演出:鵜山仁
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:TOKYO FM 少年合唱団
ダンサー:新国立劇場バレエ団
管弦楽:東京交響楽団
カルメン:エレーナ・マクシモワ
ドン・ホセ:マッシモ・ジョルダーノ
エスカミーリョ:ガボール・ブレッツ
ミカエラ:砂川涼子
スニガ:妻屋秀和
モラレス:星野淳
ダンカイロ:北川辰彦
レメンダード:村上公太
フラスキータ:日比野幸
メルセデス:金子美香
ジョルジュ・ビゼー:オペラ「カルメン」 全3幕
〈フランス語上演/字幕付〉
カルメンは演奏会形式では何度か聴いた。特に年末のシャルル・デュトワ+N響による全曲演奏は、細部まで神経の行き届いた演奏自体が素晴らしく、ビゼーの傑作が、なにゆえに傑作であるのかをしっかりと理解させてくれたように思った。
その上で、新国立劇場の本格的な舞台版「カルメン」だ。
期待値は相当高い。
しかし、東響が演奏する前奏曲が始まった途端、これはすごいものが観られそうだという予感が。
前奏が終わって高い天井から吊り下げられた幕が左右に開くと大勢の群衆たちだ。
「カルメン」はこういうモブ・シーンが多い。それが舞台のエネルギーとなっているようだ。
日本人歌手の数人はかつて舞台に接したことがあったが、主要な役を演ずる外国人歌手についてはどれほどの名手なのかまったく知らない。まあ、みんな巧い。声が大きくてよく通る。この点に関しては日本人歌手も負けてはいなかった。
特に、ミカエラを歌った砂川涼子が、と言うか、そもそもミカエラのアリアが哀切極まりなくて胸を打つのだけど、これを上手に歌った彼女が強く印象に残った(6月に日生劇場で「ラ・ボエーム」を観ることにしているが、その主役ミミを彼女が歌うので、これは楽しみだ。)。
N響の「カルメン」でもどちらかと言えばミカエラが好印象だったが、やはり、清純・誠実で控えめな役柄はカルメンとは好対照だし、カルメン役がほとんどメゾ・ソプラノであるのに対して、ミカエラはソプラノであることも歌唱効果の面で有利なのかもしれない。
この2人の女性の人生ドラマを味わいながら、僕は「風と共に去りぬ」のスカーレットとメラニーを思い浮かべていた。スカーレットは魅力的だが並の人間にはコントロールすることができない。
カルメンもまた然り…。
管弦楽演奏、歌唱、ドラマ、舞台、照明、美術がいずれも素晴らしく(演出も優れているのだろう。)、実にラグジュアリーな至福の3時間半。
♪2017-011/♪新国立劇場-1