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2021年10月16日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 横浜第371回定期演奏会

2021-10-16 @カルッツかわさき



アレクサンドル・ラザレフ:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

宮田大:チェロ*

ドボルザーク:チェロ協奏曲ロ短調 op.104
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73
-------------------------
カザルス編:鳥の歌*
ブラームス:ハンガリー舞曲第2番二短調


18年の秋以来(記録ミス?)という久しぶりのラザレフはかなり劇的!に登場した。

オケより早く1人で登場してパントマイムショーで客席を笑わせたが、どうやら待機期間が不足していたらしい。

入退場は孤独に、指揮台周りは広く侵入禁止エリアが設定されていていた。


先月のPヤルヴィの場合はまろ氏が付き添っていたが、ラザレフは芸人だから1人無言コントで終演まで間を持たせ客席を沸かせた。


指揮台と独奏者宮田大との距離は間にVn1プルト入れても余るくらい離れている。コンマスは遥かに遠い。そのせいもあったか、ドボコンの出来はイマイチだった。


会場の響きの悪さが第一の原因で、音楽が薄っぺらく聴こえてしまう。宮田の音の良さは何度も経験しているが、カルッツではその美音に潤いがない。オケの響きも同様にとてもドライだ。


しかし、一方で気づきもあった。

ホールの響きが悪いと演奏だけでなく作品の出来まで露見させてしまう…ドボルザークとブラームスの音楽の差だ。


後半のブラームス交響曲第2番は、響きのハンデを乗り越えてしまう重厚なアンサンブルに圧倒される思いだった。これぞ本来の日フィルの底力。ラザレフは見事にそれを引き出していた。久しぶりとは言え、彼の指揮で聴くのはずいぶん回数を重ねているが、今日は、この人の底力も強く感じた。素晴らしい音楽を聴かせてくれた。終曲時に、これは珍しいことではないが、タクトを振り下ろすと同時にくるりと身を翻して客席にドヤ顔を見せる。いやはや、今日の演奏は本気でドヤ顔が似合ったよ。


ところで、ドボルザークとブラームスは管弦楽に対する考え方・作曲技法等に違いがあるのは当然として、それが作品に刻印されているが、決定的には才能が違うのではないか。

それゆえに顕れる音楽そのものの持つ力の差を、響の悪いホールのお陰で感じ、今更乍らブラームスの偉大さが身に沁みた。


♪2021-112/♪カルッツかわさき-02

2018年11月9日金曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第705回東京定期演奏会

2018-11-09 @サントリーホール


アレクサンドル・ラザレフ:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

グラズノフ:交響曲第8番変ホ長調 作品83
ショスタコーヴィチ:交響曲第12番ニ短調 作品112「1917年」

昨日に続いてサントリー詣で。

コンサートのダブリの為に横浜定期を東京定期に振り替えたので席を選べず、選べるなら絶対に避けたい前方寄りの、かつ、下手寄りが割り当てられてしまった。チケットを無駄にするよりマシだが、できたら、ど真ん中のど真ん中で聴きたかった。

日フィル桂冠指揮者ラザレフがシリーズとして取り上げているグラズノフとショスタコーヴィチ又はプロコフィエフのうちいずれかの作品を演奏するコンサート「ラザレフが刻むロシアの魂」の4回目だった。

グラズノフ交響曲第8番では、席の前方に第1、第2バイオリン群が迫っているので、これら高域弦がけたたましく、明らかに中低域の弦が埋もれてしまった。それに音楽自体が、初聴きのせいもあったか、凡庸な気がして楽しめなかった。

