2017年11月30日木曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2017前期 ≪熱情~ピアノ名曲選≫ダニエル・ハリトーノフ ピアノ・リサイタル

2017-11-30 @みなとみらいホール


ダニエル・ハリトーノフ:ピアノ


モーツァルト:
幻想曲ニ短調 K.397
ベートーベン:
ピアノ・ソナタ第14番 作品27−2 「月光」
   ピアノ・ソナタ第23番 作品57 「熱情」
ショパン:
バラード第1番ト短調 作品23
ノクターン第2番変ホ長調 作品9−2
   即興曲第1番変イ長調 作品29
   ノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)
   ポロネーズ第6番変イ長調 作品53「英雄」
リスト:
愛の夢第3番変イ長調
   ハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調
(カデンツァ自作)
--------------
アンコール
ラフマニノフ:前奏曲「鐘」作品3−2
ショパン:エチュード「大洋」作品25-12

「弱冠」という言葉は20歳に用いるそうだからまだ19歳では「弱冠」ですらないというという若さ。
2015年のチャイコフスキー・コンクールで3位入賞した時は16歳か17歳だ。まあ、こういう早熟の演奏家は珍しくもないけど、まだまだ若いということで、音楽の得意分野も定まっていないのだろうな。
今日のプログラム(アンコールを含め)を見ると、ピアノ曲の大家の作品がバランスよく並んでいる。これにドビュッシーやブラームスなどを加えればピアノ音楽大全だ。

特に超絶テクニシャンだとも思わなかったけど、これは選んだ作品が外連味のないものばかりだったからだろう。

何を聴いても、馴染みの曲ばかりだし、とても心地よく聴けた。個人的な好みでは、アンコールのラフマニノフの「鐘」がよく心に鳴り響いた。

♪2017-191/♪みなとみらいホール-47

2017年11月28日火曜日

オペラ「椿姫」

2017-11-28 @新国立劇場


指揮:リッカルド・フリッツァ
演出・衣裳:ヴァンサン・ブサール
美術:ヴァンサン・ルメール
照明:グイド・レヴィ
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団

ヴィオレッタ⇒イリーナ・ルング
アルフレード⇒アントニオ・ポーリ
ジェルモン⇒ジョヴァンニ・メオーニ*
フローラ⇒小林由佳
ガストン子爵⇒小原啓楼
ドゥフォール男爵⇒須藤慎吾
ドビニー侯爵⇒北川辰彦
医師グランヴィル⇒鹿野由之
アンニーナ⇒森山京子
*レヴェンテ・モルナールの代役

ジュゼッペ・ヴェルディ:「椿姫」全3幕〈イタリア語上演/字幕付〉

ナマの舞台は初めてだが、ビデオは5種類持っていて、一番お気に入りはアンジェラ・ゲオルギウがスカラ座で演じたもの。
N・デセイもA・ネトレプコ(痩せていた頃のもの)も好きだけど、いずれも演出がイマイチ。
ディアナ・ダムラウ(スカラ座版)はヒロインが健康的過ぎてイマイチ。

で、今回のヴィオレッタを演じたイリーナ・ルングはオペラ歌手にしては痩身で、結核を患って死に至るヒロインとして違和感がなかった。オペラ歌手というのは細身の身体であっても大きな声が出るものだと、いつも感心する。

一幕目の超絶技巧風なアリアでまずは実力を感じさせた。

演出面では最終場面のカーテン越しの会話が不自然に思った。
生と死を分けるカーテンなのだろうけど、無くたって話は通ずるのに。

第1幕では実際にも大勢が登場したが、舞台下手に配置した天井から床までの巨大な鏡(フィルム状)に舞台上の人々が写って倍増効果で賑やかな開幕だった。乾杯の歌はやっぱりこの混雑の中で歌われるのがふさわしいな。
舞台の床面も鏡になっていたようだが、1階の前方だったので床はほとんど見えなかった…と思う。はっきりとは思い出せないのだけど。

