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2022年12月14日水曜日

第1973回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2022-12-14 @サントリーホール



ファビオ・ルイージ:指揮
NHK交響楽団
河村尚子:ピアノ*

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18*
ドボルザーク:交響曲第9番ホ短調 作品95「新世界から」
------------------------
ラフマニノフ:幻想的小曲集-「エレジー」作品3-1*


ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番とドボルザーク:交響曲第9番「新世界から」を中心とするプログラム。

最近、厚化粧が厚着をしたようなオタク向け作品を聴く機会が多かったので、今日のようなat Homeな名曲集が心に沁みたよ。

冒頭のグリンカ:「ルスランとリュドミーラ」序曲が超速だが、弦5部の刻みがピッタリあってワクワクさせる。

昨日の都響も良いアンサンブルだったが、今日のN響を聴くと合奏力の差は如実…。

次のラフマニノフは河村ちゃんの愛嬌のある笑顔に相好を崩しながら彼女の世界に惹き込まれた。何度も聴いているのに発見があった。

ただし、いつものことだが、サントリーホールのピアノの響はまことに薄っぺらい。石のように硬く重い。高域だけ、かろうじてキラキラしているが、中低域はおもちゃのピアノかと思うよ。誰も問題にしないのが不思議だ。

「新世界から」は細部まで神経が行き届いた名演だった。
忘れ難いものになると思う。
全体にアップテンポ。3楽章から4楽章への入りは半呼吸で。この感覚が好きだ。
ちょっと歌わせすぎな気もした。インテンポで良かったのではないかと思う箇所もあったが、僕の好みどおりという訳にもゆくまい。

チェロの首席は神奈川フィルの門脇氏だった。6日にリサイタルを聴いたばかり。地元オケの面子がN響に客演するなんて嬉しいね。

それで特に耳を澄ませていた訳ではないけど、2楽章の最後のイングリッシュ・ホルンのソロに合わせて、弱音器付きの弦が2プルト〜1プルトと編成を小さくしながら、最後はバイオリン1本とチェロ1本が歌う。


この部分のなんて美しいこと!もう、ゾクゾクしてウルウルしそうになった。
ま、そんな調子で普段なんとなく聴き流している部分に宝石が隠れていたな、という思いだった。

素晴らしい経験をしたのは良いが、これでまた鑑賞評価の基準が上がってしまった。容易なことでは満足できなくなるよ。

♪2022-192/♪サントリーホール-22

2022年8月30日火曜日

横浜18区コンサート 第Ⅱ期 河村尚子(ピアノ)×読売日本交響楽団メンバー(弦楽五重奏)

2022-08-30 @県民ホール



河村尚子:ピアノ*
読売日本交響楽団メンバー(弦楽五重奏)
 バイオリン1:長原幸太[コンマス]
 バイオリン2:川口尭史[首席代行]
 ビオラ:鈴木康浩[ソロビオラ]
 チェロ:室野良史
 コントラバス:瀬泰幸

モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525から第1楽章
ドボルザーク:弦楽五重奏曲第2番ト長調 OP.77から第3楽章、第4楽章 
(以上、弦楽五重奏 )

シューマン : ピアノ協奏曲イ短調 Op.54*
(弦楽五重奏伴奏版)
----------------
シューベルト:即興曲 変ト長調 作品90-3*



18区コンサートの最後は河村尚子+読響弦楽五重奏団でシューマンのピアノ協奏曲とは誠に嬉しい組合せ。
そして、有終の美を飾る素晴らしい演奏会だった。

最初に五重奏で断章2曲。
いずれも確実なアンサンブル。
が、できればアイネクライネ1楽章をやめてドボルザーク弦楽五重奏曲を全曲聴きたかったよ。

河村ちゃんの話では、県民ホールは2度目で、前回もシューマンPf協だったと言う。
はいはい覚えていますよ。
去年の日フィル4月定期で、本編よりアンコールのシューマン「献呈」が心に沁みたよ。

