2015年10月16日金曜日

東京都交響楽団第796回 定期演奏会Bシリーズ

2015-10-16 @サントリーホール


ペーター・ダイクストラ(スウェーデン放送合唱団首席指揮者):指揮
クリスティーナ・ハンソン:ソプラノ
クリスティーナ・ハマーストレム:アルト
コニー・ティマンダー:テノール
ヨアン・シンクラー:バス

合唱:スウェーデン放送合唱団
東京都交響楽団

リゲティ:ルクス・エテルナ (1966)(無伴奏混声合唱)
シェーンベルク:地には平和を op.13 (混声合唱と管弦楽)
モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626 (ジュスマイヤー版)
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アンコール
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調 K.618(無伴奏混声合唱)


今夏、フェスタサマーミューザで十数年ぶり?に都響を聴いてあまりにもうまいのに驚いて、後期シーズンから会員になって今日が初めての定期演奏会だった。

とはいえ、この日のプログラムでは都響の管弦楽の魅力が十分発揮されるものとはいえないなあ、と内心はあまり期待せずにでかけたが、とんでもなかった。

リゲティという現代作曲家の作品は何度か聴いていて一度も面白いと思ったことはないのだけど、この日のトップバッター「ルクス・エテルナ」(永遠の光)という宗教曲は無伴奏混声合唱曲で、当然調性はなく、不協和音が主体だけど、時折協和的な和音らしきものが覗かせる。全体的にリズムを感じさせずひたすら音が流れて続けているが、最後は無音の7小節で終曲する。

「無音の7小節で締め括られる」とプログラムの解説に書いてあったが、それって何?と思うけど、確かに、最後に無音が必要な場合はある。
通常は指揮者が余韻として溜めている僅かな時間で、観客もこれを最後まで共有しようと努める。とても大切な無音の音楽とも言える。
リゲティはそれを指揮者に委ねず、自らが7小節と決めた訳だ。
そこまで演奏家を縛らなくともいいと思うけど、この不思議な音楽は嫌な感じはしなかった。

一つは、合唱団のレベルの高さもあったからだろう。
スウェーデン放送合唱団というのは、知らなかったけど、世界のトップアンサンブルなのだそうだ。
指揮者のペーター・ダイクストラはこの合唱団の首席指揮者でもあり、合唱指揮者としては相当名の売れた人らしい。

シェーンベルクの「地には平和を」は調性を持つらしいが(ニ長調の主和音で終わるらしいから、ニ長調という調性を持っているといえるのかな)、実際にはそれ(機能和声)は拡大されて、無調的な部分もある。というか、むしろ、ところどころに調性が感じられる。

この曲もリゲティの無伴奏曲と同じく明確なリズム感が全体を支えるということはなく、どちらかと言えば平板に流れてゆき、劇的緊張感には乏しかった。
作曲時は無伴奏合唱曲だったらしいが、あまりにも音取りが難しく歌手たちが歌えないこともあって、管弦楽伴奏部分が付けられたそうだ。

最後は、モーツァルトだ。
レクイエムは何度かナマで聴いているが、管弦楽も合唱団もおそらく、今回が一番小編成だった。

しかし、キビキビとしたアップテンポな指揮ぶりとボリューム感のある合唱団、そして小規模ながら透明感のある都響の管弦楽が本領を発揮して、実に聴き応えのあるレクイエムになった。

第4曲目に当たる「トゥーバ・ミルム」(驚くべきラッパ)はトロンボーンのソロで始まりその上にバス(声楽)ソロが重なるのだけど、いやこのトロンボーンの見事なこと。完璧なピッチコントロールだ。スライドトロンボーンなのにどうしてこうもツボがピタッと決まるんだろうと驚いた。こんなにきれいなトロンボーンソロを聴いたのも初めてだ。

とにかく、過去最高のレクイエムを聴くことができて、久しぶりに大満足のコンサートだった。


♪2015-103/♪サントリーホール-05