2017年3月15日水曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)五幕七場

2017-03-15 @国立劇場


近松半二ほか=作
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)五幕七場

序幕    相州鎌倉 和田行家屋敷の場
二幕目 相州鎌倉 円覚寺方丈の場
      同    門外の場
三幕目 三州藤川 新関の場
      同    裏手竹藪の場
四幕目 三州岡崎 山田幸兵衛住家の場
大詰      伊賀上野 敵討の場 

唐木政右衛門⇒中村吉右衛門
山田幸兵衛⇒中村歌六
佐々木丹右衛門・奴助平⇒中村又五郎
和田志津馬⇒尾上菊之助
近藤野守之助⇒中村歌昇
捕手頭稲垣半七郎・石留武助⇒中村種之助
幸兵衛娘お袖⇒中村米吉
池添孫八⇒中村隼人
沢井城五郎・夜回り時六⇒中村吉之丞
和田行家⇒嵐橘三郎
沢井股五郎⇒中村錦之助
政右衛門女房お谷⇒中村雀右衛門
幸兵衛女房おつや⇒中村東蔵
ほか


2014年末公演の再演。その時に東京では1970年(国立劇場)以来だという「岡崎」の場を核とする芝居に再構成された。吉右衛門らの熱演で、この芝居は読売演劇大賞を歌舞伎として初めて受賞した。今回は若干構成を変えてあるがやはり、「岡崎」をクライマックスとする作りは同じで、しかも、同じ役者による(場面構成の違いによる配役や端役は異なっていると思うが。)、いわば凱旋公演だ。既に新聞などの劇評では一段と磨きがかかったと概ね好評なので観るのが楽しみだった。

場面構成の変更は、前回は第2幕は「大和郡山誉田家城中の場」だったが、これに代わって「相州鎌倉円覚寺方丈の場」、「同 門外の場」が置かれた。これによって話も鎌倉から伊賀への道順になって「道中双六」らしくなった。

見せ場は「岡崎」での愁嘆場だが、大義の為に敢えて妻子を犠牲にする苦悩の吉右衛門とこの上もない悲劇に見舞われる雀右衛門の葛藤が鬼気迫る。

前回も思ったが、吉右衛門が演ずる唐木政右衛門はとんでもない男だ。仇討ちのためにやむを得ないとは言え、まだ乳飲み子の我が子を刺殺し土間に放り投げるなど、これは納得できない。
残酷さを観るより、ギリシャ悲劇のような悲劇性を観て取るべしという高邁な解説も読んだが、乳飲み子の命より大切な仇討ちはなかろう、とつい思ってしまう。

この「岡崎」の場での政右衛門、否、吉右衛門の心中は極度の追い詰められ鬼と化すのだろう。

息子を殺してその直後に政右衛門の師匠が悪党を切り倒したのを見て褒める「まだお手の内は狂いませぬな、ハハハ〜」のセリフはやっぱりおかしい。この辺りを手直ししてはどうかと思うのだけどな。

米吉のお袖は今回も実にカワユイ!面白い。この悲惨な殺戮のドラマの中で一服の清涼剤だ。
菊之助は相変わらず男前で一段と磨きがかかったようだ。


♪2017-040/♪国立劇場-07