2016-06-02 @国立劇場
解説 歌舞伎のみかた 中村萬太郎
河竹黙阿弥=作
新皿屋舗月雨暈 (しんさらやしきつきのあまがさ)
―魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)― 二幕三場
国立劇場美術係=美術
序幕 片門前魚屋宗五郎内の場
二幕目 磯部邸玄関先の場
同 庭先の場
中村橋之助⇒魚屋宗五郎
中村梅枝⇒宗五郎女房おはま
中村宗生⇒小奴三吉
市村橘太郎⇒宗五郎父太兵衛
中村萬太郎⇒磯部主計之介
中村松江⇒浦戸十左衛門
ほか
魚屋宗五郎。
最近では菊五郎など、過去何人かの役者でこの芝居を観た。
しかし、これまでは、この芝居が、妹が理不尽に殺されたという<悲劇>と、お酒を長く絶っていた宗五郎が憂さ晴らしに、身内からも勧められて口にした一杯がすぐ二杯になり、うまいうまいと言いながら酔いが回って、今度はなんとか止めさせようとする女房、父親、丁稚の目を盗み、腕をかいくぐり、制止を振り切りって飲み続け泥酔してゆくさまの<喜劇>のつながりがどうもしっくり来なくて、滑稽だけど腑に落ちない芝居だった。
しかし、今日の橋之助の芝居を観ながら目からウロコの思いがした。
妹の無念の死を契機に禁じていた酒を飲み始め、酒乱が高ずる中に宗五郎の哀れが深まり思わず涙がジワーっと来た。
なるほど、こういう芝居か、とはじめて前後の脈絡が繋がって、大団円を素直に受け入れることができた。
前に見た芝居の役者の芸が悪いという訳ではあるまい。僕の観る目が少し育ってきたのだろうが、それにしてもこれまでに観た橋之助の芝居の中でも、今回は見事なはまり役だと思った。
橋之助を意識した最初は歌舞伎ではなく、1988年の山田洋次監督作品「ダウンタウンヒーローズ」だった。その時(公開時)橋之助23歳のはず。今や50歳となり、今秋は「芝翫」を襲名する。ますます楽しみな役者だ。
♪2016-078/♪国立劇場-03