アリアのタイトルが実際の曲と一致するまでは頭に入っていないけど音楽はほとんどが耳に馴染んでいるので全編大いに楽しめた。
舞台に登場する人数はとても多いけど、主要人物は3人だけだから物語に混乱は生じないし、休憩30分挟んで2時間40分という短さもオペラを手軽に楽しむのにはもってこいの作品だ。

♪2017-190/♪新国立劇場-08

2017年11月26日日曜日

ウィーン交響楽団横浜公演

2017-11-26 @みなとみらいホール


フィリップ・ジョルダン:指揮
ウィーン交響楽団

ベートーベン:交響曲第5番ハ短調 作品67「運命」
マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」
--------------
アンコール
J.シュトラウスⅡ:トリッチ・トラッチ・ポルカ
J.シュトラウスⅡ:雷鳴と稲妻

ウィーン交響楽団と言えば、ウィーン・フィルには及ばないものの100年以上の歴史を有した名門であり、何より、このオケを指導した指揮者たちの名前がそのまま、西洋音楽演奏史みたいなすごい顔ぶれであるのに驚く。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ヴォルフガング・サヴァリッシュ
カルロ・マリア・ジュリーニ
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
クリストフ・エッシェンバッハ
ジョルジュ・プレートル
ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス
ウラジミール・フェドセーエフ
ファビオ・ルイージ
そして、フィリップ・ジョルダンに至る(途中知らない名前は省力した。)。

こういう巨匠たちの薫陶を受けてきたオケだ。一体どんな音をだすのだろう。期待が大きい。

開演時刻が15時だったが、その時刻に団員たちがステージ入りしたのに驚いた。他のオケでは定期演奏会でも、大抵は5分遅れが当たり前になっている。今回は、お客の中にも泡食って席に着いた人がいたろう。
また、よくある団員の入場パターンは、コンマス以外が着席して静まったところでコンマス登場、チューニング開始というものだ。だから、僕はコンマス登場時に拍手することにしている。大勢の団員が入ってくるのに合わせて拍手をしていたら、無駄に疲れてしまうからだ。ところが、ウィーン交響楽団ではコンマスも一緒にどやどやと入ってきたもので、ついに拍手するタイミングを失った。こういうざっくりした登場風景は海外オケではよく見かける。

1曲めの「運命」ではコンバスは6本(マーラーでは8本)だったが、その配置が珍しい、というかこれまで見たことがないと思う。全員がステージの最後列に横一列に並んだ(マーラーでも)。よくある配置は最後列がパーカッションか時に低音域管楽器だ。
こういうコンバスの配置が音楽的にどういう効果を持つのか分からない。低音域はあまり指向性が強くないのでどこで弾いても似たようなものなのかもしれない。ただ、マーラーの第3楽章のコンバスのソロの音は見事に美しかった。


「運命」と言えば、一番気になるのがそのテンポだ。

もう3年近く前になるが、ジャナンドレア・ノセダ+N響の「運命」の”疾走”ぶりに驚愕したが、今回もテンポは速め。ほぼ全曲インテンポだ。楽章間のポーズも極端なくらい短く、お陰で咳き込み狂騒曲を聞かずに済んだ。

このテンポ設定や、楽章間のポーズのとり方は「巨人」でも同様だった。全体に軽快なのだ。
しかし、アンサンブルは分厚い。一人ひとりの発する音量が大きいのだろうか、迫力がある。
この重量感はゲヴァントハウスやベルリンフィルにも共通していた。コンセルトヘボウのような弦の高域の透明感は不足していたが、こちらは迫力で押し切るという感じの音楽づくりだ。

「巨人」の終楽章の最終盤。いやが上にも盛り上がったところにとどめのホルン7本の起立演奏。本当は座って吹いたってさほど音量は変わらないだろうけど、一斉に起立するという見た目の華々しさも音楽を補強する。かくして、大いなるカタルシスを得て終曲した。

