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2024年12月17日火曜日

令和6年12月文楽公演 第二部

2024-12-17 @県立青少年センター



●第二部 (午後2時30分開演)
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)
 熊谷桜の段
 熊谷陣屋の段

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
 阿古屋琴責の段 






2公演を1日で観たので文楽漬けだったが、全然没入できなかった。字幕がないから。

全作品、数回は鑑賞済みなのでどういう話かは分かっているが、念を入れた詞章を味わう楽しみは別次元だ。

字幕なしで江戸時代の大阪の言葉を、それも掛け言葉やしゃれ、語呂合わせをふんだんに使う言葉遊びの世界でもあるのに耳からだけで理解できる訳がない。

自分のスマホで字幕アプリが使えます、と
は国立劇場のホームページや会報「あぜくら」にも書いてある。

それは、通常の字幕のほかに使うこともできるという意味だと考えていた。それで一応アプリもDLしておいたが、使う気はなかった。

ところが、まさかの「字幕なし」だよ。

途中からやむを得ず「字幕アプリ」を使ってみたが見づらいこと甚だしい。遠い舞台と手元のスマホに焦点を合わせられるお客はどれだけいるか?ほとんど高齢者ばかりなのに。

有料プログラムもいつも買っているが、買いたくない人もいるだろう。それに、演出によっては(今日の第三部「曾根崎心中」のように)客電も落とした薄暗い中で読めたものではない。
字幕なしで文楽が楽しめる者がどれほどいるだろう?

漂流する国立劇場は、お客様サービスも考えられないほどの迷走ぶりだ。

十数年、あぜくら会会員として、国立の歌舞伎と文楽は余程のことがない限り欠かさず観て来たのに、次回以降も字幕なしではもう止めようかしらと思う。



♪2024-175/♪県立青少年センター-1

2019年2月2日土曜日

人形浄瑠璃文楽平成31年02月公演 第3部

2019-02-02 @国立劇場


第三部
鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)
 中将姫雪責の段
     前⇒  靖太夫/錦糸
     奥⇒  千歳太夫/富助
     胡弓⇒    錦吾

  人形▶紋臣・一輔・二郎・文哉・紋秀・清五郎・簑助・玉也

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
 阿古屋琴責の段
     阿古屋⇒ 津駒太夫
     重忠⇒  織太夫
     岩永⇒       津國太夫
     榛沢⇒       小住太夫
     水奴⇒       碩太夫
          清助
     ツレ⇒       清志郎
     三曲⇒       寛太郎

  人形▶玉助・文司・玉翔・勘十郎・勘助・玉路・和馬・簑之

Ⅰ部、Ⅱ部は後日に回して。
Ⅲ部は「鶊山(ひばりやま)姫捨松」中将姫雪責の段と「壇浦兜軍記」阿古屋琴責の段。
2本とも若い女性が責められまくる話って、ちょっと興奮させる?
後者は歌舞伎の玉三郎で観たが人形では初めて。前者は歌舞伎も知らない。

「鶊山姫捨松」では、権力闘争の煽りを食って、無実の中将姫が雪の舞う庭で、継母岩根御前による殺害目的の折檻を受ける場面=雪責めがメインだ。

打掛を剥がされ竹刀でさんざの打擲に苦しむ姿を、豊澤富助の三味線に乗せ竹本千歳太夫が振り絞るように語り、人間国宝吉田簑助が人形に命を吹き込む。

「壇浦兜軍記」は傾城阿古屋が、源氏方代官重忠と岩永から、彼女が馴染みだった平家の重臣・景清の行方を聞き出そうと拷問を受ける一幕だ。
逸(はや)る岩永を制して冷静な重忠は阿古屋に琴・三味線・胡弓を弾かせその調子で阿古屋の本心を探ろうとする。
歌舞伎では一人の役者が3種を操る処が見どころ。

