2022年12月28日水曜日

「第九」2022-⓬ 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団「第九」特別演奏会2022

2022-12-28 @東京文化会館



飯守泰次郎:指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
東京シティ・フィル・コーア

ソプラノ:田崎尚美
メゾ・ソプラノ:金子美香
テノール:与儀巧
バリトン:加耒徹

ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125



例年は12月27日のN響@サントリーで聴き納めするけど、今年は1日延ばした。
飯守泰次郎の「第九」を聴きたかったから。
果たして、なんと幸福感に満ちた演奏会。
N響にはガッカリだったが、これを最後に入れておいて大正解だった。
会場が文化会館というのも良かった。

オケは弦14型!驚く事に今年12回目にして初めてこの編成で聴く。
因みにこれまで聴いた編成は10型-1、16型-2、12型-8。
そして今日の14型だ。

この編成はベートーベンが「第九」を初演した時の編成だと聞く。
この位でちょうどいいのだと思うよ。

さらに嬉しいことに、独唱者が舞台の前方に陣取った。これがコロナ前の標準形だ。

よくぞやった飯守「第九」!
このスタイルを、東京で一番好きな文化会館で聴けるとは!
なんだか、古き良き時代を思い起こさせる。

テンポはどの楽章もゆっくり目。4楽章の入りは4秒しか置かなかった。
それでも全曲72分37秒と昨日最長を更新した井上+N響を更新して12オケ中の最長だった。

しかし、モタモタしていた訳ではないのだ。
すべて自然に流れて、全く外連のない、妙な独自性も発揮しない、もう枯れて出来上がって、寸分変わらない鉄壁の「第九」だった。もちろん暗譜で。

オケもよく期待に応えて、スムーズに流れた。リスクポイントも難なく(完璧!とは言わないが)クリア。

独唱も、舞台前方に立っているのでP席や舞台最後部から聴こえてくるものとは異なって生々しい!

アマ合唱団はMaskで歌ったので発音不明瞭な部分もあったが、行進曲前のソプラノの絶叫も許容範囲。

心配は、飯守御大の足腰がだいぶ弱ってこられたことだ。入退場は戸澤氏ほかが腕を支えた。
2楽章途中からは座ったきりだった。

そういう姿を見て、N響とブロムシュテット翁の印象が重なった。
師弟愛というか、指揮者とオケの間は信頼と敬愛で結ばれている。
きっとそれが、良い演奏をもたらし、心温まる演奏会にしたのだろう。久しぶりに至福の時を過ごした。

演奏好感度★98点

♪2022-207/♪東京文化会館-15

2022年12月27日火曜日

「第九」2022-⓫ かんぽ⽣命 presents N響「第九」Special Concert

2022-12-27 @サントリーホール



井上道義:指揮
NHK交響楽団
新国立劇場合唱団/東京オペラシンガーズ

オルガン : 勝山雅世*

ソプラノ:クリスティーナ・ランツハマー
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
テノール:ベンヤミン・ブルンス
バス:ゴデルジ・ジャネリーゼ

ダカン:ノエル集 作品2-第10曲「グランジュとデュオ」ト長調*
ラインケン:フーガ ト短調*
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ハ長調 BWV545*

ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125



井上道義最後になるかもの「第九」だったが、昨日の都響と似たような展開。

弦は16型。合唱・独唱はP席。独唱はP席最前列で。

●声楽の問題
この結果、昨日同様、独唱が弱い。本来は、4人の絡みも楽しみなのだけど。
中で1人バリトンだけがよく通る声を張り上げていた。
先月の新国オペラ「ボリスゴドノフ」のピーメン役だった。今日の方が断然いいが。

この4人が、何故か楽譜を持って立った。
中で世界のメゾだけが1人、楽譜を広げず歌った。それも変だが。

●第1楽章はとても遅く、3楽章もやや長めだった。
が、テンポ設定に違和感なし。
ただ、3楽章Hrソロは独自過ぎて違和感。

3楽章から4楽章の入りはホンの半呼吸。2秒と待たず。

●4楽章に入ってからは問題続出
低弦のレシタティーヴォがピシッとしない。都響も同様だったが、18人もが同じ音符を弾くのだ。それも歌うように!
ところが呼吸が合っていなかった。だから揃わない。

前楽章の否定が終わって歓喜の歌だが、歌うのは専らコントラバスで、チェロはそっとなぞるだけ。音は出てた?
その延長上に、僕が全曲中一番美しいと思っているビオラとチェロ、コントラバスが歌いファゴットが装飾する絡みの妙もビオラの音色が引き立たず。イマイチ。

マーチに入ると、なぜかピッコロが打楽器の隣、下手最後列客席側に立って吹いたので、これがウルサイのなんのって、まるでピッコロ協奏曲の如し。こんな「第九」は聴いた事がない。トルコの行進曲風にというアイデアだったらしいが、独自すぎる!