今回は弦楽五重奏版だ。
いうまでもなく、オケ版より全パートが明瞭そのもの。Pfと弦楽のバランスも良し。

室内楽の丁々発止でPf協奏曲を味わうスリリングな面白さ。

ちょっと残念だったのは長原くんに隠れて河村ちゃんの愛嬌のある表情が良く見えなかった事だ。しかし、こういう編成だとどこに座れば良いか決めようもないからその時の運だ。

昨年9月から始まった横浜18区コンサート最後の大物登場とあって、433席の小ホールだがほぼ満席。
禁を破って歓声を上げた人もいたが、気持ちは大いに分かる。

♪2022-123/♪県民ホール-12

2022年3月25日金曜日

東京・春・音楽祭 岡本侑也(チェロ)&河村尚子(ピアノ)

2022-03-25 @東京文化会館



岡本侑也:チェロ
河村尚子:ピアノ

ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調
ブーランジェ:チェロとピアノのための3つの小品
プーランク:チェロ・ソナタ FP143
ブラームス:チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 op.99
--------アンコール--------
ブーランジェ:ヴァイオリンとピアノのための2つの小品 第1番 夜想曲(チェロ版)
シューマン:ミルテの花より 献呈
ドビュッシー:美しき夕暮れ


河村ちゃんは、大好きで機会を逃さないように聴いている。
岡本くんは昨夏カーチュン・ウォン+都響で聴いたのが最初で、その時とても驚いた。あの美しい響きは只者ではない。

で、この2人のDuoとなれば期待せずにおれなかったが、今日はその大きな期待を軽々超えた!

河村ちゃんは登場してあの愛嬌溢れる笑顔をみせただけでもう気分はお花畑の如し。ピアノに向かう表情を見るのも楽しい。ああ、彼女は今、音楽している!

プログラムはブラームス以外は初聴きというサービス精神に欠けるものだったが、それだけに2人の気合を感じた。

果たして岡本くんの第一声の美しさは?

これが半端ではなかった。

いろんなチェリストのいろんな音色を聴いてきた。
これまで一番美しい音を出すのは宮田大だった。
しかし、今日確信したよ。岡本くんの音色が実に美しく、力強い。こんなに綺麗な音は滅多に聴けないと思う。


サポートする河村ちゃんのピアノの音も負けず美しい。

つい先日、この会場で室内オケによるピアノ協奏曲をほぼ同じ席で聴いたのだけど、響きが違う。協奏曲でのピアノの位置は客席寄りだが、今日はチェロが前に出て、ピアノは後ろだ。それだけの違いだが、音が柔らかい。タッチの違いもあるだろうけどこんなに違うとは!

少なくとも配置によってPfの響きが変わるのは間違いない。
ともかく、河村ちゃんの特に低域の美しさにはジーンときたよ。

PfとVcの両者が、音楽の根本である楽器の”音”において比類ない美しさを聴かせてくれた。
音だけではなく、表現技術、解釈も必要だろうが、まずもって”音”が大切。美しい音が出せないなければ”音楽”にはならない。

こんなに美音なら、音階練習だって聴いていたいよ。


♪2022-042/♪東京文化会館-05

2021年4月16日金曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第366回横浜定期演奏会

 2021-04-16 @県民ホール


沼尻竜典:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

ピアノ:河村尚子*

シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 op.54*
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 op.47
-----アンコール-----
シューマン(リスト編):献呈*


来日できないラザレフに代わって、今日もお助けマン・沼さんの指揮。

ピアノは14日の隔離を経て河村尚子❤️えらい!


文字どおりの名曲コンサートだったが、今日の日フィルはなんだか落ち着きのない音楽で残念。


アマチュアが演っても楽しめるショスタコーヴィチの交響曲第5番さえ味気なかった。


一番良かったのは河村がアンコールで弾いたシューマンの「献呈」がコロコロと輝くようなピアノだったこと。

「献呈」と大袈裟な訳がついているけど、シューマンがクララと結婚する直前に彼女に捧げた幸福に溢れた歌曲をリストがピアノ用に編曲したもので、そう思いながら聴いているととても幸せに感染できる!


