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2025年6月22日日曜日

マリオ・ブルネロ 無伴奏チェロ・リサイタル

2025-06-22 @フィリアホール



マリオ・ブルネロ:チェロ


M.ヴァインベルク:無伴奏チェロ・ソナタ第1番 Op.72
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008
M.ヴァインベルク:無伴奏チェロ・ソナタ第2番 Op.121
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007
---------------------
M.ヴァインベルク:24の前奏曲から第21番
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番からサラバンド

ミェチスワフ・ヴァインベルク⇒1919-1996
J.S.バッハ⇒1685-1750




ブルネロは放送録画では何度も聴いているけど、生演奏は初めてだったが、今回は、ナマの凄さを痛感した。

なんと言っても音がいい。これぞチェロの音だ。こんなに豊かな音色はずいぶん久しぶりで、思い出すのは東京春祭で何度か聴いたベルリン・フィルの室内楽の、あのチェロの音に近い。

フィリアホールとの相性が良かったのか、もちろん楽器もとても良いものなんだろうな。

M.ヴァインベルクの無伴奏(1919生)とJ.S.バッハ(1685生)の無伴奏を交互に演奏した。

前者のチェロ作品は初めて聴く(Pfソナタはアヴデーエワで聴いたことがあったが、名前はすっかり忘れていた。)。
もちろん現代作品なので、最初は無調というか、音程もしかと定まらない感じで始まったのでひょっとして微分音を使っているのかと思ったくらいだったが、徐々に旋律らしきものが浮かび上がってくると、まあ、普通の現代音楽で、ショスタコと親交が深かったそうだが、ショスタコ印がところどころに顔を出す。ブルネロはこの作品をJ.S.バッハ以後の最重要な作品群と言っているが、その深さは分からない。

バッハを弾くときは、実に丁寧なアプローチで、何か、深遠な世界に連れてゆく気なのか?と思ったりしたが、こちらにそれだけの鑑賞眼はないけど。

しかし、こういう演奏を聴けて本当に良かったと思った。いつも本物の演奏を聴いているはずだけど、今日のブルネロの、特にバッハは正しく本物の音楽で、しみじみと美しかった。


Encもこの両者の作品だった。
驚いたのは、ヴァインベルク:24の前奏曲から第21番という作品だ。これは冒頭から、ショスタコのVc協とそっくりだ。似てしまった、というレベルではなく、確信的に模倣している。オマージュなのかもしれないけど、冗談みたいに聴こえたな。

♪2025-085/♪フィリアホール-04

2025年6月8日日曜日

クァルテット・インテグラ ベートーベン:弦楽四重奏曲全曲演奏会Vol.1

2025-06-09 @フィリアホール



クァルテット・インテグラ
 三澤響果:第1バイオリン
 菊野凛太郎:第2バイオリン
 山本一輝:ビオラ
 パク・イェウン:チェロ


ベートーベン:
弦楽四重奏曲第01番ヘ長調 Op.18-1
弦楽四重奏曲第16番ヘ長調 Op.135
弦楽四重奏曲第10番変ホ長調 Op.74「ハープ」



このメンバーは2回目で、前回もフィリアだった。
前回は、ハイドン、バルトーク、シューベルトで全部楽しめなかった。楽しめなかったのは、楽曲に馴染みが薄かったから。
で、今回は、ベートーベンの四重奏曲全16曲を1年に1回、全部で6年6回で演奏するという壮大な計画なので、これは乗ってみようと思ったが、最終回は2030年かい?生きているか、生きていても耳が役に立たなくなっているかもな。

やはり今回もあまり楽しめなかった。
30歳前後のグループだけど、地味な感じで、遊びというか、ゆとりというか、もう少し抜けていてもいいのではないかと思いながら窮屈なベートーベンを聴いていた。