アンコールに地元J.シュトラウスⅡの有名曲2曲のサービスで館内はヤンヤの喝采。ベルリン・フィルの半額にも満たないリーズナブルな設定だったが、僕の好みはむしろウィーン交響楽団が面白かった。

♪2017-189/♪みなとみらいホール-46

2017年11月25日土曜日

モンテヴェルディ生誕450年記念特別公演 歌劇「ポッペアの戴冠」

2017-11-25 @県立音楽堂


鈴木優人:指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン

森麻季⇒ポッペア 

レイチェル・ニコルズ⇒ネローネ 
クリント・ファン・デア・リンデ⇒オットーネ
波多野睦美⇒オッターヴィア
森谷真理⇒フォルトゥナ/ドゥルジッラ
澤江衣里⇒ヴィルトゥ
小林沙羅⇒アモーレ
藤木大地⇒アルナルタ/乳母
櫻田亮⇒ルカーノ
ディングル・ヤンデル⇒セネカ
加耒徹⇒メルクーリオ
松井亜希⇒ダミジェッラ
清水梢⇒パッラーデ
谷口洋介⇒兵士Ⅱ

モンテヴェルディ:歌劇「ポッペアの戴冠」全3幕
(演奏会形式・日本語字幕付)

モンテヴェルディ開眼は40年以上昔だ。FMの音楽番組で聴いた「聖母マリアの夕べの祈り」にいささか衝撃を受けてさっそくLPを買って繰り返し聴いた。当初はラテン語のテキストも読みながら聴いていたので、まあ、大筋は覚えていたけど、今ではCDケースに収まった小さな解説を読む気にもなれないからそんな熱心な聴き方はせず、もっぱらBGMのようにして聴いているが、これがなんとも幸せな感じになるのだから嬉しい。

他の作品のCD(マドリガーレ集など)も僅かに持っていてこれも時々ヒーリング音楽として聴く。聖から俗まで守備範囲の広い作曲だとは知っていたが、どうしても「聖母マリアの夕べの祈り」のイメージが強くて、敬虔な信仰者との印象が出来上がっている。

ところが、今年はモンテヴェルディ生誕450年ということで、同じ音楽堂で、6月にコンチェルト・イタリアーノによる「聖母マリアの夕べの祈り」があり、同じ企画の一環で、歌劇「ポッペアの戴冠」も演奏されることになった。これは観ない訳にはゆかぬ。

さて、一体どんな物語なのか。
NET情報では17世に半ばに初演されたオペラとは思えない相当大胆な筋書きのようである。
そこで、ノルウェー国立歌劇場によるBDを見つけて購入し、観たが、これは大いにびっくりだ。放尿、性交、殺人、命じられた自殺、不倫など、もうハチャメチャな内容だ。舞台で一体何人が死んでいったろう?
音楽堂での演奏では、演奏会形式とはいえこれを一体どう演ずるのか、と心配になったものだ。

しかし、物語の筋書きは変わらないとは言え、演出が異なるとこうも別世界の物語になるのか、と驚くほど下品さ、醜悪さは取り除かれて、許容範囲の物語になっていたが、一方で毒を抜いた事による刺激不足の感は否めない。元々ノルウェー国立歌劇場版は世界のオペラ界で良いものと評価されているのだろうか?これは特殊な異端演出なのか、それとも原作に忠実なのだろうか?それが分からないので、比較において今回の舞台の良し悪しはなんとも言えない。

音楽は、聴き慣れたマドリガーレの世界だ。
しばし、ピリオド楽器によるルネサンス〜バロック初期の調べを楽しんだ。

♪2017-188/♪神奈川県立音楽堂-06

2017年11月24日金曜日

東京二期会オペラ劇場 NISSAY OPERA 2017提携 ヨハン・シュトラウスⅡ『こうもり』

2017-11-24 @日生劇場


ヨハン・シュトラウスⅡ作曲 オペレッタ『こうもり』全3幕
(ドイツ語原語歌唱日本語字幕付・日本語台詞)

