり、4楽章のレシタも爆速で、ここいらが新研究の成果なのか。変わってはいたけど、これはこれで良かった。とにかく、あまり重苦しいのは好きじゃない。

全体にビブラートを抑え、音をあまり伸ばさない奏法で、ホールのせいもあるが、響きは硬めだった。武満MEMで聴くのとはだいぶ異なる。しかし、これもまた一つの味わいで、シャキシャキとしたまとまりの良さを感じさせた。

独唱陣は、やはり、少し遠かった。昨年は舞台前で歌ったが、今年は、他のオケでも(5月のインキネン以外)舞台前で歌う「第九」は一つもなかった。
独唱は、前に出てきて歌うべきだよ。
「第九」の独唱は合唱の一部だ、という説もあるようだが、どうであれ、独唱が合唱やオケに埋もれたんでは話にならない。

♪2022-228/♪東京文化会館-14

2023年7月8日土曜日

日フィル第752回東京定期演奏会 〜歌劇《道化師》演奏会形式〜

2023-07-08 @サントリーホール



広上淳一:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
合唱:東京音楽大学
児童合唱:杉並児童合唱団

カニオ(座頭/道化師役
 ⇒笛田博昭
ネッダ(女優・カニオの妻/コロンビーナ役
 ⇒竹多倫子
トニオ(のろま役の喜劇役者/タデオ役
 ⇒上江隼人
ベッペ(喜劇役者/アルレッキーノ役
 ⇒小堀勇介
シルヴィオ(村の若者
 ⇒池内響
農民:岸野裕貴、草刈伸明
A/B )はAが劇中の役Bが劇中劇の役


レオンカヴァッロ:歌劇《道化師》
(演奏会形式オペラ)



「道化師」は、深く考えなければ単純な物語だけど、台本の欠陥か、作者の知恵が深すぎるのか、よく分からないところがある。この点については後記することにしよう。長くなりそうだから。

最近、どのホールも響が良い。エアコンがんがん入れているからか、お客が軽装になったからか分からないけど、サントリーでさえ全く不満はなかった。

横浜定期を振り替えてもらったので、好みの席ではなかったけど、まあ、許容範囲で、オペラ向きに舞台からも近くて良かった。

演奏会形式だ。それも全員正装で譜面台の後ろに立つ。もちろん多少の身振り手振りはあるけど、簡易な舞台装置もなく、小道具もなし。照明も通常のコンサートと同じ。

東フィルや神奈川フィルのオペラの場合、演奏会形式といっても、スカーフを纏うとか、小道具を手にするとかそれなりの役作りがあり、照明も工夫されているが、こんなにすっからかんに割り切ったのは初めてだ。
しかし、これはお客の方も割り切れば良いので、ひたすら、歌唱を、音楽を味わうにはこれもありだろう。


歌手陣の中では、やはり主役の笛田博昭が声量も豊かだし、歌いながらの演技という面でも一番良かった。彼は藤原歌劇団でこの役を演じているから、自家薬籠中のものとしているのだろう。

今日は、大勢の合唱団もP席を使わず舞台最後列に並んだので、跳び箱二段重ねのような高い指揮台に立った広上センセが、踊って落ちやしないかと心配だったが、いつもながら小さな身体を目一杯大きく使ってエネルギッシュに指揮をしているのはなかなか形が美しいなと感心をした。

休憩なし70分が予定されていたが、実際は幕まで80分くらいだった。


最後のセリフ「喜劇は終わった」を、今日はカニオが言った。トニオが言う演出もあり、先日家で観た藤原歌劇団のビデオではトニオだった。念の為、我がコレクション計4枚を終幕のところだけ再生したら、2対2だった。

僕が演出家なら、当然、トニオのセリフにするけどな。
なぜなら、オペラの冒頭、幕の前で(今日は幕がなかったが)トニオが前口上を述べる。これがこれから始まるオペラへの口上なのか、オペラの中で演じられる劇中劇に対する口上なのかはっきりしない。いや、はっきりしていて、前者が正解だと思うが、演出によっては、劇中劇でトニオが演ずるタデオ役の衣装を身につけて口上を言うものもあるからだ。しかし、そのように解してはオペラ全体の時制が混乱してしまう。

だから、冒頭のトニオの口上は、トニオではなく、もちろんタデオでもない、レオンカヴァッロ本人の口上だと考えるべきだ。そしてこの時制はいわば時を超越した《超越》時制だ。

