2017年5月31日水曜日

東京都交響楽団 第828回 定期演奏会Aシリーズ

2017-05-31 @東京文化会館


小泉和裕:指揮
東京都交響楽団
アブデル・ラーマン・エル=バシャ:ピアノ*

ベートーベン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 op.73《皇帝》*
シューマン:交響曲第2番ハ長調 op.61

終身名誉指揮者の小泉和裕のタクトでエル=バシャと組んだ都響が素晴らしい「皇帝」を聴かせてくれた。
<合奏=アンサンブル>の安定感はいつも感ずることだが、今回は、これにピアノ独奏が加わってもまったく揺るぎない合奏のお手本を聴いた気がする。

協奏曲であるからには、独奏とオケが何度も往来する。ピアノのフレーズが一段落してオケが流れを引き取る場合は、ピアノの最終強打が同時にオケのTuttiであることが多い。これが往々にして合わないものだ。ピアノが先んじて終結することが多い。

これは生演奏の勢いみたいなもので、たいていは許容範囲だ。協奏曲でなくとも盛上がったティンパニの打撃がオケとは僅かに前後することも少なからず。
が、しかし。エル=バシャとオケはピタッと合うのが凄い。
これは三者が同じ呼吸をしているからだ。

特に楽章の最後の強奏打撃の間隔は微妙にタメが入るものだ。測れないほど僅かにリズムの間合いが伸びることで終曲効果を高める。これがわざとらしいと興醒めだが、小泉師の間合いは絶妙で団員も飲み込んでいるのだろう。ピアノも微妙な間合いに完全合致。

なにもそんなところばかり聴いていた訳ではないが、独奏パートも見事で、力強く、それでいて歌うべきところはちゃんとテンポ・ルバートをかけて情感を表現しながら、尻をピタリと合わせる。
過去に聴いた「皇帝」の中で一番皇帝らしい威厳を備えていた。

シューマンの2番は、第1楽章冒頭、管と弦がバラバラでしっくり来ないのは、都響のせいではなかろう。ほかのオケで聴いたときも同じ不満を感じた。家でCDを聴いても同じだ。シューマンの情緒不安定のせいかオーケストレーションの不備ではないか。

開始から2分程で、急に霧が晴れたように音楽の輪郭が見えてくる。それ以降終曲までシューマンらしく迷走する浪漫が感じられて面白い。
この2番をマーラーが編曲しているそうで、神奈川フィル7月定期ではこの編曲版を使うという。どんな響か楽しみだ。

♪2017-095/♪東京文化会館-10

2017年5月29日月曜日

人形浄瑠璃文楽平成29年5月公演 第二部 加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)

2017-05-29 @国立劇場







































●加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)
 筑摩川の段 ⇒豊竹亘太夫/鶴澤清允
 又助住家の段⇒中:豊竹咲甫太夫/鶴澤清志郎
        奥:豊竹呂勢太夫/竹澤宗助
 
(人形役割)
鳥井又助⇒吉田幸助
加賀大領⇒吉田玉佳
近習山左衛門⇒桐竹勘次郎
女房お大⇒豊松清十郎
谷沢元馬⇒吉田勘彌
庄屋治郎作⇒吉田簑一郎
安田庄司⇒吉田文昇
ほかに吉田簑之・桐竹亀次・大ぜい

 草履打の段⇒竹本津駒太夫・豊竹睦太夫・
           豊竹希太夫・豊竹咲寿太夫・
       竹本小住太夫/鶴澤寛治
 廊下の段 ⇒豊竹咲甫太夫/竹澤團七
 長局の段 ⇒竹本千歳太夫/豊澤富助
 奥庭の段 ⇒豊竹始太夫・豊竹希太夫・
       竹本津國太夫・豊武亘太夫/野澤喜一朗

(人形役割)
中老尾上⇒吉田和生
局岩藤⇒吉田玉男
鷲の善六⇒吉田分哉
召使お初⇒桐竹勘十郎
安田庄司⇒吉田文昇
ほかに吉田玉勢・吉田玉誉・吉田玉輝・吉田紋吉・大ぜい

