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2020年1月11日土曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 菊一座令和仇討」

2020-01-11 @国立劇場


四世鶴屋南北=作『御国入曽我中村』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「菊一座令和仇討」
(きくいちざれいわのあだうち)四幕十場
             国立劇場美術係=美術

序   幕 鎌倉金沢瀬戸明神の場
               飛石山古寺客殿の場
               六浦川堤の場
二幕目   朝比奈切通し福寿湯の場
               鈴ヶ森の場
三幕目   下谷山崎町寺西閑心宅の場
               大音寺前三浦屋寮の場
               元の寺西閑心宅の場
大   詰 東海道戸塚宿境木の場
        同   三島宿敵討の場

(主な配役)
幡随院長兵衛/寺西閑心実ハ蒲冠者範頼⇒尾上菊五郎
三日月おせん実ハ佐々木の娘風折/頼朝御台政子御前⇒中村時蔵
笹野権三⇒尾上松緑
白井権八⇒尾上菊之助
大江志摩五郎/梶原源太景季⇒坂東彦三郎
江間小四郎義時/おせんの手下長蔵⇒坂東亀蔵
権八妹おさい⇒中村梅枝
大江千島之助/笹野の家来・岩木甚平⇒中村萬太郎
安西弥七郎景益⇒市村竹松
権三妹八重梅⇒尾上右近
新貝荒次郎実重⇒市村光
万寿君源頼家⇒尾上左近
茶道順斎/湯屋番頭三ぶ六⇒市村橘太郎
同宿残月/判人さぼてんの源六/和田左衛門尉義盛⇒片岡亀蔵
今市屋善右衛門/秩父庄司重忠⇒河原崎権十郎
白井兵左衛門⇒坂東秀調
遣手おくら⇒市村萬次郎
笹野三太夫/大江因幡守広元⇒市川團蔵
家主甚兵衛⇒坂東楽善
         ほか

国立劇場の正月公演は、毎年、菊五郎劇団の奇想天外な芝居と決まっている。
今年は「菊一座令和仇討」。
槍の権三、白井権八、幡随院長兵衛、頼家、北条政子など知った名前が蘇我の仇討ちを拝借しながら時空を超えて絡み合う。令和は取ってつけただけ。
正月にふさわしい華麗な舞台。

いつもながら、彦三郎・亀蔵兄弟の滑舌の良さが気持ち良い。
松緑も久しぶりに大きな役で菊之助といいコンビだった。

国立劇場での両花道は8年ぶりだそうな。僕は観ているはずだが、思い出せない。
その両花道は下手が松緑、上手が菊之助で、同時に出たり引っ込んだりするのだが、右を見て左を見てと忙しい。

♪2019-002/♪国立劇場-01

2019年9月10日火曜日

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

2019-09-10 @歌舞伎座


菅原伝授手習鑑
一、寺子屋(てらこや)
松王丸⇒吉右衛門
園生の前⇒福助
千代⇒菊之助
戸浪⇒児太郎
涎くり与太郎⇒鷹之資
菅秀才⇒丑之助
百姓吾作⇒橘三郎
春藤玄蕃⇒又五郎
武部源蔵⇒幸四郎

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう
武蔵坊弁慶⇒幸四郎
源義経⇒孝太郎
亀井六郎⇒坂東亀蔵
片岡八郎⇒萬太郎
駿河次郎⇒千之助
常陸坊海尊⇒錦吾
富樫左衛門⇒錦之助

三世中村歌六 百回忌追善狂言
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
松浦鎮信⇒歌六
大高源吾⇒又五郎
鵜飼左司馬⇒歌昇
江川文太夫⇒種之助
渕部市右衛門⇒鷹之資
里見幾之亟⇒吉之丞
お縫⇒米吉
宝井其角⇒東蔵

今年の秀山祭夜の部は尻尾まで餡の詰まった鯛焼き3枚。大満足。

「寺子屋」は何度目観ても面白い。
今回は、吉右衛門・又五郎・菊之助・幸四郎と見たい役者が揃った。
忠義の為に我が子の首を差し出すという時代錯誤の物語だが不思議と共感してしまうのは無私の精神で徹底的に人に尽くすことの美しさに抵抗できないからだろうな。山本周五郎の掌編「水戸梅譜」に何十回となく読んでいても、新たに読む度泣けてしまうのも同根だ。

