2019年9月10日火曜日

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

2019-09-10 @歌舞伎座


菅原伝授手習鑑
一、寺子屋(てらこや)
松王丸⇒吉右衛門
園生の前⇒福助
千代⇒菊之助
戸浪⇒児太郎
涎くり与太郎⇒鷹之資
菅秀才⇒丑之助
百姓吾作⇒橘三郎
春藤玄蕃⇒又五郎
武部源蔵⇒幸四郎

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう
武蔵坊弁慶⇒幸四郎
源義経⇒孝太郎
亀井六郎⇒坂東亀蔵
片岡八郎⇒萬太郎
駿河次郎⇒千之助
常陸坊海尊⇒錦吾
富樫左衛門⇒錦之助

三世中村歌六 百回忌追善狂言
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
松浦鎮信⇒歌六
大高源吾⇒又五郎
鵜飼左司馬⇒歌昇
江川文太夫⇒種之助
渕部市右衛門⇒鷹之資
里見幾之亟⇒吉之丞
お縫⇒米吉
宝井其角⇒東蔵

今年の秀山祭夜の部は尻尾まで餡の詰まった鯛焼き3枚。大満足。

「寺子屋」は何度目観ても面白い。
今回は、吉右衛門・又五郎・菊之助・幸四郎と見たい役者が揃った。
忠義の為に我が子の首を差し出すという時代錯誤の物語だが不思議と共感してしまうのは無私の精神で徹底的に人に尽くすことの美しさに抵抗できないからだろうな。山本周五郎の掌編「水戸梅譜」に何十回となく読んでいても、新たに読む度泣けてしまうのも同根だ。

今時ありえないような話をありそうに描くのが役者の腕の見せ所。又五郎以下みんな巧いが、吉右衛門は次元が違う大きさを感じさせる。
菊之助の息子、丑之助は團菊祭で初舞台を踏んだ。あいにく彼の出演した夜の部は観なかったので(後日TVで観劇したが)、僕にとっては今日が初見。團菊祭から4ヶ月。6歳になり菅秀才を演じた様子は初舞台で牛若丸を演じた際の子供っぽさとは様変わりで驚いた。

「勧進帳」は弁慶役が奇数・偶数日で仁左衛門と幸四郎が交代。幸四郎は奇数日は富樫を演ずるというハードな舞台をこなしている。幸四郎の弁慶は経験済みなので仁左衛門で観たかったが諸般の事情で偶数日の今日は幸四郎で。富樫は男前の錦之助だ。

義経が孝太郎(最近放映のNHKで昭和天皇。そっくりだったな。)が義経。ちょい老けた義経だけどこれもよし。終盤、弁慶ら部下を謁見する場面などやはり、義経の貫禄を見せる。

3本立ての中でも「松浦の太鼓」がベスト!
歌六・又五郎・東蔵という地味だが達者な役者。米吉が紅一点で華を添える。
忠臣蔵外伝の一種で、これは以前、幸四郎が松浦の殿様を演じたのを観たが、まるで喜劇仕立てだったが、今回は、なかなかしんみりとさせる。

吉良家の隣屋敷に住まいする松浦鎮信(歌六)の赤穂浪士に寄せる思い、本心を明かせず歌に気持ちを託す忠義の大高源吾(又五郎)、二人の俳諧の師である宝井其角(東蔵)、源吾の妹・お縫(米吉…む、かわゆい!)のそれぞれの熱い想いが空回りする前半から、やがて隣家から聞こえてくる山鹿流陣太鼓の連打。
赤穂浪士に助太刀せんと勇みたつ殿様のもとに吉報を知らせにくる大高源吾。すべてのわだかまりが解け、気持ちが結ばれ、喜び合う面々。
おかしくて笑いながらもどっと泣けてきた。

東蔵は、いつもはたいていおばあさん役だ。立ち役(男役)は滅多に観られないが、何をやらしても巧い。人間国宝だものな。
歌六もいい味だ。又五郎も何を演っても巧いな。

3本とも古臭い話なんだけど。でも面白い。


♪2019-136/♪歌舞伎座-04