指揮:阪哲朗
演出:アンドレアス・ホモキ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:二期会合唱団
舞台美術:ヴォルフガング・グスマン
照明:フランク・エヴィン
演出補:菅尾 友 
合唱指揮:佐藤 宏
演出助手:上原真希
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:加賀清孝

アイゼンシュタイン⇒小森輝彦
ロザリンデ⇒澤畑恵美
フランク⇒山下浩司
オルロフスキー⇒青木エマ
アルフレード⇒糸賀修平
ファルケ⇒宮本益光
ブリント⇒大野光彦
アデーレ⇒清野友香莉
イダ⇒秋津緑
フロッシュ⇒イッセー尾形

発売日を逃して買った席で、たまにはいいかと2列目中央。臨場感と言えばこれ程の事はなかろう。歌の字幕が読みづらいが素のセリフは日本語で分かりやすく楽しめた。
モブシーンの合唱は迫力あるが芝居としては全員がそれなりの芝居をしないと不自然になるところモタモタしている者もあり、緊張感に不足か。

看守役イッセイ尾形の一人芝居も要工夫。観客に阿る感じがあって、素直に楽しめなかった。

舞台は、額縁の中に2重の額縁があって狭苦しい。その狭い舞台上にたくさんの家具がところ狭しと置いてあるのだからこれは圧迫感が強かったなあ。

ま、何はともあれ、音楽はほとんどが耳馴染みばかりで、すぐ目の前でオーケストラ伴奏で歌ってくれるのだからこれはもう贅沢な喜びだ。

♪2017-187/♪日生劇場-04

2017年11月23日木曜日

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会

2017-11-23 @ミューザ川崎シンフォニーホール


サイモン・ラトル:指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシカ」(1947版)
陳銀淑:Choros Chordon(2017-11月ベルリンで世界初演)
ラフマニノフ:交響曲第3番イ短調
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アンコール
プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」第3幕間奏曲

コンセルトヘボウなどとのセット券購入特典のリハーサル見学。
ざわざわしていたので、こりゃ大したことないかな、と思った。本番の指定席とは別にリハーサルは席がエリア限定で早い者勝ちだったので、遅く席に着いたら、2CBの最後列しか空いてなかった。なので、この時点ではさほどの音圧は感じなかった。リハーサルと言っても、みんなサイモン・ラトルにピリピリともせず、和気藹々の感じだった。

本番は、最初の「ペトルーシカ」はそもそもが、管弦楽技法のデパートのような作品であり、旋律らしいものは少なくほとんどリズムで出来上がっているような音楽なので、大編成(弦だけで約60人+管・打=80人くらいかな)のオケが猛烈な音圧で吠えまくった感じ。これはこれで良かった。

まずは、巨大で有能な職人集団という印象が強い。

後半最初の現代音楽は誠につまらない無調作品だ。どんな名人が演奏したって、面白くはなかろう。

メインのラフマニノフ3番はメランコリーでロマンチックなので特に緩徐楽章などごまかしが効かない。ここでも音圧が高く、また、合奏技術という点で上等ではあったが、弦(バイオリン)の高域の透明感が不足した。特に先日同じ席からロイヤル・コンセルトヘボウの透明な弦を聴いているので、明らかな透明感不足。音の良さに引き込まれることはなかった。ひたすら、ボリュームだ。
これくらいなら日本のオケもかなわないことはない。例えば、今年2月にパーヴォ・ヤルヴィ+N響がみなとみらいホールで演奏したマーラーの6番など、隅々まで神経の行き届いた繊細な美しさとブラスのダイナミックな咆哮が精緻で壮大な音楽を聴かせてくれた。
昨年10月のウィーン・フィル(ミューザ)でも、案外大したことないな、と思ったがベルリン・フィルでも同様だった。

