2020年11月29日日曜日

オペラ「こうもり」

 2020-10-12 @新国立劇場


指揮:クリストファー・フランクリン
演出:ハインツ・ツェドニク
美術・衣裳:オラフ・ツォンベック
振付:マリア・ルイーズ・ヤスカ
照明:立田雄士

合唱⇒新国立劇場合唱団
バレエ⇒東京シティ・バレエ団
管弦楽⇒東京フィルハーモニー交響楽団

オペラ『こうもり』/ヨハン・シュトラウスⅡ世
Die Fledermaus / Johann STRAUSSⅡ
全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉
オペラパレス

予定上演時間:約3時間
 第Ⅰ幕50分
  休憩30分
 第Ⅱ、Ⅲ幕100分

前回観賞の「夏の夜の夢」(全員日本人キャスト)と打って変わって、本作の主要キャスト(指揮者含む)は例年どおり海外勢だが、こんなに大勢が来日できるのにオケの指揮者が躓いているのはどうして?


因みに日本人は2人(村上・大久保)は常連。1人(平井)も復帰組で慣れたもの。

オペラ自体はいつもながらに傑作。大いに笑える。

長く変わっていない舞台装置や衣装も綺麗だ。

今回の発見は、今更ながらだけど、序曲が実にうまく作られているという事。

序曲というのは大抵そうだけど、本編を観ながらああ、この曲もこの節も序曲に取り込んであるぞと、逆に気付く有様。


残念なことはコロナ過剰警戒演出だ。
1幕の有名で楽しい三重唱(「ひとりになって」or「あなたのいない8日間」とも)。

3人とも口では悲しい寂しいと言いながら心は今夜の楽しい夜会。
曲調が舞曲に転ずるとその本音が出てしまうところ。

演出は基本的に過去を踏襲しているが、少なくとも18年の舞台とは異なった。

18年版では、3人が寄り添って腰掛けていたので、ポルカ風の音楽が始まると上半身とは裏腹につい足がリズムに合わせて動いてしまう。ここが巧い。それが傑作(立って歌う演出が世界的にもフツーだけに18年版の座って歌う演出が光っていた。)。

今回は3人とも距離を保ち立っていたので<つい、足が…>の滑稽さが失われて、単に音楽に合わせているという感じになってしまった。

惜しい!

全員の陰性を確認しているそうだが、ならば、どうして「密」な演出を避ける必要があるのか。

ラストのハッピーエンドも主役2人が抱き合っても良かったが。
このあたり、隔靴掻痒!

https://youtu.be/vHk4J48_hug

♪2020-087/♪新国立劇場-04

2020年11月28日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第362回横浜定期演奏会

2020-11-28 @みなとみらいホール

川瀬賢太郎:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

竹澤恭子:バイオリン*

ベートーベン:序曲《レオノーレ》第3番 op.72b
ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 op.93
ベートーベン:バイオリン協奏曲 ニ長調 op.61*
----ENC----------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリンのための組曲第2番からサラバンド*


オール・ベートーベン・プログラム。
前半は「レオノーレ第3番」と「交響曲第8番」。

これがいずれも出来が悪く、全然集中できなかった。

各パートは決められた音を出しているのだろうが、呼吸が合っていない。
一斉強奏(Tutti)はそこそこ綺麗だが経過部がふにゃふにゃだ。

まるで明日のサントリーの為のGP(ゲネプロ=本番直前の最終リハーサル)みたいで悲しい。


後半のバイオリン協奏曲は竹澤恭子の入魂の演奏があまりに見事で、オケもようやく覚醒してエンジンがかかった。

独奏者は何といっても豊かな音量が求められるが、彼女の発する音は実に明瞭で迫力がある。
どんな場面でもオケに埋没しない。
音楽に対する集中力が半端ではない。

先月の日フィルは辻彩奈でバッハのバイオリン協奏曲等が素晴らしかったが、今日の竹澤恭子を聴くと、辻彩奈も優れた才能の持ち主だと思うが、まだまだ道は遠いぞとも思う。

竹澤恭子はこれまで室内楽しか聴いたことがなかったが、オケを従えた彼女は佇まいにオーラがある。

昨日の前橋カルテットに引き続き、今日も音楽に肉薄する渾身の演奏に出会えた幸せ!