一方、ショスタコ12番では冒頭の低弦の大音量に引き込まれ、その後はバランスもへったくれもない。

ショスタコーヴィチは、ロシア革命の煽りを食って、その芸術が批判にさらされ、一時期は生命の危険もあった。生きてゆく為には操も捨てなければならぬ。

かくして、現在世界中で最も親しまれている交響曲第5番「革命」でスターリンのご機嫌をとって、なんとか音楽家としての人生を全うしようとした。
今日の交響曲第12番も副題が「1917年」と付いているようにロシア「10月革命」を祝賀してその44年後に作曲されたものだそうだ。
この政権に阿(おもね)た大衆受け狙いの原始的な吸引力に自称文化人としてはいささか素直に音楽を楽しめない。

ジダーノフ(ソ連共産党中央委員会書記。50年代を中心に当時のソ連の前衛芸術、とりわけショスタコーヴィチの音楽を反革命として批判した。)を批判するなら、今、我々はこの音楽を批判すべきなのか等考えながら…もひきも切らぬ怒涛の爆音に襲いかかられ体よく飲み込まれてしまったのだけど。

日フィルの底力は受け止めたが。

♪2018-144/♪サントリーホール-12

2018年5月12日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第337回横浜定期演奏会

2018-05-12 @みなとみらいホール


アレクサンドル・ラザレフ:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

阪田知樹:ピアノ*

ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》より前奏曲と愛の死
シューマン:ピアノ協奏曲*
チャイコフスキー:交響曲第4番
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アンコール
シューマン(リスト編):「献呈」*
チャイコフスキー:「くるみ割り人形」から「トレパック」

「トリスタン〜」はまずまず。好みで言えば、もう少し穏やかな方が好きだけど、元気のいい「トリスタン〜」だった。
弦楽器のアンサンブルは美しい。

「シューマン」は、オケは良かったが、ピアノに若干問題あり。音を外す場面が多く、ピアノも加わるTuttiでもズレが目だった。シューマンのコンチェルトはピアニストにとって難曲らしいが、あまり何度も音を外すと興ざめだ。

メインのチャイコ4番。これはよろしい。冒頭のホルンから始まりトロンボーン・チューバに降りてゆくファンファーレの見事さにまずは心奪われてしまった。なんども聴いているが、これほど立派なファンファーレは初めてだ。

ラザレフの指揮は第1楽章冒頭からテンポが早かったが、終楽章も怒涛の迫力だった。

欲を言えば、弦がなかなか綺麗なのだが、中低域が人数が多い割に厚みに不足した。と言うより、管の迫力に負けていたようにも思う。
それにしても、最近、日フィルの満足度は高いな。

♪2018-051/♪みなとみらいホール-15

2017年10月21日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第331回横浜定期演奏会

2017-10-21 @みなとみらいホール


アレクサンドル・ラザレフ:指揮
ボリス・ベルキン:バイオリン*
日本フィルハーモニー交響楽団

ショスタコーヴィチ:バイオリン協奏曲第1番*
​チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」
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アンコール
チャイコフスキー:管弦楽組曲第4番「モーツァルティアーナ」第3曲「祈り」

バイオリンのベルキンは初めて。聴いてから時間が経ったのでもう思い出せない。プログラムになにもメモをしていないので、印象が薄かったのかな。そもそも、ショスタコのバイオリン協奏曲は余り好きじゃないので、身を入れて聴いていなかったのかもしれない。

「悲愴」も同じく。
いつものように、ラザレフは終演後に大はしゃぎをしたんだろうな。

記憶に留めているのは、アンコールで演奏された作品だ。
初めて聴いた音楽だけど、旋律はよく知っている。モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」だ。でも、モーツァルトの作品は合唱作品だし、リストがそれを編曲したがもちろんピアノ用だ。なので、旋律は「アヴェ・ヴェルム・コルプス」に間違いないが、いったいこの正体はなんぞや、と思いながら聴いた。
あとで、チャイコの組曲第4番から第3曲「祈り」だと知った。
また、チャイコが編曲したのはモーツァルトの作品ではなく、リストが編曲したものをオーケストレーションしたのだそうだ。
ま、オリジナルがとてもきれいな音楽なので、管弦楽作品に編曲されても、その良さは十分生かされていた。この作品の発見!がこの日の収穫かな。

