2024年2月6日火曜日
令和6年2月文楽公演第1部
2022年12月16日金曜日
未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 本朝廿四孝 (ほんちょうにじゅうしこう)
2022-12-16@国立劇場
●二段目
◎信玄館の段
薫太夫/清允
◎村上義清上使の段
南都太夫/團吾
◎勝頼切腹の段
織太夫/燕三
◎信玄物語の段
藤太夫/宗助
●四段目
◎景勝上使の段
碩太夫/友之助
◎鉄砲渡しの段
咲寿太夫/寛太郎
◎十種香の段
呂勢太夫/藤蔵
◎奥庭狐火の段
希太夫/清志郎
ツレ 燕二郎/琴:清方
アト 聖太夫/清方
◎道三最後の段
亘太夫/錦吾
人形役割
腰元濡衣⇒一輔
常磐井御前⇒文昇
村上義清⇒玉彦
勝頼実は板垣子息⇒紋臣
板垣兵部⇒亀次
蓑作実は勝頼⇒玉佳
武田信玄⇒文司
長尾謙信⇒玉勢
長尾景勝⇒紋秀
花守関兵衛実は斎藤道三⇒簑紫郎
八重垣姫⇒簑二郎
山本勘助⇒玉輝
18年5月に「本朝廿四孝」(全五段)のうち、三段目(桔梗原の段、景勝下駄の段、勘助住家の段)を観たが、なかなか複雑な話に付いてゆけなかった。
今回は、二段目(信玄館の段、村上義清上使の段、勝頼切腹の段、信玄物語の段)と四段目(景勝上使の段、鉄砲渡しの段、十種香[じゅしゅこう]の段、奥庭狐火の段、道三最後の段)だ。
これに最初に初段(大序<足利館大広間の段、足利館奥御殿の段>)と最後に五段目が加わって完成形…という訳でもなく四段目には今回省かれた[道行似合の女夫丸]と[和田別所化生屋敷の段]が<景勝上使の段>に先立つ。
なので、18年の公演と今回を合わせても、「全段」というには、抜けが多いのだけど、おそらく、二、三、四段目(のうちの<景勝上使の段>以降)を観れば、「本朝廿四孝」のほぼ全容が理解できる…らしい。
●感想…と言っても、とにかく、筋が頭の中で筋が繋がらない。特に今回は途中の三段目が抜けているので、解説など読みながら怪しい記憶と格闘したが難しい。
ただ、今回30年ぶりに上演されたという「道三最後の段」を観て、この複雑な戦国絵巻の争いの構図がぼんやりとではあるが、分かった。
ミステリー小説のように、重要な設定が最後までお客には隠されているのでアンフェアな感じもするが、それが明かされる大団円でなるほど、全てのエピソードがこうして繋がるのか、と合点した。
まる1日をかけて、あるいは、短い間隔で全段を観ることができたら、作者が仕掛けた壮大な物語を楽しむことができるだろう。
♪2022-194/♪国立劇場-132021年2月19日金曜日
鶴澤清治文化功労者顕彰記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年2月公演第Ⅲ部
2021-02-19@国立劇場
●冥途の飛脚
淡路町の段
封印切の段
道行相合かご
小住太夫/清𠀋/織太夫/宗助/
千歳太夫/富助/
三輪太夫/芳穂太夫/亘太夫/碩太夫/團七/團吾/友之助/清允
紋臣/亀次/勘市/勘十郎/玉佳/文司/蓑一郎/勘彌/玉翔/玉誉〜
近松の心中もの。ちょうど4年前の2月公演でも上演されて観に行った。
遊女梅川に入れ込んだ飛脚問屋の跡継忠兵衛が、預り金に手を付けてまで身請けしたものの、それまでに築き上げてきた財産も信用もなくした上に法を犯して追われる身となり果てる。
かくなる上は二人して「生きられるだけ生きよう」と必死の道行。
霙の舞う中、一枚の羽織を「お前が」、「忠兵衛さんが」と互いに着せ合うのが美しくも哀しい。
自分で自分を冥土に運ぶ飛脚になってしまった忠兵衛は二十四歳。
梅川も二十歳前後だろう。
分別無くし、運命の糸に絡みとられて死出の旅。