♪2020-086/♪みなとみらいホール-22

2020年11月27日金曜日

橋汀子カルテット 〜フィリアホール ミュージックアカデミー・プログラム

 2020-11-27 @フィリアホール


前橋汀子(バイオリン)
久保田巧(バイオリン)
川本嘉子(ビオラ)
北本秀樹(チェロ

《オール・ベートーベン・プログラム》
弦楽四重奏曲第4番ハ短調 Op.18-4
弦楽四重奏曲第11番ヘ短調 Op.95「セリオーソ」
弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調 Op.131
---------------
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番から第2楽章アンダンテ・カンタービレ

先月末にもSQを聴いているから久しぶりと言う程でも無かったけど、SQならではの緊張感に包まれたのはホンに久しぶりだった。

前橋汀子のカルテットは初めて。

正規メンバーのVcが来日できず、その為か?曲目も15番が14番に変わったが僕には関心の埒外。

室内楽はかぶりつきに限る、と言う訳で相当前列の席で聴いた。

今日の4番、11番は生で聴く機会もそこそこあり、CD等でも馴染んでいるが14番は多分初生。家でも演奏時間が長い(本日実演40分)せいもあって滅多に聴かないので楽しめるかなと不安もあったが、前2曲の好演で懸念は吹き飛んだ。

綿密に構成された四重奏曲に巧者が息を合わせて挑む時に生まれるスリリングな緊張に圧倒された。

特に14番は全7楽章休止なし。かなり自由に作られているが、緩みがない。奔放な楽想に振り回される心地良さ。

ベトの真髄の近くを掠めたような気がした。

今夜は全曲がセリオーソな至福の時。

♪2019-085/♪フィリアホール-01

2020年11月26日木曜日

パイプオルガンLucyバースデー・コンサート GRAND ORGAN GALA 2020

 2020-11-26 @みなとみらいホール

三浦はつみ・荻野由美子・近藤岳(オルガン)
林辰則(トランペット)
黒川青葉(ソプラノ)
平尾信幸(パーカッション)
篠崎史門(ティンパニ、パーカッション)
牧野美沙(パーカッション)
竹市学(能楽笛方)
梅若紀彰(仕舞)

第一部
サン=サーンス(近藤岳編曲):交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」Op.78から第2楽章第2部
近藤岳:オルガンのための《獅子》
ラヴェル:ボレロ

第二部
大友良英:2019年NHK大河ドラマ「いだてん」から
佐藤直紀:映画「ALWAYS三丁目の夕日」から
佐藤直紀:TVドラマ「GOOD LUCK!!」から
フレディ・マーキュリー、マイク・モラン:「バルセロナ」
ヘンデル:「アン女王の誕生日のための頌歌」から
ヴァンゲリス:映画「炎のランナー」から
菅野よう子:「花は咲く」
ジョン・ウイリアムズ:「オリンピック・ファンファーレとテーマ」


Lucy(みなとみらいホールのオルガンの愛称)の誕生日は夏で、このコンサートも6月の開始予定だったが、コロナで今日に延期されたので、今年末でホール・オルガニストを退任する三浦はつみ氏の退任記念演奏会のようにもなったが、むしろこれはこれで良かった。

オルガンにトランペット、打楽器、和楽器、声楽などあれこれ取り混ぜて多様な音楽を多彩な音色で楽しんだ。

でも、一番は、冒頭のサン=サーンス:交響曲第3番2楽章2部。
オルガン連弾だった。

連弾だと、オルガンの呼吸量?も多くなるせいか、凄まじい響に身体の震えを感じたよ。

ところで、三浦氏の退任あいさつを聞きながら、みなとみらいホールの年明けから22月に及ぶ改修康二の為の長期休館に思いを致し、淋しさが募ってきたよ。

例年なら年間50回は通っている我が「ホーム」だ。
このホールのない生活はいったいどんなことになるのだろう。

オケの定期演奏会は会場を(県民ホール、県立音楽堂、ミューザなどに)変更して継続されるが、みなとみらいホールは我が家から一番近くで、一番立派で、一番響きの良いホールだものな。