♪2021-038/♪県民ホール-04

2019年11月13日水曜日

河村尚子「ベートーベン ピアノ・ソナタ・プロジェクト」第4回(全4回)

2019-11-13 @紀尾井ホール


河村尚子:ピアノ

<オール・ベートーベン・プログラム>
ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 Op. 109
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調 Op. 110
ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 Op. 111

2年越しのベートーベン・ピアノ・ソナタ14曲演奏・全4回の完結篇で今日は30〜32番。好きな作品だが、流石にこの3曲は弾くのも大変だろうけど、聴く方も相当疲れる。
専門的なことは分からないが、ベートーベンは28番以降相当自由に作曲しているように思う。
32番の冒頭などホンに意表を突く。

これらの作品は、正直なところ自分の感性がそれまでのソナタのようにはシンクロできない。何十回も或いは何百回も聴いているから、聴きながら次の旋律・リズムは出てくるのだけど、自分の感覚にはなっていない。まあ、そこが面白いとも言える。あるとき、突然、ぴたっと重なる時が来るかもしれない。

♪2019-177/♪紀尾井ホール-2

2019年4月25日木曜日

河村尚子「ベートーベン ピアノ・ソナタ・プロジェクト」第3回(全4回)

2019-04-25 @紀尾井ホール


河村尚子:ピアノ

ベートーベン:ピアノ・ソナタ
 第26番変ホ長調 Op.81a「告別」
 第27番 ホ短調 Op.90
 第29番変ロ長調 Op.106
        「ハンマークラヴヴィーア」
-------アンコール
「告別」から第3楽章

2年でベートーベンのピアノ・ソナタ14曲を弾くプロジェクトの3回目(因みに第1回は4、8、7、14番。第2回は18、21、24、23番。)は26番「告別」、27番、29番「ハンマークラヴィーア」。

おいおい、僕の急所を突くような選曲だぞ。
ベートーベンのピアノ・ソナタのMyベスト4は28と最終3曲(なぜBest4なのか、なぜこの選曲なのかは説明可能だけど無駄に長くなるので省略。)。
一方、苦手ベスト3こそ今日の曲目だ。
特に29番にはうまく共感できない。


今日の演奏。
前2曲はベーゼン〜の柔らかい音が残響多めのホールと相まって美しかった。今回はベーゼンドルファーだったが、前回はスタインウェイではなかったろうか?少なくとも第1回のフィリアホールではベーゼンドルファーではなかった。最近彼女がリリースしたCDはいずれもベーゼンドルファーを使っているから、近頃お気に入りなのかも。

が、そもそも29番はベーゼン〜向きではないような気がする。
加えて残響多めのホールのせいで、冒頭の強奏がくぐもったのは残念。
とは言え、ここ一番の気迫が漲って強弱・遅速のダイナミズムが明瞭。3楽章終盤から4楽章冒頭まで我が貧弱な耳には音楽が迷子になったように聴こえるが、その隧道を過ぎると疾走するフーガが心地良い。

で、それなりのカタルシスを得たが、どうも29番は深い。
一に慣れの問題だが、この巨大な精神世界になかなか踏み入れない。せっかくソナタ全集(楽譜も)持っているのだから、暇ができたときに楽譜と睨めっこしながら真剣に聴いてみよう。

このシリーズ次は最後の3曲(30〜32番)。
これはもう大好物なので楽しみだ。

♪2019-053/♪紀尾井ホール-1

2018年11月29日木曜日

河村尚子「ベートーベン ピアノ・ソナタ・プロジェクト」第2回(全4回)

2018-11-29 @紀尾井ホール


河村尚子:ピアノ

ベートーベン:ピアノ・ソナタ
 第18番変ホ長調 Op.31-3「狩」
 第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」
 第24番嬰ヘ長調 Op.78「テレーズ」
 第23番 ヘ短調 Op.57「熱情」
-------アンコール
エリーゼのために

