2017年5月29日月曜日

人形浄瑠璃文楽平成29年5月公演 第二部 加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)

2017-05-29 @国立劇場







































●加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)
 筑摩川の段 ⇒豊竹亘太夫/鶴澤清允
 又助住家の段⇒中:豊竹咲甫太夫/鶴澤清志郎
        奥:豊竹呂勢太夫/竹澤宗助
 
(人形役割)
鳥井又助⇒吉田幸助
加賀大領⇒吉田玉佳
近習山左衛門⇒桐竹勘次郎
女房お大⇒豊松清十郎
谷沢元馬⇒吉田勘彌
庄屋治郎作⇒吉田簑一郎
安田庄司⇒吉田文昇
ほかに吉田簑之・桐竹亀次・大ぜい

 草履打の段⇒竹本津駒太夫・豊竹睦太夫・
           豊竹希太夫・豊竹咲寿太夫・
       竹本小住太夫/鶴澤寛治
 廊下の段 ⇒豊竹咲甫太夫/竹澤團七
 長局の段 ⇒竹本千歳太夫/豊澤富助
 奥庭の段 ⇒豊竹始太夫・豊竹希太夫・
       竹本津國太夫・豊武亘太夫/野澤喜一朗

(人形役割)
中老尾上⇒吉田和生
局岩藤⇒吉田玉男
鷲の善六⇒吉田分哉
召使お初⇒桐竹勘十郎
安田庄司⇒吉田文昇
ほかに吉田玉勢・吉田玉誉・吉田玉輝・吉田紋吉・大ぜい

先日の第一部に続いて今日の第二部の演目が「かがみやまこきょうのにしきえ」とはなかなか読めない。
加賀藩お家騒動に忠臣蔵が合体したような筋書きだが、元々同じ素材を扱った異なる2つの作品を前半と後半に繋いだものらしい。

前半は忠義の又助とその一家滅亡の物語。忠義を貫こうとしたことが全て思惑外れて仇となる。浪人中の主人の帰参のために公金を使い込み、逆賊として敢えて討たれ、死に際に我が子を殺し、公金穴埋めに身売りした女房も自決。悲惨この上なし。

又助の物語だけでも見処多くかなり激しく動悸する。
前半が武家の表の話なら、後半は奥女中の話。主役は敵役の局・岩藤と彼女に疎まれる中老・尾上とその召使お初。岩藤に尾上が草履で叩かれる草履打の段が有名らしいが、もちろん初見参。

鶴岡八幡宮の華やかな舞台で繰り広げられる憎々しい岩藤と必死に堪える尾上のやり取りに目も心も釘付けになってしまう。人形とも思えぬ迫力。
岩藤が何故尾上を目の敵にするのかは、続く廊下の段で明らかになり、前半の話と僅かに繋がる。

長局の段は尾上の居室でのお初との会話劇。お初は草履打の件を知っており、忠臣蔵の塩谷の行動を引き合いに尾上の短慮をそれとなく諌めるが兼ねて覚悟の尾上には通ぜず事態は最悪の展開に。
この心理劇70分の長丁場。千歳太夫迫力の熱演。

使いを言い付けられたお初が妙な胸騒ぎに取って返すと尾上は既に自害し、傍にお家転覆の密書と遺恨の草履。お初はその草履と血の滴る尾上の懐剣を握りしめて奥庭にまっしぐら。出てきた岩藤めがけて斬りつける。この迫力に思わず息を呑む。

お初の手柄でお家騒動と女忠臣蔵の仇討ちが成就する。
芝居としての前半と後半の繋がりは誠に心細いが、一応繋がって、めでたしとなる。
いやはやこんなに激しい人間ドラマが文楽で演じられるとは知らなかった。奥が深い。止められぬ。

♪2017-094/♪国立劇場-09