2016-01-23 @みなとみらいホール
トゥガン・ソヒエフ:指揮
ルーカス・ゲニューシャス:ピアノ*
NHK交響楽団
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」作品20(抜粋)
序奏
[第1幕] 第 1曲 情景
第 2曲 ワルツ(コール・ド・バレエ)
[第2幕] 第10曲 情景
[第1幕] 第 8曲 乾杯の踊り
[第2幕] 第13曲 白鳥の踊りー
Ⅳ 小さい白鳥の踊り
Ⅴ オデットと王子のパ・ダクシオン
[第3幕] 第20曲 ハンガリーの踊り:チャールダーシュ
第21曲 スペインの踊り
第22曲 ナポリの踊り
第23曲 マズルカ
[第4幕] 第28曲 情景
第29曲 情景・終曲
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アンコール*
ショパン:ワルツ 作品34-3
トゥガン・ソヒエフ(北オセアチア(ロシア連邦構成共和国)の出身)はまだ38歳だが、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団及びベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者であり、ボリショイ劇場の音楽監督の地位にあるって、なかなかすごいことなんだろうな。
今回の曲目はオールロシア・プログラムだ(N響定期1月Bプログラムと同じ。)。ソヒエフにとっては経歴からフランスものもドイツものも得意なんだろうけど、なんといってもロシアものには当然自信も親近感も持っているのだろう。
指揮ぶりはエネルギーを消耗するような派手な身振りはなく、堂々として、なにより楽しそうなのが見ていても感じがいい。
N響もこれに応えてえらく引き締まった演奏を聴かせてくれた。
如何に素晴らしかったかは、後述しよう。
ピアノのルーカス・ゲニューシャスは更に若く25歳。
チャイコフスキー&ショパンピアノコンクールの両方に入賞というから、腕前に不満なし。
と言ってみても、実際は、N響と共演するようなクラスの腕前は僕には区別がつかないのだけど。
さて、「ルスランとリュドミーラ」序曲が始まったすぐその時点で、大げさかもしれないが、息を呑んだ。
なんて、重厚なアンサンブルだ。
それに音圧がただならぬ大きさ。
それでいて歯切れがいい。
これはどうしたことか。
この曲に限って言えば、終始賑やかななので、弦の弱音の透明感を味わう場面はなかったが、とにかくグイグイ引っ張られる。
ラフマニノフのピアノ協奏曲の冒頭はピアノから始まる。重々しい全音符の和音に2分音符の低音部が追いかけるのだけど、その音の迫力のあること。これにも驚いた。
「白鳥の湖」も同様に弦が厚い。管もよく鳴る。
おかしい!
席は舞台後方P席の最前列中央で、手を伸ばせばティンパニーに届きそうな(到底届かないけどね。)場所なので、当然迫力はあるのだけど、この席は神奈川フィルの定期、読響の定期も1列後ろなだけでほとんど変わらないのだ。両オケのコンサートではこれほどの音圧を感じたことはない。わずか1列の差でかくも異なるとは思えない。いや、違いは音圧だけの問題ではない。
やはり、N響は良く鳴る。今日のN響は良く鳴っていた。
みなとみらいホールは残響が多すぎるように思っているけど、今日に限れば原音自体の鳴りがシャキッとしているので全然気にならなかった。
「白鳥の湖」ではハープに乗せてバイオリンのソロがあるが、両者の音が実にクリアに響いてくるのもまるで狐につままれた(実体験はないけど)ようだ。
多少残念だったのは、P席の悲しさ。楽器のバランスは悪い。
特にピアノは前方客席に向かっているので、ソロの時はさほど問題ない(特に今日は鳴りが良かった)けど管弦楽が強奏で入ってくると霞んでしまう。
しかし、それらを補って余りある管弦楽の重厚な響と明瞭な音楽のラインが、これまで耳にタコができるほど聴いているラフマニノフやチャイコフスキーの音楽が、まるでクリーニングしたように見違えるような、いや聴き違えるような新鮮さをもたらした。
特に、「白鳥の湖」は、あゝ、こういう音楽だったのか、という目からうろこ(耳から耳垢?)の驚きだった。
各パートが埋もれることなくはっきりと聴こえて、かつ互いに絡みあうアンサンブルの面白さが遺憾なく発揮されたのがその原因ではないかと思う。
ほぼ同じ場所でいつも聴いている他のオケと比べて、今日はN響の格違いの巧さを感じてしまったのが、悲しい。
♪2016-008/♪みなとみらいホール-03