2年でベートーベンのピアノ・ソナタ14曲を弾くプロジェクトの2回目。

今日は18、21、24、23番(第1回は4、8、7、14番)だった。

前回のフィリア・ホールではピアノの響きに難を感じたが、今回の紀尾井ホールでは残響が程良くピアノという楽器の音自体も楽しめる。

渾身の演奏は、非常に速い弱音のフレーズでも玉を転がすように輝いて聴こえる。ダイナミック・レンジも広く感情表現は豊かだ。おそらく彼女が明確な意思で音楽を構成しているように思う。

前回も8番「悲愴」、14番「月光」というポピュラーな作品が選ばれたが、今回も21番「ワルトシュタイン」や23番「熱情」という人気曲が含まれた。人気曲ではあるけど、内容的にも演奏技術の面でも一段と高度になっているように思えるが果たしてどうなのだろう。

前半では1曲毎にいったん袖に引っ込んだが、後半は「テレーズ」が終わって一呼吸置いただけで、「熱情」を始めた。そこに気合や覚悟を感じたが、演奏もまさにPassionateな力強さに溢れていた。

また、音楽表現は指先にとどまらずキュートな表情も見える音楽だ。

♪2018-157/♪紀尾井ホール-1

2018年11月21日水曜日

東京都交響楽団 第864回 定期演奏会Aシリーズ

2018-11-21 @東京文化会館


ミヒャエル・ザンデルリンク:指揮
東京都交響楽団

河村尚子:ピアノ*

クルト・ワイル:交響曲第2番
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番変ニ長調 op.10*
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番ロ短調 op.54
--------アンコール
プロコフィエフ:10の小品 作品12-7「前奏曲」*

今日のプログラムは、クルト・ワイル:交響曲第2番<初演1934年-演奏時間28分>、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番<同12年-16分>、ショスタコーヴィチ:交響曲第6番<同39年-31分>と、

いずれも20世紀前半に活躍した作曲家の作品で、
いずれも3楽章で構成され、
いずれも比較的演奏時間が短い。

第1曲めは途中からまどろんだ。現代作品と言っても「3文オペラ」など軽いものも書いた人で、小難しい音楽ではなかったが、初聴きだし特に魅力を感じないまま、うつらうつらとしてしまった。

第3曲めのショスタコーヴィチの交響曲第6番。
これは近年の鑑賞記録には無いので、これもナマでは初めて聴いたのかもしれない。
超有名な第5番の香りを残しつつも全体として軽い。都響の演奏もこれが一番まとまりがあったように思う。

何と言っても一番楽しみだったのはプロコフィエフだ。
特にこのピアノ協奏曲第1番が好きなのではない。ソリストの河村尚子のファンなので彼女が弾くなら何だって聴きたい。

舞台に登場するところからチャーミング。
愛嬌のある顔に満面の笑みを浮かべて背筋を伸ばし、大股で舞台中央に。コンマスらと握手をし、オケにも愛想を振りまいてから客席に向かって深々と一礼。その辺まではキュートな笑顔だが、音楽開始とともに表情は一変する。

完全に音楽の世界に入魂した表情だが変化が目まぐるしく、その表情を見ていると音楽の表そうとしているものがそのままに伝わってくるようだ。
女性ピアニストの中には演奏中に高尚な苦悩の表情を浮かべる人も少なくないが、河村尚子の表情は次元が違う。

鋭いタッチ、コロコロと鍵盤を転がるしなやかな指は思い切りピアニシモでもフォルテシモでも一音一音を疎かにしていないことが分かる。とても繊細なタッチだが、ここ一番では椅子からお尻が上がる。そのダイナミズムも魅力だ。
わずか16分の作品だったが、中身は濃かった。

♪2018-150/♪東京文化会館-06

2018年5月26日土曜日

河村尚子「ベートーベン ピアノ・ソナタ・プロジェクト」第1回(全4回)

