2017年1月9日月曜日

音楽堂ニューイヤー・コンサート クレメンス・ハーゲン(チェロ)&河村尚子(ピアノ) デュオ・リサイタル

2017-01-09 @県立音楽堂


クレメンス・ハーゲン:チェロ
河村尚子:ピアノ

ューマン:5つの民族風の小品集 作品102
ベートーベン:ピアノとチェロのためソナタ第2番ト短調 作品5-2
ラフマニノフ:ピアノとチェロのためのソナタ ト短調 作品19
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フランク:バイオリンソナタ(チェロ版)イ長調から第1楽章
ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタニ短調から第2楽章


クレメンス・ハーゲンをナマで聴くのは初めてだが、ハーゲン四重奏団のチェリストとしても個人としてもたくさんのCDを出しているようで、我が家にも10枚近くある。

河村尚子は初めてかなと思っていたが、先程調べたら1年半前に読響の定期でラベルの「左手のための協奏曲」を聴いていた。

今回は、河村尚子ではなくクレメンス・ハーゲンのチェロをナマで、それこそ生々しく聴きたかったので、前から5列目のピアノ本体の前(センターから少し上手寄り)に席を取った。
ピアノとプラス1の編成の場合、プラス1は普通はピアノの前方下手に位置するのが通例だし、チェロの場合はピアニストとアイコンタクトを取るために客席正面に向かって座ることはなく少し舞台中央に楽器を向けるはずだ、という僕の読みも見事に的中して、ちょうど僕の席の正面にピアノとチェロがV字形に位置するというこの編成を聴くには申し分のない好位置となった。

ふたりが登場し、軽く客席に会釈して位置につくと両者はアイ・コンタクトもなしにいきなりハーゲンが弾き出したが、そのときちゃんとピアノも始まっていて、この息の合った、意表を突く出だしには驚いた。

その第1曲はシューマンの「5つの民族風の小品集」だ。
多くの作曲家のたくさんのチェロの小品の中でもとても好きな作品だ。タイトルどおり、とても「民族風」だ。と言っても、いちいちどこの<民族>風なのかは分からないが、ロマ、スラヴなどが混じっているのは間違いなさそうだ。
それほど有名曲とも思えないけど、僕はCDを3種類持っている。そんなこともあって耳によく馴染んでいるので、ナマで聴けたのは嬉しかった。

5列目という席は、オーケストラだと絶対に座りたくない場所だけど、小人数(弦楽器どうしの共鳴効果を期待しない編成)の場合は楽器本来の音がそのまま響いてくるのが心地よい。とくに音楽堂は残響が少ないので、原音が(きれいな場合は)豊かに響く。
ハーゲンのチェロのガリガリいうような音色はあまり美しいとはいえない。同じ音楽堂で、やはりかぶりつきで聴いた藤原真理の音色の方が格段に耳には心地が良いが、野性的な力強いハーゲンの音色もなかなか訴求力がある。

このシューマンだけでも十分満足だったが、ベートーベンのチェロソナタ2番もドイツ音楽の肝を感じさせてくれた。

ラフマニノフのチェロソナタは初聴きだった。
これはなかなかの大曲で全4楽章。演奏時間は40分前後あったのではないだろうか。その長尺をピアノがほとんど超絶技巧を駆使している感じで、その上でチェロに朗々と歌わせるという趣向のようだ。音楽自体には馴染んでいなかったので楽しみは彼らの名人芸にあったといえる。

ラフマニノフはバイオリンソナタを書いていない。(ピアノと)チェロのためのソナタがあるからそれで十分だと考えていたと書いてあるのを読んだことがあるが本当かどうか。
でも、チェロという楽器が好きだったことは間違いなさそうだ。
そしてもちろんピアノの大家でもあったからチェロ・ソナタ(彼自身はこういう呼び方を嫌ったようだが)においてチェロを思い切り歌わせ、一方ピアノには全曲に渡ってオタマジャクシて埋め尽くすような作品を書いたのかもしれない。

河村尚子

さて、本日の収穫その2は音楽に非ず。
冒頭書いたように河村尚子は初めてではなかったが、前回協奏曲を聴いたのは席が舞台から遠くてよく彼女の表情がはっきりとは見えなかった。今回はかなり近い場所だったので、彼女のピアノを弾く際の豊かな表情の変化をつぶさに見ることができた。それがなんとも魅力的だ。彼女の気持ちがそのまま表情に、姿勢に表れていて分かりやすい。そして、拍手に応える笑顔のなんと可愛らしいこと。とてもキュートだ。
ポスターやチラシの表情は固くて実物とはだいぶ印象が異なる。

♪2017-003/♪県立音楽堂-01