2017年6月14日水曜日

楽劇「ニーベルングの指環」第二日〜ジークフリート〜

2017-06-14 @新国立劇場


ワーグナー:楽劇「ニーベルングの指環」第2日〜ジークフリート〜

指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ


東京交響楽団

ジークフリート⇒ステファン・グールド
ミーメ⇒アンドレアス・コンラッド
さすらい人⇒グリア・グリムスレイ
アルベリ⇒ヒトーマス・ガゼリ
ファフナー⇒クリスティアン・ヒュープナー
エルダ⇒クリスタ・マイヤー
ブリュンヒルデ⇒リカルダ・メルベート




一昨年の秋に始まったシリーズも愈々「ジークフリート」を迎えた。手持ちのビデオを観たり、CD全曲盤を聴いたり、解説本を読んだりと、随分事前の勉強をし、加えて、新国立劇場が公演したハイライト版も鑑賞して、もう頭の中はパンパン状態。

「ジークフリート」はハイライト版を別にすれば演奏会形式を含め生舞台は初めてだったが、猛勉強のお陰でプロットはこれまでになくよく消化できて没入度が高かった。
ただ、2幕2〜3場の短時間の小鳥の声を除けば終盤まで女声は登場しない。それまでは専ら男たちの会話劇に終始する。ひたすら延々3時間小難しい対話が続き、音楽も暗いのであまり面白いとはいえない。
劇的な期待は(人にもよるが)もっぱら3幕後半、ブリュンヒルデとジークフリートが初めて会う瞬間までおあずけだ。

「恐れを知らぬ」ジークフリートが、火の山で眠り続けるブリュンヒルデを覚醒させ、初めて女性にまみえて「恐れ」を知る。神性を失ったブリュンヒルデもここで初めて自分の女性としてのアイデンティティーに目覚め、両者の熱狂愛のほとばしり。

ここにきてドラマが頂点を貫く。2人は伯母と甥という近親関係。「ワルキューレ」で描かれたようにジークフリートの両親も兄妹かつ不倫愛という刺激的関係の中で結ばれるのだが、その子もまた人倫の道を踏み外すように運命付けられている。

「指環」は恐ろしく壮大で複雑で不可解な点の多い物語だが、ほぼ鳴り止まない音楽も同様に壮大でかつ緻密に作られていて、否応なしにこの世界に取り込まれてしまう。
それにしてもタイトルロールを歌う歌手は全幕通じて出番が多いので体力勝負。ジークフリート役のステファン・グールドなど、最後まで声も枯らさず歌い切った。それだけでもう凄いものだと感心する。今回出番が少なかったブリュンヒルデ役のリカルダ・メルベートは、「神々の黄昏」に出演しないのが残念だが、新国立劇場の来季の「ばらの騎士」、「フィデリオ」を楽しみにしておこう。

♪2017-102/♪新国立劇場-06