今日は、1番、16番、10番だったので、もうこれでベートーベンSQの最初と最後と真ん中を聴いたので、全曲聴くこともないかと思ったよ。


♪2025-075/♪フィリアホール-03

2025年5月30日金曜日

神奈川フィルの名手による室内楽シリーズ20 〜ハンガリー 室内楽の名品〜

2025-05-30 @フィリアホール



第1バイオリン:石田泰尚
第2バイオリン:直江智沙子
ビオラ:中恵菜
チェロ:上森祥平
ピアノ:津田裕也
クラリネット:齋藤雄介

バルトーク(セーケイ編):ルーマニア民俗舞曲 BB68/Sz.56 ⇒直江・津田
コダーイ:バイオリンとチェロのための二重奏曲 Op.7 ⇒直江・上森
バルトーク:コントラスツ BB116/Sz.111 ⇒石田・齋藤・津田
バルトーク:弦楽四重奏曲第4番 BB95/Sz.91 ⇒石田・直江・中・上森



このシリーズの半分は聴いているけど、今回は、一番手強い選曲だったかも。
バルトークのコントラスツはどうも初聴きだったようだが、それ以外は少なくとも1度は聴いているし、ルーマニア民俗舞曲のように数え切れない程頻繁に聴いてよく耳に馴染んでいるものもあったが、ルーマニア~以外は、馴染みの問題だけでなく、そもそもの音楽性についてゆけない。

しかし、かぶりつきで聴く室内楽は、楽器本来の音の良さを味わえ、メンバーの丁々発止がスリリングで面白い。

いつも思うが、石田組長の繊細さ。
とにかく、楽章毎に調弦を繰り返す。
そんな短時間で音が狂うとは思えないし、基準音を確認する訳ではなく、A弦に合わせて他の3弦を合わせ直すのだけど、結局、一度緩めてから締め直すだけで、それならそのまま弾けばいいのではないかと思うが、気になるんだろうな。一種の儀式みたいになっているんだと思う。

♪2025-068/♪フィリアホール-02

2025年5月11日日曜日

横濱音楽物語3️⃣ ヨコハマ「うた」物語〜「カルメンお美」佐藤美子と横濱の軌跡  森谷真理 ソプラノ・リサイタル with 浦久俊彦

2025-05-11 @フィリアホール



森谷真理:ソプラノ
江澤隆行:ピアノ
浦久俊彦:ガイド

ビゼー:
歌劇『カルメン』から
 ハバネラ(「恋は野の鳥」)
 セギディーリャ(「セビリアの砦の近くの酒場で」)
 ミカエラのアリア「何を恐れることがありましょう」

プッチーニ:
歌劇『ラ・ボエーム』から
 私が街を歩けば(ムゼッタのワルツ)
歌劇『ジャンニ・スキッキ』から 私のお父さん

中田喜直:さくら横ちょう
別宮貞雄:さくら横ちょう
神戸孝夫:さくら横ちょう

ラヴェル:歌曲集『シェエラザード』

サティ:ジュ・トゥ・ヴ
---------------------
プッチーニ:歌劇「トスカ」から 歌に生き恋に生き
プッチーニ:歌劇「つばめ」から ドレッタの夢





近代日本の黎明期の西洋クラシック音楽は横浜から始まった。という訳で6年間にわたるシリーズ「横濱音楽物語」の3回目。横浜で活躍した「カルメンお美(よし)」こと佐藤美子の足跡を森谷真理が追う。

この人、全国初の公的コンサートホールである神奈川県立音楽堂の建設に尽力したり、戦時中は横響を引率して音楽挺身隊に従事したと書いてある(Wiki)。横浜の初期音楽シーンに欠かせない人なんだ。

ソプラノの森谷もこうなれば美子の得意のカルメンを歌わなくてはいけない。
ということで、ハバネラやセギディーリャはお客の前では初めて歌ったそうだ(メゾの持ち歌だから)。
そのせいか、前半は、これが森谷の実力か?と思うくらい低調だったが、だんだん良く鳴る法華の太鼓で、調子が出てきて、Encではもう解き放たれたかの如くトランペットみたいな強力な声を出していたなあ。
ああいうの、最初からは出せないんだろうな。
2時間(休憩込み)1人で歌うのだから、セーブしていた力を最終場面で爆発させたんだ。
ま、良かったけど。