2018-05-26 @フィリアホール


河村尚子:ピアノ

ベートーベン:
ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調 op.7
ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 op.13「悲愴」
ピアノ・ソナタ第7番二長調 op.10-3
ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 op.27-2「月光」
-------------
ドビュッシー:月の光

河村尚子、満を持してのベートーベン・ツィクルスだそうな。フィリアホールでは今日はその第1回目だが、全国的…いや、世界的には今年の4月から始まっているようだ。

ただし、今後の予定として発表されているのは、今回を含む全4回でソナタ14曲を弾くというのだから、全32曲の半分にも満たないのは残念。
今日は4、7、8、14番だったが、フィリアホールで11月に予定されている第2回めが18、23、23、24番の4曲、来年4月が26、27、29番の3曲、来秋に最後の3曲(30〜32番)だ。
次回以降も聴きに行くつもりだが、3回目以降は日時も未定なので聴きに行けるかどうか分からないけど、行けたとしても17番や28番が含まれていないのは残念だな。

さて、久々に近くで見る…いや聴く河村尚子はなんとも魅力的だ。一音一音に入魂しているのがその姿勢や顔の表情の変化でよく分かる。ホンに表情が豊かで、大げさではなく、とても自然で音楽と一体になっているように見える。
彼女の考え方なり感覚がその表情を通じて聴手にも少しは伝わってくる気がする。できれば、彼女のそれらと完全にシンクロできたらとてもハッピーだろうと思うが、そこは才覚や知識の差で、うまくはゆかないけど、でも、音楽に誘い込まれるのは確かだ。

さて、気になったことが一つ。
ピアノの音がイマイチだった。
良くなるホールであることは前に寺神戸亮のリサイタルを聴いて体験済みだけど、無伴奏バイオリンの場合はこの響具合がとても効果的だ。でも、ピアノ(スタインウェイ)の場合は、鳴り過ぎではないか、と思った。その音も、「ジャーン」という音で、あまり美しくない。「カーン」と抜けるような音で聴きたいものだ。

前半が終わった後の休憩中に調律師がだいぶ時間を掛けて整音か調律をしていたが、やはり、河村尚子にとっても何か違和感があったのかもしれない。でも、後半もピアノの鳴り方はさほど変わらなかった。
できたら、音楽堂やみなとみらいの小ホールで聴いてみたかった。

♪2018-061/♪フィリアホール-01

2017年6月25日日曜日

N響第1862回 定期公演 Aプログラム

2017-06-25 @NHKホール


パーヴォ・ヤルヴィ:指揮
河村尚子:ピアノ*
NHK交響楽団

デュティユー:メタボール(1964)
サン=サーンス:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品22*
ラヴェル:優雅で感傷的なワルツ
ラヴェル:「ダフニスとクロエ」組曲 第2番
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アンコール
クープラン:バッハの名による即興曲*

P・ヤルヴィ指揮で仏音楽集。デュティユーはつまらないから気持ちはパス。4曲演るのだから1つくらい気合を入れなくとも良かろう。
楽しみはサン=サーンスのピアノ協奏曲2番だ。これは生では初聴き。だからというより河村尚子がお目立てだ。

1月に音楽堂でクレメンス・ハーゲンとのデュオをほぼかぶりつきで聴いた時、ピアノの腕前は当然として、豊かな表情が実にキュートでその弾きっぷりがまさに音楽的、音楽そのものと感じた。彼女の演奏は初めてではなかったが、遠くからは気づかない。

ほかにも上手なピアニストはたくさんいるが、弾きっぷりを観ていて楽しくなるピアニストはこの人ぐらいか。
今日も定席からなので、舞台までは結構遠いが、幸い中央からやや下手の席なので、よく見える単眼鏡で表情や華麗な鍵盤上の乱舞を堪能した。