♪2017-165/♪みなとみらいホール-39

2017年6月10日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第328回横浜定期演奏会

2017-05-20 @みなとみらいホール


アレクサンドル・ラザレフ:指揮[桂冠指揮者兼芸術顧問]
日本フィルハーモニー交響楽団

山根一仁:バイオリン*

チャイコフスキー:バイオリン協奏曲ニ長調 作品35*
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 作品47
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アンコール
イザイ:無伴奏バイオリン・ソナタ第2番から「メランコニア」*
ショスタコーヴィチ:組曲「馬あぶ」から第3曲「祝日」

先月のN響が指揮も独奏もロシア人によるオールロシア・プロだったが、今月の日フィルもロシア人ラザレフの指揮でチャイコフスキーのバイオリン協奏曲とショスタコーヴィチの交響曲第5番というロシアものの鉄壁プログラム。
バイオリンソロは俊英21歳の山根一仁くん。彼は…ロシア人ではないな。

指揮者にとってもオケ(+ソリスト)にとっても、演奏し慣れた作品ばかりというせいもあるのだろうが、軽やかなものだ。

バイオリン1本の微細な響からショスタコーヴィチ終楽章の爆裂音まで。このダイナミックレンジの大きさに浸るシアワセ。

いつものように、終演後のラザレフ・パフォーマンスが音楽会の興奮を一層高めてくれる。
大きな身体を揺すって拍手しながら舞台を歩き回り、客席にも拍手を促し、素晴らしい演奏だった!とアピールしてくれるので、みんな笑顔で満足して万歳。


♪2017-088/♪みなとみらいホール-20

2016年7月2日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第319回横浜定期演奏会

2016-07-02 @みなとみらいホール



アレクサンドル・ラザレフ:首席指揮者
辻本玲:チェロ[日フィル・ソロ・チェロ]*
日本フィルハーモニー交響楽団

ドボルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104*
ドボルザーク:交響曲第8番 ト長調 作品88
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アンコール
パブロ・カザルス編:鳥の歌*
ドボルザーク:スラブ舞曲作品72 第2番マズルカ


今日は今季の最終回。ラザレフにとっては首席指揮者として最後の横浜定期だ(次季からは桂冠指揮者兼芸術顧問)。
全ドボルザークプログラム。

独奏チェロの辻本玲は2015年6月から日フィルのソロ・チェロ。
これまでにも定期演奏会で聴いていたのだろうがソロは初めて。
まだ30歳代前半らしい。
楽器はNPO邦人から貸与されたストラディバリウス。
というせいでか、確かにチェロの音はきれいだ。これまで聴いたソロ・チェロの音の中でもベスト5には入りそう。
しかし、あまりにきれいな音で、欲を言えば野性味が欲しかったな。

しかし、今日の日フィルは我が耳を疑う見事なアンサンブルだった。仲間のソロを盛り上げようという気合が入っていたのか、今季最後で爆発したのか、協奏曲のみならず交響曲第8番も文句のつけようのない出来で今季の、そして首席指揮者ラザレフの有終の美を飾った。

これまで聴いた日フィルの演奏の中でベストかもしれないな。

♪2016-091/♪みなとみらいホール-23

2016年5月14日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第317回横浜定期演奏会

2016-05-14 @みなとみらいホール


アレクサンドル・ラザレフ:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
渡辺玲子:バイオリン

モーツァルト:オペラ《フィガロの結婚》序曲 K.492
モーツァルト:バイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219《トルコ風》
ベルリオーズ:幻想交響曲
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アンコール
ビゼー:歌劇「カルメン」から第3幕への間奏曲

モーツァルトバイオリン協奏曲第5番トルコ風。
バイオリン独奏は渡辺玲子。
この人は、相当なテクニシャンらしく、クラシック倶楽部に登場した際だったか、「超絶技巧モノ」が好きだと言っていた。
実際、その番組で披露されたのもパガニーニなどの超絶技巧曲が中心だった。