♪2025-058/♪フィリアホール-01

2024年9月4日水曜日

神奈川フィルの名手による室内楽シリーズ第19回 「室内楽&小編成管弦楽によるモーツァルト&ワーグナー」

2024-09-04 @フィリアホール



小林雄太:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
 Vn1:執行恒宏*他7名
 Vn2:小宮直*他5名
 Va:大島亮*他4名
 Vc:上森祥平*他3名
 Cb:西澤誠治*他1名
 Fl1 / Ob2 / Cl2 / Fg2 / Hr2 / Tp1
 合計35名

モーツァルト:ディベルティメント第3番ヘ長調 K.138*

:ジークフリート牧歌 WWW.103
モーツァルト:交響曲第40番ト短調 K.550
(改訂稿:クラリネットあり)
-----Enc---------------
モーツァルト:ディベルティメントニ長調 K136から第2楽章

*は弦楽五重奏版



オケは35人の小編成。
指揮はお初の副指揮者小林雄太。
メインはモツ40番。
これが一番面白かった。

小編成ということもあって各部明瞭。
テンポが良かった。
特に3⇒4楽章と進むにつれ好感度が増した。聴き慣れない表情もあるが、ここが雄太君の工夫だろう。

特に終楽章は、とんでもなく速いというのではないけど、全編が畳み掛けるようで息継ぎもできないような緊迫感。

小林秀雄「モオツァルト」の「疾走するかなしさ」ってこれかと思ったよ。
いや、褒めすぎだけど。

♪2024-117/♪フィリアホール-07

2024年5月29日水曜日

神奈川フィルの名手による室内楽シリーズ第18回 「フォーレ&ショーソン:フランス室内楽の名品」

2024-05-29 @フィリアホール



Vn:石田泰尚/直江智沙子*/小宮直
Va:大島亮*
Vc:上森祥平*
Pf:津田裕也*

フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番ハ短調 Op.15*
ショーソン:バイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲ニ長調 Op.21
--------------------
ショーソン:バイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲ニ長調 Op.21から第2楽章




今回は、神奈川フィルの弦メンバーの中でも石田組長ほかトップクラスが集結した。

フォーレとショーソンと言われたら、俄然フォーレが楽しみで、そのピアノ四重奏曲第1番は過去屡々聴いている(なぜか2番は聴いたことがない?)。
ショーソンの今日の作品は初聴きだ。編成が2人大きく演奏時間も長いので、後半に置かれたのだろうけど、なんとなく消化試合みたいな気持ちでいた。

前半のフォーレがまず良かった。

良席が取れず(組長が入る回は難しい。)、2階最前列正面だったが、これが音圧も十分で、案外良い響だ。でも、もしかぶりつきで聴いたたらどんなに迫力があったろう、とは思いながら聴いたが。

休憩を挟んで、初聴きのショーソン。
タイトルどおり弦楽四重奏に独奏バイオリンとピアノが加わったもの。それで組長だけは立奏した。帰宅後Yotubeで調べたら、見た限りですべて同じスタイルだった。弦楽四重奏がオケの役割を果たすバイオリンとピアノのための協奏曲なのだ。

で、始まってみると、なんとも魅力的だ。
こ難しさがなく、分かり易い。
特に弦楽四重奏部分が、通常の室内楽とは明らかに異なる役割を受け持って、Tutti、それもユニゾンの部分が何箇所も登場した。そこは、独奏のバイオリンやピアノとの”協奏”を際立てて面白い。

組長のバイオリンは、いつものとおり、繊細で美しい。

終わってみると、やはり、これはショーソンが主役だったなと実感。
アンコールで、もう一度聞いてみたいと思った中間楽章…その第2楽章をやってくれたのもとても良かった。痒い所に手が届く気配り?