♪2021-015/♪国立劇場-02
2020年9月22日火曜日
人形浄瑠璃文楽令和2年9月公演第Ⅱ部
2020-09-22 @国立劇場
鑓の権三重帷子 (やりのごんざかさねかたびら)
浜の宮馬場の段
藤太夫/團七
浅香市之進留守宅の段
織太夫/藤蔵・清允(琴)
数寄屋の段
切 咲太夫/燕三
伏見京橋妻敵討の段
三輪太夫・芳穂太夫・小住太夫・
亘太夫・碩太夫/清友・團吾・友之助・清公
人形役割
笹野権三⇒玉男
川側伴之氶⇒文司
岩木忠太兵衛⇒玉輝
女房おさゐ⇒和生
浅香市之進⇒玉佳
ほか
2月以来7月ぶりの再開文楽公演は1日4部公演に。第4部は鑑賞教室なので実質は3公演と、まあこれまでも無かった訳ではないが、各部間の待ち時間が1時間以上に延びて、本篇は1時間半〜2時間弱とえらく短くなった。料金は少し安くなったが、時間単価は高くなりぬ。
第2部は「鑓の権三重帷子」で初見。東京では11年ぶりの上演。
近松三大姦通ものの一つだそうな。これは実に面白かった。
そんなつもりは毛頭なけれどちょっとした偶然が重なって、権三と茶道師匠の女房おさゐは姦通を疑われ、疑いを晴らすことなく師匠による妻敵討ちにあう途を選択する。
その喧騒を背景に江戸から帰ったおさゐの夫の手にかかり2人は彼らなりの本望を遂げ、何もなかったかのように祭りは続く。
粋な終わり方にだ。
2人は姦通などしなかった。
が、その後の道行きで両者は深い仲になったのではないか。
それらしき行動も台詞も一切ないが、それを感じさせるところが艶かしい。そうでなくちゃ言い訳もせずに、心中もせずに、おさゐの夫の名誉の為に、妻(め)敵討ち(妻を奪った男を成敗する)を待つなんてたまらないからなあ…と思うのは下衆な感性かな。
♪2020-054/♪国立劇場-05
2019年12月13日金曜日
人形浄瑠璃文楽令和元年12月公演「一谷嫰軍記」
一谷嫰軍記(いちのたにふたばぐんき)
陣門の段
小次郎⇒咲寿太夫
平山⇒小住太夫
熊谷⇒亘太夫
軍兵⇒碩太夫
宗助
須磨浦の段
希太夫/勝平
組討の段
睦太夫/清友
熊谷桜の段
芳穂太夫/藤蔵
熊谷陣屋の段
前:織太夫/燕三
後:靖太夫/錦糸
人形役割
小次郎直家(敦盛)⇒一輔
平山武者所⇒玉翔
次郎直実⇒玉助
玉織姫⇒簑紫郎
遠見の敦盛⇒簑之
遠見の熊谷⇒和馬
妻相模⇒勘彌
堤軍次⇒玉誉
藤の局⇒簑二郎
梶原平次景高⇒紋吉
石屋弥陀六実は弥平兵衛宗清⇒文司
源義経⇒玉佳
ほか
今回の上演は全段ではなくかなり切り詰められているようだ。歌舞伎と駒之助の素浄瑠璃を経験しているがいずれも「熊谷陣屋」しか演らなかったので今回初めて全体の輪郭を理解できた。そして自分の勉強不足に呆れるが、かくも壮大なトリックが仕掛けられているとは!
歌舞伎・文楽の時代物では我が子を犠牲にする話が珍しくはない。菅原伝授手習鑑や伽羅先代萩など。一谷嫰軍記も同様な話だが「熊谷陣屋」だけを観ても、首の入れ替えは既になされているので、違和感が無いのだが、前段の陣門・須磨の浦・組討の段から順に見ていると見事に騙されていたのが分かる。
いや、騙されるのは無理はない。いくらなんでも話に無理がある。
「熊谷陣屋」だけが際立って上演機会が多いのは全段中一番面白いから、という理由だけではなさそうな気がした。
初演は約270年前だそうだが、そんな昔に…よくぞかくも大胆な筋立てを考えたものだ。
Aクリスティの「アクロイド殺人事件」は「一谷嫰軍記」にヒントを得たのでは…いや、さすがにそれはないな。
一方で、これまで「熊谷陣屋」をいかにボーッと観ていたか、恥ずかしくなった。
手元に当代芝翫襲名の際の「熊谷陣屋」のビデオがあるので、年末年始にじっくり観直してみよう。
♪2019-204/♪国立劇場-17