先日の第一部に続いて今日の第二部の演目が「かがみやまこきょうのにしきえ」とはなかなか読めない。
加賀藩お家騒動に忠臣蔵が合体したような筋書きだが、元々同じ素材を扱った異なる2つの作品を前半と後半に繋いだものらしい。

前半は忠義の又助とその一家滅亡の物語。忠義を貫こうとしたことが全て思惑外れて仇となる。浪人中の主人の帰参のために公金を使い込み、逆賊として敢えて討たれ、死に際に我が子を殺し、公金穴埋めに身売りした女房も自決。悲惨この上なし。

又助の物語だけでも見処多くかなり激しく動悸する。
前半が武家の表の話なら、後半は奥女中の話。主役は敵役の局・岩藤と彼女に疎まれる中老・尾上とその召使お初。岩藤に尾上が草履で叩かれる草履打の段が有名らしいが、もちろん初見参。

鶴岡八幡宮の華やかな舞台で繰り広げられる憎々しい岩藤と必死に堪える尾上のやり取りに目も心も釘付けになってしまう。人形とも思えぬ迫力。
岩藤が何故尾上を目の敵にするのかは、続く廊下の段で明らかになり、前半の話と僅かに繋がる。

長局の段は尾上の居室でのお初との会話劇。お初は草履打の件を知っており、忠臣蔵の塩谷の行動を引き合いに尾上の短慮をそれとなく諌めるが兼ねて覚悟の尾上には通ぜず事態は最悪の展開に。
この心理劇70分の長丁場。千歳太夫迫力の熱演。

使いを言い付けられたお初が妙な胸騒ぎに取って返すと尾上は既に自害し、傍にお家転覆の密書と遺恨の草履。お初はその草履と血の滴る尾上の懐剣を握りしめて奥庭にまっしぐら。出てきた岩藤めがけて斬りつける。この迫力に思わず息を呑む。

お初の手柄でお家騒動と女忠臣蔵の仇討ちが成就する。
芝居としての前半と後半の繋がりは誠に心細いが、一応繋がって、めでたしとなる。
いやはやこんなに激しい人間ドラマが文楽で演じられるとは知らなかった。奥が深い。止められぬ。

♪2017-094/♪国立劇場-09

2017年5月27日土曜日

読響第96回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2017-05-27 @みなとみらいホール


尾高忠明:指揮
読売日本交響楽団
グザヴィエ・ドゥ・メストレ:ハープ*

芥川也寸志:弦楽のための三楽章「トリプティーク」
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(ハープ版)*
ブラームス:交響曲第1番ハ短調 作品68
---------------
アンコール
ファリャ:「はかなき人生」からスペイン舞曲第1番*

遅刻していったので芥川作は聴けなかった。
アランフェス協奏曲は、珍しいことにオリジナルのギターに代わってハープが独奏だ。ハープと言えばアルペジオかグリッサンドと決まっている風だが、今回は当然ギターぽく演奏するので超大型ギターの如し。ハープにこんな音も出たのかと驚く。

ブラ1に関しては、ちょうど先週同じ場所でインキネン+日フィルで聴いたばかりで、その際の冒頭の溢れ出さんばかりの切迫感を聴かせるリズムに比べると、尾高師のテンポは熟成した正統派の貫禄を見せた。好みは前者だけど、こちらが本物かも。

ところで、ブラームスの4つの交響曲について、鑑賞記録を残している2013年以降で演奏会で聴いた回数を数えてみたら1番6回、2番10回、3番、4番各1回だ。全体の半数以上を2番が占めている。3、4番も名曲なのにオケはどうして取り上げてくれないのだろ。

♪2017-093/♪みなとみらいホール-22

2017年5月26日金曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第690回東京定期演奏会

2017-05-26 @東京文化会館


ワーグナー:楽劇《ニーベルングの指環》 
序夜「ラインの黄金」(演奏会形式/字幕つき)

