2014年5月7日水曜日

團菊祭五月大歌舞伎 十二世市川團十郎一年祭

2014-05-07 @歌舞伎座



◎歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)   
粂寺弾正 左團次
小原万兵衛 権十郎
小野春風 松 江
腰元巻絹 梅 枝
秦秀太郎 巳之助
腰元若菜 廣 松
錦の前    男 寅
秦民部    秀 調
八剣玄蕃 團 蔵
小野春道 友右衛門

◎歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)  
武蔵坊弁慶 海老蔵
富樫左衛門 菊之助
亀井六郎    亀三郎
片岡八郎    亀 寿
駿河次郎    萬太郎
常陸坊海尊 市 蔵
源義経       芝 雀

新皿屋舗月雨暈
◎魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)  
魚屋宗五郎     菊五郎
女房おはま     時 蔵
磯部主計之助  錦之助
召使おなぎ     梅 枝
茶屋娘おしげ  尾上右近
小奴三吉        橘太郎
菊茶屋女房おみつ 萬次郎
父太兵衛        團 蔵
浦戸十左衛門  左團次


「團菊祭」というのは、明治時代の名優とされる九代目團十郎、五代目菊五郎の功績を顕彰するために昭和11年に始まった興行で、昭和60(1985)年の十二代目團十郎襲名からは五月興行恒例の祭典として行われているそうだ。

そういえば、歌舞伎座正面から入ったところに二人の役者の銅像があることは知っていたけど、それらが九代目團十郎と五代目菊五郎だということを、本日知った。


「毛抜」というのは、歌舞伎らしからぬ外題だし、その内容も奇妙な話だ。
某殿様の婚約者の娘が最近奇病を患い輿入れが延期になったので、部下の粂寺弾正に命じて真相を探らせようとする。
奇病というのは、娘の髪が逆立つというもので、その謎が、弾正の暇つぶしにひげを抜こうと取り出した毛抜が独りでに動き出すことから判明するという話を中心にした、お家騒動の陰謀話で、なかなか付いて行けない話だが、これが歌舞伎十八番の一つだというのは、その様式美に見どころがあるらしいが、僕はよく分からなかった。


その点、同じく歌舞伎十八番の「勧進帳」は歌舞伎以外にもいろんな形で取り上げられているから話もよく知っていたし、これこそ歌舞伎ならではの様式美の極めつけかも知れない。
芝居というより、長唄伴奏の舞踊劇のようでもある。踊りにしては、ずいぶんの力技だが。

弁慶を演ずるのは、あの!海老蔵だが、最初は海老蔵とは思えない。顔が痩せている。でも、8倍の単眼鏡でしっかりと顔つき・所作を観たが、間違いなく本物だった(そりゃそうだろう!)。

声も大きく、所作も大きく、堂々としている、とはいえ、つい、昨年なくなった実父十二代團十郎と比べてしまうとまだ若いかなあ、と思ったが。

義経は菊之助がやるのかと思ったが、芝雀が演じ、菊之助は富樫の方だった。詳しいことは知らないけど、弁慶を市川宗家が代々引き継ぐのと同じように、義経なども家の芸になっているのかも。
「勧進帳」は十分に満足できた。


「魚屋宗五郎」は、歌舞伎らしさには欠けるけど芝居としては面白い。人情喜劇(世話物)で、おかしくて思わず声を出して笑った。

お屋敷に奉公に上がっていた妹の非業の死が原因で、魚屋の宗五郎はやめていたお酒を飲み始めた。父親も女房もむしろ彼に酒を勧め、酔の力で不幸を忘れよということだったが、元々酒乱の宗五郎、飲みだすと止まらない。
だんだん酒癖の悪さが出てきて、周りはもうその辺で、と酒を取り上げようとするが、なかなか言うことを聞かない。そのやりとりの滑稽なこと。
ついには、酔った勢いで、妹の奉公先に乗り込んでさんざん悪態をつき、取り押さえられるが…。

と、悲劇と喜劇が混在した無茶な話だけども、おかしい。

宗五郎を菊五郎が演ずるが、この2枚目がこんなおかしな役をやるとは思ってもいなかったが、うまい。
その女房は時蔵で、なんどかこの人の女形を見ているけど、今回ほどうまいと思ったことはなかった。いや、いつも上手なのだろうけど、今回は物語がおかしくて、女房役の出番も多いからその巧さがようやく分かったのだろう。



♪2014-49/♪歌舞伎座-03