でも、モーツァルトだって、当然巧い。隙がない感じだ。

アンコールがなかったのは残念。
オーケストラによるアンコールはむしろないほうがいいと思っているけど、協奏曲のソリストがアンコールで普段なかなか聴けない小品を演奏してくれるのは大歓迎だ。できたら超絶技巧を演奏して欲しかったよ。

幻想交響曲では本物の鐘を含む打楽器が大活躍。
これまで何度も聴いているけど、ホンモノの鐘を確認できたのは初めてだ。これまではたいていチューブラベルで代用されていたように思うけど…。気が付かなかっただけかもしれないが。

演奏後のラザレフはいつもの様に大はしゃぎ。
最初は違和感があったけどこの頃は慣れて抵抗がなくなった。演奏会が楽しくてたまらないといった様子で微笑ましくもある。

幻想交響曲の出来が良かった(というか、この曲はどこが演奏してもそれなりのインパクトを与えるのだけど)ということもあって、観客も大勢は興奮気味で、はしゃぎ回るラザレフに釣られて拍手喝采が続いた。


♪2016-066/♪みなとみらいホール-17

2015年10月17日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第311回横浜定期演奏会

2015-10-17 @みなとみらいホール


アレクサンドル・ラザレフ[首席指揮者]:指揮
小川典子:ピアノ
日本フィルハーモニー交響楽団

ラームス:大学祝典序曲
リスト:ピアノ協奏曲第1番変ホ長調S.124/R.455
ボロディン:交響曲第2番ロ短調
--------------------------
ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」から「レズギンカ」


大学祝典序曲ではイマイチサウンドに輝きがないというか、いつもはもっとまろやかで透明感も感じられるのに、ザワーっとしたような響だったが、2曲めのリストになると弦も良く鳴っていつもの日フィルらしさが戻った。聴く側の耳の問題、気持ちの問題もあるのかもしれないけど、アコースティックな環境でのアコースティックなサウンドってほんに微妙だ。

リストのピアノ協奏曲は3作あるという説もあるが、第3番は聴いたことがない(これは全1楽章だそうだが)。
第1番も第2番も多楽章とはいえ全曲通して演奏される。
その第1番の楽章構成は全3楽章とする見方と全4楽章とする見方があっていずれにせよ通して演奏されるので、楽章の切れ目がよく分からないのだけど、4楽章構成で言えば第3楽章と第4楽章で、3楽章構成でいえば第3楽章で、トライアングルが頻繁に鳴らされるので、それを聴くとああ、この辺まで来たのか、と分かる。

大きなホールの後ろの方で聴いているのだけど、あの小さな楽器がチリンチリンとよく伝わってくる。CDだと聞き逃すことも多いのだけど。

もちろん、主役はピアノで、終始ピアノが華麗に鳴り続けている。

ボロディンの交響曲第2番は、チャイコフスキーの悲愴と並んでロシア人の国民性が如実に反映された作品だ…とワインガルトナーが言ったと解説にある。

しかし、この2作品はその洗練度において大きな開きがあると思うが、あるいは、だからこそ、この2曲がロシアの2面性を代表するのかもしれないが。

とても素朴というか、民族性が露骨に出て、俗っぽい音楽だ。
初めて聴いたが、それだけに分かり易く親しみやすい。


ラザレフは、どの曲も<ここで終わり>という瞬間に指揮台でくるっと踵を返し客席に向かって拍手を促す。それは全然嫌味ではなくて、彼自身が音楽を楽しんで、お客と一体感を味わいたいという気持ちだろう。観客サービスでもある。
普通は、終曲は観客と演奏家が音楽の最後の余韻まで納得して共有して迎えるものだけど、このタイミングはなかなか難しくて、観客も気持ちを一つにできるとは限らないのだけど、ラザレフのようにくるっと客席に向かってバンザイをしてくれると、ああ、これで終わったんだ、という気持ちの整理が<明確に>ついて、文句の言いようもない。