ピエタリ・インキネン:指揮[首席指揮者]
演出:佐藤美晴
日本フィルハーモニー交響楽団

ヴォータン:ユッカ・ラジライネン
フリッカ:リリ・パーシキヴィ
ローゲ:ウィル・ハルトマン⇒西村悟
アルベリヒ:ワーウィック・ファイフェ
フライア:安藤赴美子
ドンナー:畠山茂
フロー:片寄純也
エルダ:池田香織
ヴォークリンデ:林正子
ヴェルクンデ:平井香織
フロスヒルデ:清水華澄
ミーメ:高橋淳⇒与儀巧
ファーゾルト:斉木健詞
ファフナー:山下浩司

サントリーが使えない間放浪している日フィル東京定期。今回は文化会館で演奏会形式「ラインの黄金」。ピットではなく舞台上に特大オケが所狭しと並んでいるのを見ると、サントリーじゃこれだけ並ばなかったのではないか。

4月に同じ場所で聴いたN響の「神々の黄昏」は素晴らしかったが、「黄昏」ではこんなにもオケの編成が大きかったろうか。また15年秋に新国立で「黄金」を聴いた時、ピットの中にはかくも大勢が収まっていたのだろうか。

何よりも、舞台上のオケの編成の大きさに目を奪われ、これから大変なものが始まるという高揚感で開幕を待った。
指揮は首席のP・インキネン。若いけど正統な熟練を感じさせて好感度大。聴いたのは初日。ローゲとミーメ役が体調不良で急遽交代した。


N響の「黄昏」でもジークフリート役が急遽交代した。まあ、その辺はちゃんと手当がしてあるのだろう。今回の日フィルでも、特にローゲ役は見事な歌唱力だった。もちろん、体調十分な各歌手も人間拡声器かと思うくらい訓練された美声を轟かせてた。

演奏会形式だから歌手がそれらしい衣裳を着用しているだけで舞台装置はない。しかし、今回は照明がとても凝っていて素晴らしく、各情景が照明だけでも十分想像できるのだ。それを踏まえた演出も良かった。
オケも音が明瞭にして繊細、時に爆音。

舞台のオケは演出効果のため終始暗かったが、そんな中で大編成のオケを仕切りまとめワーグナーの真骨頂を聴かせてくれたインキネンも日フィルも凄い。かつてメンデルスゾーンの「エリア」を演奏した日フィルが最高だと思っていたが、記録更新した。

事前のアナウンスは2時間半、休憩なし。実際はカーテンコールも含め2時間50分は座り続けたよ。そんなに長く耐えられるかという不安もあったが、なんて事もなく至福の2時間50分だった。

♪2017-092/♪東京文化会館-09


みなとみらいアフタヌーンコンサート ≪四季X四季≫新イタリア合奏団

2017-05-26 @みなとみらいホール


新イタリア合奏団

ピアソラ(デジャトニコフ編):ブエノスアイレスの四季
ビバルディ:バイオリン協奏曲集「四季」
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アンコール
ポッパー:ガヴォット
ゴルターマン:ラ・フォイ

新・イタリア合奏団というのはかつてのイタリア合奏団を21世紀に入って衣替えしたものだそうだ。結構有名だったのにSMAPみたいな事情があったのかな。
チェンバロと弦のみ12人の編成で、新旧の「四季」を2曲聴いた。


最初はピアソラの「ブエノスアイレスの四季」。その中の「夏」や「秋」は単独で、いろんな編成で聴いた事があるが全曲は初めてだった。もちろん今回のような編成も初めてだ。あまりタンゴっぽくなかったが、弦楽アンサンブルはきれいだ。


後半にビバルディの超有名なバイオリン協奏曲「四季」全4曲。みんなフツウに上手で、個人的には今や環境音楽みたいになっているので、不覚にも「夏」の途中から夏休みに入ってしまった。
でもアンコールはしっかり聴いたよ。

ビバルディの「四季」と言えば、一昨年の熱狂の日で聴いたA・M・スタシキェヴィチが独奏Vnで指揮振りしたポーランド室内管弦楽団の演奏が忘れられない。あの格闘技のような手に汗握る「四季」をもう一度聴いてみたいものだ。