この秋(まだウィーン響が残っているけど)の海外名門オケの中ではゲヴァントハウスとコンセルトヘボウが抜きん出ていたように思う。

前回のみなとみらいホールでのゲヴァントハウスのコンサートもそうだったが、今日のベルリン・フィルでも客席は普段とは何やら様子が違う。一種の高揚感が張り詰めている。ベルリン・フィルという圧倒的なブランド・パワーに気後れしていたかもしれない。だから、きちんと音楽を受止めきれなかったかもしれないという不安は残る。
コンセルトヘボウでは、文字どり音の響きを楽し無事ができたのだが。

♪2017-186/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-32

2017年11月22日水曜日

みなとみらいクラシック・マチネ~関本昌平、菊地裕介-2台ピアノ-

2017-11-22 @みなとみらいホール


関本昌平、菊地裕介:ピアノ

ストラヴィンスキー(バビン編):ペトルーシュカからの3楽章
 第1楽章:ロシアの踊り
 第2楽章:ペトルーシュカの部屋
 第3楽章:謝肉祭

ラフマニノフ:2台のピアノのための組曲第2番 Op.17
 第1楽章:序奏、アラ・マルチャ
 第2楽章:ワルツ、プレスト
 第3楽章:ロマンス、アンダンティーノ
 第4楽章:タランテラ、プレスト

「ペトルーシュカからの3楽章」は管弦楽版をストラヴィンスキー自身がピアノ(1台)版に編曲したものをヴィクター・バビンなる人がピアノ2台用に編曲したものだそうな。
1台版は7月にボロス・ベレゾフスキーのリサイタルで、今月3日にアレクセイ・タルタコフスキの演奏で聴いたが、今日はピアノ2台なのでその分迫力がある。

ラフマニノフ「2台のピアノのための組曲第2番」は多分初聴き。編曲者ではなく、最初から2台のピアノのために書かれたようだ。全4楽章。ピアノの高等テクニックを盛り込んで、全体がアクロバティックで面白い。

https://youtu.be/wYLasmJdeEg

♪2017-185/♪みなとみらいホール-45

2017年11月19日日曜日

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏会

2017-11-19 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ダニエル・ガッティ:指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
タチアナ・ヴァシリエヴァ:チェロ*
マリン・ビストレム:ソプラノ**

ハイドン:チェロ協奏曲第1番ハ長調 Hob.Ⅶb:1*
マーラー:交響曲第4番ト長調
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アンコール
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007 からプレリュード*

ハイドンチェロ協1番の明瞭な透明感にまずは驚く。マーラー4番の編成でも維持されるか不安だったが杞憂だった。管もうまいが何と言っても弦の美しさ。第1Vnは14人だったがまるでソロの如きピッチの良さ。お陰でマーラーが一皮剥けた。

オケ全体もD・ガッティと呼吸を一にして微妙な緩急が全く乱れない。
先日のゲヴァントハウスも素晴らしかったが曲の違いもあってまた別種の音楽演奏の到達点を聴いたように思う。
こんな透明感溢れるオケなら、何を聴いても楽しめるに違いない。

♪2017-184/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-31

山手プロムナードコンサート第36回 バッハ 音楽の捧げもの 〜巨匠バルトルド・クイケンを迎えて〜

2017-11-19 @みなとみらいホール


バルトルド・クイケン:バロック・フルート(フラウテ・トラヴェルソ)*
佐藤泉:バロック・バイオリン*
渡邊慶子:バロック・バイオリン
廣海史帆:バロック・ビオラ
山本徹:バロック・チェロ*
渡邊順生:チェンバロ*

J.S.バッハ:音楽の捧げもの BWV.1079*
J.S.バッハ:管弦楽組曲第2番(フルート組曲) BWV.1067
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アンコール
J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調 BWV1050からフィナーレ

F・トラベルソの巨匠B・クイケンを迎えてバッハ「音楽の捧げもの」と管弦楽組曲2番。渋い演奏も開演前の解説や途中のクイケンの古楽解説も良かった。予てからの古楽演奏へのわだかまりが、クイケンの超現実的情緒という説明で腑に落ちた気がした。