文楽でも同様だが、ここでは人に操られる人形が演奏するフリをするという屈折した面白さがある。
楽器の実演は三味線方(鶴澤寛太郎の見事な演奏)が担うが、それに合わせて、さも演奏しているかのようにピタッと合わせて阿古屋を遣うのが桐竹勘十郎の名人芸。見事でありおかしくもある。

観客は、寛太郎の演奏を横目で見ながら勘十郎が遣う人形のフリを同時に見るので、撥・弓・指遣いの微妙な仕草までシンクロするのがよく分かって只管感心するが、舞台上の憎まれ役岩永も阿古屋の名演につい惹き込まれる様子も傑作で、場内は笑い声が広がる。津駒太夫・織太夫らも名調子。

阿古屋琴責めでは中将姫雪責めと違って、三味線方も太夫も大勢で人形を演じ分け、責めるといってもこちらは優雅なもので傾城の見事な衣装も楽しめるし、賑やかで、おかしくてホンに楽しい一幕ではあった。

♪2019-010/♪国立劇場-02

2015年10月7日水曜日

松竹創業120周年 芸術祭十月大歌舞伎 壇浦兜軍記 阿古屋〜梅雨小袖昔八丈 髪結新三

2015-10-07 @歌舞伎座


一 壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
 阿古屋

 遊君阿古屋⇒玉三郎
 岩永左衛門⇒亀三郎
 榛沢六郎⇒功一
 秩父庄司重忠⇒菊之助

 Ⅱ世尾上松緑二十七回忌追善狂言
二 梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)
 髪結新三

 序 幕 白子屋見世先の場 
     永代橋川端の場
 二幕目 富吉町新三内の場
     家主長兵衛内の場
     元の新三内の場
 大 詰 深川閻魔堂橋の場

 髪結新三⇒松緑
 白子屋手代忠七⇒時蔵
 下剃勝奴⇒亀寿
 お熊⇒梅枝
 丁稚長松⇒左近
 家主女房おかく⇒右之助
 車力善八⇒秀調
 弥太五郎源七⇒團蔵
 後家お常⇒秀太郎
 家主長兵衛⇒左團次
 加賀屋藤兵衛⇒仁左衛門
 肴売新吉⇒菊五郎


歌舞伎鑑賞は月1回と決めていたけど、今月は一昨日の国立劇場に続いて歌舞伎座の夜の部を観た。

なぜか、と言えば、玉三郎の舞台は過去に観たことがなかったし、それも「阿古屋」をやるという。この作品も初めてだけど、何が見どころか、ぐらいは本で読んで知っていたので、一度は観ておきたいと思ったのが一つ。

それと、髪結新三を松緑が演るというのに大いに惹かれた。
「髪結新三」は3月に国立劇場で橋之助の髪結新三を観たばかりだ。これはこれで悪くはなかったが、橋之助は品が良すぎて新三のワルぶりが僕にはピタッとこなかった。今回は、松緑が演るという。これはお似合いだと思う。是非観たい。


「阿古屋」
今も頼朝の命を狙う平家の武将平の悪七兵衛景清(あくしちひょうえかげきよ)の行方が分からない源氏方は、景清の愛人・傾城阿古屋(玉三郎)を堀川御所に引きたてその所在を問う。
取り調べに当たるのが秩父庄司重忠(菊之助)とその助役岩永左衛門致連(亀三郎。<致連⇒むねつら>)だが、彼女は知らないという。
そこで致連は阿古屋を厳しく拷問にかけて白状させようとするが、重忠はそれを制して理と情に訴えて諭す。
それでも本当に知らない阿古屋は私の言葉が信じられないならいっそ殺してくれという。
そこで、重忠も意を決してあらためて阿古屋を拷問にかけようと責め道具を準備させる。
その道具というのが、琴、三味線、胡弓である。

