2018年2月1日木曜日

シスカンパニー公演「近松心中物語」

2018-02-01 @新国立劇場


秋元松代:作
いのうえひでのり:演出

堤真一⇒亀屋忠兵衛
宮沢りえ⇒遊女梅川
池田成志⇒傘屋与兵衛
小池栄子⇒傘屋お亀
市川猿弥⇒丹波屋八右衛門
立石涼子⇒亀屋後家妙閑
小野武彦⇒土屋平三郎
銀粉蝶⇒傘屋お今

近松心中物語

近松の「冥途の飛脚」を中心に他の近松作品からも登場人物などを借用して改作したものらしい。
「冥途の飛脚」は近松の没後半世紀を経て他人の手によって「傾城恋飛脚」(その歌舞伎版「恋飛脚大和往来」もあり。)としても上演されてこんにちに至る。
「傾城恋飛脚」は「冥途の飛脚」が話の組立てが単純で、心中一直線であるために、これをもっと膨らませたもので、今回の「近松心中物語」も同趣旨に出たものだろう。

ただ、「冥途の飛脚」も「傾城恋飛脚」(新口村の段)も文楽で観ていて、多少筋書きは頭に入っていたが、この2本でさえごっちゃになるのに今回の大いに膨らませた筋で、ますますこんがらがってしまった。

が、新作と思えば(いや、事実新作なのだけど)なかなか面白かった。やはり、梅川(宮沢りえ)と忠兵衛(堤真一)だけだと、話に起伏が不足する。与兵衛(池田成志)とその女房お亀(小池栄子)の妙な夫婦が梅川・忠兵衛の本筋に並行して、時に絡んで描かれることで、物語の振幅が大きくなった。

終盤は2組の若い男女のいずれもが死の道行き。
4人共知恵が足らない。バカな生き方。とりわけ、2人の男が情けない。そのつまらない男に縋って自らも命を縮める女2人がバカとはいえ哀れ。しかし、ギリギリまで追い詰められ、この道しか無いと選んだ死の道行きは壮絶で美しいとも言える。愛の極致とも思える…からこそ、死を選んだ自分を納得させるのだろうな。

宮沢りえは前に野田マップ「キャラクター」を観て、不思議な存在感を感じたが、今回も同様。梅川の役はハマっていた。原作では梅川・忠兵衛は生きて捕縛されるが、この作品では心中する(だから「近松心中物語」?)。雪が降りしきる真っ白な舞台で着物の帯を解き真っ赤な長襦袢姿の梅川が忠兵衛に真っ赤な腰紐で首を絞められて絶命するシーンは絵としても美しい。この儚げな薄幸の遊女が宮沢りえにはよく似合う。

一方、喜劇部分を担うのが、与兵衛とお亀だが、この2人は死に様まで滑稽だ。特に小池栄子がいい。演技力がどうこうは分からないが、馬力がある。求心力がある。お亀は梅川とは好対照の人物像だが、役者としても宮沢りえに引けを取らない良いバランスをキープしていたように思う。

♪2018-014/♪新国立劇場-02