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2017年9月7日木曜日

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部

2017-09-07 @歌舞伎座


一、彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
毛谷村(けやむら)
毛谷村六助⇒染五郎
お園⇒菊之助
杣斧右衛門⇒吉之丞
お幸⇒吉弥
微塵弾正実は京極内匠⇒又五郎

仮名手本忠臣蔵
二、道行旅路の嫁入(みちゆきたびじのよめいり)
戸無瀬⇒藤十郎
小浪⇒壱太郎
奴可内⇒隼人

三、極付 幡随長兵衛(きわめつき ばんずいちょうべえ)
「公平法問諍」
幡随院長兵衛⇒吉右衛門

水野十郎左衛門⇒染五郎
近藤登之助⇒錦之助
子分極楽十三⇒松江
同 雷重五郎⇒亀鶴
同 神田弥吉⇒歌昇
同 小仏小平⇒種之助
御台柏の前⇒米吉
伊予守頼義⇒児太郎
坂田金左衛門⇒吉之丞
慢容上人⇒橘三郎
渡辺綱九郎⇒錦吾
坂田公平/出尻清兵衛⇒又五郎
唐犬権兵衛⇒歌六
長兵衛女房お時⇒魁春

毛谷村も幡随長兵衛も、既に何度も観ているので、どうしても以前の公演との比較で観てしまいがちだ。
菊五郎ー時蔵、仁左衛門ー孝太郎と比べると、今回の染五郎ー菊の助は味わいが乏しい。前2者が人間国宝のベテランであったのに対し、今回はまだ中堅なので、先入観もあるだろうけど、ちょいと軽い気がした。
染五郎の方は、滑稽味もあってそれなりの六助になっているけど、菊之助が硬い。
臼を振り回したり、尺八と火吹き竹を間違うところなど、ここで笑いたいというところでなかなか笑えない。
男勝りからしおらしい世話女房への変化も、何か、型どおりやっていますという感じだったな。

幡随長兵衛は前回が昨年の芝翫襲名だった。
新・芝翫の長兵衛もスッキリとして気持ちよく観れたが、やはり、こちらも吉右衛門の貫禄にはかなわないか。ただ、いつも思うに、子分たちの芝居が平板なので、長兵衛の重い決断がどうも軽く見えてしまう。

吉右衛門は、さすがに序幕で客席から登壇するとにわかに舞台が引き締まる。
ただ、ちょいと年齢的にはキツイ。本物の長兵衛は35、6歳で殺されているらしい。倍以上の歳の長兵衛なら「人は一代、名は末代」などと威勢の良い啖呵を切って殺されにはゆかなかったのではないか。この向こう見ずな意地っ張りぶりに関しては、芝翫の長兵衛が似合っていた。


ところで、序幕で芝居の邪魔をする水野の手勢の相手をして奮闘するのが舞台番の新吉。この役を演じているのが中村吉兵衛という役者で、僕は多分初めて観たと思う。口跡はいいし、顔つきが吉右衛門に良く似ているので、彼の血統かと思って調べたら、門下ではあるけど、他人で、国立劇場の12期研修修了生だそうだ。もう43歳で若いとはいえないけど、ちょっと、見どころのある役者だな、と感じた次第。

染五郎が敵役の水野を演じたが、ここではやはり貫禄負け。

なんか、今年の秀山祭・昼の部はミスキャストが多いな。本人のせいではなくて、文字どおり「配役」で損をしている。

♪2017-145/♪歌舞伎座-05

2016年10月25日火曜日

中村橋之助改め 八代目 中村芝翫 中村国生改め 四代目中村橋之助     中村宗生改め 三代目中村福之助 中村宜生改め 四代目中村歌之助 襲名披露      芸術祭十月大歌舞伎

2016-10-25 @歌舞伎座


山口晃 作
寛徳山人 作
一 初帆上成駒宝船(ほあげていおうたからぶね)
橋彦⇒国生改め橋之助
福彦⇒宗生改め福之助
歌彦⇒宜生改め歌之助

二 女暫(おんなしばらく)
巴御前⇒七之助
舞台番松吉⇒松緑
轟坊震斎⇒松也
手塚太郎⇒歌昇
紅梅姫⇒尾上右近
女鯰若菜⇒児太郎
局唐糸⇒芝喜松改め梅花
東条八郎⇒吉之丞
江田源三⇒亀寿
猪俣平六⇒亀三郎
成田五郎⇒男女蔵
清水冠者義高⇒権十郎
蒲冠者範頼⇒又五郎
     
三 お染 久松 浮塒鷗(うきねのともどり)
女猿曳⇒菊之助
お染⇒児太郎
久松⇒松也

河竹黙阿弥 作
四 極付 幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)
「公平法問諍」
幡随院長兵衛⇒橋之助改め芝翫
女房お時⇒雀右衛門
唐犬権兵衛⇒又五郎
伊予守源頼義⇒七之助
坂田公平⇒亀三郎
御台柏の前⇒児太郎
極楽十三⇒国生改め橋之助
雷重五郎⇒宗生改め福之助
神田弥吉⇒宜生改め歌之助
下女およし⇒芝喜松改め梅花
舞台番新吉⇒吉之丞
坂田金左衛門⇒男女蔵
出尻清兵衛⇒松緑
近藤登之助⇒東蔵
水野十郎左衛門⇒菊五郎


芝翫襲名を前にして不埒?な話題でマスコミを賑わしてしまったのがバッドタイミングだったが、「芸の肥やし」だと開き直れる時代ではないが、ひんしゅくを買ったことも含め、このことは「芸の肥やし」として生きてくるのだろう。

そういう事情もあって、一部にチケットの売れ行きが悪いとかいう説も流れていたが、なんのなんの。

「夜の部」は「襲名口上」のほか「熊谷陣屋」の直実を、一般的に行われている團十郎型ではなく先々代が工夫した「芝翫型」で演ずるという点でも評判が高く、玉三郎が「藤娘」を踊るということもあってか、「夜の部」の3階席のチケットが取れず、「昼の部」にした。

しかし、「昼の部」も襲名披露興行らしい演目が4つも並んでいずれも楽しめた。

一つ目と三つ目はいずれも踊りを味わうもので、まあ、こんなものか。
七之助が巴御前を演じた「女暫」が傑作で、この人はなかなかうまいと思うよ。悪党の首をゾロっとはねて一応幕が閉まるが、その後に松緑が演ずる舞台番の松吉(なんで舞台番がここで登場するのか分からなかったが。)が出てきて、花道の七三で芝翫親子の襲名を祝う巴御前に(この辺も筋はもう無茶苦茶だ。)、六方を踏んで下がるよう勧め、巴御前は女だてらに恥ずかしいとかなんとか遣取りがあって、結局松吉に教わった六方の型を少し、その型も恥ずかしさに崩して花道を下がるという段取りで、本来の芝居の部分に取って付けたような筋の通らない話だが、ま、ここは何でもありの歌舞伎ならではのサービスだ。

いよいよ、「幡随長兵衛」が新・芝翫の見せどころ。
男気を通して殺されるという、ちょっと馬鹿な話なのだけど、丁寧な話の作りで、長兵衛(芝翫)やその女房(雀右衛門)たちの心情の機微がよく伝わって、気持ちが芝居に入り込んだ。
6月国立劇場での「魚屋宗五郎」の橋之助は素晴らしかったが、こういう世話物というのか、町衆の心意気などを演ずるとまことにハマって巧いと思うよ。

今回は、芝翫、七之助、松緑が実に良かった。

♪2016-147/♪歌舞伎座-07