日本フィルハーモニー交響楽団
アリス=紗良・オット:ピアノ*
伊福部昭:日本組曲から第1曲「盆踊」、第3曲「演伶」、第4曲「佞武多」
井上道義:メモリー・コンクリート
リスト:死の舞踏 S.126*
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番ハ短調(ミュラー=ベルクハウスによる管弦楽編曲版)
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サティ:グノシェンヌ第1番*
アーレン:オーバー・ザ・レインボウ
前半は和物?2曲。
まず、伊福部昭の「日本組曲」が傑作。全部で4つ作品から構成されているそうだが、今日はそのうち第2曲が省略された。3曲とも脱西洋音楽風で面白い(14分)。全曲を聴きたかったが、次の作品が長め(30分)なので尺に収まらなかったのか。
それはともかく、その和物2曲めは指揮者井上道義自身の作品「メモリー・コンクリート」でこれも傑作…と言うか、おかしくて楽しいと言う意味で傑作だった。彼自身の生まれてから少年期が中心?の、いろんな思い出が、断片的に音楽化されている。そこがクンクリート(具体化)と言う意味らしい。
多種多様な打楽器を登場させ、管弦楽器にも特殊な奏法をさせて、かなり派手めのタペストリが織り上がる趣向のようだ。飲んべえだった父親の思い出には黒田節が引用されているが、打楽器奏者4人がビールのジョッキを打ち鳴らすと言うお遊びも。
また、カデンツァというのは本来、協奏曲で独奏者が一人で即興的にその至芸を披露する場所だが、この作品では<指揮者のカデンツァ>が用意されている。
バイオリン1挺の不気味な連続音型を背景に、指揮者は釣竿を持ち出し、ステージから客席に釣り糸を垂らして、ブツブツ一人芝居。釣れなくて切り上げようとした時に大きな(ぬいぐるみのようだったが)釣果を得て音楽続行。もう、この辺ではさすがに客席からは笑い声と拍手喝采。
後半はアリス=沙良・オットを迎えてリスト:「死の舞踏」。
彼女の病気は快癒したのか、とても気合が入って快調そのもの。有名な曲だが、これがなかなか生で聴く機会がなく、多分今日初めてだったかも。
メインはリスト:ハンガリー狂詩曲第2番ハ短調(管弦楽版)だ。原曲のピアノによる演奏(「トムとジェリー」で超有名になった!)はたまに聴くことがあるが、管弦楽版〜それもこの第2番だけを編曲したミュラー=ベルクハウスによる管弦楽版は実に珍しい。
有名な冒頭の旋律は弦楽合奏だ。これが厚くていい響きだ。途中、クラリネットのソロも小気味よく、後半はチャールダッシュのように急速展開で痒いところに手が届くような音楽で十分なカタルシスを味わった。
井上師はいつものように熱く手抜き無し。これに応えた日フィルも申し分の無い熱演で盛り上げてくれた。
最後のオーケストラ・アンコールは、井上師曰く「アリスの健康を祈念して<星に願いを>」。平服に着替えたアリスがステージの下手で聴き入っていた。全く胸が熱くなるよ。今日も幸福な演奏会だった。
♪2019-146/♪みなとみらいホール-43