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2020年10月9日金曜日

10月歌舞伎公演第2部

 2020-10-09 @国立劇場


●新皿屋舗月雨暈  -魚屋宗五郎-
魚屋宗五郎          尾上菊五郎
宗五郎女房おはま   中村時蔵
宗五郎父太兵衛      市川團蔵
小奴三吉               河原崎権十郎
菊茶屋女房おみつ   市村萬次郎
鳶吉五郎               市村橘太郎
磯部召使おなぎ      中村梅枝
酒屋丁稚与吉         尾上丑之助
磯部主計之介         坂東彦三郎
家老浦戸十左衛門   市川左團次
岩上典蔵               片岡亀蔵
                              ほか

●太刀盗人
すっぱの九郎兵衛   尾上松緑
田舎者万兵衛       坂東亀蔵
目代丁字左衛門      片岡亀蔵
従者藤内     尾上菊伸

河竹黙阿弥=作
●新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)-魚屋宗五郎-

序 幕  片門前魚屋宗五郎内の場
ニ幕目  磯部邸玄関先の場
同           庭先の場

岡村柿紅=作
●太刀盗人(たちぬすびと)


●「魚屋宗五郎」は、もうそろそろ菊五郎には無理ではないか、もう少し若い人がやるべきではないか(芝翫の宗五郎は良かった。)と思っていたが、なかなか。

これまでに観た中で一番良かった。

芸は磨かれるし、まあ、僕の眼も少しは肥えてきたからかも。

以前は細部の不整合が気になったりしたが、もっとおおらかに観なくちゃいかんな。

気脈を通じ合った時蔵、團蔵、萬次郎らとの掛け合いは室内楽のような見事なアンサンブルだ。

こういう芝居では掛け声禁止が、客席の静寂(それにしても少ない。)と共にむしろ良い緊張感を生んでいると思った。

悲劇をベースにしながら、菊五郎酒乱の芸を楽しむ芝居でもある。

しこたま酔った宗五郎が酒樽を手に花道で見栄を切る。おかしくて哀れで、形がいい。

●「太刀盗人」は狂言由来。

田舎者/坂東亀蔵の太刀を騙し取ろうとする盗人/松緑がもう傑作だ。亀蔵にイマイチの弾けぶりが欲しかった。

♪2020-062/♪国立劇場-08

2016年6月2日木曜日

平成28年6月歌舞伎鑑賞教室「新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)―魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)―」

2016-06-02 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた  中村萬太郎 
                                 
河竹黙阿弥=作
新皿屋舗月雨暈 (しんさらやしきつきのあまがさ)
―魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)― 二幕三場
                国立劇場美術係=美術
              
       
   序幕   片門前魚屋宗五郎内の場
   二幕目 磯部邸玄関先の場
   同      庭先の場

中村橋之助⇒魚屋宗五郎
中村梅枝⇒宗五郎女房おはま
中村宗生⇒小奴三吉
市村橘太郎⇒宗五郎父太兵衛
中村萬太郎⇒磯部主計之介
中村松江⇒浦戸十左衛門
       ほか


魚屋宗五郎。
最近では菊五郎など、過去何人かの役者でこの芝居を観た。

しかし、これまでは、この芝居が、妹が理不尽に殺されたという<悲劇>と、お酒を長く絶っていた宗五郎が憂さ晴らしに、身内からも勧められて口にした一杯がすぐ二杯になり、うまいうまいと言いながら酔いが回って、今度はなんとか止めさせようとする女房、父親、丁稚の目を盗み、腕をかいくぐり、制止を振り切りって飲み続け泥酔してゆくさまの<喜劇>のつながりがどうもしっくり来なくて、滑稽だけど腑に落ちない芝居だった。


しかし、今日の橋之助の芝居を観ながら目からウロコの思いがした。
妹の無念の死を契機に禁じていた酒を飲み始め、酒乱が高ずる中に宗五郎の哀れが深まり思わず涙がジワーっと来た。

なるほど、こういう芝居か、とはじめて前後の脈絡が繋がって、大団円を素直に受け入れることができた。

前に見た芝居の役者の芸が悪いという訳ではあるまい。僕の観る目が少し育ってきたのだろうが、それにしてもこれまでに観た橋之助の芝居の中でも、今回は見事なはまり役だと思った。

橋之助を意識した最初は歌舞伎ではなく、1988年の山田洋次監督作品「ダウンタウンヒーローズ」だった。その時(公開時)橋之助23歳のはず。今や50歳となり、今秋は「芝翫」を襲名する。ますます楽しみな役者だ。