♪2017-183/♪みなとみらいホール-44

2017年11月18日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第334回

2017-11-18 @みなとみらいホール


マックス・ポンマー:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

J.シュトラウスII:皇帝円舞曲 作品437
シェーンベルク:浄められた夜 作品4
メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調 作品56「スコットランド」

今日に限ったことじゃないけど、プログラム編成の意味が分からなかったな。
最初の「皇帝円舞曲」と2曲目の「清められた夜」は、いずれもウィーンの作曲家の、19世紀末の(後者が10年遅いが)作品であるという共通性がある。19世紀末のウィーン音楽という括りは興味深い。しかし、どうして3曲目がメンデルスゾーンの「スコットランド」なのだろう?
解説によると、今日の客演指揮者ポンパー氏の故郷がライプツィヒで、メンデルスゾーンはライプツィヒで「スコットランド」を自ら初演したというのが繋がりだそうだ。
これを「巨匠ならではの多様性と統一感に富んだプログラムである。」と書いてあったので、おいおい…と思ったよ。モノは言いようだな。

マックス・ポンパー氏は、名前は聞いたことがあるくらいでどこの誰か知らなかった。もちろん、評判も知らない。札幌交響楽団の首席指揮者らしい。御歳81歳。身体が大きいためか、歳の割にはヨボヨボで、舞台袖と指揮台の往復に随分時間がかかった。
指揮ぶりも鷹揚なもので、技術の域を通り越して人間性で振るという感じかな。

で、神奈川フィルがその老練な指揮に応えたのか。

1曲目はどうもザワザワしていたが、2曲目は弦楽合奏なので、かなりスッキリと一定程度の透明感を確保してまずまずの出来。

メインの「スコットランド」もなかなか良かったが、やはり、管又は管弦の強奏による重音(Tutti)に透明感が不足するなあ。

これは神奈川フィルだけではないけど。ここに透明感が出れば、世界の一流どころに肩を並べるのかもしれないが、その差が大きい。距離があるなあ。

♪2017-182/♪みなとみらいホール-43

2017年11月17日金曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第695回東京定期演奏会

2017-11-17 @サントリーホール


ピエタリ・インキネン:首席指揮者
日本フィルハーモニー交響楽団

ラウタヴァ―ラ:In the Beginning (アジア初演)
ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調 WAB105

最初に、エイノユハニ・ラウタヴァ―ラ(Einojuhani Rautavaara)という、インキネンが作曲を委嘱した、インキネンと同じフィンランド人の作曲家による「In the Beginning 」という7分弱のアジア初演があった。初めて聴く名前だ。2016年に亡くなっているので、まさしくできたての現代音楽だ。2017年9月にインキネンによって世界初演されたばかりで、その時の演奏がYoutubeにあった。

無調ではないようだが、調性があるかと言えばよく分からない。
現代音楽にありがちな嫌味な自己陶酔的音楽ではなくて、まあ、こういうのもありか、という程度の許容範囲であった。積極的に聴きたいような音楽ではないな。

https://youtu.be/vtUSY5gpfJA

メインはブルックナーの5番。
マーラーほどではないが、その中で5番は多分4番と同じくらい聴く機会が多い方だ。
若い頃は、こういうむやみに繰り返しが多く演奏時間の長い(80分近い)音楽はなかなか辛抱できなかったが、最近は、よくできた軽音楽、みたいな気分で聴くと楽しめるという境地になってきた。音楽としてスグレモノなのかどうかはよく分からない。今でも、もう少しスッキリできるんじゃないかと聴きながら思ったりする。

♪2017-181/♪サントリーホール-04

2017年11月14日火曜日

平成29年度(第72回)文化庁芸術祭協賛 11月中席 桂小南治 改メ 三代目桂小南襲名披露公演

2017-11-14@国立演芸場


落語 桂鷹治⇒代脈
落語 三遊亭遊吉⇒安兵衛狐
落語 桂南なん⇒尻餅
コント コント山口君と竹田君
落語 笑福亭鶴光⇒試し酒
  -仲入り-
襲名披露口上
落語 桂文治⇒木曽義仲
落語 春風亭柳橋⇒お見立て
歌謡漫談 東京ボーイズ
落語 桂小南治 改メ 三代目桂小南⇒甲府い