今時ありえないような話をありそうに描くのが役者の腕の見せ所。又五郎以下みんな巧いが、吉右衛門は次元が違う大きさを感じさせる。
菊之助の息子、丑之助は團菊祭で初舞台を踏んだ。あいにく彼の出演した夜の部は観なかったので(後日TVで観劇したが)、僕にとっては今日が初見。團菊祭から4ヶ月。6歳になり菅秀才を演じた様子は初舞台で牛若丸を演じた際の子供っぽさとは様変わりで驚いた。

「勧進帳」は弁慶役が奇数・偶数日で仁左衛門と幸四郎が交代。幸四郎は奇数日は富樫を演ずるというハードな舞台をこなしている。幸四郎の弁慶は経験済みなので仁左衛門で観たかったが諸般の事情で偶数日の今日は幸四郎で。富樫は男前の錦之助だ。

義経が孝太郎(最近放映のNHKで昭和天皇。そっくりだったな。)が義経。ちょい老けた義経だけどこれもよし。終盤、弁慶ら部下を謁見する場面などやはり、義経の貫禄を見せる。

3本立ての中でも「松浦の太鼓」がベスト!
歌六・又五郎・東蔵という地味だが達者な役者。米吉が紅一点で華を添える。
忠臣蔵外伝の一種で、これは以前、幸四郎が松浦の殿様を演じたのを観たが、まるで喜劇仕立てだったが、今回は、なかなかしんみりとさせる。

吉良家の隣屋敷に住まいする松浦鎮信(歌六)の赤穂浪士に寄せる思い、本心を明かせず歌に気持ちを託す忠義の大高源吾(又五郎)、二人の俳諧の師である宝井其角(東蔵)、源吾の妹・お縫(米吉…む、かわゆい!)のそれぞれの熱い想いが空回りする前半から、やがて隣家から聞こえてくる山鹿流陣太鼓の連打。
赤穂浪士に助太刀せんと勇みたつ殿様のもとに吉報を知らせにくる大高源吾。すべてのわだかまりが解け、気持ちが結ばれ、喜び合う面々。
おかしくて笑いながらもどっと泣けてきた。

東蔵は、いつもはたいていおばあさん役だ。立ち役(男役)は滅多に観られないが、何をやらしても巧い。人間国宝だものな。
歌六もいい味だ。又五郎も何を演っても巧いな。

3本とも古臭い話なんだけど。でも面白い。


♪2019-136/♪歌舞伎座-04

2019年7月16日火曜日

令和元年6月 第96回歌舞伎鑑賞教室「菅原伝授手習鑑ー車引」/「棒しばり」

2019-07-16 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた  坂東新悟

竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)  一幕
 ―車引(くるまびき)―
  国立劇場美術係=美術
  吉田社頭車引の場

岡村柿紅=作
棒しばり(ぼうしばり)  長唄囃子連中

(主な配役)
「菅原伝授手習鑑 -車引- 」
舎人松王丸⇒尾上松緑
舎人梅王丸⇒坂東亀蔵
舎人桜丸⇒坂東新悟
舎人杉王丸⇒中村玉太郎/尾上左近(交互出演)
藤原時平⇒中村松江
       ほか

「棒しばり」
次郎冠者⇒尾上松緑
太郎冠者⇒坂東亀蔵
曽根松兵衛⇒中村松江
        ほか

7月は短篇2本。菅原伝授手習鑑から「車引」。
三ツ子の兄弟の出会い・睨み合いを描くだけでこれといって面白い話ではないが、歌舞伎の荒事・和事・実事を隈取りや車鬢、衣装、小道具などで描き分ける点で入門にも相応しい。
松緑の松王丸、亀蔵の梅王丸やよし!

後半は「棒しばり」。
狂言から移された松羽目物。
オリジナルの狂言は若い頃に観ているが歌舞伎版は初見。
遠い記憶と照らしてはほぼ同じように思ったが…。
主人の留守中、悪さをせぬようにと次郎冠者は棒に両手を縛られ太郎冠者は後ろ手に縛られるが、二人協力して酒の壺から大酒する様のおかしさ。こちらも松緑と亀蔵が大活躍。

松江が前半では藤原時平、後半では大名(曽根松兵衛)の役で舞台を締めるはずだけど、イマイチ貫禄不足かなあ。この人は真面目一方な感じで(実際は知らないけど…)ハッタリが不足している。

