国立文楽劇場開場35周年記念4月文楽公演
通し狂言「仮名手本忠臣蔵」(かなでほんちゅうしんぐら)
第Ⅰ部大序から四段目まで 4時間18分(正味3時間43分)
大序
鶴が岡兜改めの段
碩太夫・亘太夫・小住太夫・咲寿太夫/
清允・燕二郎・錦吾・清公
恋歌の段
津国太夫・南都太夫・文字栄太夫/
團吾
二段目
桃井館力弥使者の段
芳穂太夫/清丈
本蔵松切の段
三輪太夫/清友
三段目
下馬先進物の段
小住太夫/寛太郎
腰元おかる文使いの段
希太夫/清馗
殿中刃傷の段
呂勢太夫/清治
裏門の段
睦太夫/勝平
四段目
花籠の段
文字久太夫改め豊竹藤太夫/團七
塩谷判官切腹の段
切:咲太夫/燕三
城明渡しの段
碩太夫/清允
◎人形
勘十郎・和生・玉輝・文司・玉佳・簑助・玉男ほか
国立文楽劇場では「仮名手本忠臣蔵」を今年、春夏秋3季に分けて全段通し上演する。
2年半前の国立劇場での全段通しは2部構成1日公演だったが、今回は時間をかける分、国立文楽劇場としては初演となるの場面(桃井館力弥使者の段)の上演など、全段通しにふさわしく細部も忠実に公演するのは、本場大阪の矜持を感じて嬉しい。
Ⅰ部は全11段中大序から四段目・城明け渡しまで。
やはりこの最後の段は特別に厳粛だ。人の死がかくも丁寧・荘重に描かれる芝居は他に例がないのではないか?
主人の無念の切腹を受け、明け渡した城を後にする由良助は万感を胸に秘め、その想いは延々三味線だけで表されるが、最後に太夫が一声大きく「『はつた』と睨んで」と城を振り返る由良助の思いを叫んで幕となる。
心憎い幕切れである。
全体として、この話は、口にできぬ人の思いを阿吽の呼吸や腹で探り、受け止め、あるいは命に変えて伝えんとする、激しい情の交錯が見所だ。そのように受け止める時に、時代を超えて今にも通づる人の情けの美しさが胸を打つのだろう。
この後の段も楽しみだが果たして大阪まで遠征できるか。
余談:たこ焼き屋の隣の劇場はとてもナショナル・シアターとも思えぬ気取りの無さ。この味わいが嬉しいや。