幕が開くと、オペラ《劇》の始まりだ。カニオと妻ネッダは険悪になるがカニオは怒りを抑え、間も無く始まる芝居の準備をする。以上が《劇》第1幕。
第2幕が始まると今度は《劇中劇》の世界だ。偶然にも《劇》第1幕と同じドラマが展開され、カニオは劇中であることを忘れ妻とその恋人を殺めてしまう。
とんでもないことをしてしまった、と我に帰ったのが《劇》の世界。その混乱をおさめるセリフが「喜劇は終わった」だ。そのセリフはどの時制から発せられるのか?
「喜劇」が《劇中劇》を指しているなら、《劇》の時制から。
「喜劇」が《劇》を指しているなら、《超越》時制からと言うことになる。
しかし、《劇中劇》は我に帰った時点で《劇》になるのだから、「喜劇」とは《劇》そのものであり、それを「終わった」と宣告できるのは、オペラの冒頭「時」を超越して前口上を述べた時制と同じでなければならないはず。つまり、「喜劇は終わった」は、《劇中劇》ではタデオを演じ、《劇》中ではトニオを演じていた、その実正体はレオンカヴァッロ自身ではないか、と思うのである。

…と仮説を立てて、次回観るときの観察視点としよう。


♪2023-120/♪サントリーホール-15

2022年12月18日日曜日

「第九」2022-❹ 横浜交響楽団 第720回定期演奏会 ”横響・第九演奏会”

2022-12-18 @県民ホール



指揮:鈴木衛
合唱指揮:泉翔士

横浜交響楽団
横響と第九を歌う会合唱団/横響合唱団

鳥海仁子:ソプラノ
高橋ちはる:アルト
土崎譲:テノール
池内響:バリトン

ベートーべン:序曲「レオノーレ」第3番
ベートーべン:交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱つき」


2019年まで横響の「第九」といえば、16型オケに合唱団が600人と、まるで「千人の交響曲」並みの規模で、2,500席の県民ホールを満席にできる数少ないコンサートだった。
コロナに倒れ雌伏2年。ようやく大規模な「合唱付き」が復活…とまではいかん。いまだ道険し。

それでも、約200名の合唱団が、舞台に並ぶ…かと思ばこれが変則で、これまで見たことも聴いたこともない合唱2分割。
卵サンドならぬオケサンドイッチだ。

舞台に並びきれなかった合唱70弱を客席前方に降ろした。
それで客席側合唱には別に指揮者が付いた。

1階客席は27列?より後ろしか客席に使えなかったので、1階の真ん中の真ん中で聴きたい!と駄々をこねることもできず、僕は2階中央に座らざるを得なかった。まあ、そこでも格別悪い席じゃないんだけど。

それにしても、眼下に合唱別動隊。
合唱本体と独唱は遥か舞台後方に。

こんな形になったのは、舞台上の合唱人数がホール側から制約を受けたからだろう。音楽堂は40名までという話も聞いた。県民ホールはせいぜい120名といった辺りで決着がついたか(ミューザは230人も並んだのに!)。

3年ぶりなので何としてもう歌いたい!という合唱人の為に苦肉の策が捻出されたのだろう。

でも、そこまでして合唱を増やす必要があったのか?
舞台だけでも120人以上居たのだから。
神奈川フィルの「第九」の合唱はプロだが39名で格別不満もなかった。日フィルはアマ合唱で80人強。それを思えば120名も居たら十分だったが、この日の第九はオケの為でもお客の為でもない。合唱団の為なんだものな。

独唱は鳥海仁子Sp/高橋ちはるAlt/土崎譲Tn/池内響Br。

演奏の出来は、残念なところがポツポツ。特に一番おいしい終楽章低弦のレシタでは2-3名ツボを外している人あり。

終演後は、蛍の光の合唱でお客を送り出してくれるのが恒例だ。
ともあれ、ここまで辿り着くには大変な苦労があったのだろう。蛍の光を背中で聞いて、少しうるっとしながら、帰途に着いた。


演奏好感度★60点

♪2022-196/♪県民ホール-18

2022年11月6日日曜日

藤沢市民オペラ:プッチーニ「ラ・ボエーム」

2022-11-06 @藤沢市民会館



園田隆一郎:指揮
伊香修吾:演出

テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
合唱⇒C.ヴィレッジシンガーズ
児童合唱⇒藤沢市合唱連盟、藤沢ジュニア・コーラス、鵠沼ジュニア・コール

ミミ⇒中村恵理
ロドルフォ⇒樋口達哉
ムゼッタ⇒横前奈緒
マルチェッロ⇒大西宇宙
ショナール⇒池内響
コッリーネ⇒デニス・ビシュニャ
ベノア⇒奥秋大樹
アルチンドロ⇒小林由樹

作曲:ジャコモ・プッチーニ
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
原作:アンリ・ミュルジェール