意気消沈…。

♪2020-084/♪みなとみらいホール-21

2020年11月23日月曜日

読売日本交響楽団第123回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

 2020-11-23 @みなとみらいホール


鈴木優人:指揮
読売日本交響楽団

村治佳織:ギター*

ベートーベン:序曲「レオノーレ」第3番
ロドリーゴ:ある貴紳のための幻想曲*
ベートーベン:交響曲第5番ハ短調「運命」
----ENC----------------
タレガ:アルハンブラの思い出*

ベートーベンの作品は2曲ともコンパクトな弦10型**だった。
こういう読響ってこれまでに聴いたことがあるかなあ?

2曲とも金管は17本。

読響の金管部は良く鳴るし、みなとみらいホールはよく響くし、どうも弦楽部が押され気味な感じ…
…というか、弦楽アンサンブルの良さを味わうに至らなかった。

鈴木優人の叔父さん・鈴木秀美の「運命」を聴いた事があるが「疾走型」でとても面白かった。

甥っ子の「運命」も出だしはかなり早いテンポ。

このまま疾走するかと思いきや、以降は正統的で外連味のない聴き慣れたもので、これはこれで楽しめた。

**正確には12型の基本形から第1バイオリンを1組(2人)減らし、第2バイオリンが舞台下手に並ぶ第1バイオリンに対抗する形で上手に配置される陣形

♪2020-083/♪みなとみらいホール-20

2020年11月21日土曜日

モーツァルト・マチネ第43回「壮年期 X 挑戦」

 2020-11-21 @ミューザ川崎シンフォニーホール

沼尻竜典:指揮
東京交響楽団

佐藤友紀(東京交響楽団首席トランペット奏者)*

モーツァルト:交響曲第32番ト長調 K318
ハイドン:トランペット協奏曲変ホ長調 Hob.VIIe:1
モーツァルト:交響曲第38番ニ長調 「プラハ」K. 504


東京交響楽団音楽監督のジョナサン・ノットが指揮をする回だったが沼尻竜典に代わり、演目もリゲティの小品がモーツァルトの32番交響曲に差し替えられた。

ハイドンを挟んで最後はモーツァルト38番交響曲「プラハ」。

全曲、軽快で親しみやすく、やはり、モーツァルト・マチネはこうでなくちゃ。

沼尻氏は前にもモツ・マチや名曲全集で登場しているので急な代理といっても十分気持ちは通じ合うだろう。

ハイドンのトランぺット協奏曲には懐かしさを感じた。

今やまずCDを回すこともないのになぜかメロディーはしっかり頭に入っている。

東響首席の佐藤氏が明るい音色と美技で好演。

メインの「プラハ」。

この曲も15日に都響で聴いたばかり。

その日の都響の出来は良かったができたら弦10型で聴きたいと思ったところ今日の東響はまさしく10型で、コンパクトでシャキシャキして、ミューザの響きの良さも相俟って音楽が一層分かり易く心地よい。

古典派絶対音楽の妙也。

音楽はとても良かったが、残念な事に指揮者とコンマス(管楽器はいうまでもなく)以外は全員マスクをして演奏した。

ここ数日の感染急拡大を受けてかもしれないが、いくらなんでも本番中は不要でしょ!