♪2017-091/♪みなとみらいホール-21

2017年5月25日木曜日

N響午後のクラシック第2回

2017-05-25 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ウラディーミル・フェドセーエフ:指揮
NHK交響楽団
ボリス・ベレゾフスキー:ピアノ*

ショスタコーヴィチ:祝典序曲 作品96
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 作品23
リムスキー・コルサコフ:スペイン奇想曲 作品34
チャイコフスキー:幻想曲「フランンチェスカ・ダ・リミニ」作品32
------------------
アンコール
ハチャトゥリアン:バレエ組曲「ガイーヌ」から「レズギンカ舞曲」

指揮フェドセーエフ、Pf独奏ベレゾフスキーというロシア人コンビで全4曲ロシアもの。なら、チャイコ2曲ではなくてボロディンなどに入れ替えて4人4曲の方が良かったかなと思ったり…。
4月の出来がぴりっとしなかったので不安な船出。

ところがどっこい。先月のN響はN響ではなかったのかと思うくらい格段に違う。ショスタコ、チャイコ、コルサコフ、いずれも大規模で派手な管弦楽技法。ロシアの哀愁。加えてフェドセーエフのカリスマがN響のやる気と巧さを引き出した。

唯一初聴きの「フランチェスカ〜」の冒頭には驚いた。地獄の様を描いたそうだが正に不気味さ甚だしい強烈な音響はかつて耳にしたことがない。管・弦の低域が銅鑼も加わって唸るように響いたのはどうやら減七和音らしい。生でこそ聴ける音だ。

ベレゾフスキーの貫禄十分なPf協奏曲も楽しめた。ピアノのテンポが良すぎてオケの先を走るんじゃないかと心配したが、フレーズの頭ではきちんと揃う。そのうち、指揮者ともども三者が一体となってオケとのやり取りも自然に。豪快な演奏也。

本篇だけでも満足したが、万雷の拍手歓声に応えたアンコールがやはりロシアのハチャトゥリアン:レズギンカ舞曲。この調子の良い音楽に会場全体が気持ち良く乗せられた。この場限りではあっても全ての憂さを吹き飛ばずフェドセーエフの魔法。


♪2017-090/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-09

2017年5月21日日曜日

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第60回

2017-05-21 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ジョナサン・ノット:指揮
東京交響楽団
小曽根真:ピアノ*

モーツァルト:ピアノ協奏曲第6番変ロ長調 K238*
ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調 WAB105(ノヴァーク版)
----------------
アンコール
小曽根真:My Witch's Blue*

ジャズとクラシックの二股かけて人気の小曽根真を独奏に迎えたモーツァルトのPf協6番とブルックナーの5番という組合せ。80分近い後者だけでも十分だと思うけど、それでは定期会員外のお客様を呼べないからかも。ともかく、ほぼ満員の盛況だった。

モーツァルトのPf協は番号付きだけでも27曲も。全曲を数回は聴いているが、番数1桁はほぼ区別がつかぬ。10番台には多少覚えがあり、20番以降で馴染みが登場する。ので6番は初めてまともに向き合った。でも、小曽根の本領はアンコールだった。

ブルックナー5番。この人の作品を若い頃は避けていた。彼の音楽を聴き通す時間があれば他の音楽を聴きたい。
が、近年ようやく「長いだけが能」ではないな、と好感しつつあるところだ。しかし、今日は演奏の上出来にもかかわらず、入魂できなかった。

今季から席を変えて2階から1階に降りた。より一層強い音圧に塗れて音楽に没入したいからだ。その点は期待どおりだったが、前席のオヤジがデカイ!視界を遮られて鬱陶しい。彼も定期会員ならこの悲劇が1年続く…と思うとなかなか没入できなかった。

余談だが、帰宅後モーツァルトピアノ協奏曲全27曲の第1楽章冒頭だけ聴いてみた。♪♬♫のリズムで始まる作品が多い(7、13、16、17、18、19)のを発見。短調は20、24だけだし、これじゃ紛らわしいはず。