曲自体は通常の協奏曲とは異なって、ほぼ全曲ピアノが主導権を持つ。オケはピアノを補強したり、あるいは完全に伴奏に回って、両者の丁々発止のやり取りはない。
全体的に軽ろやかな印象だが、独奏部分は叙情的で時にメランコリックで親しみ易い。

後半はラヴェルの「優雅で感傷的なワルツ」と「ダフニスとクロエ」組曲第2番で(この組合せは何度か経験済)、オケの規模も大きく楽器も多彩で、これぞ管弦楽という世界だ。いずれも聴き慣れた作品だが、同じ仏ものと言っても前2曲とは随分違う。

「ダフクロ」は本来ヴォカリーズが付いていたが、ラヴェル自身がその部分を管弦楽に置き換えた版も編曲したそうで、今回はその版だった。と言うより過去に何度か聴いているがヴォカリーズ付きは経験がない。また、組曲第1番というのも多分未経験だ。

N響の技が発揮されたのは後半のラヴェル2曲。というか、管弦楽の精妙さが際立つ音楽だからそのように感じたということだが、特に管楽器がきれいな音を出していた。逆に弦の美しさが発揮される場面が少なかったのは、そういう音楽だからし方がない。

2017-108/♪NHKホール-05

2017年1月9日月曜日

音楽堂ニューイヤー・コンサート クレメンス・ハーゲン(チェロ)&河村尚子(ピアノ) デュオ・リサイタル

2017-01-09 @県立音楽堂


クレメンス・ハーゲン:チェロ
河村尚子:ピアノ

ューマン:5つの民族風の小品集 作品102
ベートーベン:ピアノとチェロのためソナタ第2番ト短調 作品5-2
ラフマニノフ:ピアノとチェロのためのソナタ ト短調 作品19
--------------
フランク:バイオリンソナタ(チェロ版)イ長調から第1楽章
ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタニ短調から第2楽章


クレメンス・ハーゲンをナマで聴くのは初めてだが、ハーゲン四重奏団のチェリストとしても個人としてもたくさんのCDを出しているようで、我が家にも10枚近くある。

河村尚子は初めてかなと思っていたが、先程調べたら1年半前に読響の定期でラベルの「左手のための協奏曲」を聴いていた。

今回は、河村尚子ではなくクレメンス・ハーゲンのチェロをナマで、それこそ生々しく聴きたかったので、前から5列目のピアノ本体の前(センターから少し上手寄り)に席を取った。
ピアノとプラス1の編成の場合、プラス1は普通はピアノの前方下手に位置するのが通例だし、チェロの場合はピアニストとアイコンタクトを取るために客席正面に向かって座ることはなく少し舞台中央に楽器を向けるはずだ、という僕の読みも見事に的中して、ちょうど僕の席の正面にピアノとチェロがV字形に位置するというこの編成を聴くには申し分のない好位置となった。

ふたりが登場し、軽く客席に会釈して位置につくと両者はアイ・コンタクトもなしにいきなりハーゲンが弾き出したが、そのときちゃんとピアノも始まっていて、この息の合った、意表を突く出だしには驚いた。

その第1曲はシューマンの「5つの民族風の小品集」だ。
多くの作曲家のたくさんのチェロの小品の中でもとても好きな作品だ。タイトルどおり、とても「民族風」だ。と言っても、いちいちどこの<民族>風なのかは分からないが、ロマ、スラヴなどが混じっているのは間違いなさそうだ。
それほど有名曲とも思えないけど、僕はCDを3種類持っている。そんなこともあって耳によく馴染んでいるので、ナマで聴けたのは嬉しかった。

5列目という席は、オーケストラだと絶対に座りたくない場所だけど、小人数(弦楽器どうしの共鳴効果を期待しない編成)の場合は楽器本来の音がそのまま響いてくるのが心地よい。とくに音楽堂は残響が少ないので、原音が(きれいな場合は)豊かに響く。
ハーゲンのチェロのガリガリいうような音色はあまり美しいとはいえない。同じ音楽堂で、やはりかぶりつきで聴いた藤原真理の音色の方が格段に耳には心地が良いが、野性的な力強いハーゲンの音色もなかなか訴求力がある。