♪2019-101/♪国立劇場-10

2019年5月7日火曜日

團菊祭五月大歌舞伎 昼の部

2019-05-07 @歌舞伎座


一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
工藤祐経⇒松緑
曽我十郎⇒梅枝
曽我五郎⇒萬太郎
大磯の虎⇒尾上右近
化粧坂少将⇒米吉
八幡三郎⇒鷹之資
秦野四郎⇒玉太郎
梶原平次景高⇒菊市郎
梶原平三景時⇒吉之丞
小林朝比奈⇒歌昇
鬼王新左衛門⇒坂東亀蔵
近江小藤太⇒松江
 
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
武蔵坊弁慶⇒海老蔵
源義経⇒菊之助
亀井六郎⇒右團次
片岡八郎⇒九團次
駿河次郎⇒廣松
太刀持音若⇒玉太郎
常陸坊海尊⇒市蔵
富樫左衛門⇒松緑
後見⇒齊入
   
竹柴其水 作
三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)め組の喧嘩/品川島崎楼より神明末社裏まで
め組辰五郎⇒菊五郎
女房お仲⇒時蔵
尾花屋女房おくら⇒雀右衛門
柴井町藤松⇒菊之助
おもちゃの文次⇒彦三郎
宇田川町長次郎⇒坂東亀蔵
背高の竹⇒松也
三ツ星半次⇒歌昇
芝浦の銀蔵⇒萬太郎
伊皿子の安三⇒竹松
御成門の鶴吉⇒尾上右近
新銭座の吉蔵⇒廣松  
二本榎の若太郎⇒市村光
亀の子三太⇒男寅
狸穴の重吉⇒玉太郎
山門の仙太⇒左近
辰五郎倅又八⇒亀三郎
田毎川浪蔵⇒吉之丞
左利の芳松⇒橘太郎
大竜山文五郎⇒九團次
三池八右衛門⇒松江
神路山花五郎⇒由次郎
御輿岳芳五郎⇒片岡亀蔵
露月町亀右衛門⇒権十郎
葉山九郎次⇒家橘
島崎楼女将おなみ⇒萬次郎
九竜山浪右衛門⇒又五郎
焚出し喜三郎⇒歌六
江戸座喜太郎⇒楽善
四ツ車大八⇒左團次

●曽我対面⇒梅枝が化粧坂少将の役から今回曽我十郎に昇格したのか、と思ったが萬太郎との実兄弟コンビで十郎・五郎を演ずるのは既に一度経験済みらしい。それにしては萬太郎の五郎はあまり嵌っていなかったが。
化粧坂の少将は米吉が演じて、この人はホンに女性かと見紛うほどに娘役が似合う。
3月の国立歌舞伎で、僕の目には初めて大きな役を見事にこなした歌昇が、今回も朝比奈を初役で務めた。若手の台頭が好ましや。


●勧進帳⇒当代・海老蔵最後の勧進帳。菊之助の義経。松緑の富樫と人気役者を揃えた好配役。海老蔵は姿・形、所作、発声いずれも絵に描いたようで素晴らしい。
こういう伝統の出し物の場合は、決まった形を踏襲しなければならないのだろうが、欲を言えば、弁慶が義経を打擲する場面ではもう少し本気になってほしい。富樫の心根を揺り動かすに足る芝居ができないものか。
海老蔵の弁慶は2度目。高麗屋三代襲名の際の染五郎の勧進帳も(脇役が超豪華で)素晴らしかったが、演出は、いつ・誰の勧進帳を観ても全く一緒だ。そこに意味があるとも言えるけど、も少しリアルに…ならないものだろうか。

●め組の喧嘩⇒初めて観た。鳶衆と相撲取りの喧嘩話。意地の張り合いだけでドラマ性希薄。只管喧嘩の端緒から衝突までを描くがこれが長い。
大詰(全4幕中の最終幕で全四場)の冒頭に大勢の鳶衆が勢揃いして威勢を張るところは見応えがあるが、ここから決着までが3回も場面を変えるので、幕が降りたり、回り舞台が回ったりで、テンションが途切れてしまう。ここを全一幕に仕立ててテンポ良く見たい。あ、これも無理ね。
先月の菊五郎は、これは役どころなのだろうけど、イマイチな活躍ぶりだったが、今回の役(め組の辰五郎)では元気そうでなにより。菊五郎、菊之助が同じ舞台で揃うと海老蔵とは別趣の華がある。