♪2015-104/♪みなとみらいホール-30

2015年6月6日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第308回横浜定期演奏会

2015-06-06 @みなとみらいホール


アレクサンドル・ラザレフ(首席指揮者)
伊藤恵:ピアノ
日本フィルハーモニー交響楽団

ショスタコーヴィチ:《馬あぶ》組曲 Op97-a
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op43
ストラヴィンスキー:バレエ組曲《火の鳥》(1945年版)


日フィル首席指揮者のラザレフ御大は、いつもとてもごきげんが良い。
1曲終わる度にさっと、観客の方を向いて、自分から拍手をしている。やんやの拍手が終わると舞台内の各パートを歩きまわり、プレイヤーをフューチャーして回る。
今日も途中ではピアノとハープの女性を舞台前まで引っ張りだして手をつないで拍手に応えるなど、いつも終曲後のパフォーマンスに意表を突かれることが多い。投げキスも頻繁だ。あんまり受けたくはないのだけど。

でもそうして、さあ、楽しかったでしょ!素晴らしい音楽を一緒に演奏できて良かった、みんなも聴いてくれて良かったでしょ、と言っているふうで、愉快な、温かいムードが微苦笑の渦の中でたち込めてゆくので、ああ、今日もみんなどれも良かったね、という気になって帰宅できるのだから、これは音楽外のことだけど、1つの才能だなあ。

今日のプログラムはロシア作品で統一された。
ラザレフはロシア人でありモスクワで学んだ人だから、いわば、自家薬籠中のものだろう。

ショスタコの「馬あぶ」は1955年に公開された映画「馬あぶ」(馬虻のことで、主人公のあだ名らしい)のための作品だそうな。
それを(元は全24曲あった)レフ・アトヴミャーンという人が12曲による演奏会用組曲に編み直したものだ。
半分に縮めても、今日の3曲中一番の長尺で、プログラム記載の予定演奏時間は43分というから、本来は最後に持ってきても良かったのではないと思う。
オーケストラも大規模で多彩な管打楽器(アルトサックス3本、グロッケンシュピール、シロフォン、ハープ、ピアノまでが動員され、80名を超えていた。

これは初めて聴く曲だったが、全体として、原作が喜劇なのだろうか、全体に明るく、調子の良い音楽で調性も明確で分かりやすい。
発表されたのが1955年だというと、最も有名な交響曲第5番(1937年初演)から18年もあとの作品とはとても思えない。
むしろ、もっと若い時分の作品のようだ。
まるでチャイコフスキーのバレエ音楽のようでもある。でも、ところどころにショスタコ印は刻印されている。

その後のラフマニノフも、ストラヴィンスキーもオケの編成は10人ほど小さくなったか。演奏時間も19分と31分と小ぶりだ。

でも、この2曲はともここ数年、ナマでは遠ざかっていたので懐かしい思いも加わってとても楽しめた。


ラフマニノフの狂詩曲は24の変奏曲で構成されているけど、そのうちの18番がダントツに有名で、この曲が本当にパガニーニーの原曲を和声的にもなぞっているのかしらと疑問なのだけど、変奏というからには根っこは同じはずだなあ。
この曲は多分、映画音楽などで取り上げられていたように思うし、単独でも演奏されているはずだ。

「火の鳥」も久しぶりに聴いたが、どうせ耳タコだと思っていたけどそうでもなくて、前半はむしろ、え~?こんな曲だったっけという<新鮮>なおもいで聴いていたが途中からははやりしっかりと「火の鳥」の記憶が蘇ってきた。