不安がないように、東響はしっかり団員の健康管理(定期的検査含む)を行うべきだ。

♪2020-0821/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-14

2020年11月20日金曜日

NHK交響楽団 11月公演

 2020-11-20 @東京芸術劇場大ホール


原田慶太楼:指揮
NHK交響楽団

神尾真由子:バイオリン*

コリリャーノ:航海 (弦楽合奏)
バーバー:バイオリン協奏曲 作品14*
ドボルザーク: 交響曲第9番ホ短調 作品95「新世界から」
-----Enc---------------
エルンスト:「魔王」による大奇想曲 Op.26*

コリリャーノ:弦楽版「航海」は初聴き。
前回のNHKホールで聴いたJ.S.バッハのオルガン曲の弦楽合奏に比べるとずいぶん綺麗な音だ。

楽しみは神尾真由子。
バーバーのバイオリン協奏曲だったが、如何せん本日はあまり良席とは言えず、独奏バイオリンがオケに埋没する部分もあった。

しかし、アンコールで弾いたエルンスト:「魔王」では流石の腕前を感じた。

さて、メインは…。
今月13日新日フィル、15日都響に続いて3回目の「新世界」で、もうすっかり「日常世界」だよ。

都響も良かったが流石にN響。迫力の中にも透明感がある。

原田慶太楼の音作りも細部にこだわって独自の音楽になっていた。N響も受けてたって注文に応えるところがプロフェッショナルだ。

1-2楽章間はほんの一呼吸で、3-4楽章間はアタッカで続けたのは新しく気持ちが良かった。

この人がN響に新しい風を吹き込むかもしれない。

ただし、終楽章のテンポの変化は如何なものか。

オケはいい音を出しているのに指揮者の構成感に僕の感覚が付いてゆけない。隔靴掻痒の感で聴いていたよ。

♪2020-081/♪東京芸術劇場大ホール-02

11月歌舞伎公演第1部

 2020-11-20 @国立劇場

【第一部】
近松門左衛門=作
国立劇場文芸研究会=補綴
平家女護島(へいけにょごのしま)-俊寛-
            国立劇場美術係=美術

序幕 六波羅清盛館の場
二幕目 鬼界ヶ島の場

平相国入道清盛/俊寛僧都   中村吉右衛門
海女千鳥           中村雀右衛門
俊寛妻東屋/丹左衛門尉基康    尾上菊之助
有王丸                         中村歌昇
菊王丸                           中村種之助
平判官康頼                          中村吉之丞
越中次郎兵衛盛次               嵐橘三郎
丹波少将成経                        中村錦之助
瀬尾太郎兼康                        中村又五郎
能登守教経                          中村歌六



所謂「俊寛」〜鬼界ヶ島。

吉右衛門、菊之助、雀右衛門。
役者が揃ったせいか、コロナ隆盛にも関わらず市松満席近い。

考えてみれば鑑賞・観劇は他人と対面する事は少なく、客は無言で咳払いも粗無い。施設はマメに消毒しているようだし、家に居るより安全?

…とでも思っていなきゃ怖くて観に行けない。

この芝居は、鬼界ヶ島に1人残される俊寛の葛藤が見処だが、放免されないと知った際の地団駄踏む子供じみた態度に比べると船を見送る際の無念さは諦観からか存外おとなしい。