♪2019-058/♪歌舞伎座-03

2019年2月26日火曜日

初世尾上辰之助三十三回忌追善 二月大歌舞伎 昼の部

2019-02-26 @歌舞伎座


初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
一 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)〜すし屋
いがみの権太⇒松緑
弥助実は三位中将維盛⇒菊之助
娘お里⇒梅枝
若葉の内侍⇒新悟
梶原の臣⇒吉之丞
梶原の臣⇒男寅
梶原の臣⇒玉太郎
六代君⇒亀三郎
弥左衛門女房おくら⇒橘太郎
鮓屋弥左衛門⇒團蔵
梶原平三景時⇒芝翫

初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
長谷川 伸 作 / 村上元三 演出
二 暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)
暗闇の丑松⇒菊五郎
丑松女房お米⇒時蔵
浪人潮止当四郎⇒團蔵
料理人作公⇒男女蔵
料理人伝公⇒彦三郎
料理人巳之吉⇒坂東亀蔵
料理人祐次⇒松也
建具職人熊吉⇒萬太郎
建具職人八五郎⇒巳之助
杉屋遣手おくの⇒梅花
湯屋番頭甚太郎⇒橘太郎
お米の母お熊⇒橘三郎
杉屋妓夫三吉⇒片岡亀蔵
岡っ引常松⇒権十郎
四郎兵衛女房お今⇒東蔵
四郎兵衛⇒左團次

三 団子売(だんごうり)
杵造⇒芝翫
お臼⇒孝太郎

「義経千本桜」から「すし屋」の段。
「義経千本桜」は五段続きだそうな。そのうちのいくつかは歌舞伎と文楽で観ていたが、「すし屋」は初めてだった。

凡その筋は知っているものの「すし屋」の前段に当たる「小金吾討死」の話が前に置かれるのかと思ったていたがそうではなく、いきなりの「すし屋」で、少しまごついた。予習しておいてよかったよ。

しかし、権太=松緑、維盛=菊之助の配役は、当代では最適・最好のコンビではなかったか。いずれも初役ということで、多分、厳しい目にはまだ役がこなれていないのだろうが、僕の目には十分楽しめた。この2人で再演を観たいものだ。

「暗闇の丑松」も初見。これは興味深い物語だった。
昭和初期の作品で、新歌舞伎といわれるジャンルだ。
新劇のような凝った構成と演出に唸る。
止むを得ず人を殺め、人混みの中に消えてゆく幕切れは「夏祭浪花鑑」を思わせた。底辺に暮らす無法者となった男や哀れ。

♪2019-023/♪歌舞伎座-01







2019年1月10日木曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 姫路城音菊礎石」五幕九場

2019-01-10 @国立劇場


並木五瓶=作 『袖簿播州廻』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言「姫路城音菊礎石」(ひめじじょうおとにきくそのいしずえ)五幕九場
国立劇場美術係=美術

序 幕  曽根天満宮境内の場
二幕目  姫路城内奥殿の場
           同    城外濠端の場
三幕目  姫路城天守の場
四幕目  舞子の浜の場
           大蔵谷平作住居の場
           尾上神社鐘楼の場
大 詰  印南邸奥座敷の場
           播磨潟浜辺の場

印南内膳⇒尾上菊五郎
生田兵庫之助/碪(きぬた)の前⇒中村時蔵
古佐壁主水/百姓平作実ハ与九郎狐/加古川三平⇒尾上松緑
弓矢太郎実ハ多治見純太郎/主水女房お辰/小女郎狐⇒尾上菊之助
印南大蔵/奴灘平⇒坂東彦三郎
久住新平⇒坂東亀蔵
桃井陸次郎/桃井八重菊丸⇒中村梅枝
高岡源吾⇒中村萬太郎
庄屋倅杢兵衛⇒市村竹松
傾城尾上⇒尾上右近
平作倅平吉実ハ桃井国松⇒寺嶋和史
福寿狐⇒寺嶋眞秀
金子屋才兵衛/早川伴蔵⇒市村橘太郎
飾磨大学⇒片岡亀蔵
牛窓十内⇒河原崎権十郎
中老淡路⇒市村萬次郎
近藤平次⇒兵衛市川團蔵
桃井修理太夫⇒坂東楽善
 ほか

初春恒例は菊五郎劇団のスペクタクルな娯楽大作。尤も、近年は当方が歳のせいか、話がややこしくて、筋書き手元に舞台を見ても話を追えない。もう一度観ないと頭に入ってこないようだ。ま、そこは気にしないのが正しい鑑賞法かもしれないけど。

