平成29年度(第72回)文化庁芸術祭主催
四世鶴屋南北=作
奈河彰輔=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 霊験亀山鉾<れいげんかめやまほこ>四幕九場
― 亀山の仇討 ―
序 幕 第一場 甲州石和宿棒鼻の場
第二場 同 石和河原仇討の場
第三場 播州明石網町機屋の場
二幕目 第一場 駿州弥勒町丹波屋の場
第二場 同 安倍川返り討の場
第三場 同 中島村入口の場
第四場 同 焼場の場
三幕目 播州明石機屋の場
大 詰 勢州亀山祭敵討の場
片岡仁左衛門⇒藤田水右衛門/古手屋八郎兵衛実は隠亡の八郎兵衛
中村歌六⇒大岸頼母
中村又五郎⇒石井兵助/石井下部袖助
中村錦之助⇒石井源之丞
片岡孝太郎⇒源之丞女房お松
中村歌昇⇒若党轟金六
中村橋之助⇒大岸主税
中村梅花⇒石井家乳母おなみ
片岡松之助⇒藤田朴庵/縮商人才兵衛
上村吉弥⇒丹波屋おりき
坂東彌十郎⇒掛塚官兵衛/仏作助
中村雀右衛門⇒芸者おつま
片岡秀太郎⇒石井後室貞林尼 ほか
実話を基にした敵討ちの話…というのは珍しくもないと思うが、この話は本懐を遂げるまでに相当な人数が返り討ちにされるという、普通の敵討ちとは逆の筋書きだ。
また、発端から敵討ちが成就するまでに28年を要したというのも実話だが、それだけ長い年数の物語でもある訳で、こちらも珍しいのではないだろうか。
かくして、怪談話ではないけど、暗いエピソードが繰り返されるので、「歌舞伎」の華やかな部分はまるで無い。新派などで演じてもおかしくない内容だし、役者が見得を切る部分も少なく、大向うからもあまり声はかからない。これはなかなか掛け辛いいだろう。
しかし、舞台劇としては見どころも多く、終盤に入って、本雨(ほんあめ)が舞台に降り注ぐ中での殺し合い、井戸を使った活劇、燃えている棺桶から悪党が飛び出すなど、飽きさせない。
この敵役こそこの作品の主人公で、これを仁左衛門が二役(早替わりも楽しめる。)で演ずるのだ。
元々渋い仁左衛門としては、この情け無用の悪党ぶりが板に付いて色っぽくさえある。
♪2017-159/♪国立劇場-15