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2023年6月10日土曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 令和5年6月歌舞伎鑑賞教室(第103回歌舞伎鑑賞教室) 『日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―』

2023-06-10 @国立劇場



●解説「歌舞伎のみかた」
 中村虎之介
 中村祥馬

●日本振袖始 一幕
―八岐大蛇と素戔嗚尊―
出雲国簸の川川上の場

岩長姫実ハ八岐大蛇 ⇒中村扇雀
稲田姫       ⇒中村鶴松
素戔嗚尊       ⇒中村虎之介


令和5年6月歌舞伎鑑賞教室
『日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―』

●解説「歌舞伎のみかた」

近松門左衛門=作
戸部銀作=脚色
●日本振袖始 一幕
 ―八岐大蛇と素戔嗚尊―
(にほんふりそではじめ-やまたのおろちとすさのおのみこと-)
  二世藤間勘祖=振付
  高根宏浩=美術
  野澤松之輔=作曲
  十一世田中傳左衛門=作調
出雲国簸の川川上の場



夏の恒例観賞教室。「日本振袖始」は18年にも観賞教室で観ている。その時は時蔵・錦之助(兄弟)で。今回は扇雀・虎之助(親子)。

虎之助を初めて観たのは10年前(その時15歳)で、ずいぶん上手くなったというか、達者になっているので驚いた。

今回は、「解説」も担当したが、中村祥馬との掛け合いも面白く、これまでに何回も観賞教室を観ているが、その「解説」の中で一番堂に入って面白かった。1階客席を埋めた高校生(中学生も?)に大いに受けていたが2階席の高齢者ゾーン?も大いに楽しんだ。

『日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―』は近松の作とも思えないような、スペクタクル時代ものだが、舞踊劇で、あまりセリフはない。しかし、早替わりの大蛇と7人(頭?)の分身が同じ衣装を纏って素戔嗚尊と立ち回る。

浄瑠璃・三味線が4人ずつ、御簾の中ではなく舞台で演奏し、大薩摩も登場して賑やかで見栄えのする舞台だ。

♪2023-104/♪国立劇場-07

2019年6月20日木曜日

令和元年6月 第95回歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」

2019-06-20 @国立劇場


福内鬼外=作
神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし) 一幕
    国立劇場美術係=美術
       頓兵衛住家の場

(主な配役)
渡し守頓兵衛⇒中村鴈治郎
娘お舟⇒      中村壱太郎
船頭八助⇒     中村寿治郎
傾城うてな⇒ 上村吉太朗
新田義峰⇒     中村虎之介
下男六蔵⇒     中村亀鶴
        ほか

2回目なので「歌舞伎のみかた」は省略して本篇から参入…というか、本当は緊張感なく、寝坊して間に合わなかっただけ。


注目は終盤の壱太郎の「人形振り」だ。
前回、この演出に唸ったが「振り」は改善の余地ありと見て10日間の精進ぶりを観察。
ま、それなりの進歩あり。
最後の櫓の場面では人形から人間に戻るが、狭い所で黒衣と3人では無理なのだろう。

「人形振り」では当然目玉を開けたまま動かさない。観ながら僕も瞬きを我慢してみたがとても続かない。何気ない処でも訓練・精進だなあ。

人形を遣う黒衣役の演技に不満が残ったがこれはやむを得ないか。

それにしても、今回の芝居で壱太郎は歌舞伎役者として確実に一ステージ高みに登ったと思う。鑑賞教室、侮るべからず。


♪2019-085/♪国立劇場-09

2019年6月10日月曜日

令和元年6月 第95回歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」

2019-06-10 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた  中村虎之介

福内鬼外=作
神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし) 一幕
    国立劇場美術係=美術
       頓兵衛住家の場

(主な配役)
渡し守頓兵衛⇒中村鴈治郎
娘お舟⇒     中村壱太郎
船頭八助⇒    中村寿治郎
傾城うてな⇒ 上村吉太朗
新田義峰⇒    中村虎之介
下男六蔵⇒    中村亀鶴
        ほか

通し狂言としても観たことがあるが、全幕中で一番の見所が大詰「頓兵衛住家の場」だろう。今回は鑑賞教室ということもあってこの幕だけが上演された。

前回は頓兵衛を歌六、お船を雀右衛門(当時:芝雀)が演じて素晴らしく印象に深く残っていたが、今回は鴈治郎に壱太郎という実の親子の共演だ。

近年成長著しい壱太郎がどこまで一途な<お船>の純情と命がけの想いを見せてくれるのかが楽しみだった。

が、終盤の見せ場〜
お船が一目惚れした新田義峰を追っ手から逃してやるために、義峰の身代わりとなって、欲深かな実の親・頓兵衛に刺され、打擲され、ボロボロになっても這いつくばって櫓に上がり、鐘を突いて追っ手の囲みを解こうとする〜
を「人形振り」で見せるという演出に本当にびっくり。

