ラベル ジャナンドレア・ノセダ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ジャナンドレア・ノセダ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023年6月21日水曜日

第1988回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2023-06-21 @サントリーホール



ジャナンドレア・ノセダ:指揮
NHK交響楽団
庄司紗矢香:バイオリン*

J.S.バッハ(レスピーギ編):3つのコラール
レスピーギ:グレゴリオ風協奏曲 作品15*
ラフマニノフ:交響曲第1番ニ短調 作品13
-------------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第2番二短調 BWV1004から第3曲サラバンド*




ノセダにハズレなし。A定期に続いてB定期もワクワクさせる演奏だった。

最初に残念なところ。
今日のサントリーはえらく乾燥していて、特に弦に潤いがない。
しかし、ノセダのシャキシャキした音楽作りには、むしろこの響の硬さが好都合だったかもしれない。

レスピーギはとてもエキゾチックな音楽だった。
教会旋法で始まったらしいが、その後にOboeが先導する旋律はむしろ中東風な節回しが混ざり、ミクロス・ローザを思い出す。かと思うと第3楽章は冒頭西部劇の劇伴音楽みたい。

…と、あれやこれや興味深い旋律に乗せて庄司紗矢香の入魂の超絶技巧がほぼずっと鳴りっぱなしで聴き手の気持ち心地良く煽ってくれる。

ラフマニノフ交響曲第1番。これはとても珍しい。2-3番は聴く機会が多いが1番となると生で聴いたのはいつの事だったか。
で、そのとんでもなく久しぶりの(CDでは時々聴いているが、)ラフマが、なんとも面白い。これで初演失敗したなんて、本当に陰謀だったのかも。
ノセダのタクトは快調そのもので派手な音楽をうんと華々しく盛り上げて、ナマ管弦楽の醍醐味を満喫させてくれた。

♪2023-111/♪サントリーホール-13

2023年6月10日土曜日

NHK交響楽団1983回A定期 05月公演

2023-06-10 @NHKホール




ジャナンドレア・ノセダ:指揮
NHK交響楽団
べフゾド・アブドゥライモフ:ピアノ*

プロコフィエフ:交響組曲「3つのオレンジへの恋」作品33bis
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番ト短調 作品16*
カゼッラ:歌劇「蛇女」からの交響的断章(日本初演)
[第2組曲]
 Ⅰシンフォニア
 Ⅱ前奏曲
 Ⅲ戦いとフィナーレ
[第1組曲](切れ目なしに演奏)
 Ⅰアルティドール王の夢の音楽
 Ⅱ間奏曲
 Ⅲ戦士の行進
------------------------
ラフマニノフ:13の前奏曲 作品32から第5番ト長調*



ノセダはほぼ8年ぶりだ。その前回が初めてで大きな衝撃を受けた。是非もう一度、それもN響で聴きたいと思っていたが、ようやく果たせた。

前回の「運命」があまりに強烈な印象を残したので、今回は、もう始まる前から、おそらくこんな感じの音楽だろうな、と想像を膨らませていたが、いやはやそのとおりになった。

実は、プロコの「3つのオレンジへの恋」は”行進曲”以外ナマでは聴いたことがないし、カゼッラの「歌劇『蛇女』からの交響的断章」は日本初演なので当然聴いたこともない。にもかかわらず、音楽の感じは想定したとおり、期待したとおりだった。

テンポが良く、シャキシャキとして歯切れの良い音楽だ。
聴いていて小気味良い。

プロコのPf協2番は、多分3番程には有名ではないと思うが、今回初聴きのアブドゥライモフのPfがプロコらしいのだけど、それ以上にノセダらしい音楽だった。
そう言えば、前回聴いた際もプロコPf協3番を演ったのは、お得意のレパートリーなのかもしれない。

また、今日のNHKホールの響の良いこと。今のシーズンはPf向きなのだろうか?このホールの響も好きだけど、Pfがかくもキラキラと美しく鳴ったのはずいぶん久しぶりの感じだ。

さて、問題は、日本初演だ。
カゼッラなんて聞いたこともなかったよ。今年生誕140年というからラフマより10歳若い。レスピーギより4歳若いだけなのでほぼ同世代のイタリア人。
歌劇「蛇女」からの交響的断章は初演が1932年だそうだが、こんな時代の人の作品が日本初演というのに驚く。

2つの組曲(各3曲)で構成されているが、普通は第1組曲から演奏されるところ、今回は、急遽、第2ー第1の順に変えられた。第1組曲は3曲が切れ目なしに演奏される。そして、こちらの方が派手なエンディングを迎えるので、この変更は大正解だったと思う。

実に分かり易く、まるで真面目に構成した軽音楽のようでもあり、映画音楽のようでもあり、聴きながら、昨日聴いた吉松隆の交響曲第3番と感じが似ているなと思った。もちろん吉松作は和のテイストが散りばめられているが、カゼッラの場合は、イタリアの…ローマの…はっきり言えばレスピーギのテイストがそこここに匂い立つ。
イタリアの青い空を思い浮かべて心地良く帰途についた。