三代目桂小南は関東(春日部)の出身で、父は紙切の2代目林家正楽だが、紙切は弟に譲って?本人は二代目桂小南に入門して落語家・小南治になった。この二代目桂小南という人が関西の出身で東京に出てきた人だ。今日のナカトリの鶴光も同様に二代目桂小南の後を追うようにして上京し今では東京の落語家になったが、関西弁は抜けない。あえて抜かないのだろう。


で、小南治が三代目桂小南を襲名した訳だが、この人がそもそもトリを務める格なのかどうかは知らない(たぶんまだ務められないのではないか。)が、襲名のお祝いに、トリを務めることになっている。「甲府い」は生では初めて聴いた話だ。良い話だが、素晴らしい出来と言うほどではなかったな。でも、まずまず合格。

今日の出演者の中で断トツにおかしかったのは「コント山口君と竹田君」だ。もう、例によって、汗まみれの大活躍。おかしくて、お腹がよじれそうになったよ。

♪2017-180/♪国立演芸場-018

2017年11月13日月曜日

ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 NHK音楽祭2017

2017-11-13 @NHKホール


ヘルベルト・ブロムシュテット:指揮
ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ウィーン楽友協会合唱団
ソプラノ:ハンナ・モリソン
バリトン:ミヒャエル・ナジ

ブラームス:ドイツ・レクイエム 作品45

これまた、随分前から楽しみにしていたコンサートだ。
先日、最高級のブラームスとシューベルトを聴いたブロムシュテットとゲヴァントハウス管弦楽団による、これまた大好きなブラームスの「ドイツ・レクイエム」。
昨年春の東響定期で聴いた「ドイツ・レクイエム」もとても良かった。まあ、音楽自体が素晴らしいので、どこが演奏したって、そこそこの及第点は取れると思う。

が、流石にこの組み合わせは響が違う。透明感と重厚さを併せ持っている。

隅々までブロムシュテットの感性が行き届いているのを感ずる。指揮者とオケは呼吸を一にして音楽を形作り、観客の呼吸もやがて同期して三者が一体となるという、稀な音楽体験を、ブロムシュテットの音楽では味わうことができるように思う。
そして、ブラームスの革新的レクイエムの美しさに浸ることができる、至福の85分。

ちょっと残念なのは、終曲してもブロムシュテットはかなり長い時間(タクトは持たないので)手を降ろさず、壮大な音楽の余韻を残した(後日の録画放映で測ったら、30秒も微動だにせず、やがて得心したように終わりの合図の印に頭を少し動かした。やはり、ブロムシュテットにとってこの音楽を締めくくるにはそれだけの時間が必要だった。)。
しかるに、慌て者がもう辛抱できないという感じでわずかに早いタイミングだがフライングの拍手をしてしまったのが残念だった。録画ではブロムシュテットの頭の動きと拍手の第一拍は重なっているように聴こえるが、これは後日の編集ではないかと思う。その場の雰囲気としては残念なフライングとしか聴こえなかった。明らかに3者一体の呼吸を乱した。


2017-179/♪NHKホール-11

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 創立275周年記念ツアー 横浜公演

2017-11-09 @みなとみらいホール


ヘルベルト・ブロムシュテット:指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
レオニダス・カヴァコス:バイオリン*

ブラームス:バイオリン協奏曲ニ長調 op.77*
シューベルト:交響曲第8番ハ長調 D.944「ザ・グレート」
--------------
アンコール
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第3番第3曲サラバンド*

前回、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団を聴いたのは昨年の3月だから、こんな短い期間で再度聴けるとは思っていなかった。13日にもNHKホールで聴くので、今年は大当たりだ。