菊五郎、時蔵、松緑、菊之助、彦三郎、2亀蔵、萬次郎、團蔵、楽善など気心の知れた仲間内とのチームワークは抜かりなし。今回は菊五郎の孫2人(和史・眞秀)が揃って出演。オバ様方が黄色い声。個人的には彦三郎、片岡・坂東の両亀蔵、松緑が大きな役で活躍が嬉しい。

これも恒例の手ぬぐい撒きは、大方1階席に沈没。舞台両翼にいた松緑と彦三郎だけが2階席まで届くホームラン数本。自席は最前列なので、腕を伸ばしたが、あと30cmくらいのところで届かず。右近、梅枝など本来は腕力があるだろうが、役柄を引き摺っては遠投もできまい。


♪2019-001/♪国立劇場-01

2018年9月6日木曜日

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部

2018-09-06 @歌舞伎座


  祇園祭礼信仰記
一、金閣寺
此下東吉実は真柴久吉⇒梅玉
雪姫⇒児太郎
狩野之介直信⇒幸四郎
松永鬼藤太⇒坂東亀蔵
此下家臣春川左近⇒橋之助
同   戸田隼人⇒男寅
同   内海三郎⇒福之助
同   山下主水⇒玉太郎
腰元⇒梅花
腰元⇒歌女之丞
十河軍平実は佐藤正清⇒彌十郎
松永大膳⇒松緑
慶寿院尼⇒福助

  萩原雪夫 作
  今井豊茂 補綴
二、鬼揃紅葉狩(おにぞろいもみじがり)
更科の前実は戸隠山の鬼女⇒幸四郎
平維茂⇒錦之助
侍女かえで⇒高麗蔵
侍女ぬるで⇒米吉
侍女かつら⇒児太郎
侍女もみじ⇒宗之助
従者月郎吾⇒隼人
従者雪郎太⇒廣太郎
男山八幡の末社⇒玉太郎 
男山八幡の末社⇒東蔵

  河竹黙阿弥 作
  天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)
三、河内山(こうちやま)
上州屋質見世
松江邸広間
同  書院
同  玄関先
河内山宗俊⇒吉右衛門
松江出雲守⇒幸四郎
宮崎数馬⇒歌昇
大橋伊織⇒種之助
黒沢要⇒隼人
腰元浪路⇒米吉
北村大膳⇒吉之丞 
高木小左衛門⇒又五郎
和泉屋清兵衛⇒歌六
後家おまき⇒魁春

「金閣寺」、「鬼揃紅葉狩」、「河内山」3本立て。それぞれに歌舞伎らしい作品だ。

「金閣寺」では久し振りに大きな役の松緑を楽しんだ。
児太郎が女形の大役「雪姫」に初役で挑んだ。児太郎はこれまで何度も観ていたけど大きな役は無かったので声の具合に着目したことがなかったから、今日の出来が普段どおりなのか喉の具合が悪かったのか判断できないが、少し嗄れるところが気になった。若いお姫様としてはもう少し済んだ声がほしいが。

その「金閣寺」で、5年近い病休から復帰した中村福助の登場では館内がどっと湧いた。

昼の部の吉右衛門の出番は「河内山」だけだが、声がよく通って良かった。七五調での聴かせどころは最後の二幕目第三場「玄関先の場」だが、ここでは大向うから盛んに掛け声が飛んだ。

こういうところは、歌舞伎が役者と観客とで成り立っている芸だなと実感する。

幸四郎は全作に登場し、夜の部にも出ている。そんなに器用に働いて芸が枯渇しないか?

個人的に好感している米吉くん。今日も良かった。

♪2018-105/♪歌舞伎座-05

2018年1月10日水曜日

初春歌舞伎公演「通し狂言 世界花小栗判官」4幕10場

2018-01-10 @国立劇場


近松徳三・奈河篤助=作『姫競双葉絵草紙』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 世界花小栗判官(せかいのはなおぐりはんがん) 四幕十場

発端   (京) 室町御所塀外の場
序幕<春>   (相模)鎌倉扇ヶ谷横山館奥御殿の場
              同  広間の場
                江の島沖の場
二幕目<夏> (近江)堅田浦浪七内の場
           同 湖水檀風の場
三幕目<秋> (美濃)青墓宿宝光院境内の場
              同 万屋湯殿の場
                  同 奥座敷の場
大  詰<冬> (紀伊)熊野那智山の場