♪2017-089/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-08

2017年5月20日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第327回横浜定期演奏会

2017-05-20 @みなとみらいホール


ピエタリ・インキネン:指揮[首席指揮者]
日本フィルハーモニー交響楽団
田村響:ピアノ*

リスト:交響詩《レ・プレリュード》S.97
リスト:ピアノ協奏曲第1番変ホ長調 S.124*
​【ブラームス・ツィクルスⅢ】
ブラームス:交響曲第1番 Op.68
-------------
アンコール
ショパン:華麗なる大円舞曲 作品34-1*
ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番ト短調

ブラームス・チクルスの最後、といってもブラは交1番だけ。ここは全作品ブラームスで組んで欲しかったね。
演奏は良かった。前回の交響曲2番は残念な出来だったが、今回の1番は同じ指揮者、オケとも思えない上質な管弦楽を聴く愉しさ。

ブラームスが好きになったきっかけは、多くの人もそうだと思うけどこの交響曲1番だ。冒頭からティンパニーの8部音符が73回連打され、その上に抑圧された情感が管・弦でうねっている。正に青春だ。ここで惹き込まれない訳にはゆかぬ。

ブラームスの音楽は交響曲4曲のほか、多くの作品が溢れそうな思いをギリギリ自制しているところに共感を覚える。これは知性の賜物で、聴く側にもそれを求められ、そこに自分の心がシンクロできた時に感動が生まれるのではないか。

♪2017-088/♪みなとみらいホール-20

2017年5月19日金曜日

平成29年度5月中席 落語協会真打昇進披露公演

2017-05-19 @国立演芸場


落語 柳亭市朗⇒子ほめ
落語 三遊亭わん丈⇒新ガマの油
落語 三遊亭金八⇒手紙無筆
曲芸 翁家社中
落語 三遊亭金時⇒七段目 
落語 林家木久扇⇒彦六伝
<仲入り>
真打昇進披露口上
漫才 ホンキートンク
落語 三遊亭金馬⇒孝行糖
奇術 アサダ二世
落語 三遊亭時松改メ三遊亭ときん⇒お見立て

今月の中席は落語協会の5人の真打昇進披露公演だった。
あちこちの寄席で順番に披露公演を済ませ、国立演芸場が最後の舞台だったようだが、披露されるのは1日に1人ずつで、今日は三遊亭金時の弟子の時松改メ三遊亭ときんの披露だった。

真打昇進したばかりじゃ芸はまだまだ。
むしろ関心の第一は三遊亭金馬師匠だ。落語界最長老なのかな。「お笑い三人組」もはるか昔のこと。流石に無駄に歳とっていない。淡々として巧い。その点、林家木久扇は相変わらずちっともうまくない。


2017-087/♪国立演芸場-08

2017年5月17日水曜日

オペラ:「ジークフリート」ハイライトコンサート ―邦人歌手による―

2017-05-17 @新国立劇場


オペラ:ワーグナー「ジークフリート」ハイライトコンサート全3幕
〈ドイツ語上演/字幕付〉

城谷正博:指揮
エレクトーン:西岡奈津子&小倉里恵
パーカッション:高野和彦&古谷はるみ

ジークフリート:今尾滋
ミーメ:青地英幸
さすらい人:大塚博章
アルベリヒ:友清崇
ファフナー:志村文彦
エルダ:石井藍
ブリュンヒルデ:橋爪ゆか
森の小鳥:三宅理恵


6月の本公演を前にした特別企画で、邦人歌手によるハイライト版。中劇場での公演。
オケピの中には指揮者のほかにエレクトーン2台、ティンパニ2組を含むパーカッション2人。ところがこの4人オケが素晴らしいのにまずはびっくり。

長らくエレクトーンの音を聴いていなかったが、楽器も進歩しているのだろうな。もちろん何より2人の奏者の腕前を褒めるべきだろう。編曲も素晴らしく、僅か4人でも大編成のオケと錯覚する音量と響きだ。ティンパニの2組も大活躍。