「ラ・ボエーム」全4幕
(イタリア語上演日本語字幕付)

第1-2幕   60分
   休憩   30分
第3-4幕   60分


体調が頗る悪かった。
席も遠かった(藤沢市民オペラなんて普段チェックしていないので気づいた時は1階中央が無かった。)。
演出にもひとこと言いたい。

にもかかわらず、これまで観たボエーム中、07年藤原歌劇団と並んで、強く気持ちを揺り動かされた。

また、中村恵理はこれまでいろんな演目を聴いてきたが、今日のミミが最高の歌唱ではないか!大いに見直し、聴き直しをした。蝶々夫人より椿姫よりずっといい。

ルドルフォの樋口達哉も朗々と声が伸びて07年版の時よりずっと良かったと思う。

こんなこんな熱演を藤沢市民オペラで聴けるとは!

指揮は園田ちゃん。彼の指揮によるボエムは何度か聴いたな。特に今回演出の伊香修吾と組んだボエムはもう3回目か。手慣れたもので、安心して音楽に身を任せられる。

が、演出は若干問題。1〜4幕通してほとんど場面が変わらないのだから初めての人には混乱させた思う。ミミも冒頭から、男達の部屋にいるのも飲み込み難し。もっと普通にできなかったか?

♪2022-167/♪藤沢市民会館-1

2021年6月13日日曜日

NISSAY OPERA 2021「ラ・ボエーム」

2021-06-13 @日生劇場


指揮:園田隆一郎
新日本フィルハーモニー交響楽団
演出:伊香修吾
日本語訳詞・字幕 : 宮本益光
美術 : 二村周作
照明 : 齋藤茂男
衣裳 : 十川ヒロコ

台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
歌劇「ラ・ボエーム」全4幕(日本語上演・日本語字幕付)

ミミ:迫田美帆
ロドルフォ:岸浪愛学
ムゼッタ:冨平安希子
マルチェッロ:池内響
ショナール:近藤圭
コッリーネ:山田大智
ベノア:清水良一


17年初演の日本語版の再演(大変化で再演とは言い難し)。

日本語オペラの是非は一先ず置くとしよう。

問題は演出だ。

1幕や4幕にそこに居る筈のないミミが冒頭から存在しているのは、いくつもの舞台を観ている者には、これが回想なり幻想の演出だろうと気付くだろうが、初めての人は同一幕で現実に重なってゆくので話に混乱したのではないか。


初演と同じ演出家だが、初演は墓場で始まり墓場で終わる円環した洒落た演出だったが、今回は見慣れた始まりと終わり。これも悪くはない。

問題は2-3幕。特に2幕はコロナ対策の為か換骨奪胎だった。


本来は群衆シーンで、その中でミミとは対極の明るさをもつ健康的なムゼッタが華やかに盛り上げる場だが、群衆ゼロのまことに寂しい舞台となって、ムゼッタの華やぎも不発に終わった。昨年11月の「ルチア」も内容以上の惨劇になってしまったが、まことに演出家にとってコロナは悩ましい。


初演に比べた場合に、上述の問題はあったが、元々プッチーニの音楽が素晴らしく、歌手たち(池内響の巧さ再発見)、園田ちゃん、新日フィルいずれも健闘で、大いに楽しめた。ラストのミミ(迫田美帆)の臨終の場のロドルフォ(岸浪愛学)の叫びにも似たアリアには、また、やられてしまったよ😢。


♪2021-053/♪日生劇場-03

2019年12月22日日曜日

横響第699回定期演奏会 横響・第九演奏会<横響定期第九70回記念・横響と第九を歌う会50周年記念> <第九⑧>

2019-12-22 @県民ホール


飛永悠佑輝:指揮
横浜交響楽団
横響合唱団
横響と第九を歌う会合唱団

横山和美:Sp
松浦恵:Alt
工藤和真:Tn
池内響:Br

ワーグナー:楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125

「第九」はあと2回残っているが、今日のはそれらを聴かなくとも全10回中最大の「第九」であり、最高とも言えるかも。

横浜交響楽団の《第699回》定期演奏会であり、《第70回》目の「第九」だそうだ。
それほどの歴史を有するアマオケは他に存在しないだろう。毎年の最後の定期演奏会が「第九」だ。

横響の普段の定期は音楽堂だが、「第九」だけは県民ホールに舞台を移す。何しろ、合唱団が640人(今回)も並ぶのだから音楽堂では合唱だけでも入りきらない。
加えて横響の弦編成は16型。これが「最大」の所以也。

