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2022年5月12日木曜日

音楽堂アフタヌーンコンサート2022前期 「チェロ・名曲の響き」 藤原真里 チェロ・リサイタル

2022-05-12 @県立音楽堂




藤原真理:チェロ
倉戸テル:ピアノ

ブラームス:チェロ・ソナタ第1番ホ短調 op.38
ベートーベン:チェロ・ソナタ第3番イ長調 op.69
フォーレ:エレジーハ短調 op.24
フォーレ:無言歌第3番 ~3つの無言歌 op.17から
----アンコール----
宮沢賢治(林光編):星めぐりの歌


藤原真理を初めて生で聴いたのも音楽堂だった。随分昔の事。その時の印象を「弦の振動で脂が粉となって飛んでゆく時の、摩擦音が楽音に変化する微妙な両者の共存が聴かせる豊かな音色だ。チェロの、これほど美しい音を聴いたことは今までになかった。」と書いている。


今日も全く同様で、良く鳴り、良く響く。

あまりに美しいので、ああ、もう少し前の席で聴きたかったとの思いが最後まで払拭できなかった。


プログラムが凄い。

ソナタ2本はブラ1とベト3の鉄壁!

に小品のおまけ付き。


ブラ1もベト3もVcが中低域の豊かな音色で先導して音楽が始まる。もう、そこで惹き込まれてしまう。


音楽堂は残響が短い古いタイプの音響設計で、アマチュア泣かせでもあるが、名人が奏でる原音が僅かに残響を纏う微妙なブレンドが至福の響きになる。


王道の音楽を音楽堂で味わう幸せ。


♪2022-067/♪神奈川県立音楽堂-05

2017年10月6日金曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2017前期 ≪楽聖とエスプリ/チェロ名作集≫藤原真理 チェロ・リサイタル

2017-10-06 @みなとみらいホール



藤原真理:チェロ
倉戸テル:ピアノ

ベートーベン:ピアノとチェロのためのソナタ第4番ハ長調 作品102-1
フォーレ:3つの無言歌 作品17から 第3番
フォーレ:子守歌 作品16
フォーレ:組曲「シャイロック」作品57からノクターン
フォーレ:夢のあとに 
ベートーベン:ピアノとチェロのためのソナタ第3番イ長調 作品69
ドビュッシー:チェロ・ソナタ
サン=サーンス:白鳥
--------------
アンコール
フォーレ:シシリエンヌ 作品78
カタルーニャ民謡:鳥の歌
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 前奏曲

リサイタルの副題の「楽聖とエスプリ」というのはベートーベンとフランス人作曲家のことらしい。
ベートーベンのソナタが2本にドビュッシーのソナタ1本。これだけでもなかなか豪華だが、フォーレの小品が4本に、定番サン=サーンスの白鳥。加えて、アンコール3本と豪華版だった。

藤原真理は生では3回目だが、いつも音が柔らかくて心地よい。ガリガリとヤニを飛ばすような音はほとんど聴くことがないのは、たまたま、穏やかな曲調の音楽ばかり聴くからだろう。

ただ、今日、チェロソナタでいちばん有名なベートーベンの3番が始まった時に、まるでフランス音楽のような錯覚を覚えたが、これはフォーレの作品がしばらく続いたからだろうけど、ひょっとして、ベートーベンの音楽の中にはそういう要素もあるのかも、と思った。いかにも「ドイツ音楽」の真骨頂という思いでいつも聴いているけど、たまには、頭を切り替えて別の角度から聴いてみるのも一興かもと思った。

藤原真理。
初めて手にしたJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲は彼女の手になるもので、それ以来、僕にとっては、一番親しみやすいチェリストだ。人柄も気取らないおばさんという感じで、いつも派手なドレスではなく、近所のスーパーに買い物に来ました、と言った格好だ。まだ68歳。これからも、ガリガリ鳴らさないでいいから、美しい音を聴かせてほしいものだ。

♪2017-160/♪みなとみらいホール-37

2015年9月18日金曜日

音楽堂建築見学会vol.8「1950年代の建築の輝き」 自由な視点で音楽堂の歴史と建築の魅力を再発見 藤原真理ミニコンサート付き♪

2015-09-18 @県立音楽堂


青木淳(建築家)
松隈洋(建築史家・京都工芸繊維大学教授)
水沢勉(神奈川県立近代美術館館長)
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藤原真理:チェロ
倉戸テル:ピアノ*

・G.カサド: 「親愛の言葉」
・J.S.バッハ:「無伴奏チェロ組曲 第1番」から前奏曲 BWV.1007
・J.S.バッハ:「主よ、人の望みの喜びよ」 BWV.147
・ファリャ:「6つのスペイン民謡」より ホタ
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アンコール
・J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲第5番ヘ短調BWV.1056から第2楽章「アリオーソ」
・サン・サーンス:白鳥