歌舞伎・文楽で何度か観ている中で今回は一番静かな俊寛だったが、あの立場で、あの事情で、人はどんな態度を取るものだろうか、考えさせられた。

吉右衛門は長くこの役を演じながら考え抜いて今の形に至ったのだろうが、これは難しい芝居だなと気付かされた。

それが今日の収穫かな。

♪2020-080/♪国立劇場-10

2020年11月15日日曜日

東京都交響楽団 都響スペシャル2020

 2020-11-15 @東京芸術劇場大ホール


小泉和裕:指揮
東京都交響楽団

モーツァルト:交響曲第38番ニ長調 K.504《プラハ》
ドボルザーク:交響曲第9番ホ短調 op.95《新世界から》


2日前にも新日フィルで聴いたばかりのドボルザーク第9番「新世界から」。
最近は、コロナ対策で指揮者やプログラムが変わるのも珍しくない。

リハなしGPだけで仕上げられる曲を並べておけ…てな事は無いだろうが、勘繰ってみたくなるようなプログラムが多い。

半月前の小泉+都響も鉄壁の名曲プログラムだった。

にもかかわらず出来は良くなかった。

しかし、今日はとても好感した。
モーツァルト「プラハ」の弦が芸術劇場とは思えない良い響き。

久しぶりに都響の厚いアンサンブルが戻った。

弦の編成は12型だったが、10型でも十分迫力を失わず、構成感が際立ったのではなかったか?むしろ10型のコンパクトな編成で聴いてみたかった。

「新世界から」は14型で一層重厚な響きを聴かせた。
それこそリハなしでも仕上げられる?手慣れた作品。

気脈を通じた指揮者とオケ。

同じような条件なのに、半月前の演奏とは様変わりにプロフェッショナルの響きを聴かせたのはどうしてかな。

小泉氏のカーテンコールの表情でも”今日は上出来”との満足感が表れていたよ。

因みに、前回と会場は異なった(サントリーと芸術劇場)が、席の位置はほぼ同じで、真ん中より少し後ろの列のほぼセンター。オケを聴くならこの辺が良いバランスだと思っている。

スウィートエリアの狭いホールでも、大体この辺なら間違いはない。

例外が1カ所。

それが今日の会場なのだが、不思議なもので、今日に限っては何の違和感もなく響いてきたのは僕の体調がおかしかったのか?

♪2020-079/♪東京芸術劇場大ホール-01

2020年11月14日土曜日

NHK交響楽団 11月公演

2020-11-14 @NHKホール

熊倉優:指揮
NHK交響楽団

藤田真央:ピアノ*

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」作品26
シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 作品54*
J.S.バッハ(レーガー編):コラール前奏曲「おお人よ、おまえの罪に泣け」BWV622
メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 作品90「イタリア」
-----Enc---------------
シマノフスキ作曲:4つの練習曲 作品4 第3曲*

コロナ再開後のN響の演奏会は、休憩なし1時間番組が続いたが、今日はこれまでの罪滅ぼしのように20分の休憩を挟んで前後2曲ずつの盛り沢山のプログラムだった。

メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」は中間部を除きえらくテンポが遅くて違和感。

アンサンブルも美しくない。

3曲目のバッハのオルガン曲の弦楽合奏版は余りに音が汚いので吃驚。

バイオリン第1-第2に低い重音を割り当ている為もあろうが、それにしてもひどい音だった。

メンデルスゾーン「イタリア」は良い出だしだったが、終楽章のテンポについてゆけない弦の刻みが崩れ気味。

今日のN響は2軍編成なのか!

一人気を吐いたのが藤田君のシューマンだ。

これは流麗闊達。今日の唯一の成果だった。

♪2020-078/♪NHKホール-04

NISSAY OPERA 2020 特別編 『ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~』

 2020-11-14 @日生劇場

指揮:柴田真郁
演出・翻案:田尾下哲

読売日本交響楽団

原作:ガエターノ・ドニゼッティ作曲 オペラ『ランメルモールのルチア』
翻案:田尾下哲『ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~』全1幕

ルチア⇒高橋維
エドガルド⇒宮里直樹
エンリーコ⇒大沼徹
ライモンド⇒金子慧一
アルトゥーロ⇒髙畠伸吾
アリーサ⇒与田朝子
ノルマンノ⇒布施雅也


コロナ対策版だ。

まあここまで「対策」することはないのにと思うよ。

3幕を1幕に。
3時間を90分に。
舞台に姿を見せるのはルチアと一言も発しない亡霊だけ。
その他は上手・下手に別れた額縁外の紗幕の陰で歌うのみ。

あのアリア、合唱、シーンが無いな…と気になり、一方原作では冒頭に少し登場するだけの亡霊が終始ルチアの心情を代弁するかのように付き纏うので、これも気になる。

あれやこれやで、集中できない。

初めて観た人には筋が分かりにくいだろう。

何度も観ている者には上述の没入阻害要因の為に楽しめない。

さらに言えば、1番の聴かせどころベルカントの狂乱の場の出来がイマイチ。やはり初台で観たペレチャッコとか、映像で観るNデセイ、Aネトレプコと比べちゃいけないのだろうが物足りない。