♪2024-074/♪フィリアホール-06

2024年3月27日水曜日

中野りな&ルゥォ・ジャチン ヴァイオリン&ピアノ デュオ・リサイタル 2022年仙台国際音楽コンクール覇者の共演

2024-03-16 @フィリアホール



中野りな:バイオリン*
ルゥォ・ジャチン:ピアノ**

シマノフスキ:バイオリンとピアノのための3つの詩曲「神話」Op.30から第3番
シューマン:バイオリンソナタ第1番イ短調 Op.105
パガニーニ:ロッシーニの「タンクレディ」のアリア「こんなに胸騒ぎが」による序奏と変奏曲
イザイ:無伴奏バイオリン・ソナタ第3番ニ短調「バラード」*
ショパン:バラード 第1番ト短調 op.23**
サン=サーンス:バイオリンソナタ第1番ニ短調 Op.75
--------------------
クライスラー:ウィーン奇想曲
*/**はソロ




昨秋、東フィルとの共演を聴いたお嬢さん。
今回は、2022年の仙台国際コンクールで共に優勝したピアノのL.ジャチンとのデュオリサイタル。

協奏曲もとても良かったが、やはり小ホールでかぶりついて聴くのは次元が違う面白さがある。

休憩の前後に、見ばえ聴きばえする超絶技巧を置いて、軽〜く圧倒して、サン=サーンスのソナタ第1番が白眉。

表情がよく見えたので、音楽を丁寧に形作ってゆく様を一体感を以て味わった気が。

まだ、19歳かな。
「清楚」がぴったり。慣れないステージングも好ましや。



♪2024-040/♪フィリアホール-04

2024年2月3日土曜日

土曜マチネシリーズ 仲道郁代&ウェールズ弦楽四重奏団 Vol.1〜ドボルザークに聴く東欧歴史の香り〜

2024-02-03 @フィリアホール



ピアノ:仲道郁代*
ウェールズ弦楽四重奏団**
 1stバイオリン:﨑谷直人
 2ndバイオリン:三原久遠
 ビオラ:横溝耕一
 チェロ:富岡廉太郎

ドボルザーク:「詩的な音画」Op.85から*
ドボルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調 Op.96/B.179「アメリカ」**
ドボルザーク:ピアノ五重奏曲第2番イ長調 Op.81/B.155
--------------------
ドボルザーク:ピアノ五重奏曲第2番イ長調 第三楽章抜粋




◀️感想省略▶️



♪2024-019/♪フィリアホール-02

2024年1月24日水曜日

クァルテット・インテグラ 山崎伸子プロデュース 輝く若手演奏家による「未来に繋ぐ室内楽」Vol.7

2024-01-25 @フィリアホール



クァルテット・インテグラ
 三澤響果:第1バイオリン
 菊野凛太郎:第2バイオリン
 山本一輝:ビオラ
 パク・イェウン:チェロ(築地杏里から変更)
山崎伸子:チェロ(特別出演)*

ハイドン:弦楽四重奏曲ロ短調 Hob.III:37/Op.33-1
バルトーク:弦楽四重奏曲第2番 Sz.67/Op.17
シューベルト:弦楽五重奏曲ハ長調 D956*



山崎伸子が主導するシリーズ7回目。
とても丁寧なアンサンブルだが、もう少し若々しくガリガリとヤニを飛ばすような勢いを期待したが…。

最後に山崎が加わって前回同様シューベルト五重奏曲。こういう編成上、楽曲が限られてくるんだな。

ところで、この曲。何度も聴くが面白味が分からない。
チェロ2本使ったアイデアが奏功していない?
長過ぎる(実測55分)?
暗過ぎる…ハ長調で作曲する意味が?

♪2024-014/♪フィリアホール-01

2023年10月17日火曜日

アレクサンドル・タローが描くエリック・サティの世界

2023-10-17 @フィリアホール



ピアノ・構成:アレクサンドル・タロー
テノール:ジャン・ドゥルスクルーズ*
語り(エリック・サティ役):鬼倉龍大

オール「エリック・サティ」プログラム
<75分間休憩なし>

バラ十字団のファンファーレ第3番 「大僧院長の歌」
グノシェンヌ第3番
男やもめ*
ジュトゥヴ
梨の形をした3つの小品から
 「開始のひとつのやり方」(ピアノデュオ)*
1916年の3つの歌曲から
 「ブロンズの彫像」*
 「伊達男」*
 「帽子屋」*
エンパイヤ劇場の歌姫*
潜水人形から
 「ネズミの頭」*
 「アメリカ人の娼婦」*
 「詩人の唄」*
 「猫のシャンソン」*
ひからびた胎児
いいとも、ショショット*
グノシェンヌ第1番
ジムノペディ第1番



