2015-04-12 @NHKホール
セバスティアン・ヴァイグレ:指揮
ヨン・グァンチョル:バス*
NHK交響楽団
ベートーベン:交響曲 第6番 ヘ長調 作品68「田園」
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から
①前奏曲、②「それはほんとうか」*、③イゾルデの愛の死
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から
① 「親方たちの入場」、②ポーグナーのことば「あすは聖ヨハネ祭」*、③(第1幕への)前奏曲
N響とベートーベンの組合わせでは、時にびっくりさせられることがある。ジャナンドレア・ノセダ指揮の「運命」やロジャー・ノリントンの交響曲第7番(ほかベートーベン作品集)などは、これまでに聴いたことがない実に刺激的な演奏だった。
かと思えば、ネヴィル・マリナー指揮、セルゲイ・ハチャトゥリアンが独奏したバイオリン協奏曲は少しも刺激的ではなくて、つまりは堂々たる正統の音楽として好印象を残した。
何か特別の感慨を与えてくれそうなN響のベートーベン。
そんな期待を持って「田園」を聴いた。
でも、驚くようなことは何にもなかった。
相変わらず、弦・管の混ざり具合のきれいなこと。この透明感はやっぱり一流の音だと思う。まずはピッチに狂いがないからだろうな。その音を聴いているだけでも十分満足だが、その見事な響きを以ってたゆたう音楽「田園」を聴く幸せ。
ところで、ベートーベンはどうしてこれを5楽章形式にしたのだろう。
そこがまず変則なのに、第3楽章以降は途切れずに続けて演奏される(第3、第4楽章の終わりは音楽的にも小休止すらしていないから次に続けざるを得ない)ので、聴衆の耳には3楽章形式に聴こえる。これも大いに変則だ。
なぜこのように構成したのだろう?
…などと考えるともなく思いながらも、何の違和感もなく終曲に至った。これはこれでやっぱり必然形なのだろうと得心した。
交響曲がメインディッシュじゃないプログラムは珍しいけど、ワーグナーの楽劇からの抜粋が後半に据えられた。
ここで2つの楽劇が取り上げられ、いずれも各3曲ずつ。そのうち1曲はバスのヨン・ガンチョルという人の歌唱入りだった。
歌に馴染みはなかったけども管弦楽曲はよく聴いているものばかり。その馴染みのなかった歌も実に豊かな声量に驚きながら楽しめた。
「トリスタンとイゾルデ」の「前奏曲」と「愛の死」は通常は一体のものとして演奏されることが多いが、今回は、その中間部に「それは本当か」という歌が入ったので、別々の独立した作品として演奏された。
若い頃はこの曲のどこがいいんだと思っていた。牛の涎のように終わりの見えない無限旋律についてゆけなかったけど、今となると心地良いのは、やはり慣れによるのだろうか。
できたら、楽劇はどちらか1本に絞ってアリアの出番も増やしてくれた方が楽しめたし良い勉強になったのにと思う。
♪2015-30/♪NHKホール-03