何はともあれ、まずもって普通の形でやるべきだった。

出演者の健康管理を徹底すれば何の問題もないのに。

♪2020-077/♪日生劇場-01

2020年11月13日金曜日

新日本フィル:#35ルビー<アフタヌーン コンサート・シリーズ>

2020-11-13 @すみだトリフォニーホール


大友直人:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

木嶋真優:バイオリン*

メンデルスゾーン:『夏の夜の夢』序曲 op. 21
メンデルスゾーン:バイオリン協奏曲ホ短調 op. 64*
ドボルザーク:交響曲第9番ホ短調 op. 95「新世界から」


メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲とドボルザークの交響曲第9番「新世界から」という”名曲コンサート”。

もちろん悪く無い。

気取った割には俗臭芬々たる小難しいのより好きだ…が、今日のプログラムはコロナ前から予定されていたと思うが、最近この手が増えてきたので新鮮さには大いに欠ける。

そんな気持ちで聞いていたからか、余計にイージーリスニングになってしまった。

演奏の腕前の問題ではなく、緊張感に不足した。

メンデルスゾーンでは独奏とオケのせめぎ合いなんて全く感じられず予定調和の世界。

「新世界から」も演奏技術は弦の高域にやや難があったほかは悪く無いが、綺麗に流れすぎる。

ま、”名曲コンサート”にはこんな毒にも薬にもならない演奏がふさわしいのか?


♪2020-076/♪すみだトリフォニーホール-04

2020年11月10日火曜日

75BTVN2020ピリオド楽器オーケストラ「第九」❷演奏会

 2020-10-05 @みなとみらいホール


渡辺祐介:指揮

オルケストル・アヴァン=ギャルド
クール・ド・オルケストル・アヴァン=ギャルド

川口成彦Fp*
藤谷佳奈枝Sp
山下牧子Al
中嶋克彦Tn
黒田祐貴Br


ベートーベン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番ト長調*
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」/他
-----Enc---------------
ベートーベン:6つのメヌエット WoO.10から第2番*


10月の<驚愕の第九>に続く第2弾が<革新の第九>だ。

キワモノめいた惹句だが、中身は至って真面目。
ベートーベン生存時代の演奏を聴かせようというものだ。

「ピリオド楽器」も「古楽」も曖昧な表現だが、可能な限りその時代(period/ピリオド)に迫ろうというものだ。

今日は、「第九」の演奏に先立って「プロメテウスの創造物」序曲とピアノ協奏曲第4番(いずれもベートーベン)を、先頃第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで2位になった川口くんが”ピアノ”ではなくその時代のピアノというべき”フォルテピアノ”で参加するという豪華版。

金管はバルブがない。
木管はリアルウッド。
弦はガット。
バイオリン・ビオラに顎あて・肩あてなし。
チェロはピンなし。
奏法はノンビブラート。


フォルテピアノは初めて聴いた訳ではないがオケと協奏曲というのは初めて。

さすがに音が小さいが耳を済ませて聴いているうちに、ああ、これがベートーベンの時代の音楽なんだと、何やら不思議な懐かしさを感じた。

古楽アプローチによる宗教曲などはたまに聴くがコンサートプログラムは初めて。

ガット弦・ノンビブラートならではのシャキシャキした響きが実に心地よい。スチールは音楽をダメにしたんじゃないか、と途中思ったりもした。

「オルケストル・アヴァン=ギャルド」なるオケの実態は解説を読んでもよく分からないが、今回の為のニワカ仕立てではなさそうだ。BCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)のメンバーを中心にN響などの若手名手で構成されている。

