2021-11-02 @国立劇場
並木宗輔=作
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) 二幕
国立劇場美術係=美術
序 幕 御影浜浜辺の場
二幕目 生田森熊谷陣屋の場
源義経 中村錦之助
梶原平次景高 中村松江
経盛室藤の方 中村児太郎
堤軍次 中村橋之助
亀井六郎 市村竹松
片岡八郎 市川男寅
伊勢三郎 中村玉太郎
駿河次郎 中村吉之丞
庄屋孫右衛門 中村寿治郎
番場の忠太 中村亀鶴
熊谷妻相模 片岡孝太郎
白毫の弥陀六 中村鴈治郎
実ハ弥平兵衛宗清
ほか
この演目の完成形を知らない。
『一谷嫰軍記( いちのたにふたばぐんき)』と言っても、一谷の合戦は描かれない(文楽版では全五段版を見たが、戦に出かけるところから演じられるのでこの芝居の隠された面白さが明らかになる。)。
多くの場合、戦が終わってからの「熊谷陣屋」だけ、それも冒頭部分がカットされて演じられるのが通例だ。
その「陣屋」の演じ方には芝翫型と團十郎型があるそうな。
いずれも何度も観ているが表札の扱いなどは違いが分かるが、細かい点まで覚えていないので大した違いではないと思う…。
芝翫型を正しく受け継ぐのが中村芝翫だ。
2016年の襲名披露興行でも演じた。
これも観たが、5年経過してうんと良くなったような気がする。分かり易い。それだけ観ている方も入魂できる。
●一つには「陣屋」の前に「御影浜」の場が置かれ、弥陀六<鴈治郎>が陣屋に登場する経緯などが明確になったこと。
●「陣屋」の冒頭に敦盛の母・藤の方<児太郎>が訪ねてきて直実の妻・相模<孝太郎>に匿われるという経緯が置かれる。
襲名披露版ではそこが省かれていたからお客にはなぜ藤の方がいきなり懐剣を持って奥の部屋から出てくるのかが分からなかった。
…と細かい工夫がなされて、成程納得。目から鱗。
芝翫は熱演!児太郎はこれまで随分観ているけど、今回の藤の方はとても良かった。
弥陀六の鴈治郎も強かさを秘め軽さもありで面白い。
一番感心したのは相模を演じた孝太郎だ。
この芝居の主人公は相模かもしれないなと思いながら観入った。
「敦盛」の首を抱えて悲痛な母の思いが胸を打つ。
これまでに観た「熊谷陣屋」の中では一番”筋”が通っていたこともあり、とても楽しめた。
しかし、残念なことに、初日だというのに客席はガラガラだった。