指揮:セバスティアン・ルラン
演出・美術・照明:フィリップ・アルロー
衣裳:アンドレア・ウーマン
振付:上田遙
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ホフマン⇒ディミトリー・コルチャック
ニクラウス/ミューズ⇒レナ・ベルキナオ
オランピア⇒安井陽子
アントニア⇒砂川涼子
ジュリエッタ⇒横山恵子
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル/ダペルトゥット⇒トマス・コニエチュニー
アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ⇒青地英幸
ルーテル/クレスペル⇒大久保光哉
スパランツァーニ⇒晴雅彦
シュレーミル⇒森口賢
ニアントニアの母の声/ステッラ⇒谷口睦美
ほか
ジャック・オッフェンバック:「ホフマン物語」全5幕〈フランス語上演/字幕付〉
予定上演時間:約3時間40分
第Ⅰ・Ⅱ幕70分
--休憩30分--
第Ⅲ幕50分
--休憩30分--
第Ⅳ・Ⅴ幕40分
有名なオペラについては放送機会も多いのでその録画を中心に、大抵複数のバージョンを持っているのだけど、「ホフマン物語」に関しては2009年のMET版だけしかなく、これは数回観たがなかなかしっくりと来ない。それで特に関心を惹く作品ではなかった。そういうこともあって、この作品をナマで鑑賞するのは今回が初めてだった。
元々未完の作品を後日他人が手を入れて完成したものだが、その後も楽譜が発見されたことなどから色んな人が再構成をした版が存在するようで、Wikipediaには6種類が挙げられており、最新版はなんと2006年に発表されたそうだ。
実際の舞台は比較的新しい版が用いられているらしいが、それでもその版に忠実とは限らず、各版の良いとこ取りでの再構成もあるようで、今回のフィリップ・アルローの演出も良いとこ取りだそうだ。
いろんな版があり、部分的に混ぜ合わせた構成も可能ということは、演出家にとっては面白いのかもしれないが、よほどの「ホフマン物語」ファンでない限り、観客は混乱するだろう。
MET版でも納得できなかったが、今回もよく分からないのが、最終幕最終場面のホフマンの死の意味が、やっぱり分からない。(おそらく、ここは、原作台本でもこう書いてあるのだと思うが)3人の女性に失恋したとはいえ、自ら死を選ぶに至る説得力がない。
人は死んでも芸術家(ホフマンは詩人)の作品は残る…なんて意図なら薄っぺらいし、納得できる前フリがない。
倒れたホフマンの躯を放置して登場人物が勢揃いし、「人は愛で大きくなり、涙で一層成長する」と合唱して幕が降りるが、ホフマンは死んでしまっているのだから成長もできないだろう。
とにかく話の筋が分からない。
ひょっとして愛と死と芸術に関する哲学的思索を試みているのだろうか。
どうせ、版はいくらもあり、まぜこぜありの世界だ。誰かスッキリする新演出で「ホフマン物語」を観せてくれないものか。
演出家は美術・照明も担当しているが、こちらの方面には豊かな才能があるのではないか。蛍光色を含む原色で彩られた舞台や衣裳(担当は別人だが演出家の指示を受けているだろう。)が面白く、舞台装置もセンスの良いもので、音楽も聴きどころは多く、筋さえきっちり納得させてくれたら面白いオペラなんだが。
♪2018-025/♪新国立劇場-03