尾上菊五郎⇒盗賊風間八郎
中村時蔵⇒執権細川政元/万屋後家お槙
尾上松緑⇒漁師浪七実は美戸小次郎/横山太郎秀国
尾上菊之助⇒小栗判官兼氏
坂東彦三郎⇒横山次郎秀春/細川家家臣桜井新吾
坂東亀蔵⇒膳所の四郎蔵/細川家家臣七里源内
中村梅枝⇒浪七女房小藤/万屋娘お駒/横山太郎妻浅香
中村萬太郎⇒奴三千助
市村竹松⇒風間の子分鳶の藤六
尾上右近⇒照手姫
市村橘太郎⇒瀬田の橋蔵
片岡亀蔵⇒鬼瓦の胴八
河原崎権十郎⇒万屋下男不寝兵衛
坂東秀調⇒局常陸
市村萬次郎⇒万屋女中頭お熊
市川團蔵⇒横山大膳久国
坂東楽善⇒小栗郡領兼重 ほか

初めての狂言だった。国立劇場のサイトでも下調べはしたし、いつものようにプログラムを買って開幕前にざっと目を通して臨んだ。開幕を告げる館内放送が「〜4幕10場」を「よまくとおば」とアナウンスした。そこで少し引っかかった。
歌舞伎や文楽などの幕や場の数え方で、4を「よ」と読むなら1、2、3を「ひーふーみー」と読むのか、と言えばそんな読み方は聴いたことがない。10を「とお」と読むなら、7、8、9を「ななやーここのつ」と読むのか、と言えばこれも聞いたことがない。
普通に読めば「よんまくじゅうば」ではないのかな?などと考えていたら芝居の始まりに乗り遅れてしまった。

「よまくとおば」はこの世界の慣習的な読み方なのかもしれないな。

事前にプログラムに目を通しておきながら大切なことに気づくのが遅くなった。「よんまく」であれ「よまく」であれ「4幕」なのだ。そして、それぞれの幕は「四季」の移ろいを表現している。もちろん、各「幕」に幾つかの「場」が分けてあって、それぞれに舞台美術が変化するので、意識してみていないと幕毎に四季が変わっていくことに気が付かないだろう。僕は最後の冬の幕でようやく「そうか全体は四季を表していたんだ」と気がついた始末。

尤も、四季の変化に気が付かなくとも筋書きは楽しめる。
しかし、最後の幕のハット息を呑むような雪世界と舞台の早替わりの仕掛けで突如現れる那智の滝の見事さは、各幕の舞台美術の変化の仕上げだと思うとそれなりに話がまとまるように思った。

今回は菊之助の大立ち回りも宙乗りも無いが「馬乗り!」がある。かなり危なっかしいが、それなりの見どころだ。大立ち回りは菊の助に代わり、今回はこの菊五郎劇団の常連(2016年は出演していなかったが)である松緑が長丁場の立ち回りを演じてこれも見ものではあった。

物語は…というと、これがあんまり面白くない。まあ、それでもよいのか。大勢のスター役者が揃い、派手な舞台を楽しむのが正月興行の楽しさでもあるからな。

坂東彦三郎・亀蔵兄弟は滑舌良く気持ちが良い。右近がなかなかきれいだ。尤も梅枝も良く似ているので時々白塗りの2人が分からなくなるが。

♪2018-002/♪国立劇場-001

2017年11月8日水曜日

11月歌舞伎公演「坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)」「沓掛時次郎(くつかけときじろう)」

2017-11-08 @国立劇場


平成29年度(第72回)文化庁芸術祭協賛

山本有三生誕百三十年
山本有三=作
二世尾上松緑=演出
坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)四幕
   中嶋正留=美術
第一幕       茶臼山家康本陣
第二幕       宮の渡し船中
第三幕(一)駿府城内茶座敷
   (二)同 表座敷の一室
第四幕       牛込坂崎江戸邸内成正の居間
--------------------
長谷川伸=作
大和田文雄=演出
沓掛時次郎(くつかけときじろう)三幕
   釘町久磨次=装置
序幕    (一)博徒六ッ田三蔵の家の中
    (二)三蔵の家の外
    (三)再び家の中
    (四)再び家の外
    (五)三たび家の中
二幕目    中仙道熊谷宿裏通り
大詰    (一)熊谷宿安泊り
    (二)喧嘩場より遠からぬ路傍
    (三)元の安泊り
    (四)宿外れの路傍

