2015-04-10 @歌舞伎座
●玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき)
山科閑居の場
大石内蔵助 扇雀
岡平
実は高村逸平太 染五郎
大石主税 壱太郎
医者玄伯 寿治郎
空念
実は武林唯七 亀鶴
妻およし 孝太郎
母千寿 東蔵
●六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)
〈遍照〉
僧正遍照 左團次
小野小町 魁春
〈文屋〉
文屋康秀 仁左衛門
〈業平小町〉
在原業平 梅玉
小野小町 魁春
〈喜撰〉
喜撰法師 菊五郎
祇園のお梶 芝雀
所化 團蔵
同 萬次郎
同 権十郎
同 松江
同 歌昇
同 竹松
同 廣太郎
〈黒主〉
大伴黒主 吉右衛門
小野小町 魁春
●玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう)吉田屋
劇中にて襲名口上申し上げ候
藤屋伊左衛門 翫雀改め鴈治郎
吉田屋喜左衛門 幸四郎
若い者松吉 又五郎
藤屋番頭藤助 歌六
おきさ 秀太郎
扇屋夕霧 藤十郎
「碁盤太平記」という演目があることは知っていたけど、これが所謂「忠臣蔵」の話とは知らなかった。大筋はこれまでにさんざ、映画、テレビなどで観てきたエピソードと同じだ。
大石内蔵助(扇雀)が吉良側を欺くために、遊興放蕩し、ついには、これを諌める妻(孝太郎)を離縁し、呆れる母(東蔵)からは勘当されてまでも、腹の中を隠し通そうとする。
吉良の家来・岡平(染五郎)は下僕に身を変えて大石に仕えながら彼らの動静を窺っていたが、字の読めないはずの岡平に手紙が届いたことから主税はその正体を見破り、若さゆえの短慮から、彼に斬りつけ、トドメを刺ささんとするところを内蔵助が押しとどめた。
内蔵助はとっくに岡平の正体を知りながら放置しむしろ陽動作戦に利用していたのだ。
しかし、主税が斬りつけたとあっては是非もない。
岡平に対し、吉良の身内なら屋敷の間取りを知っているだろうから、死ぬ前に教えてくれ、と虫のいいことを頼む。
頼まれた岡平は碁盤の上で碁石を並べて教えてから事切れる。
虫の息の岡平が吉良屋敷の間取りを教えるのは、実は岡平の親が浅野家家臣だったという理由だったか、大石親子の忠臣ぶりに情が移ったからか、ま、そんな理由があってのことなのだけど、この肝心な芝居に集中できずにいたものだから今や思い出せない。
筋書きを読めば思い出せる、あるいはそのものズバリの筋書きが書いてあったかもしれないが、終演後の飲み屋のはしごのどこかでカバンごと失くすという大失態。
それはともかく、NETで検索しても、「碁盤太平記」にはいくつかのパターンがあるらしい。
主役の名前が今回は「大石内蔵助」だったが、「碁盤太平記」の過去の上演記録では「由良之助」バージョンと「内蔵助」バージョンがあるようだ(後世、幾つもの忠臣蔵ものを集大成した「仮名手本忠臣蔵」では「大星由良之助」になっている。)。
名前の違いだけではなく、岡平の素性も、登場人物も若干異なる<あらすじ>が散見されるので、内容も少しずつ変化してきているのかもしれない、あるいは演出の違いなのか。
ま、ここはしかし、実の母や妻を欺かねばならない内蔵助や主税の心中と、斬られながらも死に際に大石親子の心中に共鳴する岡平の心の様をしっかり見届けなくてはいけなかったが、叙上の如く、岡平にはすまないことをした。
扇雀、染五郎の芝居は説得力があった。
さて、昼の部のメインは「廓文章 吉田屋」だ。
これは最近、テレビ録画で藤十郎の「伊左衛門」を観ていたのが良くなかったか。
四代目を襲名した鴈治郎がどんな風に演ずるのかという興味があったが、素人目にもどうも固い。
伊左衛門という男は、アホだけどにくめない人柄がとりえだと思うけど、それがいまいち出ていないように思う。
彼が惚れ込んだ夕霧はそんじょそこらにはお目にかかれないとびきりの才色兼備だ。そんな彼女でも商売抜きで心を寄せる、というにふさわしい伊左衛門の人柄がでなくちゃ、この話はアホらしいで終わってしまう。
そこがねえ。
ちょっと不足していたように思うよ。
夕霧が藤十郎で愛嬌振りまくのだもの、こっちのほうがずっと可愛い。
劇中口上では、芝居が面白おかしく口上につながって洒落ていた。
喜左衛門を演ずる幸四郎が紹介役なのだけど、貫禄十分!
♪2015/28 @歌舞伎座-02