県立音楽堂は昨年還暦を迎えたが、確か、その前年?から「音楽堂建築見学会」が開催されていたようだが、全然気が付かなかった。
同種の催しには一度参加したが、建築と音楽の関係が論じられたけど、僕の関心である音響的特性については触れられなかった。

今回も同様だったが、改めて設計者前川國男の設計思想の片鱗に触れて、なるほど建築設計というのは奥の深い世界だな、と感心できたのは良かった。

さて、今回の楽しみは、建築学レクチャーの後のミニコンサートだ。過去7回の音楽家ゲストには仲道郁代、吉野直子など錚々たる顔ぶれで、今回は藤原真理さんだ。

僕にとっては、重要人物だ。
初めて買ったバッハの無伴奏チェロ組曲のCDは彼女の演奏で、多分25年前だ(今は新録音のほかにこの古いCDの復刻版?も出ているようだけど)。擦り切れんばかりに繰り返し聴いたので、バッハの無伴奏チェロ組曲と言えば、彼女のフレージングやアーティキュレーションがこびりついている。
その後、御大カザルス、ミーシャ・マイスキー、ジャン・ワン、鈴木秀美を入手したが、いつも基本は(カザルスではなく!)藤原真理だ。
ほかの演奏家がつまらない訳では決してないけど、誰を聴いても、あ、ここがちょっと違う…などと感じてしまう。藤原真理の演奏は僕にとってメートル原器ならぬ、バッハ無伴奏原器になっているのだ。

そんなに長く親しんできたのに、ナマを聴いたことがなかった。ご本尊を拝顔する機会がなかった。
それがこんな建築学講義のオマケのような形で機会を得るとは思わなかったが、むしろ、このような形であって良かった。

指定席だが、予約開始とともにチケットを買ったのでセンター前から5列目という室内楽やソロには絶好(かどうかは人それぞれ。)と思っている席を確保できた。

舞台に登場した藤原真理さん、なんて小さいの。CDジャケットしか見ていないから、まあ、四半世紀分の歴史を背負っておられるのは致し方無いとしても、こんなに小さい人だとは思わなかったからびっくりした。チェロが大きいのだ。
それにほとんど、スッピン?スーパーから買い物をして出てきたおばちゃんの風情だ。笑顔も気取りのない気さくな感じだ。

最初の音でよく響くチェロだと思ったが、彼女のチェロはクレモナで300年以上前に制作されたものだそうだ。製作者については言及がなかった。

2曲め以降は彼女の解説入りで、それも曲目の説明というより、楽器の特性、木の大切さ、そのための環境保護などが中心で、さらに希望する観客(20名位)を舞台に上げてチェロの音がエンドピンを通じて音楽堂の舞台の床にどう伝わるかを体感させたり、客席前方で聴いていたお客に良ければホールの後方に移動して、前でも後ろでも音響に変わりがなく響くはず…だということを体感させた。
僕の列はほとんどが後ろに行ってしまったが、僕は断固自分の席を死守した。動きたくないほど美しい音だったし、最後までそばで聴いていたかったから。

藤原真理さん曰く、「良いホールで良い楽器を良い演奏者が鳴らせば、一番後ろでも良い音で響くはずです」。
まさにそのとおりで、音楽堂の1フロア、全面板張り、コンパクトなホールの音の通りの良さは確かにあまり場所を選ばないことはよく知っている(でも、微妙な違いを感ずる演奏もある!)。

音楽堂は、残響が短いので、下手な演奏、好ましくない楽器ではガサガサと原音が耳障りになる場合がある。

しかし、今日の藤原真理さんの、良い楽器と良い演奏のコンビでは実に妙なる音を音楽堂が響かせるということを改めて体感できた。
彼女の弾くチェロの音は、弦の振動で脂が粉となって飛んでゆく時の、摩擦音が楽音に変化する微妙な両者の共存が聴かせる豊かな音色だ。
チェロの、これほど美しい音を聴いたことは今までになかった。


余談:
前川國男は世界的権威であるル・コルビュジェ(国立西洋美術館の設計者)らに学び、その影響を受けて、戦後の日本の建築界をリードした存在だ。
DOCOMOMO Japanが最初に優れた近代建築20選を定めた際に、前川國男設計の県立音楽堂と音楽堂に隣接する県立図書館が選ばれている。ほかにも、京都会館、東京文化会館(そういえば両者は感じがよく似ているな。)、国立国会図書館、神奈川県青少年センター、紀伊国屋書店新宿店、東京都美術館、東京海上日動ビルディング本館など有名な建築が多い。今では丹下健三のほうが有名だが、彼は前川事務所の出身だ。


♪2015-87/♪県立音楽堂-10