2018-06-09 @NHKホール
ウラディーミル・アシュケナージ:指揮
NHK交響楽団
ジャン・エフラム・バヴゼ:ピアノ*
イベール:祝典序曲
ドビュッシー:ピアノと管弦楽のための幻想曲*
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:交響詩「海」
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ドビュッシー:前奏曲第2集から第12曲「花火」*
1月ぶりのN響だが、その間にオーケストラコンサートを5つ聴いた。出来不出来はいろいろだが、総じて満足度はイマイチだった。そのうち、こんな程度でもよしとするか、みたいな気になってきて自分の満足度ものさしも怪しくなってくる。
しかし、今日のN響を聴いて、ものさしは高いレベルでリセットされた。やはり、管弦楽というのは、このくらいの音を、響を出してくれなくちゃと思う。
イベールの「祝典序曲」は初聴き。日本政府が皇紀2600年を祝して委嘱した作品だそうで、当然、初演は日本でその年、つまり西暦では1940年に行われた。和風な感じは…中間部がちょっとそんなサービスしているのかな、とも思えるけど、そう思って聴くからであって、日本国の祝の音楽だと知らなければかなり壮大な音楽だった。
第1曲以外はすべて(アンコールのピアノ曲も含めて)ドビュッシーばかり。
ピアノと管弦楽のための幻想曲は聴いた気がするのだけど、記録にはないのでナマでは初聴きだったのだろうか。3楽章形式なので、変形ピアノ協奏曲のようなものだ。
ここで、ジャン・エフラム・バヴゼのピアノがなかなか効果的だった。という言い方も変だが、とても光っていた。
かれは珍しくYAHAMAを選んでいた。YAMAHAは重く石のような音がするので、あまりきらびやかには聴こえないのだけど、彼の力強い奏法ではぴったりなのかもしれない。
特にアンコールで弾いた「花火」が凄かった。本当にドビュッシーがあのとおりの楽譜を書いたのだろうか、と疑問に思うくらい、超絶技巧で、かつ、力強かった。あれほど叩いても壊れないのがYAMAHAの魅力かもしれない。
休憩を挟んで牧神の午後〜がなんとも精緻極まりない。オケの編成は中規模。バイオリンは数えられないが、コンバスは4本しか立っていなかった。それでも豊かな響だ。
この響の美しさを思う時、都響はやたら、編成が大きすぎる。ほとんどの曲でほぼ16型と思しき大編成で、可視的に数えられるコンバスは大抵8本並んでいるが、それで弦楽アンサンブルが厚いかというと必ずしもそうでもなく、むしろ暑苦しいとさえ思わせる時がある。やはり、あの何でも大編成は考えものだと、N響の編成を見て感じたよ。
そして、交響詩「海」も管と弦が見事に呼応して美しい。
まず持って、管楽器にヒヤヒヤする心配がないのがよろしい。
そして弦楽器はシャリシャリもキンキンもしない。管弦楽アンサンブルとはこれだという見本を聴かせてくれる。
もちろん、今日のマエストロ、アシュケナージの薫陶が十分行き渡っていたのだと思う。
こういう高水準のものさしを聴いてしまうと、他のオケがまるでアマチュアのようにさえ思えてくるのが悲しい。
新しい角度から聴き直さなくてはなるまい。
♪2018-067/♪NHKホール-06
2018年6月9日土曜日
2016年6月12日日曜日
N響第1838回 定期公演 Aプログラム
2016-06-12 @NHKホール
ウラディーミル・アシュケナージ:指揮
NHK交響楽団
ルステム・ハイルディノフ:ピアノ*
バラキレフ(リャプノフ編):東洋風の幻想曲「イスラメイ」
チャイコフスキー:協奏的幻想曲ト長調作品56*
メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」
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アンコール
フェリックス・ブルーメンフェルト:左手のための練習曲 作品36*
前回のN響定期から今日までの間に他のオケを11回も聴いた。普通に定期演奏会だけを聴いておれば6~7回にしかならないはずだけど、5月から6月にかけては振替のコンサートが集中したこともあって、随分忙しかった。おまけに体調がずっと優れなかったから、本当はじっくり音楽を聴くような状況ではなかったが、だからといって欠席するのも癪なので、結局はほぼ休み無しであれこれと聴きに走った。
そのうち幾つかの演奏会、あるいは演奏曲目については心躍るものがあった。
しかし、全体を通じて、共通する不満が程度の差はあれども払拭できなかった。それは、弦の透明感の不足だ。
この頃、体調が悪いということも原因しているのだろうか、どうもオケの演奏に前向きになれない。何か、欠点を探そうとしているようなところがあって、我ながら嫌になる。
そういう、いわば、観賞鬱状態なので、よほどすごい!と思わせるものでなければ、失敗ばかりが耳について困ったものだ。
が、しかし。
この一月、ざわついた弦に欲求不満が募っていたがやっぱりN響!見事晴らしてくれた。
バランスいいし乙張効いて弦の透明度も高い。
チャイコの協奏的幻想曲のピアノの超絶技巧を楽しんだ。
ルステム・ハイルディノフがアンコールに弾いたフェリックス・ブルーメンフェルトの「左手のための練習曲」は、作曲家自体知らなかったが、これもすさまじいテクニックだった。何しろ、両手でも相当難しいと思われるが、右手を封じて素早いアルペジオを繰り広げ、そこに旋律を載せるのはもうアクロバットだ。