これが実にうまい。

尤も福川名人にもナチュラルホルンは難しそうだったが、あの楽器ではモダン楽器のような撥音の明瞭さを期待すべきではないのだろう。

初めての指揮者・渡辺祐介もよく統率して、嫌味がない。

一方、2楽章の終わり方などフワッと消えるようで、これが洒落ていた。

4楽章はレシタティーヴォに個性が出るところだが、とても自然で好感。 

今年2回目の「第九」だった。
声楽入りの本格的「第九」は最初だったが、いきなり真打登場の感あり。

前・みなとみらいホール館長の池辺晋一郎が駄洒落混じりの解説。どうでもいいような中身だったが、この企画・監修はいい仕事をしてくれた。

♪2020-059/♪みなとみらいホール-19

2020年11月3日火曜日

11月歌舞伎公演第2部

 2020-11-03 @国立劇場

梅野下風・近松保蔵=作
●彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)-毛谷村-

 国立劇場美術係=美術

第一場 豊前国彦山杉坂墓所の場
第二場 同   毛谷村六助住家の場

●上 文売り(ふみうり)
 下 三社祭(さんじゃまつり)
                     清元連中

●彦山権現誓助剣 -毛谷村-
 毛谷村六助                   片岡仁左衛門
 一味斎娘お園                片岡孝太郎
 杣人斧右衛門                坂東彦三郎
 一味斎孫弥三松               小川大晴
 家人佐五平       片岡松之助
 微塵弾正実ハ京極内匠      坂東彌十郎
 一味斎後室お幸      中村東蔵
                                     ほか
●上『文売り』
 文売り    中村梅枝

●下『三社祭』
 悪玉                          中村鷹之資
 善玉   片岡千之助


国立劇場では再開した先月から2公演制(歌舞伎座は4公演制)だ。12月も同様なので、しばらくこの形が続くのだろうか?

すると、恒例のお正月の菊五郎劇団のスペクタクル活劇はどうなるのか心配だ。とても2公演制のような2時間半では収まらないから。


さて、今日は仁左衛門の「毛谷村」を観た。

正式には「彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)-毛谷村-」。


客席はまだ、市松配置ではあるが人気者の仁左衛門登場とあってお客は多かった。


この「毛谷村」はこれまでに色んな配役で観ている。

今回同様の仁左衛門・孝太郎コンビでも観た。まあ、安定の布陣で楽しめる。

が、菊五郎・時蔵のコンビが面白かったな。

今回、見逃したとしたら孝太郎に申し訳ないが、六助(仁左衛門)の女房・お園(孝太郎)が腕っ節は強いが、急に女ぽくなるおかしさなどはもっとしっかり観たかった。


また、本来はこの続きがあるのだろうけど、仇討ちの話なのに、仇討ちに出発するところで終わってしまうのが隔靴掻痒の感を免れ得ず。

♪2020-074/♪国立劇場-09

11月上席 金時改メ五代目三遊亭金馬襲名披露興行

 2020-11-03 @国立演芸場


落語 古今亭志ん吉⇒
二階ぞめき
落語 三遊亭金朝⇒初天神
奇術 マギー隆司
落語 春風亭小朝⇒荒大名の茶湯
落語 柳亭市馬⇒穴泥
-----仲入り-----
口上 金朝、小朝、金馬、小さん、市馬
落語 柳家小さん⇒粗忽の釘
粋曲 柳家小菊
落語 金時改メ三遊亭金馬⇒中村仲蔵


今月の上席は、三遊亭金馬の息子・金時が五代目金馬を襲名した披露興行だ。
四代目金馬は金翁を襲名したが、国立演芸場での上席には2日間のみの登場で、今日は出演しなかった。90歳を超えている現役は最高齢かな。

ともかく、五代目金馬の誕生を祝ってか、珍しく話巧者が揃って聴き応えがあった。

春風亭小朝の頭の回転の良さや博識ぶりが以前は嫌味にさえ感じたが、彼も歳をとり、僕も歳をとって、あまりこだわりがなく楽しめた。実は小朝を生で聴くのは始めてだったがいやはや巧い。達者なものだ。

あまりに巧い噺を先に聴いたので、こちらも達者な市馬さえ少し霞んでしまった。

小さんが、彼の格にしては軽い噺だったのは残念。

さて、真打は当然、金時改メ金馬だ。

「中村仲蔵」を演った。

コレが巧いのなんのって。

話の筋はすっかり分かっているのに乗せられる。

ついウルッときてしまった。

本来は、もっと泣かせることができる話だが、そこをさらりと通り過ぎてゆく軽さがいい。

立派な五代目の誕生に接することができたのは良い思い出になるだろう。

♪2020-073/♪国立演芸場-08