本篇は正味4時間位のところ、今回は上手に端折ってあって、ほとんど違和感ないまま正味2時間の短縮版だった。
舞台装置は簡素だったが不満はない。何しろ、ワーグナーの音楽がオケもそれらしく、歌もナマで聴けるのだから。

歌手のレベルは分からないが、既にオペラの舞台経験を積んだ人達で素人の耳には驚くばかりに上手だ。特にタイトルロールやブリュンヒルデなど歌いきるのも容易ではない難役のようだが見事だった。
6月、10月の本公演が楽しみだ。

♪2017-086/♪新国立劇場-5

2017年5月16日火曜日

都響定期B831回

2017-05-16 @東京オペラシティコンサートホール


マーティン・ブラビンズ:指揮
東京都交響楽団

バターワース:青柳の堤
ティペット:ピアノ協奏曲(1955)*
ヴォーン・ウィリアムズ:ロンドン交響曲(交響曲第2番)

いずれも英国人≪指揮(M・ブラビンズ)、Pf独奏(S・オズボーン)≫による20世紀英国人作曲家の作品集≪バターワース:青柳の堤、ティペット:Pf協奏曲⇒日本初演、V・ウィリアムズ:ロンドン交響曲≫だった。全て初聴きだが違和感無し


3曲とも調性を持ち英国民謡を基礎にしてどこか懐かしさも。
それにアンサンブルに安定感がある。巧いと思わせてくれる。
先日のN響の「わが祖国」の第1曲には落胆したが、都響ならもっときちんとした音楽になっていたのではないかと思ったよ。

今日のコンサートで、盲導犬を連れた人が近くに座った。
そのワンちゃん、2時間の間、ご主人の座席の下にしゃがみこんだまま微動だにせず一声も発しない。
音楽よりもむしろこのワンちゃんに感動したよ。
ネコは何の役にも立たないし絶対になつかないので可愛くないけど犬は本当に賢くて立派だワン!

♪2017-085/♪東京オペラシティコンサートホール-02

人形浄瑠璃文楽平成29年5月公演 第一部 豊竹英太夫改め六代豊竹呂太夫 襲名披露

2017-05-16 @国立劇場


●寿柱立万歳 (ことぶきはしらだてまんざい)
 竹本三輪太夫・竹本津國太夫・竹本南都太夫・竹本小住太夫・竹本文字栄太夫/
 鶴澤清馗・鶴澤清丈ほか

(人形役割)
太夫⇒桐竹紋臣
才三⇒吉田清五郎

●菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
 茶筅酒の段⇒豊竹芳穂太夫/鶴澤清友
 喧嘩の段⇒豊竹咲寿太夫/豊澤龍爾
 訴訟の段⇒豊竹靖太夫/野澤錦糸
 桜丸切腹の段⇒竹本文字久太夫/鶴澤藤蔵


(人形役割)
親白太夫⇒吉田玉也
百姓十作⇒吉田勘市
女房八重⇒吉田簑二郎
女房春⇒吉田一輔
女房千代⇒桐竹勘十郎
松王丸⇒吉田玉男
梅王丸⇒吉田幸助
桜丸⇒吉田簑助

豊竹英太夫改め 六代豊竹呂太夫
襲名披露 口上

 寺入りの段⇒豊竹呂勢太夫/鶴澤清治
襲名披露狂言
 寺子屋の段⇒前:豊竹英太夫改め豊竹呂太夫/鶴澤清介
       切:豊竹咲太夫/鶴澤燕三


(人形役割)
よだれくり⇒吉田玉翔
菅秀才⇒桐竹勘介
女房戸浪⇒桐竹勘壽
女房千代⇒桐竹勘十郎
一子小太郎⇒吉田簑太郎
下男三助⇒吉田玉彦
武部源蔵⇒吉田和生
春藤玄蕃⇒吉田分司
松王丸⇒吉田玉男
御台所⇒吉田簑紫郎
ほかに大ぜい

菅原伝授手習鑑は歌舞伎で観る機会が多いが、大抵「車曳き」か「寺子屋」の段と決まっているからイマイチ面白さが伝わって来なかったが、今月の興行は茶筅酒の段、喧嘩の段、訴訟の段、桜丸切腹の段、寺入りの段、寺子屋の段とたっぷり!