中村梅玉⇒徳川家康/沓掛時次郎
中村魁春⇒三蔵女房おきぬ
尾上松緑⇒坂崎出羽守成正/六ッ田の三蔵
中村松江⇒南部左門/大野木の百助
坂東亀蔵⇒本多平八郎忠刻/苫屋の半太郎
中村梅枝⇒家康の孫娘千姫
中村歌昇⇒松川源六郎
市村竹松⇒坂崎の小姓
市川男寅⇒松平の使者
中村玉太郎⇒坂崎の小姓
尾上左近⇒三蔵倅太郎吉
市村橘太郎⇒三宅惣兵衛/安宿の亭主安兵衛
中村歌女之丞⇒安兵衛女房おろく
嵐橘三郎⇒本多佐渡守正信
河原崎権十郎⇒本多上野介正純
市村萬次郎⇒刑部卿の局
坂東楽善⇒八丁徳
市川左團次⇒金地院崇伝
   ほか

新歌舞伎2本立て。僕としては国立劇場では初めての経験。
竹本も三味線もなし。戦場のざわめき、風、雨、波などの自然音の録音(あるいは効果音?)が使われる。

幕は、普通は定式幕だが、今回はすべて暗転と緞帳が上ったり降りたり。

見得はない。
色々と普段の歌舞伎とは勝手が違うので、拍手のタイミングも難しく、僕は声を掛けたりしないけど、大向こうも出番に窮していたようだ。

かわった出し物であるせいか、今日の客席はせいぜい半分ほどしか埋まっていない。これじゃ役者も気合いが入らないだろう。

坂崎出羽守
無骨にして直情径行の男が、焼け落ちる大阪城天守から自らの顔面の半分を焼きながらも千姫を救い出す。家康が救いだせば嫁にやろうと言われ、急に恋心が芽生える。一旦芽生えると激しい性格ゆえに、千姫一途となるが、肝心の千姫は無骨な坂崎に振り向こうともせず、祖父の家康に縁談を断る。千姫は仏門に入るという理由で縁談を断り、その際、誰にも嫁がないという確認をとってなんとか承知したが、後日、恋敵に嫁ぐことを知ってその行列に狼藉に及ぶという話だ。
まったく、戦場でしか役に立たない男ゆえの悲劇だが、あまりに初心なので彼に感情移入できないのは残念。松緑は祖父のために書かれた芝居を父に次いで今回ようやく初役で勤めるので思い入れもあるだろうし、良い味を出しているけど、現代人が観るには芝居に無理があるなあ。

沓掛時次郎
うーむ。これはイマイチ良さが分からなかった。第一、梅玉のような品のある役者にヤクザものは似合わない。物語もピンと来ない。時次郎は一宿一飯の義理で、土地の博徒の頭を斬り捨てるが、その博徒には妻と幼い子供が居た。今際の際に「女房、子供を頼む」と言われた時次郎はそれを引き受けて以後3人で旅が始まる…。もう、この設定が理解不能だ。後は、人情噺としてそれなりに分からないでもないけど、とても共感できる話ではなかった。
演技のスタイルも、歌舞伎というより新派とか新国劇風だ。国立劇場向きとは思えない。

♪2017-173/♪国立劇場-17

2017年7月3日月曜日

平成29年7月歌舞伎鑑賞教室「鬼一法眼三略巻 一條大蔵譚(きいちほうげんさんりゃくのまき いちじょうおおくらものがたり)」

2017-07-03 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた 坂東亀蔵

文耕堂・長谷川千四=作
中村吉右衛門=監修
鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)
                     
一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり) 二幕          
 檜垣茶屋の場
 大蔵館奥殿の場

(主な配役)
一條大蔵卿長成  尾上菊之助
常盤御前     中村梅枝
鬼次郎女房お京  尾上右近
吉岡鬼次郎    坂東彦三郎
          ほか

本来は五段ものの文楽から歌舞伎に移植されたが、歌舞伎においては今では三段目、四段目のみが上演されるらしい(本家、文楽では四段目は曲が残っておらず上演されることはないそうだ。)。

僕が初めて観た時は<清盛館>・<菊畑>・<檜垣>・<奥殿>で構成されていたが、このうち<菊畑>が三段目、<檜垣>・<奥殿>が四段目に当たるらしいから、<清盛館>は一段目か二段め(の一部?)なのかな。
四段目のみの公演の方が多いようで、その場合は「一條大蔵譚」の外題が使われるそうで、今回がまさしくそういう構成だった。