A.タローはだいぶ前にショスタコPf協2番@都響を聴いたことがあるがリサイタルは初めて。

プログラムは「E.サティの世界」というタイトルで、オール・サティ作品。75分間ノンストップでピアノ演奏のほかテノール歌唱、朗読を通じて変人サティの人間像と音楽性を描こうとするものでタロー自身が構成をしている。

小品というより掌編というのがふさわしいような短いものを17曲!この中にはTnによる歌曲10曲と、その歌手と一緒に弾いたPfデュオも1曲含まれる。
それに、サティになりきった朗読者が自己紹介や人生観などを(日本語で)披露する。

サティがとんでもないネーミングの音楽を書いたり、内容もヘンテコな音楽を書いているのは承知していたが、今日の演奏の中には、本当にサティが作曲したのかと信じられないような冗談のような作品もあった。

しかし、面白い企画だったが、成功したとは言い難い。
朗読者の声が小さく、僕の席はずいぶん前だったが、それでも語尾がはっきりと聞き取れない部分が多く、興醒めだった。

とはいえ、最後の2曲はやはり取って置きという感じで、馴染みのグノシェンヌやジムノペディ(先に弾いたジュトゥヴも)などは、鍵盤に指が触れたか触れないかというような繊細なピアニズムで、やはりドイツ音楽とは全く異なる世界の美意識を味わった。

♪2023-175/♪フィリアホール-04

2023年7月29日土曜日

横濱音楽物語1️⃣

2023-07-29 @フィリアホール



バリトン:坂下忠弘(加耒徹から急遽交代)
ピアノ:實川風
バイオリン:小林美樹
バイオリン:毛利文香
ビオラ:有田朋央
チェロ:門脇大樹

ドボルザーク:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調 Op.51より 第1-3-2楽章
【小林(1st)、毛利(2nd)、有田、門脇】
 ※当時のプログラムの記載通りに、楽章抜粋・演奏順を変更して演奏します。
ワーグナー:レチタティーヴォとロマンス
 ~楽劇『タンホイザー』第3幕から「夕星の歌」(「優しき夕星よ」)
【坂下、實川】
グリーグ:バイオリン・ソナタ第3番ハ短調 Op.45
【小林、實川】
シューマン:
 ひそやかな涙 ~12の詩 Op.35から第10曲
 献呈 ~歌曲集「ミルテの花」Op.25から第1曲
【坂下、實川】
ブラームス:ピアノ四重奏曲イ長調第2番 Op.26
【毛利、有田、門脇、實川】




日本の近代化は横浜で始まった。西洋音楽も然り。
フィリアホールが企画した5年がかり計6回の「横濱音楽物語」の今日は第1回目。今回は黎明期のクラシック演奏会を再現しようとするもの。

山手の丘に今も名前を残すゲーテ座で、1907年(明治40年)、居留民の演奏による居留民の為の演奏会が行われた。
今日のプログラムは、それをそっくり再現したもの。

ドボルザーク、ワーグナー、グリーグ、シューマン、ブラームスと並ぶと、現代人にとってはなんの違和感もないプログラムだが、116年前の人たちにとっては、ほぼ《現代音楽》が並んでいるというところが興味深い。

早く亡くなった順で一番のシューマンこそこの演奏会の51年前に亡くなっているが、ワーグナーは24年前まで生きていた。ブラームスは10年前、ドボルザークは3年前まで生きていた。グリーグは生存中だ。

今の日本に引き直すと、伊福部昭、早坂文雄、久石譲、吉松隆などの作品集を聴くようなものか。

僕も116年前に戻ったつもりで、音楽を聴いてみた。
とはいえ、もう、耳馴染みばかりなので、これらを現代音楽として聴くことは難しかったのだけど、無理無理明治人になり切ってみると、少なくともシューマン、ブラームス、ドボルザークにはそれまでの古典派にはみられない奏法やフレージングに、な〜るこの辺は新しいな、と思ったりもして良い経験ができた。