人形になりきった壱太郎には2人の黒衣(くろご)が付き、当然表情を変えない。着物の袖からほんの少し顔を出す白塗りの揃えた手指は本物の人形のように可愛らしい…

のだが、不思議なことにむしろ観ている側の感情は激しく揺さぶられた。

この人形振りにはまだ、研究の余地があるとは見たが、雀右衛門のお船とは別趣の悲劇性が高められ、思わず見入ったものである。
楽日は予定があってゆけないが、少し手前にもう一度観にゆくべくチケットを買った。あと10日余りでどれほど腕を上げているか、楽しみだ。

♪2019-078/♪国立劇場-08

2019年3月19日火曜日

三月歌舞伎公演(小劇場)元禄忠臣蔵/積恋雪関扉

2019-03-19 @国立劇場


(主な配役)
『元禄忠臣蔵』
徳川綱豊卿⇒中村扇雀
富森助右衛門⇒中村歌昇
中臈お喜世⇒中村虎之介
新井勘解由⇒中村又五郎
                     ほか
『積恋雪関扉』
関守関兵衛実ハ大伴黒主⇒尾上菊之助
良峯少将宗貞⇒中村萬太郎
小野小町姫/傾城墨染実ハ小町桜の精⇒中村梅枝

真山青果=作
真山美保=演出
●元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)二幕五場
 御浜御殿綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう)
      伊藤熹朔=美術
      中嶋八郎=美術
第一幕 御浜御殿松の茶屋
第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間
        同      入側お廊下
        同      元の御座の間        
        同      御能舞台の背面

宝田寿来=作
●積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと) 
 常磐津連中
 国立劇場美術係=美術

小劇場での公演は12年ぶりだそうな。僕は初めての経験だ。小劇場だから2階はない。故に、第劇場公演ならいつも決まって席を取るお気に入りの2階最前列花道寄り通路側で観ることもできない。で、どうせ1階で観るなら前方花道寄りがよかろうとその辺をとったが、これが大正解だった。

個々の役者の熱心なファンという訳ではないので、役者がよく見えるより、舞台全体を俯瞰したいというのが2階最前列の意図なのだけど、今回は、役者の近くに座ってみ、なるほどこういう楽しみ方もあるかと納得した。

やはり迫力がある。セリフが聞き取りやすい。

さて、小劇場での公演は、国立劇場の説明によると、「上演が途絶えていた名作の復活や、次代を担う俳優が初めて大役を勤める舞台など“挑戦する小劇場歌舞伎”として上演を重ねてきました。」そうだ。

なるほど、それで、大看板は出ていないが、ベテランに中堅を配し、かなり意欲的な布陣とみた。

「元禄忠臣蔵」では扇雀、又五郎というベテランに対し、歌昇と虎之介が担ったのは彼らがこれまで演じていた役より少し大きめの役であったように思う。そこでの彼らの熱演は、これまでの2人の印象をガラッと変えてしまった。
歌昇も虎之助も実にうまい。なるほど与えられたら大きな役もできる力を持っているのだ、と大いに感心した。

常磐津の大曲『積恋雪関扉』での菊之助と梅枝も同様で、菊之助の場合は既に中看板くらいの存在になっていると思うが、それでも大伴黒主は初役だそうだ。因みに、今回の歌昇、虎之介、梅枝が演じた役もすべて初役。)。

これまでにも大ベテランで観たことがある演目であるが、その面白さは分からないでいたが、この2人も実に熱の入った演技で目が覚めるように話がよく分かって踊りも楽しむことができた。