これで話が繋がって、成る程面白い。
3つ子で産まれた3人兄弟が菅公を取り巻き敵味方に分かれて育つ中で絡み合う悲劇。
寺子屋はそのクライマックスだが、前半に手習いに来ている小僧達が思いがけずに面白い。

落書きや墨を掛け合う等子供らしいリアルな悪戯に満場爆笑。
それだけに後段我が子を犠牲にする松王丸夫婦の悲哀が際立つ。

白装束の夫婦が息子の骸を墓に送る終盤の詞章が凝った作りで、いろは歌をなぞりながらこの悲劇に幕を降ろす。


♪2017-084/♪国立劇場-08

2017年5月14日日曜日

N響第1860回 定期公演 Aプログラム

2017-05-14 @NHKホール


ピンカス・スタインバーグ:指揮
NHK交響楽団

スメタナ:交響詩「わが祖国」(全曲)

12年ぶりにN響を振るピンカス・スタインバーグで「わが祖国」全6曲演奏会。
まず、第1曲がしっくり来ない。ハープ2台の前奏に木管・ホルンが重なるところがなんかたどたどしくて、スメタナって、オーケストレーションが下手だなと思ったよ。

その第一印象のせいで第2曲以外はどれを聴いても空疎な響き。第2曲モルダウのみが偏重されるのはやはり、全体の出来が良くないからではないか…などと素人が大胆な発言だが…。N響の演奏も第2曲以降は良くなってきたもののカタルシス得られず。

2017-083/♪NHKホール-04

2017年5月13日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第329回

2017-05-13 @みなとみらいホール


児玉宏:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

ブルックナー:交響曲第8番(1887年第1稿ノヴァーク版) 

ブルックナー8番。見事だった。児玉+神奈フィルのコンビのブルックナーは前に4番を聴いたが、その時とは雲泥の差。
神奈フィルが8番を演奏するのは初めてだったそうだ。そのせいか、リハーサルもよほど念入りにやったのだろう。

指揮者と団員が音楽で同じ呼吸をしていた。縱横のアンサンブルが小気味よく、細部まで気合が入っているのを感じた。
ブルックナーはマーラーのような外連味に乏しいが、今日の神奈フィルはブルックナーの魅力を十分引き出してくれた。


♪2017-082/♪みなとみらいホール-19

2017年5月11日木曜日

團菊祭五月大歌舞伎 七世尾上梅幸二十三回忌 十七世市村羽左衛門十七回忌追善

2017-05-11 @歌舞伎座


初 代坂東楽善
九代目坂東彦三郎 襲名披露狂言
三代目坂東亀蔵
六代目坂東亀三郎 初舞台

一 壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん )
  〜劇中にて襲名口上申し上げ候
工藤祐経⇒菊五郎
曽我五郎⇒亀三郎改め彦三郎
近江小藤太⇒亀寿改め坂東亀蔵
八幡三郎⇒松也
化粧坂少将⇒梅枝
秦野四郎⇒竹松
鬼王家臣亀丸⇒初舞台亀三郎
梶原平次景高⇒橘太郎
鬼王新左衛門⇒権十郎
梶原平三景時⇒家橘
大磯の虎⇒萬次郎
曽我十郎⇒時蔵
小林朝比奈⇒彦三郎改め楽善
     
二 伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
〈御殿〉
乳人政岡⇒菊之助
八汐⇒歌六
沖の井⇒梅枝
松島⇒尾上右近
栄御前⇒魁春

〈床下〉
仁木弾正⇒海老蔵
荒獅子男之助⇒松緑

〈対決・刃傷〉
細川勝元⇒梅玉
山名宗全⇒友右衛門
大江鬼貫⇒右之助
黒沢官蔵⇒九團次
山中鹿之助⇒廣松
渡辺外記左衛門⇒市蔵
渡辺民部⇒右團次
仁木弾正⇒海老蔵
     
戸崎四郎 補綴
三 四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり )

〈神功皇后と武内宿禰〉
〈三社祭〉
〈通人・野暮大尽〉
〈石橋〉

武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精⇒松緑
神功皇后/善玉/通人/獅子の精⇒亀寿改め坂東亀蔵

坂東家の襲名披露(楽善←彦三郎←亀三郎/亀蔵←亀寿/新・亀三郎初舞台)も兼ねていたせいか、どの演目も熱気があった。
特に「寿曽我対面」は初めてこの芝居の面白さが分かった気がする。血気にはやる五郎役の彦三郎の気合がいい。

十郎・五郎を彦三郎・亀蔵の実兄弟で演ずるのかと思い込んでいたが、十郎役は時蔵だった。菊五郎の祐経に対峙するには時蔵の貫禄が必要なのかも。

終盤に彦三郎(前亀三郎)の長男、新・亀三郎が登場し館内どよめく。まるで福助人形の如く可愛い。
基本的に、芸以前のちびっこには興味ないのだけど、この子に限っては、昼の部に強力ライバルの初お目見えもあって、ちょいと影が薄いが、ご本人はなかなか立派なお勤めぶり。その健気さに心打たれた。こういう子供達を応援するのも歌舞伎観客の勤めだものなあ。

「伽羅先代萩」。今回は「御殿〜刃傷」で見応えあり。
前半は政岡の菊之助、後半は勝元の梅玉と仁木弾正の海老蔵が見せる!
菊之助は、さあ、どうだったか。あまり情感が伝わってこなかったな。海老蔵は見る度に痩せてゆくような気がするが、目力は怖いほどだ。
最後、松緑と亀蔵で「石橋」の2人獅子が見事な美しさ。
<舞台写真は松竹のホームページから>


♪2017-81/♪歌舞伎座-03

2017年5月7日日曜日

ミューザ川崎ホリデーアフタヌーンコンサート2017前期 ≪輝けるテノール≫錦織健テノール・リサイタル

2017-05-07 @ミューザ川崎シンフォニーホール


錦織健:テノール
金井信:ピアノ

日本古謡:さくらさくら
大中寅二:椰子の実
服部良一:蘇州夜曲
山田耕筰:来るか来るか、この道、松島音頭、からたちの花
瀧廉太郎:荒城の月
小林秀雄:落葉松
菅野よう子:花は咲く
ドニゼッティ:私は家を建てたい
トスティ:マレキアーレ
ティリンデッリ:おお春よ
プッチーニ:誰も寝てはならぬ(トゥーランドット)
フロトー:夢のごとく(マルタ)
ドニゼッティ:人知れぬ涙(愛の妙薬)
クルティス:忘れな草
ショパン:別れの曲
ラカジェ:アマポーラ
ララ:グラナダ
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アンコール
〈ピアノ・ソロ〉
Shall we go?
哀愁のノクターン
〈テノール+ピアノ〉
カプア:オー・ソレ・ミオ
QUEEN:Love of my life、愛しのラヴァーボーイ
B.Andersson & B.Vlvaeus:thank you for the music

睡眠不足で出かけたが、前半日本歌曲その第一声「さくら」の<さ〜>で一瞬に完全覚醒した。なんという輝く声、そして大ホールに響き渡る豊かな声量。
これまでに「第九」等声楽付き管弦楽の独唱者としては何度も聴いていたがソロリサイタルは初めてでその実力、魅力を思い知った。

後半はイタリア歌曲とアリア集。日本歌曲の美しさにシミジミしていたが本領は後半だった。いずれも素晴らしくドミンゴも青くなりそうな「サンタルチア」など可笑しくて美しい。
曲間の軽妙なトーク。舞台後方席や側方席の観客にも心遣いのエンターティナーぶり。

伴奏ピアノは錦織に八王子のダ・ヴィンチと紹介された金井信。渾名のとおり才人で、演奏も見事だが作・編曲家であり東京藝大声楽科卒で歌も上々。本篇とアンコールでピアノを弾きながら錦織とのデュエットも素晴らしかった。最高に楽しいリサイタルだった。


♪2017-080/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-07