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2022年5月20日金曜日

第1952回 NHK交響楽団 定期公演 池袋C-1

2022-05-20 @東京芸術劇場大ホール



ファビオ・ルイージ:指揮
NHK交響楽団
アレクサンドル・メルニコフ:ピアノ*

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K. 466*
ベートーベン:交響曲 第8番 ヘ長調 作品93
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モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K.397*



ファヴィオ・ルイージのドイツ古典派3作。
彼は独墺ものが得意なんだそうだ。
でも(最後のベートーベン交響曲第8番の印象に引き摺られたのかもしれないが)、全体としては、イタリアの明るさを感じてしまった。

ドン・ジョヴァンニは中低域の弦の豊かな重なりが、やはりN響は只者ではないと思わせた。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番を弾いたのはアレクサンドル・メルニコフ。
だいぶ前にイザベル・ファウスト+ジャン=ギアン・ケラスとのピアノ・トリオで聴いて好感。

今回もなんだか柔らかで、1週間前に神奈川フィルとモーツァルト:ピアノ協奏曲第25番を弾いたクレア・フアンチと同じような印象だった。
彼女と同じく意識していたのはフォルテ・ピアノではないか?

ピアニスト・アンコールは未完成の幻想曲Dmだが多分後世の補作部分は弾かなかったのだと思う。

ピアノ協奏曲第20番のカデンツァも自分と兄との共作で、独自性を発揮していたが、やはり違和感があったなあ。

メルニコフは何度も深々とお辞儀をしていたが、ロシア人として感ずるところがあったのだろう。ルガンスキーやラザレフの例もある中、よく招きに応じてくれたよ。

最後はベートーベン交響曲第8番。

ここでも弦の豊かな響きは心地よい。

鳴りの悪い、カサカサの乾いた響きの芸劇なのに、管・弦の交わりが生む甘い響きを彷彿とさせた。

3曲ともだが、ルイージの彫琢・剪定が行き届いて、N響もしっかり応えている風な印象を強く持った。

♪2022-072/♪東京芸術劇場大ホール-03

2017年2月26日日曜日

イザベル・ファウスト、ジャン=ギアン・ケラス&アレクサンドル・メルニコフ ピアノ・トリオ演奏会

2017-02-26 @県立音楽堂


イザベル・ファウスト:バイオリン
ジャン=ギアン・ケラス:チェロ
アレクサンドル・メルニコフ:ピアノ

シューマン:ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 作品110
エリオット・カーター:エピグラム(2012)
シューベルト:ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調 作品99 D898
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アンコール
シューマン:ピアノ三重奏曲 第2番 第3楽章

このピアノ・トリオにはチームの名前がない。ピアノ・トリオでトリオ名があってそれが世の中に認知されているグループはむしろ少ないのではないか。僕が思い出せるのはボザール・トリオくらいで、手持ちのCDでほかのトリオをみてもたいてい3人の名前が並列してある。あるいは録音のために俄仕立ての名前が付いているのもあるけど、その名前での活動をしている風には思えない。

今回のトリオも同様で、3人の名前が並べてあるだけだ。
このうちナマを聴いたことがあるのはバイオリンのイザベル・ファウストだけで、ほかの2人も一流の演奏家なのだろうが、名前さえ知らなかった。

イザベル・ファウストを前回聴いたのは文化会館で都響とメンコンを演奏した時だ。その時は、彼女のストラディバリウスはよく響いたとはいえ、間近ではなかったし(オーケストラはそんな間近で聴きたくないけど。)、音圧を感ずるというほどではなかったので、今回は、音楽堂の3列目でかぶりついて聴くのが楽しみだった。

ピアノ・トリオはピアノが音色でも音量でも異質だから3者のバランスが難しそうだ。現に、ピアノの音に弦が埋もれてしまう演奏を聴いたこともある。しかし、今回はとてもいいバランスだった。バイオリンもチェロも、これはすぐそばで聴いているという事情もあったかもしれないが、音圧に不足はなく、ピアノとも溶け合うというのか、その異なる音の性格がピタッと呼吸を合わせて交わる時に生まれる響の妙が快感だ。

シューマンのトリオは亡くなる数年前の作品らしく、冒頭から不安神経症的だ。でも当然ながら全篇がシューマン印で、慣れるとこれが音楽的に面白い。

真ん中に挟まれたエリオット・カーター(1908〜2012。103歳で逝去!)の作品はまさに103歳で作曲したものだそうだ。超現代音楽で、ハナから聴く耳持たなかったから今ではさっぱり思い出せない。

こういう訳の分からない音楽の後にシューベルトのピアノ・トリオを聴くと清々しくも躍動感に溢れなんと美しいことか。
この曲はピアノ五重奏曲「ます」や弦楽四重奏曲「死と乙女」と並んでシューベルトの室内楽(言うまでもなく器楽ソナタは除く。)の3大傑作だな。

イザベル・ファウストほかのトリオの出来栄えは素晴らしかった。3人が一つの呼吸をしているように思った。また、一人ひとりの楽器の音色も素晴らしい。微細な弱音から最強音までが、特にすぐそばで聴いていると原音とどこからか響いてくる残響とが混じり合って妙なる響となる。楽器自体、それを操る才能、ホールのコンディションがすべてうまく混ざり合い、引き立てあって、なかなか得られない音楽体験をさせてもらった。

♪2017-030/♪神奈川県立音楽堂-02