国立劇場ならではの企画だが、見事に成功したと思う。何年かに一度はこういう機会を若手に与えることは大切なことだと、観客にも納得させる内容だった。

♪2019-034/♪国立劇場-05

2014年6月20日金曜日

平成26年6月社会人のための歌舞伎鑑賞教室「ぢいさんばあさん」

2014/06/20 @国立劇場大劇場


中村扇雀
坂東亀三郎 
中村国生
中村虎之介
中村児太郎  
中村橋之助
      ほか

解説 歌舞伎のみかた   中村虎之介
                                 
森鷗外=作
宇野信夫=作・演出
ぢいさんばあさん  三幕
                   高根宏浩=美術
             川瀬白秋=箏曲    
       
  第一幕  江戸番町美濃部伊織の屋敷
  第二幕  京都鴨川口に近い料亭
  第三幕  江戸番町美濃部伊織の屋敷



1月近い興行の間に2日間だけ社会人を対象とした歌舞伎鑑賞教室が開かれる。と言っても、働いている人のために19時という遅い時刻から始まるという以外は、フツーの歌舞伎鑑賞教室(主として中高生などの団体観賞を意図している。)と変わるところはないし、社会人だからといって、学生用の鑑賞教室に入場できないという訳ではない。
でも、学生ばかりだと、大向うからの掛け声もないだろうし、それでは歌舞伎の雰囲気も出ないし役者もやりにくかろう。
そういうこともあり、今回は社会人のための鑑賞教室を選んだ。

最初に30分位だろうか、歌舞伎解説がある。
歌舞伎一般に関する基礎知識入門編だ。

緞帳が降りたまま客席が真っ暗になり、やがて、客席内から若々しい声が響きそこにスポットライトが当たった。
今日の説明役中村虎之介(扇雀の長男)だ。
よく通る声で、実に明るく愛想よく楽しそうに、歌舞伎の主要な表現方法や下座音楽を実演入りで見せながら解説し、普段は絶対に見られない黒御簾の中や、花道のすっぽん、直径20mもある廻り舞台の全景を見せてくれる。

歌舞伎鑑賞教室は過去の一時期は常連だったので、これらの裏方事情も初見ではないけど、歌舞伎の一舞台が大変な労力をかけて創りだされるということがよく分かって、疎かには観られぬと気持ちが高まる。
歌舞伎を初めて観る人にとっても、親しみを感ずるためにとても良い機会だと思う。

社会人のための鑑賞教室が今回の演目で2日間・2回しか上演されないことや、観劇料が破格に安いので、席はほぼ満席状態であった。

歌舞伎鑑賞教室は、観劇料が安価であるにもかかわらず、薄っぺらいけどプログラムも無料(一般公演の場合は800円。歌舞伎座は1200円!)で、希望者には台本まで無料で配られる。
しかも、橋之助・扇雀といった一流の役者の出演で、手抜きなしの本格的な芝居が観られるのは実にありがたいことだ。



「ぢいさんばあさん」は、おしどり夫婦(伊織=橋之助、妻るん=扇雀)の生き別れと再会の物語だ。
るいの弟久右衛門(虎之介)の不始末に代わって義兄の伊織が京都の勤務になったが、そこで、性悪の同僚を殺めてしまったことから、越前の某家に預かりの身になり、家禄も没収されたのだろう、るんは筑前某家に奥奉公をすることとなって、夫婦は生き別れ状態となる。

そうして37年が過ぎだ。
夫婦の一粒種はとっくに病気で死に、るんの弟も既に亡く、かつて伊織・るん夫婦が平安な日々を過ごした屋敷は久右衛門の息子夫婦が守りをしていた。

ようやく預りの身分が解かれた伊織は江戸へ戻ることになった。間接に連絡を受けたるんも暇を願い出て認められ、その日、七ツをメドに懐かしい屋敷に戻り、再会を果たす。


こういう物語をもし、テレビドラマにすれば30分で終わってしまうだろうが、歌舞伎は3幕、90分?をかけてじっくり見せる。

1幕と3幕は同じ夫婦の屋敷。
しかし、その間に37年が経過しているので、庭の桜も大きく成長している一方で、夫婦はすっかり老人となっている。

留守を守っていた若い甥夫婦の登場も、37年の時の経過を感じさせる(原作にはない)舞台劇ならではのうまい脚色だ。

滑稽味もあるが、夫婦の互いを気遣う心情や再会の喜びが観る者の共感を誘う。
るんが2人の再出発に当たって、2人の息子の墓参りと伊織が切った同僚の墓もお参りしましょう、と言うところがしんみり泣かせる。
たまたま先日観た邦画「ここのみに光り輝く」でも似たようなシーンが感動的だったので、両者がダブって余計に胸を打った。

歌舞伎はすべての所作が踊りのように滑らかで丁寧で、どの瞬間を切り取っても芸が息づいていると思うが、橋之助と扇雀の穏やかな、そしてピッタリと呼吸を合わせた掛け合いに、至福の時を感じた。

帰りの東京駅までのバスの中では、あゝ、そのうちどちらかが要介護認定を受けるんだなあなどと厳しい現実を思い起こしてしまったが。

♪2014-62/♪国立劇場-03