そう言えば、Bプロではラフマとレスピーギを取り上げる。これもとても楽しみだ。

♪2023-105/♪NHKホール-05

2015年1月11日日曜日

N響第1799回 定期公演 Aプログラム

2015-01-11 @NHKホール


ジャナンドレア・ノセダ:指揮
アレクサンダー・ガヴリリュク:ピアノ
NHK交響楽団

フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」作品80
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26
ベートーベン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」
------------
アンコール(Pf)
ショパン:夜想曲変ニ長調 作品27-2

比較的小編成の曲ばかりだった(「運命」ではビオラ10、チェロ8、コンバス6。プロコフィエフはコンバスが5、その他は1プルトずつ少ない。)にも関わらず、なんて豊かで鮮やかな音響だろう。オケもピアノもビンビン響いてくる。
毎回同じ席で聴いており、これまでにも音量で不満はなかったが、どういうわけか、今日はとりわけよく響いてきたのには驚いた。

NHKホールはクラシックコンサート専用に作られたホールではないために、世間の評判では音響が悪いということになっているが、僕はそう感じたことがない。
来シーズンはN響の繊細な音色をさらに明瞭に聴き取りたくS席に変えようかと思っているけど、今日の様子じゃその必要もないかと思った。うっかり席替えして前の方に行ったところで、よく響いてくるかどうかは座ってみないと分からない。むしろ今の安くて音に満足できる席を死守すべきか…。

ガヴリリュク
プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番は生で聴くのが始めてだったが、とてもきらびやかで面白い。ほとんど調性を感じないけど、これでもハ長調と銘打ってある。楽譜は見たことがないけど、いったいどういう感性がああいった決して歌えないような旋律を生み出し、音楽を行き詰ること無く展開させることができるのだろうか、と不思議に思う。

ソリストのアレクサンダー・ガヴリリュクはちょうど30歳。ホロヴィッツコンクールで1位、2000年には浜松国際コンクールで優勝。この時の審査委員長中村紘子から「20世紀後半最高の16歳」と絶賛されたそうだが(変な褒め方だけど)、まあすごい腕前だったのだろうことは、今日の音楽を聴いても分かる。この曲、相当な超絶技巧を要するらしい。

プロコフィエフが終わり、度々のカーテンコールの後でアンコールで弾いたのが、プロコフィエフとはまったく別世界に思える、ショパンの夜想曲第8番。これもしみじみとして良かったね。

指揮のジャナンドレア・ノセダという人は、その名前も知らなかったが、オペラが得意なイタリア人だそうな。
国籍が音楽性に格別影響するとも思わないけど、彼のベートーベン「運命」には大いに驚いた。

7月に鈴木秀美指揮神奈川フィルで聴いた「運命」も素晴らしかったけど、その上?を行く徹底ぶり。
つまり、テンポが早い(第1楽章の早さはこれまで聴いたことがない。)。それだけではなく、例の運命の動機の後半の2分音符のフェルマータがないに等しい!
おそらくベートーベンが指示した2分音符=108というテンポに忠実なのだろう。そして、フェルマータも、従来の演奏は確かに長過ぎるようでもある。動機の展開は畳み掛けるようにハイテンポで進行するのが、実に面白い。

帰宅後いろんな指揮者の「運命」の冒頭を聴き比べてみたが、あのハイテンポのトスカニーニでさえ、しっかりフェルマータは延ばしている。
フルトベングラーなどコバケンも薄味に聴こえるくらい大げさでクサイ。
ブルーノ・ワルターのフェルマータはさらに2分音符を付け加えたかのごとく長く引っ張っている。
カラヤンはオーソドックスで、小澤征爾はアップテンポだけど、フェルマータは普通に延ばしている。
アバドは好ましいけどノセダを聴いてしまったのでもう古く感じてしまう。
ブーレーズは、朝比奈隆もびっくりのつんのめってしまうくらいの超スローテンポだ。

我々は、長く、標題「運命」が紡ぎやすいストーリーに囚われて?荘重に演出された出だしを普通として聴いてきたが、上述の鈴木秀美の指揮による「運命」も今回のノセダの「運命」も、<疾走する「運命」>であり、<爽快な「運命」>だ。

プログラムの解説によると、そういう演奏を予期した書き方になっていて、この<新解釈>は今、流行っているやに思える。良いとも悪いとも正しいとも間違っているとも書いていない(ま、当然でしょう)けど、「今なおわたしたちはどこか『運命』に呪縛されているように思われる。」と書いてあった。

重々しい人間の運命を描くような従来型の解釈もそれはそれでもうひとつの音楽の定型になっているし、悪くはないけど、最近になって聴くようになった疾走する「運命」こそベートーベンの素顔に近いのではないかと思ったりするのだけど。

ま、ノセダ+N響の新しい「運命」は、忘れられない演奏として記憶に残るだろう。


♪2015-3/♪NHKホール-01