2018年4月28日土曜日

華麗なるコンチェルト・シリーズ第5回 石田泰尚〜カリスマ・バイオリニストのConcerto!〜

2018-04-28 @みなとみらいホール


阿部未来:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
石田泰尚:バイオリン*

ワーグナー:歌劇「ローエングリーン」第1幕への前奏曲
ハチャトゥリアン:バイオリン協奏曲ニ短調*
ベートーベン:バイオリン協奏曲ニ長調 作品61*
---------------
アンコール
クライスラー:美しきロスマリン*(+弦楽5部首席)
シューベルト:アヴェ・マリア*(無伴奏)

華麗なるコンチェルトシリーズ(年4回)が去年から始まっていたのは知っていたけど、いくつかダブりがあって、買わなかったが、今年のシリーズは見事に4回とも重ならないのでセット券で買った。

その第一弾が石田泰尚のバイオリン協奏曲2本立てだ。

石田は神奈川フィルのソロ・コンマスで2001年からその地位にあるから、神奈川フィルの顔であり、オケ以外にも室内楽活動も盛んに行っている。ファンが多く、大抵、彼が出演するとチケット完売だ。

「音楽の友」4月号が発表した3年に一度の読者人気投票では、なんと、<日本のバイオリニスト>の中では石田は10位だというのがびっくりだ。いやいやそれ以上に<世界のバイオリニスト>の中でも20位だというのには愕然となった。音友の読者層って、横浜中心なのか?いくらなんでもこれほどまでも上位に位置するとは思えない。あくまでも人気投票なので、いい加減なところはあるだろうけど。
ついでに書きておくと、この華麗コンの全回の管弦楽担当が神奈川フィルだが、このオケが、音友の投票では<日本のオケ>ではなんと4位だと言う。都響、東フィル、読響、新日フィルなどよりも上位にランクしているのも不思議な事だ。
加えて<世界のオケ>の中でも15位にランキングされている。ここでは、<日本のオケ>では神奈川フィルより上位の日フィルが20位内にも入っていないし、同じく神奈川フィルより一つ順位が下の都響が<世界のオケ>で3位というのだから訳が分からない。

あくまでも人気投票だし、確か、好きな奏者・オケを5人(団体)まで選ぶ方式なので、こんな矛盾した結果が生まれるのだろう。

<人気投票>では厳密なことは言えないまでも、少なくとも、バイオリニストとして石田泰尚は日本で一流のランクにあり、神奈川フィルも人気としては我が国のトップレベルにあるということだ。

で、その両者が組んだ2曲のコンチェルト。
ハチャトゥリアンの”バイオリン協奏曲”は初聴きだった。しかし、1年余前にランパルがフルート版に編曲したものを聴いていた…ことを帰宅後思い出した。原曲のバイオリン版より、こちらの方が有名かもしれない。
第1楽章、第3楽章はとてもリズミカルだ。挟まれた第2楽章がエキゾチックでメランコリー。演奏に34分前後要し、オーケストラの編成もかなり大きな本格的な協奏曲で、味わい深く、十分楽しめる。もっと演奏機会が増えても良さそうだが、この華麗コンのように、一度に2曲以上協奏曲を演奏するのでなければ、さほど知れ渡った作品でもないので単独では取り上げにくいのだろう。

ベートーベンも堂々たるもので、とても良かった。

予てから、石田泰尚のバイオリン・ソロは何度も聴いているが、その音色が繊細で美しいのだけど、野性味に欠ける。
今回もハチャトゥリアンのカデンツァなど重音奏法の部分などはもっとガリガリと脂を飛ばしてもいいのではないかと思ったが、全体を聴き終えると、やはり、この繊細さが彼の持ち味で、どんなに速いパッセージでも一音一音に磨きをかけようとしているのだろう。それが彼の音楽である、と受け止めると、一つのスタイルとして納得できる。

バイオリン・ソロも良かったが、神奈川フィルも素晴らしい出来だった。
今日の指揮は阿部未来クン。彼は2015年度から副指揮者を勤めているが、定期演奏会には一度も立ったことがないから、指揮ぶりを見るのは初めてだったが、うまくコントロールしていたのではないか。こう言っちゃ何だが、メンバーも必ずしもエース級を欠いた編成だったが、弦の音もきれいだし、まとまりが良くて実に心地よい演奏だった。
ソロ・コンマスが独奏に立っているので、今日のコンマスは﨑谷君かと思っていたが、コンマス席に座っていたのは見慣れぬ若い女性だった。終演後関係者に尋ねたら日本センチュリー交響楽団のコンマス・松浦奈々という人だった。はっきりした動作で役割を果たしていたのではないか。

♪2018-048/♪みなとみらいホール-14

[参考]
「音楽の友」2018年4月号人気投票結果
◎世界のオケ⇒
  1ウィーン・フィル、
  2ベルリン・フィル、
  3N響
  4R・コンセルトヘボウ、
  5都響
  6NYフィル、
  7バイエルン放送響、
  8ロンドン交響楽団、
  9パリ管、
10ドレスデン・シュターツカペレ、
11チェコ・フィル、
12東響
13ボストン響、
14ミラノ・スカラ座管、
15神奈川フィル(日本オケで4位)

◎日本のオケ⇒
  1N響、
  2日フィル、
  3東響、
  4神奈川フィル
  5都響、
  6東フィル、
  7読響・新日本フィル(同順)、
  9大阪フィル、
10札響

◎世界のVnist⇒
1五嶋みどり
2パールマン、
3クレーメル、
4ハイフェッツ
5ムター、
6諏訪内晶子
7オイストラフ
8五嶋龍
9イザベル・ファウスト、
10庄司紗矢香
11グリュミオー
12スターン
13ツィマーマン、
14ヴェンゲーロフ、
15キュッヒル、
16レーピン、
17樫本大進
18キョンファ、
19三浦文彰、
20石田泰尚 緑は故人

◎日本のVnist⇒
  1五嶋みどり、
  2諏訪内晶子、
  3庄司紗矢香、
  4樫本大進、
  5五嶋龍、
  6神尾真由子、
  7千住真理子、
  8堀米ゆず子、
  9三浦文彰、
10石田泰尚