2016-083/♪NHKホール-05
https://youtu.be/DpGn0KLQwV0
2014年6月7日土曜日
N響第1784回 定期公演 Aプログラム
2014-06-07 @NHKホール
パトリツィア・コパチンスカヤ(バイオリン)
ウラディーミル・アシュケナージ指揮
NHK交響楽団
◎グラズノフ:交響詩「ステンカ・ラージン」作品13
◎プロコフィエフ:バイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
--------アンコール
◎ホルヘ・サンチョス・チョン:クリン(Vnソロ)
◎チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71から第2幕
第1曲 情景(砂糖の山の魔法の城で)
第2曲 情景(クララと王子)
第3曲
a)チョコレート(スペインの踊り)
b)コーヒー(アラビアの踊り)
c)お茶(中国の踊り)
d)トレパーク(ロシアの踊り)
e)あし笛の踊り
f)ジゴーニュおばさんとピエロ
第4曲 花のワルツ
第5曲 パ・ド・ドゥー
アダージュ/タランテラ/金平糖踊り/コーダ
第6曲 終わりのワルツと大詰め(アポテオーズ)
「ステンカ・ラージン」がロシアの傑物の名前であることは、たぶん同名のロシア民謡から覚えたのだろう。
グラズノフの交響詩「ステンカ・ラージン」は、そのステンカ・ラージンにまつわる伝承物語を、やはり彼をたたえて作られたロシア民謡の「ボルガの舟唄」のメロディをモチーフにして構成されている。
中学生くらいのだったろうか、ロシア民謡「ステンカ・ラージン」の哀愁に満ちた旋律をよく歌って、今でも覚えているが、こちらの旋律も使われるのかと期待して聴いていたが、こちらは使われていなかった(…と思う)。
交響詩が冠されているが、ソナタ形式らしい。
親しみやすい、そしてロシアの香りに満ちた音楽だった。
この日の演奏はNHKFMが中継放送していたので、それを録音したものが早速Youtubeに投稿されていた。
プロコフィエフは、ショスタコーヴィチらとともにいわゆるジダノフ批判(1948年から10年間)で翻弄された作曲家のひとりだが、本日の演目バイオリン協奏曲第2番は「批判」の10年以上前の作品なので、まあ、のびのびと作ったのではないか。というより、彼の作品のほとんどは「批判」前に完成しているので、過去の作品についてほじくり返されて批判を受けたのか、具体的なことは知らないけど、国が芸術、とりわけ音楽を管理するなんて、恐ろしいことだ。
で、そのプロコフィエフの音楽だけど、これが馴染みが少ない。
この曲も聴いたことがない訳ではないけどCDの手持ちもないので予習もできずに臨んだが、果たして冒頭の特徴的なテーマはかすかに記憶があったが、進むに連れ未知との遭遇状態になった。
ほぼ同時代、同国人のショスタコーヴィチの音楽も、調性が頻繁にゆらめくのは同じだけど、ショスタコの場合は(これは聴き慣れているからかもしれないけど)あまり違和感ないのだけど、プロコフィエフはどうもメロディーが掴みにくい。
それでいてト短調と銘打っているので、調性はかろうじて維持しているのだろうが。
美しい口ずさめるような旋律は皆無だけどその代わりリズムが面白い。
冒頭の第1主題にしても4/4拍子だけど、5拍子のようなリズムだし、第2楽章も12/8というちょっと変わったリズムだ。
最終楽章は無窮動のようで忙しくソロバイオリンは休む間がない。
まだこれからも何度も聴く機会があるだろう。
だんだんと味わいが深くなるのに期待しよう。
バイオリンソロのコパチンスカヤ。
モルドヴァ生まれの30歳代後半。色白の大型美形だ。純白のドレスに血痕が滴っているような大胆なドレスだったが、長い裾から時々素足が見えた。
都はるみだったか、歌うときは裸足で地に足つけた方が力が入るとか言っていたが、彼女もそれを実践しているのだ。
なかなか迫力のあるバイオリンだった。
後で知ったのだけど、アンコールの「クリン」は彼女の定番らしい。
初めて聴いたが、超現代的な無伴奏作品で、声楽というか、口三味線というか、弾きながら意味不明の嬌声を発して、びっくりしている間に終わって、客席からは笑いとともに大きな拍手が起こった。
最後はチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」作品71から第2幕。
こういう聴き方は初めてだった。
よく演奏会で取り上げられるのはバレエ組曲「くるみ割り人形」(作品71a)で、バレエ音楽の中からチャイコ自身が8曲を選んで組曲にしたものだ。
で、今日演奏されたのは元々のバレエにつけた音楽の内、第2幕の音楽全曲だ。
でも、チャイコが組曲として選んだ8曲の内6曲までが第2幕から取られているので、馴染みの少ない曲はわずかでしか無く、全体としてとても楽しめた。
終わって、万雷の拍手に応えるアシュケナージは、自身が演奏に満足できたのか、嬉しくてはしゃいでいるようだった。
今日はFM放送生中継のほか、テレビカメラも入って録画をしていたので、いずれクラッシク倶楽部などで放映されるだろう。
コパチンスカヤのプロコフィエフを是非とももう一度聴きたい。
彼女の迫力ある表情を間近に観ながら聴きたい。
♪2014-59/♪NHKホール-03