演奏するのは、今、まさに匂い立つような旬の中堅どころ。全員、横浜に縁のある演奏家ばかりだというが、我が小林美樹❤️以外は横浜とどういう縁があるのか知らない。

Brの加耒徹が不都合で急遽坂下忠弘に変わったが、当然、プログラムに変更はなく、「夕星(ゆうずつ)の歌」と「献呈」が聴けたのも嬉しいことだった。

♪2023-132/♪フィリアホール-03

2023年5月27日土曜日

土曜ソワレシリーズ《女神との出逢い》第300回記念 〜ガラ&フィナーレ

2023-05-27 @フィリアホール



バイオリン◎
 川久保賜紀⇒3 / 1
 松田理奈⇒1 / 3
 南紫音⇒4 / 2
 毛利文香⇒2 / 4
ビオラ◎
 中恵菜⇒2 / 1
 田原綾子⇒1 / 2
チェロ◎
 遠藤真理⇒2 / 1
 新倉瞳⇒1 / 2

数字は、
エクスクでの担当 / メンデルスゾーンでの担当を表す(川久保はエネスクでは第3Vnを、メンデルスゾーンでは第1Vnを担当したという意味)。

ジョルジェ・エネスク:弦楽八重奏曲ハ長調 Op.7
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲変ホ長調 Op.20
-------------------アンコール-----------------------
ピアソラ(山中惇史編):Tanti anni prima(昔々)



フィリアの「女神との出逢い」シリーズ300回記念にしてフィナーレ。ということで、今回は8人もの旬の美形実力派が揃って、もう、心穏やかならず。
全員が色とりどりのドレスだが、いつもとは気合の入り方が違って、所謂<勝負服>で全員が臨んだのではないか。

かぶりつきで観ているといやはや、眼福!眼福!

休憩後の後半には、ひょっとして…と思ったが、期待どおりで、全員がお色直しの花畑。

ユリアンナ・アヴデーエワが見たら何というだろう。
これでは音楽が身に入らない…かと言えばそこは修行を積んでいるので、大丈夫😅。

編成は弦楽四重奏を2倍にしたもの。
しかし、2曲ともあくまでも八重奏曲で、8本の弦楽器が一斉に動くこともあるが、それぞれ独自に音が割り当てられている。

エネスク(1881-1955)という作曲家は名前を聞くのも初めて。とんでもない現代音楽かと思いきや、ふと思い出したのは溝口肇の音楽だった。要は、現代風ではあるけど、自己中ではなく、お客さんを置いてきぼりにはしない心地良い音楽だった。40分前後あったかな?聴き応えも十分。


前半の楽器配置は弦楽四重奏を横に倍にした一つの典型だったが、後半のメンデルスゾーンでは2つの弦楽四重奏が鏡を挟んで対峙する形。かつVcが真ん中に位置したので、ビオラはVcを挟んで左右に分かれた。後刻Youtube調べたら、こういう形は格別珍しくはなかった。なるほど、八重奏は四重奏の倍ということではないのでこれもありなんだろう。

弦楽八重奏曲といえばメンデルスゾーンくらいしかない?ので結構馴染んでいるし、抒情的な2楽章以外は元気いっぱいで楽しい。
しかし、興味深かったのは、音楽そのものよりスリリングなアンサンブルだ。フレーズのキャッチボールの度に耳移りならぬ目移りしてあれこれと心惹かれたことだ。

