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2019年7月15日月曜日

名曲全集第148回 ブラームスとドボルザークの傑作

2019-07-15 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ロレンツォ・ヴィオッティ:指揮
東京交響楽団

ブラームス(シェーンベルク編):ピアノ四重奏曲第1番ト短調 作品25(管弦楽版)
ドボルザーク:交響曲第7番ニ短調 作品70
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ブラームス:ハンガリー舞曲第1番

手堅い仕事ぶりのロレンツォ・ヴィオッティがスニーカーを履いて登壇。彼の指揮ぶりを見たのは、歌劇「トスカ」(東フィル)、フランス音楽集(東フィル)、ベルディ「レクイエム」(東響)に次いで4度目だけど、スニーカに気がついたのは今回が初めて。前もスニーカーだったのかな。
スニーカーといえば、7日に聴いたクラリネットのA.オッテンザマーもヴィオッティとそっくりのスニーカーを履いてステージに上がった。オケ団員は正装しているので妙な感じだが、まあ、そこは突っ込むところでもなかろう。

今日のプログラムはブラームスとドボルザーク。鉄壁の組み合わせだけど、問題はブラームスだ。
彼のピアノ四重奏曲を無調音楽の騎手シェーンベルクが指揮者オットー・クレンペラーの要請を受けて管弦楽版に編曲したものだ。

過去何度かこの管弦楽版を聴いているがいつも感想は同じ。オーケストレーションが成功しているのは終楽章だけではないかと思う。第1〜3楽章は暑苦しい感じだ。

オリジナルのピアノ四重奏曲は元々大好物で何度かナマでも聴いているし、CDでもよく聴いている。中でもこの春にベルリン・フィルのメンバーによる演奏を聴いた折、この曲の核心に触れたような気がしたが、それに比べると弦14型の大規模管弦楽で聴くと外縁をなぞっているだけのように気がしてならぬ。

加えて東響。第一バイオリンの出来も高域がキンキン・シャリシャリで聴きづらい。終演後のヴィオッティの表情も満足できていない様子だった。

ところが、後半、メインのドボルザーク第7番になると、演奏者の身体や楽器が馴染んできたか同じオケとも思えない上出来。
第一バイオリン群も調子を上げて不快音が聴こえなくなった。演奏は構想力を感じさせ、つけ入る隙のない組立と巧さ。
久しぶりに胸踊る気分。

豪快にラストを決めた後、拍手喝采の中、何度かのカーテン・コールを経てひょいと指揮台に飛び乗るや否や始めたアンコールはブラームスのハンガリー舞曲第1番。
少し遊びを加えた演奏だが、これまた素晴らしいこと。
こんなに心に染みる美しい1番は初めてかも。

第1曲めで生じた欲求不満を返り討ちに仕留めるようなブラームスで締めてくれて大いに気分が高揚した。ヴィオッティも大満足の様子。いやはやブラームスとドボルザークはホンに鉄壁だよ。

♪2019-100/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-04

2019年1月13日日曜日

名曲全集第144回 壮大華麗な「レクイエム」

2019-01-13 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ロレンツォ・ヴィオッティ:指揮
東京交響楽団
東響コーラス

ソプラノ:森谷真理
メゾ・ソプラノ:清水華澄
テノール:福井敬
バス:ジョン ハオ(アン・リの代役)

ヴェルディ:レクイエム

ヴェルディ「レクイエム」。
モーツアルト、フォーレの作品と合わせて3大レクイエムと呼ばれているが、その音楽的<効果>は他の2作はもとより、知る限りのどのレクイエム(ベルリオーズ、ブラームス、シューマン、デュリュフレ、A.L.ウェッバー等)をも抜きん出ている。

聖書にテキストを求め、一応カトリックのレクイエムの形式をなぞってはいるが、オペラの大作曲家であるヴェルディに相応しく荘厳というより壮大、厳粛というより華麗な大作だ。
特に、ヴェルディの「レクイエム」を代表する第Ⅱ曲「怒りの日」は、古典的なレクイエムの形式に則ったもので、モーツアルトの「レクイエム」でも第Ⅲ曲に置かれた「怒りの日」は非常に印象深い。

が、ヴェルディは「怒りの日」の主題を3度も繰り返し、さらに最終曲にも登場させて、怒り狂っている!かのような激烈な音楽の配置によって「レクイエム」を単なる「鎮魂歌」にはしていない。
尤も、その対比として独唱者によって歌われる「ラクリモーサ(涙の日なるかな)」、「アニュス・デイ(神の子羊)」などの清明な美しさが輝き、とりわけソプラノ独唱と合唱による満を持しての最終曲「リベラ・メ(我を解き放ち給え)」の壮大なフーガのクライマックスが聴き手の心を激しく打つ…というヴェルディの巧みな構想。

さて、今日の演奏。

独唱・合唱・オケによる壮大華麗の一方で精緻精妙なる音楽をヴィオッティが明確な交通整理で信じられないほどの透明感を持って再現した。
早くも今年のベストかと思わせる上出来だ。東響としてもこんなに見事な演奏は記憶にない。

オケは最弱音から最強音までどのパートも埋もれることなく筋を通した感がある。
聖句の繰り返しが多いとしても長大な音楽を全曲暗譜で歌った東響コーラスも立派。
最終曲までの独唱はメゾ・ソプラノの清水華澄が目立つが、その鬱憤を晴らすようにリベラ・メでソプラノ森谷真理が大活躍して感動的フィナーレを歌い上げた。

