2018年10月20日土曜日

神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2018 グランドオペラ共同制作 ヴェルディ:歌劇「アイーダ」

2018-10-20 @県民ホール


アンドレア・バッティストーニ:指揮
ジュリオ・チャバッティ:演出
マウリツィオ・ディ・マッティア:原演出

合唱:二期会合唱団
バレエ:東京シティ・バレエ団 ほか
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

アイーダ:モニカ・ザネッティン
ラダメス:福井敬
アムネリス:清水華澄
アモナズロ:今井俊輔
ランフィス:妻屋秀和
国王:ジョン・ハオ
巫女:針生美智子
伝令:菅野敦

ジュゼッペ・ヴェルディ「アイーダ」全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉/新制作
予定上演時間:約3時間25分
第Ⅰ幕45分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕50分
 --休憩20分--
第Ⅲ幕/第Ⅳ幕65分

分かり易い三角関係のドラマを軸に親しみやすい歌曲、スペクタキュラーな舞台、バレー(ソロと群舞)など、見どころ聴きどころ満載のオペラだ。

ただ、4月に新国立でゼッフィレッリ(演出・美術・衣裳)の「アイーダ」を観ているので、馬2頭まで登場する豪華絢爛な舞台と比較することはハナからできないとしても、舞台美術や衣装などがどこまで肉薄できるかが、関心の一つ。
特に、神奈川県民ホールは新国立劇場より間口が4m弱広いので、舞台装置が粗末だとスカスカの舞台になってしまう恐れがある。

実際の舞台を見て、その点はどうだったか、実はよく分からない。というのも、ピットから3列目のど真ん中で観たので、その位置からは見える舞台装置は十分に満足できるものだったから。後方、特に2階、3階席からはどんな感じだったのだろう。

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前奏が始まるやいなや幕が上がり、男女一組のバレエが始まった。これはアイーダとラダメスの運命を予感させるものだ。この演出はとても良かった。バレエの美しさはその後2幕でも堪能できる。

馬は登場しないが、凱旋の場面(2幕後半)では、アイーダトランペットが舞台上のギリギリ上手と下手に3人ずつ別れて陣取った。広い間口を活かした演出が功を奏していた。

幕内と第3幕〜第4幕の間の舞台転換は幕を下ろさず暗転したまま黒衣が登場して人力で大きな装置を動かしたが、これも気分を弛緩させることなくむしろ緊張を維持する上で良かったかもしれない。

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声楽陣はどうだったか。
タイトルロールのモニカ・ザネッティンを除いてみんな良かった。特にラダメス役の福井敬とアムネリス役の清水華澄が光っていた。清水華澄にとっては7年前、県民ホールで同役を歌うはずのところ、3.11で公演中止となったという因縁の舞台だった。
終演後のカーテンコールでは感極まって涙ながらにステージにひざまずいて床を撫でるようにしていたのは、それ自体が感動的だった。見事に県民ホールでアムネリスが凱旋を果たした訳だ。

肝心のザネッティンは残念ティンだったよ。
歌唱も表情も態度も、起伏に乏しく、アイーダの悲劇が伝わってこない。そういう演出なのかもしれないが、だとすれば、他の出演者とのバランスが取れない。
むしろ、日本人声楽陣の方が感情豊かだった。
これでは「アイーダ」というよりタイトルを「アムネリス」に変えた方がピッタリする。

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ピットに入ったのは東フィルだ。まあ、慣れたものなんだろう。とりわけ、バッティストーニは「アイーダ」は何度も経験しているそうだが、それにしても、全曲暗譜だったのには驚いた。

僕の席の前に2列あったが、県民ホールの席は前後で椅子の位置が半席分ずれているので、前席には人の頭が無い。最前列は空席だった(チケット完売だそうだが、気の毒に来れなかったらしい)。すると、目の前はバッティストーニのモジャモジャ頭だ。気合い十分な指揮ぶりだったが、肩から上しか見えないものの、スコアを捲っている様子は皆目見えない。それで、終演後、ピットの中の人に聞いたら、やはり完全暗譜だそうな。いやはやびっくり。正味2時間40分の大曲が全部頭に入っているとはすごいことだ。

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残念な部分もあったが、全体としては上出来。大いに楽しめた。とてもラグジュアリーな気分で帰路についたはいいものの、パラパラ降り出した雨が途中から本降りに。傘を持っていなかったのでずぶ濡れの「凱旋」となった。

♪2018-133/♪県民ホール-04