2018年4月5日木曜日

四月大歌舞伎 昼の部

2018-04-05 @歌舞伎座


●明治百五十年記念
真山青果作「江戸城総攻」より
松竹芸文室 改訂
大場正昭 演出
一、西郷と勝(さいごうとかつ)
西郷隆盛⇒松緑
山岡鉄太郎⇒彦三郎
中村半次郎⇒坂東亀蔵
村田新八⇒松江
勝海舟⇒錦之助

●通し狂言
梅照葉錦伊達織(うめもみじにしきのだており)
二、裏表先代萩(うらおもてせんだいはぎ)
大場道益宅
足利家御殿
同  床下
小助対決
仁木刃傷
下男小助/仁木弾正⇒菊五郎
乳人政岡⇒時蔵
細川勝元⇒錦之助
下女お竹/沖の井⇒孝太郎
倉橋弥十郎⇒松緑
荒獅子男之助⇒彦三郎
渡辺民部⇒坂東亀蔵
鶴千代⇒亀三郎
松島⇒吉弥
大場宗益⇒権十郎
横井角左衛門⇒齊入
栄御前⇒萬次郎
八汐⇒彌十郎
大場道益⇒團蔵
渡辺外記左衛門⇒東蔵

メインは、通し狂言「梅照葉錦伊達織」〜「裏表先代萩」。
と、ポスターや筋書きに書いてあるが、この意味がよく分からない。長大な通し狂言「梅照葉錦伊達織」の中の「裏表先代萩」の幕という意味ではなさそうで、どちらも同じ芝居を指しているようだが、どうしてこんなタイトルになっているのか。「梅照葉錦伊達織」という演目で上演されたこともあるようだ。内容は「伽羅先代萩」の変形なので「裏表先代萩」という言い方の方が伝わりやすいところから、いつしか、今のような形になったのかもしれない。

なにゆえ「裏表」なのか、と言えば、<時代物>である「伽羅先代萩」を「表」とし、そのスピンオフとして町人を主人公にした<世話物>を「裏」として、裏から初めた物語を次は表と交互に綴り、一本の話として成立させているのだ。
実に面白い趣向であるが、更に加えて両方の主人公格(表の伽羅先代萩では仁木弾正、裏では下男小助)を一人の役者が二役をするというのが通例になっているようで、時には最大4役を演じたという記録があるそうな。一人で主役格の複数の役をこなすというのもこの芝居の趣向となっているようだ。

今回は菊五郎がその両者を演じている。

そんな訳で、一粒で二度美味しいアーモンドグリコのような芝居だが、惜しいのは表と裏が交錯しないという点だ。もちろん話はつながっているのだけど、そのつながりが弱く、良いアイデアなのに二つの話が別々に進行してゆくのがイマイチもったいない。

さて、本日の歌舞伎座はガラガラだった。こんなに空席が目立つのも珍しい。やはり、一月、二月と高麗屋三代襲名で大勢の役者が揃った反動で、所謂、人気スターがお休みか、あるいは地方巡業に回ったのではないか。

しかし、今回歌舞伎座で留守を守る役者たちはどちらか言えば好みの
渋い役者が揃っている。

菊五郎、時蔵、錦之助、孝太郎、松緑、彦三郎、坂東亀蔵、萬次郎、彌十郎、團蔵、東蔵など。

中でも、彌十郎の八汐、東蔵の外記左衛門は驚いた。男女の役割が逆様だ。東蔵の立役は初めてでは無いけど、僕の鑑賞歴では非情に珍しい。彌十郎が女形を演じたのは、我が記録・記憶にはなく、多分今回が初めてだった。
2014年の11月国立劇場の「伽羅先代萩」では坂東彌十郎が渡辺外記左衛門(荒獅子男之助も)を、東蔵が栄御前を演じていたが、まあ、この配役が普通の形だろう。

元々声のよく通る彌十郎がひときわ大音声で勤めるので八汐の怖さ倍増だ。いやはや、珍しいものを観せてもらった。

♪2018-035/♪歌舞伎座-02