前回は昨年の歌舞伎座・秀月祭で観たが、その時は菊之助が吉岡鬼次郎、梅枝がその女房お京という配役だったが、今回はそれぞれが出世して菊之助が一條大蔵卿、梅枝が常盤御前となった。
菊之助にとっては、岳父吉右衛門の得意芸を引き継ぐ初舞台だ。果たして…。

顔立ちが端正すぎて阿呆の役がスッキリしなかったな。
本当は阿呆ではない、と正体を明らかにする場面が所謂<ぶっかえり>という衣裳の瞬間転換でここが見どころの一つだが、初日とあって、ハラハラさせた。

坂東兄弟(彦三郎・亀蔵)は好みの役者だ。ふたりとも声がよく通り、滑舌も良い。芝居に気迫がある。故に吉岡喜次郎を演じた彦三郎はとても良かったが、芝居には出演せず、解説のみに回った亀蔵は、これも初日だったからかもしれないが、固さが取れず魅力発揮とまでは行かなかったのは残念。

♪2017-114/♪国立劇場-12

2017年5月11日木曜日

團菊祭五月大歌舞伎 七世尾上梅幸二十三回忌 十七世市村羽左衛門十七回忌追善

2017-05-11 @歌舞伎座


初 代坂東楽善
九代目坂東彦三郎 襲名披露狂言
三代目坂東亀蔵
六代目坂東亀三郎 初舞台

一 壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん )
  〜劇中にて襲名口上申し上げ候
工藤祐経⇒菊五郎
曽我五郎⇒亀三郎改め彦三郎
近江小藤太⇒亀寿改め坂東亀蔵
八幡三郎⇒松也
化粧坂少将⇒梅枝
秦野四郎⇒竹松
鬼王家臣亀丸⇒初舞台亀三郎
梶原平次景高⇒橘太郎
鬼王新左衛門⇒権十郎
梶原平三景時⇒家橘
大磯の虎⇒萬次郎
曽我十郎⇒時蔵
小林朝比奈⇒彦三郎改め楽善
     
二 伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
〈御殿〉
乳人政岡⇒菊之助
八汐⇒歌六
沖の井⇒梅枝
松島⇒尾上右近
栄御前⇒魁春

〈床下〉
仁木弾正⇒海老蔵
荒獅子男之助⇒松緑

〈対決・刃傷〉
細川勝元⇒梅玉
山名宗全⇒友右衛門
大江鬼貫⇒右之助
黒沢官蔵⇒九團次
山中鹿之助⇒廣松
渡辺外記左衛門⇒市蔵
渡辺民部⇒右團次
仁木弾正⇒海老蔵
     
戸崎四郎 補綴
三 四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり )

〈神功皇后と武内宿禰〉
〈三社祭〉
〈通人・野暮大尽〉
〈石橋〉

武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精⇒松緑
神功皇后/善玉/通人/獅子の精⇒亀寿改め坂東亀蔵

坂東家の襲名披露(楽善←彦三郎←亀三郎/亀蔵←亀寿/新・亀三郎初舞台)も兼ねていたせいか、どの演目も熱気があった。
特に「寿曽我対面」は初めてこの芝居の面白さが分かった気がする。血気にはやる五郎役の彦三郎の気合がいい。

十郎・五郎を彦三郎・亀蔵の実兄弟で演ずるのかと思い込んでいたが、十郎役は時蔵だった。菊五郎の祐経に対峙するには時蔵の貫禄が必要なのかも。

終盤に彦三郎(前亀三郎)の長男、新・亀三郎が登場し館内どよめく。まるで福助人形の如く可愛い。
基本的に、芸以前のちびっこには興味ないのだけど、この子に限っては、昼の部に強力ライバルの初お目見えもあって、ちょいと影が薄いが、ご本人はなかなか立派なお勤めぶり。その健気さに心打たれた。こういう子供達を応援するのも歌舞伎観客の勤めだものなあ。

「伽羅先代萩」。今回は「御殿〜刃傷」で見応えあり。
前半は政岡の菊之助、後半は勝元の梅玉と仁木弾正の海老蔵が見せる!
菊之助は、さあ、どうだったか。あまり情感が伝わってこなかったな。海老蔵は見る度に痩せてゆくような気がするが、目力は怖いほどだ。
最後、松緑と亀蔵で「石橋」の2人獅子が見事な美しさ。
<舞台写真は松竹のホームページから>


♪2017-81/♪歌舞伎座-03