このシューマンだけでも十分満足だったが、ベートーベンのチェロソナタ2番もドイツ音楽の肝を感じさせてくれた。

ラフマニノフのチェロソナタは初聴きだった。
これはなかなかの大曲で全4楽章。演奏時間は40分前後あったのではないだろうか。その長尺をピアノがほとんど超絶技巧を駆使している感じで、その上でチェロに朗々と歌わせるという趣向のようだ。音楽自体には馴染んでいなかったので楽しみは彼らの名人芸にあったといえる。

ラフマニノフはバイオリンソナタを書いていない。(ピアノと)チェロのためのソナタがあるからそれで十分だと考えていたと書いてあるのを読んだことがあるが本当かどうか。
でも、チェロという楽器が好きだったことは間違いなさそうだ。
そしてもちろんピアノの大家でもあったからチェロ・ソナタ(彼自身はこういう呼び方を嫌ったようだが)においてチェロを思い切り歌わせ、一方ピアノには全曲に渡ってオタマジャクシて埋め尽くすような作品を書いたのかもしれない。

河村尚子

さて、本日の収穫その2は音楽に非ず。
冒頭書いたように河村尚子は初めてではなかったが、前回協奏曲を聴いたのは席が舞台から遠くてよく彼女の表情がはっきりとは見えなかった。今回はかなり近い場所だったので、彼女のピアノを弾く際の豊かな表情の変化をつぶさに見ることができた。それがなんとも魅力的だ。彼女の気持ちがそのまま表情に、姿勢に表れていて分かりやすい。そして、拍手に応える笑顔のなんと可愛らしいこと。とてもキュートだ。
ポスターやチラシの表情は固くて実物とはだいぶ印象が異なる。

♪2017-003/♪県立音楽堂-01

2015年5月30日土曜日

読売日本交響楽団第80回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2015-05-30 @みなとみらいホール


ユーリ・テミルカーノフ:指揮

河村尚子:ピアノ
読売日本交響楽団

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 作品35 (独奏ヴァイオリン:日下紗矢子)
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」から第2組曲
-------------
アンコール(管弦楽)
チャイコフスキー:「くるみ割り人形」から「パ・ド・ドゥ」


リムスキー・コルサコフといいラヴェルといい、いずれも近代管弦楽技法の雄と言われている人たちだ。
大規模なオーケストラに多彩な楽器を取り揃え、色彩感豊かでダイナミックレンジの広い音楽が楽しみだ。

今日の3曲のうち、最も長編なのは「シェエラザード」だけど、これがどうして第1曲目(これが終わって休憩)に置かれたのか、普通はトリに持ってくるのではないかと思ったが、この変則配置は楽器構成上の便宜から決められたのかもしれない。

プログラムの解説にある楽器編成を見る限り「ダフニスとクロエ」の方が、「シェエラザード」より楽器の数(弦5部を除く。)が10も多い。

両方ともに<管弦楽>を堪能できる作品だけど、特に個人的には「ダフニスとクロエ」が(以前は好きになれなかったのに)、最近では面白みが分かるというか、いい音楽だと思えるようになってきたことが嬉しい。とにかく、自分の嗜好はほとんどドイツ(語圏)音楽に偏向しているし、それをよしとして他を顧みない傾向は確かにあるので…。


さて、中に挟まれたのがラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」。これも悪くはないけど、いつもどうにも引っかかる。
素直に音楽に入って行けない。
むしろ、この曲はCD鑑賞向きだ。
両手使える人が片手を封じて弾くところを見るのは違和感がある。
片手しか使えない舘野泉の演奏も聴いた。
彼の場合であってもやはり違和感を覚える。
つまり、そもそも、この音楽のスタイルに疑問を感ずるのだ。
音楽というものの有り様の問題なのだけど、どうも素直に受け入れられない。

♪2015-52/♪みなとみらいホール-15