終曲後、ヴィオッティは20秒ほど祈るような姿勢で休止した。
さもあらん。
観客もここは固唾を飲んで共に呼吸を整えた。拍手やブラボーのフライングもなく完全な終曲を待った。これが一層の感動を誘った。

拍手と歓呼の声は凄まじくカーテンコールは長く強力だった。
多くのプレーヤーがヴィオッティの指名を受けて喝采を浴びたのは当然でいつものとおりだが、今日に限っては大太鼓奏者に館内最強の拍手が巻き起こった。宜なるかな。「怒りの日」の大太鼓の最強音による裏拍打ちがあってこその「レクイエム」だもの。

ヴェルディ「レクイエム」は聴く機会が少ないが、今年は当たり年で来月の神奈川フィルも楽しみだ。

今日のように底力のある演奏家たちが気鋭の指揮者がもたらす化学変化でさらに音楽の高みを極める機会を共にできたことを幸運に思う。しかも、ミューザの特等席で味わうゴージャスな喜び。こんな楽しみを続けていて良いのだろうか、とふと反省の気持ちも…。

♪2019-004/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-01

2018年7月24日火曜日

フェスタサマーミューザ2018 東京フィルハーモニー交響楽団 ≪絶品フレンチⅠ〜ラヴェル & ドビュッシー〜≫

2018-07-24 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ロレンツォ・ヴィオッティ:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

小山実稚恵:ピアノ*

ラヴェル:道化師の朝の歌
ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調*
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:交響詩「海」
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ラヴェル:マ・メール・ロアから第5曲「妖精の国」(小山実稚恵とヴィオッティの連弾)


フェスタサマーミューザ第3回め。
今日は、前回のドイツ音楽集と打って変わってフランス音楽集でラヴェルとドビュッシーを各2曲。

中1日で同じ席でオーケストラ作品を聴くと、時代の変化や作曲家の個性による管弦楽技法の違いを明瞭に感ずる。

指揮は好漢L・ヴィオッティ。新国立の「トスカ」でも喝采を博したがニコリともしない28歳!

ラヴェルのPf協奏曲は小山実稚恵。
颯爽と弾いているを見ると大家のオーラを感じさせる。
アンコールはヴィオッティとまさかの連弾に会場は大いに沸いた。

「牧神」ではフルートやコンマスのソロの音が小さくて不満だったが、「海」ではドイツ音楽とは異趣の多彩な管弦打楽を堪能。

第2回の新日フィルの弦楽合奏が分厚くて力強かったが、今回はオケの能力の問題ではなく、音楽自体のオーケストレーションが根本的に違う(管打楽器の役割が相対的に高い)ので弦楽合奏の響の快感は無いのだけど、これはこれで色彩感のある管弦楽の面白さを楽しんだ。

♪2018-089/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-07

2018年7月1日日曜日

新国立劇場オペラ 開場20周年記念特別公演「トスカ」

2018-07-01 @新国立劇場


指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
演出:アントネッロ・マダウ=ディアツ
美術:川口直次
衣裳:ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ
照明:奥畑康夫

合唱⇒新国立劇場合唱団/びわ湖ホール声楽アンサンブル
管弦楽⇒東京フィルハーモニー交響楽団

トスカ⇒キャサリン・ネーグルスタッド
カヴァラドッシ⇒ホルヘ・デ・レオン
スカルピア⇒クラウディオ・スグーラ
アンジェロッティ⇒久保田真澄
スポレッタ⇒今尾滋
シャルローネ⇒大塚博章
堂守⇒志村文彦



プッチーニ:「トスカ」全3幕〈イタリア語上演/字幕付〉

予定上演時間:約3時間
第Ⅰ幕55分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕45分
 --休憩25分--
第Ⅲ幕30分

過去6回再演の実績のせいか、初日だったが堂々の安定感。東フィル含めみんな良かったけど、 C.ネーグルスタッドのトスカ、C.スグーラのスカルピア、ホルヘ・デ・レオンのカヴァラドッシという海外勢の3人がとりわけ素晴らしい。

オペラではヒロイン、必ずしも美形にあらずだが、今回のトスカは歌がうまいだけでなく美形でなければ役に説得力がないのだから、ネーグルスタッドが美形でホンに良かった。

憎たらしいスカルピオのスグーラは身長2mもあろうかという大男で、なかなかいかつい顔つき。これはぴったりだった。

奥行のある舞台を活かした舞台装置も圧巻で第1幕の教会の場面、終盤にミサが始まりテ・デウムが歌われる時にそれまで手前にあった舞台装置が左右に広がり、中央はどんどんと奥に遠のいて、見事に大舞台の機構を存分に使った見ものとしても素晴らしい出来だった。3幕も2階建て構造で、いよいよ死刑執行という際に大舞台が迫り上がるのも興奮する。

演出が2000年の初演以来変わっていなというが、まことに結構。これはわずかでも変えるべきところがないと思う。実に良く出来た正統派の優れた演出だと思う。

ビデオ鑑賞を含め、トスカはいろいろ観てきたが、こんなにも没入でき、共感でき、音楽に酔ったのは初めてだ。

最近は、オペラもやたら読み替え演出が多く、つい先日NHKが放映した今年3月のザルツブルグ復活祭音楽祭2018での「トスカ」なんぞ、近年のテロ事件に着想を得たか、少年に銃を持たせる始末。原点に戻れ、原典に戻れと言いたいよ。

♪2018-076/♪新国立劇場-08

https://youtu.be/Z23_ukQmt-4