♪2016-078/♪国立劇場-03

2014年5月7日水曜日

團菊祭五月大歌舞伎 十二世市川團十郎一年祭

2014-05-07 @歌舞伎座



◎歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)   
粂寺弾正 左團次
小原万兵衛 権十郎
小野春風 松 江
腰元巻絹 梅 枝
秦秀太郎 巳之助
腰元若菜 廣 松
錦の前    男 寅
秦民部    秀 調
八剣玄蕃 團 蔵
小野春道 友右衛門

◎歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)  
武蔵坊弁慶 海老蔵
富樫左衛門 菊之助
亀井六郎    亀三郎
片岡八郎    亀 寿
駿河次郎    萬太郎
常陸坊海尊 市 蔵
源義経       芝 雀

新皿屋舗月雨暈
◎魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)  
魚屋宗五郎     菊五郎
女房おはま     時 蔵
磯部主計之助  錦之助
召使おなぎ     梅 枝
茶屋娘おしげ  尾上右近
小奴三吉        橘太郎
菊茶屋女房おみつ 萬次郎
父太兵衛        團 蔵
浦戸十左衛門  左團次


「團菊祭」というのは、明治時代の名優とされる九代目團十郎、五代目菊五郎の功績を顕彰するために昭和11年に始まった興行で、昭和60(1985)年の十二代目團十郎襲名からは五月興行恒例の祭典として行われているそうだ。

そういえば、歌舞伎座正面から入ったところに二人の役者の銅像があることは知っていたけど、それらが九代目團十郎と五代目菊五郎だということを、本日知った。


「毛抜」というのは、歌舞伎らしからぬ外題だし、その内容も奇妙な話だ。
某殿様の婚約者の娘が最近奇病を患い輿入れが延期になったので、部下の粂寺弾正に命じて真相を探らせようとする。
奇病というのは、娘の髪が逆立つというもので、その謎が、弾正の暇つぶしにひげを抜こうと取り出した毛抜が独りでに動き出すことから判明するという話を中心にした、お家騒動の陰謀話で、なかなか付いて行けない話だが、これが歌舞伎十八番の一つだというのは、その様式美に見どころがあるらしいが、僕はよく分からなかった。


その点、同じく歌舞伎十八番の「勧進帳」は歌舞伎以外にもいろんな形で取り上げられているから話もよく知っていたし、これこそ歌舞伎ならではの様式美の極めつけかも知れない。
芝居というより、長唄伴奏の舞踊劇のようでもある。踊りにしては、ずいぶんの力技だが。

弁慶を演ずるのは、あの!海老蔵だが、最初は海老蔵とは思えない。顔が痩せている。でも、8倍の単眼鏡でしっかりと顔つき・所作を観たが、間違いなく本物だった(そりゃそうだろう!)。

声も大きく、所作も大きく、堂々としている、とはいえ、つい、昨年なくなった実父十二代團十郎と比べてしまうとまだ若いかなあ、と思ったが。

義経は菊之助がやるのかと思ったが、芝雀が演じ、菊之助は富樫の方だった。詳しいことは知らないけど、弁慶を市川宗家が代々引き継ぐのと同じように、義経なども家の芸になっているのかも。
「勧進帳」は十分に満足できた。


「魚屋宗五郎」は、歌舞伎らしさには欠けるけど芝居としては面白い。人情喜劇(世話物)で、おかしくて思わず声を出して笑った。

お屋敷に奉公に上がっていた妹の非業の死が原因で、魚屋の宗五郎はやめていたお酒を飲み始めた。父親も女房もむしろ彼に酒を勧め、酔の力で不幸を忘れよということだったが、元々酒乱の宗五郎、飲みだすと止まらない。
だんだん酒癖の悪さが出てきて、周りはもうその辺で、と酒を取り上げようとするが、なかなか言うことを聞かない。そのやりとりの滑稽なこと。
ついには、酔った勢いで、妹の奉公先に乗り込んでさんざん悪態をつき、取り押さえられるが…。

と、悲劇と喜劇が混在した無茶な話だけども、おかしい。

宗五郎を菊五郎が演ずるが、この2枚目がこんなおかしな役をやるとは思ってもいなかったが、うまい。
その女房は時蔵で、なんどかこの人の女形を見ているけど、今回ほどうまいと思ったことはなかった。いや、いつも上手なのだろうけど、今回は物語がおかしくて、女房役の出番も多いからその巧さがようやく分かったのだろう。



♪2014-49/♪歌舞伎座-03