エネスク⇒ https://youtu.be/Ugv_o2XsJoE

♪2023-093/♪フィリアホール-02

2023年5月3日水曜日

ジョヴァンニ・ソッリマ無伴奏チェロ・リサイタル

2023-05-03 @フィリアホール



ジョヴァンニ・ソッリマ:チェロ

ジョヴァンニ・ソッリマ:ヘル1 * 
ジュリオ・デ・ルーヴォ:ロマネッラ / タランテッラ🎻
コミタス:鶴 *
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007🎻
ジョヴァンニ・ソッリマ: *
 ナチュラル・ソングブックNo.1「プレリューディオ」
 ナチュラル・ソングブックNo.6「サティの『ジムノペディ第1番』より再創造」
-------------------休憩-----------------------------
シチリアのアルバニア系住民に伝わる伝承曲:美しきモレアよ(ソッリマ編) *
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番変ホ長調BWV1010🎻
エリオドーロ・ソッリマ:田舎の歌(「コロノスのオイディプス」(1975)から)
ジョヴァンニ・ソッリマ:ラメンタチオ *
フランチェスコ・コルベッタ:カプリス・ド・シャコンヌ(ソッリマ編)🎻
サレント地方の伝承曲:聖パウロのピッツィカ(ソッリマ編)🏹
ジョヴァンニ・ソッリマ:ファンダンゴ(ボッケリーニへのオマージュ) *
-------------------アンコール-----------------------
坂本龍一:「ラストエンペラー」のテーマ  *
ジミ・ヘンドリックス:エンジェル *
ジョヴァンニ・ソッリマ:Terra Acqua🥢

曲目の最後の
* 印はモダン弓、
🎻はバロック弓、
🏹はモダン弓の先に錘(鈴入り)を付けた弓
🥢は割り箸



改修休館もあり、1年4月ぶりのフィリアが目立たぬように綺麗になっていた。
さて、今日は、指揮にもオケにも合わせる必要のない無伴奏でやりたい放題の独演会。こういうプログラムこそ即興性を持ち味にするソッリマの独擅場であり、面目躍如だ。

バッハ無伴奏Vc組曲1番&4番以外は、自作・父作・古今の伝承曲等で僕は殆どが初聴き(先日の日フィルでの独演会で少なくとも1曲は聴いたが他は不明)。これらを概ね新作・古典の順で交互に演奏し、それぞれに用意した複数の弓(モダン・バロック・モダン改作)及び割り箸で弾き分た。

いや、弾き分けるというより、両手・片手ではじいたり、腕で弦を押さえたり、楽器を叩いたり、駒の下・テールピース・エンドピンまで擦り、床を踏み鳴らし、奇声を発し、考えられるありとあらゆる発音手段で音楽を表現した。
Vc界のコパチンスカヤだ。
面白さに呆気に取られる!

バッハ以外は新旧作とも、類似の旋法なのか、或いは同一地方の独自の音階なのか、散り散りの旋律などに共通する哀愁の片鱗も感じて好ましかった。

バッハはどうだったか?
そもそもあれはバッハなのか?

Vc聖書さえも南国民謡風に超速でかっ飛ばしてこれも一興。
おお、仰天のソッリマ!

♪2023-073/♪フィリアホール-01

2021年12月21日火曜日

クライネス・コンツェルトハウス弦楽アンサンブル  〜クリスマスコンサート

2021-12-21 @フィリアホール



小澤洋介(with チェロ):指揮
クライネス・コンツェルトハウス 弦楽アンサンブル
 第1バイオリン
 三戸素子/内野佑佳子/瀬崎明日香(/松本紘佳)
 第2バイオリン
 水村浩司/城達哉/塗矢真弥/山中直子
 ビオラ
 長谷川弥生/柳澤崇史/渡邊田鶴野/福田紗瑛
 チェロ
 秋津瑞貴/河野明敏/宮澤等/大塚幸穂
 コントラバス
 西澤誠治/前田芳彰

 タラス・デムチシン:クラリネット+
 松本紘佳:バイオリン*

J.パッヘルベル:カノン
A.シエェーンベルク:浄められた夜 作品4
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ 作品48
Ⅰ Pezzo in forma di Sonatina
Ⅱ Walzer
Ⅲ Elégie
IV Finale

J.S.バッハ/ヴィルへルミ/徳備康純:G線上のアリア*
J.S.バッハ/グノー/徳備康純:アヴェ・マリア*+
グルーバー/徳備康純:きよしこの夜*+
L.モーツァルト(エトムント・アンゲラーが今では有力):おもちゃの交響曲第1楽章


聴いたことのある人が少なくとも2名混じっているが、このアンサンブルを聴くのは初めて。

評論家の奥田佳道氏がプレトークで説明してくれるのだけど、シェーンベルクのくだりで寝落ちてしまった。お恥ずかしい。


指揮(兼Vc)の小澤氏の強固な仲間+αという集団らしい…。


主宰者の個性が出ているのだと思う。

演奏も、まさにそんな感じ。

かなり前の方で聴いたので18人の弦楽合奏の音圧は高く、もっと後ろに座っておけば良かったかと思いながら最後まで聴いた。


チャイコフスキーの弦楽セレナーデがメイン。

大変迫力があった。


おもちゃの交響曲が、半ば余興で演奏された。

ハイドンの作だと思っていたが、L.モーツァルトと書いてある。が、最近、アンゲラーの作という説が有力視されているようだ。放送で耳馴染みだが生は初めて。


ビオラが使われていないとは知らなかった。

で、そのビオラと他のパートからも応援が出て各自おもちゃを演奏した🥳。カッコーの音程が狂っていたぞ!