前回はマタイ受難曲で、これはもう至福の時間だった。

今回は別種の楽しみがある。
指揮のブロムシュテットの魅力だ。N響定期などで何度か聴いているが、昨年末の「第九」は実に素晴らしかった。彼の手にかかるとN響が普段のN響とはだいぶ違う音楽を演るのだから不思議だ。
そして、プログラムも魅力だ。今回は、オーケストラの魅力を存分に味わえるブラームスとシューベルト。独奏バイオリンのカヴァコスはTV放送を録画して聴いただけだが、かなりの売れっ子らしいからこれも楽しみ。

さて、ブラームスはカヴァコスが熱演だった。席も特等席だから、ソロ・バイオリンの音圧もオケに埋もれることなく、ビンビン響いてくる。ブラームスのギリギリ抑制した情緒・情熱に呼応して、いやその抑制を突破するが勢いで、惹きつけられる。
アンコールではJ.S.バッハの無伴奏曲の一部をサラッと弾いたが、本番でエネルギーを消耗したか、終演後に予定されていたサイン会は中止になった。まあ、そうかもな、と納得させた。

ブラームスも、シューベルトでも同様だが、ゲヴァントハウスの響は力強く、それでいて弦は繊細で透明感を保っている。昨年のN響「第九」でも感じたが、「神は細部に宿る」ごとく、フレーズの隅々までに神経が行き届いた精緻なアンサンブルだ。そして響は厚い。ブロムシュテットとゲヴァントハウスという紛れもなく世界一流の組み合わせで大好きなシューベルトの「ザ・グレート」を聴けたことのなんという幸せなことか。

また、みなとみらいホールの響が実によろしい。素晴らしい音楽が素晴らしい音楽空間にこだまして、これは得難い音楽体験だった。

♪2017-175/♪みなとみらいホール-42

2017年11月12日日曜日

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第64回

2017-11-12 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ユベール・スダーン:指揮
東京交響楽団
フランク・ブラレイ:ピアノ*

マックス・レーガー:ベックリンによる4つの音詩 作品128
ヴァンサン・ダンディ:フランスの山人の歌による交響曲 作品25*
ドボルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界から」

ユベール・スダーンの指揮は、東響を振ったものがほとんどだが、何回か聴いている。大抵、不満を感じたことがないのは、音楽性がどうこうより、穏やかで陽性の人格によるのではないかな。今回も、終始笑顔で好感が持てた。

ところで、レーガー(1873-1916)、ダンディ(1851-1931)って誰?
レーガーの名前には聞き覚えがあったが、それ以外に何の知識もない。ダンディに至っては名前も知らなかった。20世紀まで生きた人だから、ひょっとして七面倒な無調とか調性拡大の独りよがり音楽ではないか、と心配していたが、全くの杞憂だった。
音楽史的には後期ロマン派らしい。
前者の「ベックリンによる4つの音詩」は4曲構成。ドビュッシーなどを思い出させるゆったりと幻想的な音楽。第4曲だけが、賑やかで諧謔的。

後者の「フランスの山人の歌による交響曲」は独奏ピアノが加わるけど協奏曲風な作りではない。
もちろんこの曲も初めて聴いたが、まずは「ローフォ・オブ・ザ・リング」の映画音楽にもそのまま使えそうな、実に分かりやすく親しみやすい音楽だ。そして明らかにドイツ的ではない(フランス人)。ラフマニノフ、ドボルザーク、ショパンなどのエッセンスが取り込まれているような気がした。ま、とにかく聴きやすい。遊び心もあってユーモラスな作品だ。

そして、メインは「新世界から」。
スダーンの指揮は引き締まって、テンポも速めで、オケも快調に飛ばしていた。
4楽章に木管の小さなミスがあったが、それを吹き飛ばすような金管のファンファーレで高揚して万事良し。

♪2017-178/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-30

レーガー:ベックリンによる4つの音詩⇒
https://youtu.be/fx0GnimY8GE

ダンディ:フランスの山人の歌による交響曲⇒
https://youtu.be/C9yOyZQ4Tzw