2014年5月5日月曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014 No.374

2014-05-05 @よみうりホール



ジャン=マルク・フィリップス=ヴァリャベディアン (バイオリン)
ラファエル・ピドゥ (チェロ)
ヴァンサン・コック (ピアノ)
【公演No.374 フォル・ジュルネ・カメラータのメンバー】
アナ・ゲッケル(バイオリン)
ベンジャミン・ベック(ビオラ)
東条慧(ビオラ)
ルイ・ロッドゥ(チェロ)
パロマ・クーイデル(ピアノ)

ドボルザーク:スラヴ舞曲集より/op.72-2、op.46-8(コック&クーイデル)
ドボルザーク:静かな森 op.68-5(コック&ロッドゥ)
ブラームス:弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 op.18

Brahms 20's

スラブ舞曲集は2組あって、どちらかと言うと第1集のほうが馴染んでいるような気がする。
これらの音楽もよく催眠導入剤代わりに聴くことが多いので、順番に聴くと第2集まで届かずに寝てしまうこともしばしば。

今日の曲目は、それぞれの舞曲集から、1曲ずつ、多分、最もポピュラーな2曲が演奏された。

ドボルザークのもう1曲はチェロのための作品「静かな森」。これは初めて存在を知った。
ピアノ連弾曲集「ボヘミアの森から」の第5番をチェロとピアノ用に作曲家自身が編曲したものだそうだ。

5分程度の小品で、今となってはどんな曲だったか思い出せない。
Youtubeでも発見できず、NAXOSのサイトで冒頭15秒を聴くことができたが、なるほど静かな森らしい、という音楽。

小品が終わって、今回の「熱狂の日」の掉尾を飾る(というか、そういう選択をしたのだけど)のは、これは聴き逃せないブラームスの弦楽六重奏曲第1番。

Clara Schumann

ブラームスの室内楽で一番最初に惹かれたのはピアノ五重奏曲だ。
この曲で、ブラームスの室内楽という、ちょいとそれまで垣根の高かった作品群が一挙にハードルを下げて、いわばバリアフリー状態になった。
そして相次いでCDを買い漁った。
どの音楽も好きだけど、中でも琴線に触れたのがこの弦楽六重奏曲第1番だ。

第1楽章のメロディーは階段を登ったり降りたりと揺らぎながら少しずつ形を見せてくるが、歌い始めたかと思いきやまもなく微妙に転調したり新しい旋律に覆われたりして、なかなか朗々とは歌ってくれないところは、ハンガリアンダンスなどの民族色の強いものを除いてほとんどのブラームスの作品に共通するのではないかと思っている。
この弾けないストイズムがいい。
この辛抱の良さを楽しむことができたら第2楽章の分かりやすいとてもロマンティックな主題が一層引き立つ。ブラームスがこの楽章をピアノ用に編曲してクララの誕生日祝いにしたというエピソードも、聴いている者を余計に甘い心持ちにさせるらしい(作曲当時ブラームス27歳)。

第3楽章は型どおりのスケルツォ。
第4楽章はロンド。
これがちょっと物足りなさをいつも感ずる。どうしてアレグロソナタ形式にしなかったのだろう。
最終場面にそれなりのクライマックスが用意されているけど、第1楽章の大きなうねりや第2楽章のあふれる情感にきちんとケリをつけるようなカタルシスにやや欠ける、と思うが。

でも、全体としてとても好きだ。
そう一度思い込んだら、印象は変わるものではない。

六重奏の編成はバイオリン2、ビオラ2、チェロ2という、弦楽トリオが2組。六重奏では一般的なようだ。
チェロ2本使うのなら1本をコントラバスに回せばもっと厚みが出るのではと思うけど、そうなればまた別の音楽になってしまうのだろう。

弦楽器ばかりの編成ならではの透明感ある繊細な音色やガリっと脂を飛ばす(ような)重厚なハーモニーが実に美しく、CDではなかなかこの響は再現できない。

かくて3日間の「熱狂の日」の全11コンサートは大好きなブラームスで有終の美を飾って幕を降ろした。


♪2014-48/♪よみうりホール03