その数の迫力に圧倒されるので、他の団体の演奏では得られない不思議な陶酔感が生まれてくる。
これが「最高と言えるかも」の所以也。

実際、処々プロの演奏と聴き違えそうなフレーズにハッとした。全体としてとても良い出来栄えだった。

今日の舞台も当然拡張してあるが、昨日の神奈川フィルに比べ、オケは640人の合唱に押し出されるように、だいぶ舞台の前に位置した。この配置が響を良くしたと思う。

最後は、恒例の蛍の光を客席共々歌い、コーラスがハミングに変わるとお客はオケと合唱団の演奏を聴きながら席を立つ。
合唱団も数が多いので仲間の歌を聴きながら少しずつ袖に消えてゆく。

今年も元気で横響の「第九」を聴けて良かった…なんてお客さんの声も耳にしながらホクホク気分で帰路についた。


♪2019-215/♪県民ホール-07

2017年6月18日日曜日

NISSAY OPERA 2017『ラ・ボエーム』

2017-06-18 @日生劇場


園田隆一郎:指揮
伊香修吾:演出
新日本フィルハーモニー交響楽団

ミミ⇒砂川涼子
ロドルフォ⇒宮里直樹
マルチェッロ⇒大山大輔
ショナール⇒池内響
コッリーネ⇒ デニス・ビシュニャ
ムゼッタ⇒柴田紗貴子
パルピニョール⇒岸浪愛学
アルチンドロ⇒相沢創
ベノア⇒清水良一

作曲:ジャコモ・プッチーニ
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイジ・イッリカ
「ラ・ボエーム」全4幕


砂川涼子のことは1月の新国立のカルメンまで意識したことはなかったが、その時の彼女のミカエラにとても惹かれた。後日調べると既に藤原歌劇団のオペラで観ていたし、その「ラ・ボ」公演でまさにミミを演じたビデオも持っているのに最近気づいた。

ミミの娼婦性をどのように描くかは演出家の考え方だけど、砂川涼子のミミでは汚れなき薄幸美人と設定するしかないな。それはそれでいいし、初めてロドルフォの部屋に入った時わざと自分の部屋の鍵を落として誘惑するミミも悲しいさがとも解釈できる。

前回の日生オペラ「セビリアの理髪師」からちょうど1年ぶりだった。前回の舞台装置は簡素だったが、今回は本格的に作ってあってこれも見応え十分。また、見せる演出も心憎いものがあった。冒頭は墓石以外何もない暗い舞台に人物4人。背景は真っ白。

暗転して第1幕屋根裏部屋。最終幕も再び同じ屋根裏部屋。
ミミがついに息を引き取りロドルフォらがミミが横たわるベッドの回りで悲しみに沈む。オペラはここで幕切れだが、同時に舞台が暗転し部屋のセットは分割されて両袖に引き取られた。

舞台中央のベッドもミミを乗せたままセリの下に埋もれ代わりに墓石が現れ、背景が真っ白という冒頭と同じ情景が出現して、ドラマが見事に円環を閉じた。おお、味な演出だなあと感心したものである。

歌手たちも新日フィルも素晴らしい。

ところで、今回は日本語上演だったにもかかわらず、その言葉どおりの日本語字幕も付いた。これで良かった。もし、字幕がなければアリアでも半分以上、2重唱・3重唱ならほとんどすべての<日本語>を聴き取ることができなかったろう。

文字としての日本語は漢字という表意文字があるおかげで表現力に富むが、旋律に乗せた歌は表音文字でしかないので無駄に文字数を使ってしまい表現力が激減する。だから、最初から日本語で作曲された作品は別として、オペラは原語・日本語字幕に限る。

♪2017-105/♪日生劇場-01

2016年4月10日日曜日

小ホール・オペラシリーズ 気軽にオペレッタ「メリー・ウィドウ」(全3幕・日本語上演)

2016-04-10 @みなとみらいホール


田島亘祥:指揮
今井伸昭:演出・台本
朴令鈴:ピアノ
竹田容子:振付

ハンナ:菊地美奈S
ダニロ:池内響Br
ツェータ男爵:泉良平Br
ヴァランシエンヌ:髙橋維S
カミーユ:大川信之T
クロモウ:鶴川勝也Br
ニェーグシュ:志村文彦Bs
カスカーダ:新津耕平T
サンブリオッシュ:野村光洋Br
オルガ:堀万里絵Ms
ボグダノヴィッチ:畠山茂Bs
シルヴィアーヌ:二見麻衣子S
プラシコヴィア:福間章子Ms
プリチッチ:須山智文Br
ダンサー:宮沢磨由、宮本楓

レハール作曲オペレッタ「メリー・ウィドウ」(全3幕・日本語上演)