これじゃ、拷問にならないじゃないの…。

と、フツーは不審に思うはずだけど、事情を知ったる観客には、むしろ、「よ、待ってました」という感じだ。

物語の合理性には頓着しない。
面白ければ何でも取り込む。
こうやって、歌舞伎は発展してきたのだろう。西洋の合理主義では捉えきれない飛躍・跳躍の芸だと思う。

玉三郎が、相当重いと思われる鬘や衣装を身に纏い、3種類の楽器を順番に実際に弾いてみせる。
もっとも完全な独奏ではなく、三味線の伴奏・掛け合いも入るので、この呼吸を合わせるのも容易ではないだろう。

琴、三味線には下座音楽の三味線がある程度代わりができるが、胡弓の音楽は三味線では代用できないので、気が抜けない。いや、全部気を抜いたりしていないだろうが。
それだけでもう感心してしまうのだけど、終始、その姿形が美しい(楽器を操るにはかなり無理があるにもかかわらず。)。

演奏の合間には取り調べの重忠と阿古屋の間に問答があり、問われて景清との関係を阿古屋が音楽に託して説明する段取りだ。
彼女の演奏を聴き終えて重忠は景清の行方を知らないという阿古屋の言葉に偽りがないと判断する。

異を唱える致連に、重忠は、もし阿古屋の心に偽りがあれば、演奏に心の乱れが表れるはずだが、一糸の狂いもなかった、と応え、阿古屋を釈放する。

この芝居は圧倒的に阿古屋の芸を見せるためのものだ。それだけでもう十分とも言えるが、他にも観客を楽しませる仕掛けがある。
元は人形浄瑠璃であったことからその芸を取り込もうとしたのか、遊び心からなのかは知らないけど、致連役が人形振りで演じられる。劇中はもちろん代官の助役という役だが、彼だけは人形のカタチで演じられる。
人形であるので、セリフは浄瑠璃(竹本)が語るので演じている役者は言葉を発しない。
人形であるので黒子が2人付く(ここで黒子はフツーの黒子ではなく、黒子の<役>を演じているのだ。歌舞伎座の「筋書き」にも登場人物として扱われている。)。
黒子によって操縦される人形になりきるので、動きもそのようなぎこちなさをわざと見せる。
顔も手も真っ赤に塗られており(<赤っ面>というそうだ。)、眉は人形のように上下する。
重忠が白塗りであるので2人は好対照になっている。

この動きや無・表情がおかしい。致連の一人芸だけでも一幕が成り立ちそうだ。

亀三郎の芝居はだいぶ見ているけど大きな役としては国立劇場での「壺坂霊験記」の沢市くらいしか覚えていなかったが、致連のおかしさで、強くインプットされた。

菊之助の重忠も、声もよく通るし、これまでにない力強さを感じた。


で、竹田奴って何?
致連が阿古屋を責めさせようとして呼び出すが、重忠の「鎮まれ、鎮まれ!」の言葉で、キャッキャと言ってすぐ引き下がる。
文楽人形の端役を模しているらしいが、何でもありの歌舞伎だとはいえ、これは何を意味しているのかさっぱりわからない。
人間国宝玉三郎の重厚な演技とは全く溶け合わない演出だが、昔からの決まり事なのだろうけど出てこない方がいいのに。




髪結新三
主要な登場人物が全員悪党というのがおかしい。
中でも一番悪党は新三(松緑)からまんまと15両と滞納家賃2両をゆすり取り、さらに初鰹の半身まで貰い受けて帰る家主の長兵衛(左團次)かもしれないが、その長兵衛も盗人に入られて元も子もない。因果応報というか、これでお客もすっきりする。

やはり、松緑(の新三)は粋な小悪党がよく似あって面白かった。
初役だそうだが、すっかり新三が身についているという感じだ。

配役をよく見てゆかなかったので、肴売りという小さな役で大御所菊五郎が登場したのには驚いた。ファンサービスだ。鰹の捌きにしてもセリフ回しにしても板についてなかったが、これはご愛嬌だろう。


♪2015-98/♪歌舞伎座-01