このアンサンブルを主宰するのが小澤洋介・水戸素子夫妻。

かなり個性的な感じだ。

その一端を表している?チェロとバイオリンだけの「第九」第4楽章。

面白い。


https://youtu.be/tPIjsMKm4GI?t=517


♪2021-161/♪フィリアホール-09

2021年12月4日土曜日

フィリア・ハイムコンツェルトシリーズ2021  フォーレ四重奏団

 2021-12-04 @フィリアホール



フォーレ四重奏団
 バイオリン:エリカ・ゲルトゼッツァー
 ビオラ:サーシャ・フレンブリング
 チェロ:コンスタンティン・ハイドリッヒ
 ピアノ:ディルク・モメルツ

ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 Op.25
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(D.モメルツ、G.グルツマン編曲によるピアノ四重奏版)
----アコール--------------
フォーレ:3つの歌 Op.23より 第2番「われらの愛」
夢のあとに
ピアノ四重奏曲第2番ト短調 Op.45から 第1楽章(部分)


昨年の公演が流れての振替公演だった。

ずいぶん楽しみにしていたが、もう期待には十分すぎるほど応えてくれた、滅多にない、高満足度。至福の2時間だった。


世界的にも常設ピアノ四重奏団は珍しいそうだ。26年間メンバーは変わっていない。成程息が合っている。


ピアノとチェロ以外は立奏だ。

まずはそこに気合いを感ずる。


全員黒装束だが、バイオリンは靴と小さなイリングが、ビオラはポケットチーフが、チェロは靴下が、ピアノは上着袖口ボタンが、いずれも赤だ。ぼんやりしていると気づかない。刮目していても遠くからは気づかなかったかもしれない。そのセンスの良さにニヤリ。


電車に乗り遅れたり、乗り換え駅を乗り過ごしたりの失敗続きだが、ぎりぎり開幕に間に合った。ホンに間に合って良かったよ。


何と言ってもブラームス!

ピアノ四重奏曲1番はブラームスの全3曲中で一番聴く機会が多いが、それとて「熱狂の時」も「東春祭」も怪しくなってきたので、最近では19年春に聴いて以来だった。


この曲には、ブラームスの抒情性がかなり強烈に埋まっているように思う。

多くの作品では、感情の迸りはぎりぎりで抑制されるが、ここでは割と率直に出ている気がする。

第1-2楽章は巧妙な準備。3楽章はドイツ民謡風。終楽章ではロマ風な元気印に挟まれた咽び泣くような旋律に胸を掻きむしられる思いだ。


もう十分。


これで終わってもいいと思うくらい満足したが、後半の「展覧会の絵」が凄い。

この曲にはいろんな編曲があるので僕もずいぶんCDを集めた。中にはELP(エマーソン、レイク&パーマ)のロック版もある(余談だがこれは来日公演を聴きに行った。)が、ピアノ四重奏版は初めてだ。


遊び心いっぱいと言った感じの編曲で、小編成ならではの技巧が尽くされている。なによりエネルギッシュで繊細。


満腹。


なのに、アンコールが。


1曲目。フォーレの作品だとはすぐ分かった。

なんて、心憎い!

これで”フォーレ”四重奏団の演奏会の完結性が高まった。更に続けて大好きな「夢のあとに」。これもフォーレ。


それでも全然鳴り止まぬ拍手。

何度も何度も登場して愛想を振りまいてくれたが…ついに、予定していなかった1曲をやることになって、チェロは慌てていた。楽譜が見つからない!


それもフォーレの作品だった。


♪2021-144/♪フィリアホール-08