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2021年12月6日月曜日

国立劇場第53回 文楽鑑賞教室 「新版歌祭文」野崎村の段

2021-12-06@国立劇場



●解説 文楽の魅力
 吉田簑太郎

●新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)
 野崎村の段

中 豊竹亘太夫/鶴澤寛太郎
前 豊竹芳穂太夫/野澤勝平
後 豊竹藤太夫/鶴澤藤蔵
     ツレ 鶴澤清允
************************
人形役割
娘おみつ⇒ 吉田一輔
祭文売り⇒ 吉田和馬
親久作⇒    吉田玉也
手代小助⇒ 吉田玉誉
丁稚久松⇒ 吉田清五郎
娘お染⇒    桐竹紋臣
下女およし⇒ 豊松清之助
駕籠屋⇒    吉田玉延
駕籠屋⇒    吉田玉征
母おかつ⇒ 吉田簑太郎



鑑賞教室として開催。20分程初心者向け解説付き。


本演目は歌舞伎でも文楽でもしばしば取り上げられるが、歌舞伎と異なり、文楽では「野崎村の段」のみが上演される。所謂「お染・久松」の物語だ。


本篇では恋に狂った若い2人の先行きは描かれないが、心中する話だ。



久松の育ての親久作は、久松を兄妹同然に育ったおみつと夫婦にするつもり。

しかし、久松は大坂で奉公した店の娘お染と身分違いの恋をする。

その奉公先で未実の罪を着せられ、クビになった久松は野崎村の久作の元に戻される。それを追って、お染も大坂から野崎村へ。


この三角関係はお染の親も知ることになり、仲を割かれて野崎村を、お染は船で、久松は籠で後にし大坂に戻される。

後に残った可哀想なおみつは尼に。


燃え上がった恋心だけでは世間は渡れない。

何だか、最近世を賑わしたような話だが、素材となった実話では心中することを知っているからこのモヤモヤとした話もなんとか腹に収まる。


最後の陸路/水路での2人の道行で、今回初めて気づいた。

籠かきと船頭は登場するが、お染久松は登場しない。


夫々乗り物の中にいて、姿は見えない。


最終幕ではこの人夫達が主人公なのだ。


汗を拭き、手ぬぐいを搾り、竿を突き、竿を水に落とし、その様子の滑稽なこと。

モヤモヤした色恋話は、このようにして幕引きをするのだ。

いや、うまく考えた構成だ。かくしてスト〜ンと腑に落ちた。


♪2021-147/♪国立劇場-12

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年12月公演

2021-12-06@国立劇場




国立劇場開場55周年記念
仮名手本忠臣蔵 (かなでほんちゅうしんぐら)
 桃井館本蔵松切の段
 下馬先進物の段
 殿中刃傷の段
 塩谷判官切腹の段
 城明渡しの段
 道行旅路の嫁入


桃井館本葳松切の段
 竹本小住太夫/鶴澤清丈
下馬先進物の段
 竹本南都太夫/竹澤團吾
殿中刃傷の段
 豊竹靖太夫/野澤錦糸
塩谷判官切腹の段
 竹本織太夫/鶴澤燕三
城明渡しの段
 竹本碩太夫/鶴澤清允
道行旅路の嫁入
 小浪:豊竹呂勢太夫/鶴澤清志郎
 戸無瀬:豊竹咲寿太夫/鶴澤清公
 豊竹亘太夫/野澤錦吾
 竹本聖太夫/鶴澤燕二郎
 豊竹薫太夫/鶴澤清方

*****************************
人形役割
桃井若狭助⇒ 吉田玉佳
加古川本蔵⇒ 吉田勘市
妻戸無瀬⇒    豊松清十郎
娘小浪⇒ 吉田簑紫郎
高師直⇒ 吉田玉助
鷺坂伴內⇒    桐竹紋秀
塩谷判官⇒  吉田簑二郎
早野勘平⇒  吉田玉路
茶道珍才⇒  吉田蓑悠
原郷右衛門⇒ 桐竹亀次
石堂右馬丞⇒ 吉田玉輝
薬師寺次郎左衛門⇒吉田文哉
大星カ弥⇒  吉田簑太郎
大星由良助⇒ 吉田玉志
顔世卿前⇒  桐竹紋吉
その他 大ぜい

今から5年前の2016年。国立劇場では開場50年記念に、歌舞伎は3部(1か月公演X3回)、文楽の方は2部(昼夜公演)構成で全段通し「仮名手本忠臣蔵」をやった。
それが僕の文楽の初見で以後病みつきになった。

2019年には大阪の国立文楽劇場の開場35年で春・夏・秋に3部に分けて全段通しをやった。これも観に行った。

そして、今年は国立劇場開場55年記念の年だ。

そこで、記念の公演という訳だが、今回は、二、三、四、八段目からの抜粋だ。これは寂しい。

四段目のほかにも面白い七段目、九段目がない。これでは見どころは切腹の段のみというのも辛い。

それにどういう訳か、今回は太夫・三味線・人形ともに重鎮が出ていない。普通なら人間国宝級全員とは言わずとも出演するものだ。ましてや記念の公演なのに。
ま、今日の出演者の中では、個人的には織太夫とか呂勢太夫は好きだけど。
どれにしては寂しい公演だった。

同時に別興行で観賞教室をやっているがこっちの方が面白かった!


♪2021-146/♪国立劇場-11

2020年9月22日火曜日

人形浄瑠璃文楽令和2年9月公演第Ⅱ部

 2020-09-22 @国立劇場


鑓の権三重帷子 (やりのごんざかさねかたびら)

   浜の宮馬場の段
    藤太夫/團七
 浅香市之進留守宅の段
    織太夫/藤蔵・清允(琴)
 数寄屋の段
  切 咲太夫/燕三  
 伏見京橋妻敵討の段
    三輪太夫・芳穂太夫・小住太夫・
    亘太夫・碩太夫/清友・團吾・友之助・清公

人形役割
 笹野権三⇒玉男
 川側伴之氶⇒文司
 岩木忠太兵衛⇒玉輝
 女房おさゐ⇒和生
 浅香市之進⇒玉佳
 ほか



2月以来7月ぶりの再開文楽公演は1日4部公演に。第4部は鑑賞教室なので実質は3公演と、まあこれまでも無かった訳ではないが、各部間の待ち時間が1時間以上に延びて、本篇は1時間半〜2時間弱とえらく短くなった。料金は少し安くなったが、時間単価は高くなりぬ。


第2部は「鑓の権三重帷子」で初見。東京では11年ぶりの上演。

近松三大姦通ものの一つだそうな。これは実に面白かった。


そんなつもりは毛頭なけれどちょっとした偶然が重なって、権三と茶道師匠の女房おさゐは姦通を疑われ、疑いを晴らすことなく師匠による妻敵討ちにあう途を選択する。

町は多くの盆踊りに興ずる人たち。祭囃子も賑やかだ。

その喧騒を背景に江戸から帰ったおさゐの夫の手にかかり2人は彼らなりの本望を遂げ、何もなかったかのように祭りは続く。

粋な終わり方にだ。

2人は姦通などしなかった。

が、その後の道行きで両者は深い仲になったのではないか。


それらしき行動も台詞も一切ないが、それを感じさせるところが艶かしい。そうでなくちゃ言い訳もせずに、心中もせずに、おさゐの夫の名誉の為に、妻(め)敵討ち(妻を奪った男を成敗する)を待つなんてたまらないからなあ…と思うのは下衆な感性かな。


♪2020-054/♪国立劇場-05