日フィルの響に関しては、4月の定期でサントリーで聴いたブラームスのピアノ協奏曲の第1番の時、冒頭のティンパニロールの後の弦の緊張感が続かないというか、空疎な響を残念に思ったが、これは、その後デュッセルドルフ響で聴いた時も同様だったので、日フィルの技量のせいではなさそうだ。
いや、技量といえば技量かもしれないけど、指揮者の強力なリードで、厚ぼったい音楽を一瞬の緊張もなく作り上げることは難しいのだろう。ブラームスのオーケストレーションの問題もあるのかもしれない。

…ということを思い出したのは、今日の日フィルの響の豪快なこと。もちろん繊細さも兼ね備えて、近代管弦楽の色彩マジックを堪能させてくれた。とてもいい演奏であり、響もとても良かった。
叙上のごとく、前に少しマイナー評価をしたので、前言訂正しておこう。


あ、一言追加。
「パガニーニの主題による狂詩曲」でピアノ独奏したのは伊藤恵(けい)さん。
僕の好みの女流ピアニストといえば、小山実稚恵に伊藤恵。なぜか、はうまく説明できない。人柄に好感するのと、演奏にいつも安定感があること、それに音楽への乗り方が自然でケレン味がないということだろうか。

♪2015-53/♪みなとみらいホール-16

2015年3月14日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第305回横浜定期演奏会

2015-03-14 @みなとみらいホール


アレクサンドル・ラザレフ:首席指揮者
日本フィルハーモニー交響楽団

チャイコフスキー:バレエ音楽《眠れる森の美女》(ラザレフ版)
ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲《展覧会の絵》
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アンコール
E.エルガー:「子どもと魔法の杖」からⅦ野生のくま


昨日のコンサートは難解で眠りたくなったが、今日は耳に優しい曲ばかりでむしろ心地よくて眠りそうになった。

「眠れる森の美女」はバレエ音楽《眠れる森の美女》から指揮者のラザレフが8曲を選んで組曲化したもの。

初めて聴くような曲もあったが「ワルツ」のように超有名曲も混じっており、全体にチャイコフスキーの名調子で溢れている。

このバレエ音楽の組曲化について蘊蓄を傾けると、チャイコフスキーの3大バレー(「白鳥の湖」、「くるみ割り人形」、「眠れる森の美女」)のうち、チャイコフスキー自身がバレエ音楽から演奏会用に組曲化したものは組曲「くるみ割り人形」だけで、「白鳥の湖」と「眠れる森の美女」の組曲化はその都度いろんな指揮者が適宜選んで編成しているようだ。
ほとんど、組曲と称しているが要するに抜粋版であり、カラヤン版もムーティ版もレヴァイン版も5曲で構成されているが、中にはオーマンディー版のように26曲も含まれているものもある。

ラザレフの選んだ8曲は以下のとおり。
①序奏とリラの精
②パ・ドゥ・カトル(宝石の精たちの踊り)
③長靴をはいた猫と白い猫
④パ・ドゥ・カトル(4人の踊り)
⑤グラン・パ・ド・ドゥ…アダージョ
⑥パノラマ
⑦ワルツ
⑧アダージョ…パ・ダクシオン


続いて「展覧会の絵」。
これはいろんな編曲版があるが、今日は最もオーソドックスなラベルのオーケストレーションだ。
全10曲に5曲のプロムナードが付いている。

最初のプロムナードはトランペットソロから始まる金管ファンファーレで、これが上手だった。いや、プロだから当然だけど、実に気持ちのよい音がストレートに届いてくる。
この曲はオーケストレーションの見本というかデパートというか、多彩な楽器を使いこなして管弦楽の楽しさを満喫できる。
ほぼ完璧な出来で印象に残る演奏だった。

指揮のラザレフはいつもそうだけど、演奏が終わると大はしゃぎで可愛らしいところがある。オーケストラ団員を一生懸命に持ち上げ、観客に感謝を表し、最後は楽譜を持ち上げてこの音楽に感謝と言っているのだろうか。
オーケストラの団員も観客もついつい微笑ましくて拍手喝采だ。こういう観客サービスは感じがいい。