毎年春恒例の小ホールオペラ。
今年はオペレッタ「メリー・ウィドウ」だった。
「メリー・ウィドウ・ワルツ」がダントツに有名だけど、オペレッタ全体は初見だなあ、と思って観ていたが、音楽だけではなく物語自体に既視感があったので帰宅後手持ちビデオを調べたらウィーン・フォルクスオパーの公演録画を持っていたよ。
こんなことなら、ビデオを観て予習しておけば良かった。

日本語公演だし、オペラッタなのでアリアのつなぎはリアルなセリフだし、初見でも十分だと思っていたのでビデオの有無を調べようともしなかったな。

ところが、折角の日本語上演も残響のせいもあってやや聴き取りにくかった。
歌手たちの声量の豊かさには驚いたが、この小ホールは弦楽などの室内楽にはとても良い響きを提供するけど、声楽には残響が強すぎる(言葉が不明瞭になりがち)のではないか。

とはいえ、舞台装置は簡素ながら衣装、照明は小ホールオペラにしてはこれまでにない凝りようで見応えがあったし、客席もフルに使った演出が素晴らしく、舞台と満席の客席が一体感を持って盛り上がッた。

まさか、原曲のスコアに書いてある訳無いだろうが、途中の挿入歌でセリフ代わりにオッフェンバックの「天国と地獄」やシャンソンの「枯れ葉」が登場したのは遊び心なのだろうな。

愛とお金と意地の三すくみで翻弄される男と女。よくある話だけど、面白い。


♪2016-42/♪みなとみらいホール-12

2015年4月29日水曜日

横浜交響楽団第662回定期演奏会

2015-04-29 @県立音楽堂


飛永悠佑輝:指揮
高品綾野:ソプラノ
池内響:バリトン
横響合唱団:合唱
横浜交響楽団

【 宗教合唱曲① フォーレ 】
<山田耕筰没後50年>
山田耕筰:序曲 ニ長調 
山田耕筰:「この道」・「中国地方の子守唄」・「赤とんぼ」
シューベルト:交響曲第7番ロ短調「未完成」D759
フォーレ:レクイエム ニ短調作品48


今日の音楽堂は超満員。え~なんで?と一瞬思ったが、舞台には横響合唱団がおよそ200人並んでいる。多分、その関係者がどっと詰めかけたのだろう。

「序曲ニ長調」は山田耕筰が初めて書いた管弦楽曲で、日本人としても初の西洋音楽による管弦楽曲だそうだ。
3分少々の曲で、途中短調への転調部分があったが、全体としてえらく開放的で明るい音楽だった。

序曲は良かったが、今日は、申し訳ないことに体調不十分で、「中国地方の子守唄」ほかが、すっかり僕の子守唄になってしまった。

曲が終わるたびに拍手が起こるから、それで覚醒して僕もパチパチ…。次の曲ではまたもや居眠り。また拍手で覚醒…を繰り返してしまい、「未完成」になるともう確信犯的に寝てしまった。

今日、一番聴きたかったのはフォーレの「レクイエム」だ。これさえ聴けたらよしとしよう。そのためには英気を養っておかなくてはならぬ。

そんな訳で、覚醒し、刮目してきちんと聴いたのは、「レクイエム」だけだった。


フォーレの「レクイエム」はモーツァルト、ベルディと並んで三大レクイエムの一つと目されているようだがその構成は後二者がレクイエムの典型をほぼなぞっているのに対してフォーレのは多くのあるべき詠唱が欠けており、ずいぶん変則的だ。
それに曲調もあまりレクイエムらしくない。

全体に「レクイエム」というより「合唱組曲」のような感じがする。モーツァルトやベルディ、ブラームスの作品のような重々しさや威圧感はほとんどなく、ドラマ性は乏しい(第1曲と第6曲にやや重厚感がある)のだけど、まあ、この柔らかな明るい感じの「レクイエム」も一興だ。

個人的にはブラームスの「ドイツ・レクイエム」の方が数段好きだし、シューマンもいい。
僕が三大レクイエムを選ぶなら、やはりフォーレは外して「ブラームス」を入れたいな。


さて、横響の演奏は、(たいていいつもそう思うが、)最初はいまいちバラバラの感があり、(途中は寝ていたが…)フォーレとなるとこれはとても良かった。技術的な破綻には少なくとも気付かなかったし、低弦はいつもの様にきれいにまとまっている。

来月の横響定期はシベリウスのバイオリン協奏曲だ。これは楽しみ。しっかり体調を整えて、刮目傾聴せねばなるまい。


♪2015-35/♪県立音楽堂-04