●花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)
〜万才・鷺娘
豊竹睦太夫
竹本津國太夫
竹本小住太夫
竹本碩太夫
野澤喜一朗
鶴澤清丈
鶴澤寛太郎
鶴澤清公
鶴澤燕二郎
◎人形
吉田玉勢⇒太夫
桐竹紋臣⇒才蔵
吉田文昇⇒鷺娘
●八代目竹本綱太夫五十回忌追善/豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露 口上
豊竹咲太夫
竹本織太夫
●追善・襲名披露狂言
摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
〜合邦住家の段
中 竹本南都太夫
鶴澤清馗
切 豊竹咲太夫*
鶴澤清治**
後 竹本織太夫
鶴澤燕三
◎人形
吉田和生⇒合邦道心**
桐竹勘壽⇒合邦女房
桐竹勘十郎⇒玉手御前
吉田玉佳⇒奴入平
吉田簑二郎⇒浅香姫
吉田一輔⇒高安俊徳丸
ほか(**は人間国宝。*は切場語り)
今月の国立劇場文楽公演は全3部制で、そのうち第2部が八代目竹本綱太夫五十回忌追善/豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露 口上を含む記念の公演で、綱太夫追善と新・竹本織太夫の襲名披露の演目は「摂州合邦辻」〜合邦住家の段だ。
これだけだと短いし、祝いごとなので、「花競四季寿」から春と冬の場が演じられた。
「摂州合邦辻」は歌舞伎では観たことがある。お家騒動を軸に、義理の関係とはいえ母(玉手御前)が息子(俊徳丸)に恋をするというとんでもない設定だ。それも、義理の息子に毒を飲ませて面体を醜く崩し、彼の許嫁には結婚を思いとどまらせようとする。この女難を避けて出奔した俊徳丸を玉手御前はさらに追いかけて私と一緒になろうと詰め寄る。とはなんという無茶苦茶な話か、と思いきや、ちゃんと筋が通るようにできてはいるものの、そんなバカな、という類の話だ。
見方によっては、これも一つの愛の形なのかもしれないが、なかなか共感はしにくい。
中で三味線を弾いた鶴澤清馗は織太夫の弟だ。
切場を担当したのは目下、唯一の切り場語りで太夫最高格の咲太夫が語った。その三味線を弾いたのは人間国宝であり織太夫の伯父に当たる鶴澤清治だ。
また、人形では合邦を人間国宝・吉田和生が遣った。
つまり太夫・三味線・人形の各分野の最高格が部分的にせよ勤めたのだ。贅沢なものであった。
咲甫太夫の頃からよく通る声と豊かな感情表現が見事で、大いに楽しみな新・織太夫だが、この出し物は元々八代目綱太夫の得意狂言だったようで、それで追善の演目として選ばれたらしいが、織太夫の面目躍如とまではゆかなかったような気がした。もっと、派手な語りこそ彼にはよく似合うのではないか。
しかし、今後も非常に楽しみな太夫の一人であることには違いない。初めて咲甫太夫を聴いたのは「仮名手本忠臣蔵」の九段目、出床で妹・お軽と兄・平右衛門の凄惨な絡みの場の迫力に圧倒されたものだ。また、ああいうすごい義太夫を是非とも聴いてみたい。
♪2018-021/♪国立劇場-03