♪2015-24/♪みなとみらいホール-10

2014年3月22日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団第295回横浜定期演奏会

2014-03-22 @みなとみらいホール


シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op54ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 Op73

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アンコールシューマン(リスト編):献呈(小菅優)E.エルガー:愛の挨拶(管弦楽)

小菅優:Pfアレクサンドル・ラザレフ:日本フィルハーモニー交響楽団




昨日に続いて同じみなとみらいホールだけど、席が完全に対極だ。昨日の神奈川フィルは舞台後方のP席。日フィル定期は3階正面が定位置。

昨日、P席から遥か彼方の3階席を眺めて明日はあそこだなあ、遠いなあ、と思っていたが、今日は3階席からP席を眺めている。まあ、どちらも一長一短だ。3階から舞台はあまりに遠いので、臨場感に欠ける。今日は、単眼鏡も持ってゆかなかったのでソリストの表情も見えない。
しかし、音はとてもまろやかで、良い録音のCDを家で聴いているようなきれいでバランスの良い音が届く。


特に、今日はピアノ協奏曲だったので、これはあまり近くで聴くより残響に包まれた方が良いみたいだ。音がきらめいている。

さて、小菅優というピアニストは多分初め聴くのだと思う。まだ若い女性だ。事前に何の予備知識も持っていなかったが今年『ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会シリーズ』により芸術選奨新人賞音楽部門を受賞したというから、将来が楽しみな逸材なのだろう。

大好きなシューマンのピアノコンチェルト。

先月も金聖響、神奈川フィル、川﨑智子で聴いたばかりだから、ついそちらと比較してしまうが、聴く側の体調や気分も影響したのかもしれないものの、もっとやるせないような哀愁を滲ませて欲しい感じはあったなあ。


そしてブラームスの2番。
こういうドイツロマン派の組み合わせは、まがい物ではない正統的な西洋古典音楽の代表として安心して楽しむことができる。

時々、こういう音楽を聴くのは、音楽に対する雑念を初期化してリセットするのにいい。

ラザレフの指揮は多分2度め(過去の演奏会記録がなく記憶は曖昧。それで今年からは細大漏らさず記録することにしたけど続くだろうか…。)。


前回は苦手のマーラーで、あまり楽しめなかったが、今回は僕にとっては得意科目ともいえるブラームスで、十分楽しめた。

第1番の作曲で相当苦労した挙句成功を得たブラームスが肩の荷を降ろして取り組んだという作品だそうだが、心なしか、第1楽章や第3楽章にその軽やかさが感じられる。尤も全体としては自制された叙情性たっぷり?という屈折感が好きだ。



演奏が終わって、何度かのカーテンコールに応えていたラザレフのノリが尋常ではない躁状態に変だなと思ったが、そのうち、袖に引っ込んでから花束を持参して出てきた。

どういうことかと思っていたら、江口有香コンサートミストレス(女性のコンサートマスター)に手渡してみんなの祝福を受けよというジェスチャー。
そのうち彼女の手をとって指揮台に乗せ観客にも拍手してくれというサイン。なんだかよくわからないまま会場が盛り上がる。
そして、花束を持った江口氏と手を握り合ったまま、かねて準備してあったのだ。アンコールを兼ねたエルガーの「愛の挨拶」が演奏された。おそらくコンサートミストレスの退任を記念して謝意を示そうとしたのだろうと思って、帰りに日フィルの職員に確認したらまさにそのとおりで、今日で契約が切れるが、次期もやっていただけるようお願いしているところですということだった。
まあ、そうと知れば洒落た計らいだったが、多くの人は何のことか分からなかったのではないかと思う。

昨日に続いて、音楽以外のことでとても印象に残るコンサートになった。
明日もみなとみらいホールで読響定期だ。一体何が起こるだろう?





♪2014-23/♪みなとみらいホール11