全曲は71分10秒で秋山「第九」を僅かに超えて最長だった。
ま、長さは構成感が良ければどうでもいい。
その点に関しては、好みには合っていたのだけどな。

今回は、16型で演るにはミッキー流の独自色が強過ぎて一部に消化不良が。
ざわつきが目立つのはホールの消化不良もあるのかもしれないが。

演奏好感度★80点

♪2022-206/♪サントリーホール-24

2022年12月26日月曜日

「第九」2022-❿ 都響スペシャル「第九」

2022-12-26 @サントリーホール



エリアフ・インバル:指揮
東京都交響楽団
二期会合唱団

ソプラノ:隠岐彩夏
メゾソプラノ:加納悦子
テノール:村上公太
バス:妻屋秀和

ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125


今日迄に第九を聴いた全10オケに於ける都響の特異点は
●弦編成が16型(都響はワケ*あって協奏曲でもない限り大抵16型。「運命」でも16型でやるオケだから今更驚きもしないが、他のオケは10型-1、12型-8で、14型さえ0だった)。
合唱は66名とこじんまりしているのに?

その結果、分厚いが第1バイオリン-第2バイオリン-ビオラの弾き分け(旋律のやり取り等)が不明瞭に。 

●テンポが速い。
今季10オケで、
第1楽章が15分を切ったのは初めて。因みに遅い代表は秋山「第九」で16分34秒。
第2楽章も速い方で、10オケの最速三ツ橋神フィル-太田日フィルの10分02秒-同05秒に次ぐ10分14秒。
第3楽章も14分切りで他のオケ平均よりは速い。
第4楽章は10オケ中最速23分10秒。

テンポの速さは、1-2楽章等そもそも速い楽章では小気味良さの一方で、大世帯の弦の先頭集団に後方集団がズルズルと引っ張られ、ナノ秒単位で遅れるような場面も。
3楽章は極端に速い訳ではなく歌心あるテンポでこれは全く違和感を感じなかった。

●声楽陣は2楽章の後に入場。
P席3列目以降、全体に市松配置。
そのP席の中央第2列に独唱陣。
何故かこの声楽の入場に時間をかけた。

インバルはこの時間袖に引っ込んだ。こんなの見た事ないよ。トイレにでも行ったのか?あ、冗談です。

その休止は結局3分半に及ぶ。
普通の入場なら90秒程度だ。

その長くかかった時間を入れても、最初にタクトを降ろしてから終曲迄が65分47秒。

10オケ中最速「第九」だ。


●声楽について。
合唱は、コロナ不安もあってか、昔に比べると随分こじんまりとしてきた。今回の都響=二期会は中規模だった。目下39名というのが最小規模(神奈川フィル@ミューザ)だが、その規模でさえ、不足は感じなかったし、もちろん今日の二期会にも不満はない。
しかし、独唱がP席で歌うのは初めてだった。
これまで、P席を有するホールの場合、合唱は全員又は半分程度がP席に着座するが、その場合であっても独唱者は舞台後方(合唱が舞台上にも展開する場合は当然その前か、合唱に挟まれる形)で歌った。

P席で歌うとどうなるか?
反響版がないから声が届きにくいのだ。
僕は、席の好みにこだわりがあって、常に1F真ん中の真ん中(の周辺)で聴く。だから、今日の独唱も十分聴こえたが、遠くの席にはどうだろう?

だから多くのオケでは多少狭くとも独唱は舞台の反響板を背中にして歌う。

まとめ:今日の都響は、16型の大編成の弦で厚ぼったく、しかし見栄え十分。一方、テンポの良さで、重々しくもならず、分かり易く、年末を飾る派手なイベントとしては上出来だったかも。

演奏好感度★80点

*ワケは知らないけど、きっとワケがある。イロイロ想像しているけど。

♪2022-205/♪サントリーホール-23

2022年12月25日日曜日

「第九」2022-❾ 読売日本交響楽団みなとみらい「第九」演奏会

2022-12-25 @みなとみらいホール



鈴木優人:指揮 & Org独奏
読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団

ソプラノ=キャロリン・サンプソン
メゾ・ソプラノ=オリヴィア・フェアミューレン
テノール=櫻田亮
バス=クリスティアン・イムラー

オルガン独奏
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ハ長調 BWV547
J.S.バッハ:イエス・キリストよ、汝はたたえられん
BWV604

ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125
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聖夜(きよしこの夜)〜独唱者4人+鈴木優人



「第九」に限定して。毎年多くのオケで聴いているが、双璧はN響と読響。年によって好みが合わなかったりする時もあるけど、総じてこの両者が横綱だ。
奇しくも今年の「第九」の9番目に、それも一番聴きたいホールで、読響自身第九演奏会の千穐楽として登場した。

「第九」に限らないけど、全般的なEnsの良さや弦の透明感などのほか、「第九」限定の各パートの聴かせ処など、僕なりの幾つかの関門があって、そこをクリアして美しい音楽を聴かせて欲しいといつも期待している。
今日の読響は、その関門のすべてをスラスラと通り抜けてしまった。

連日「第九」漬けなので、僕の頭が”勤続”疲労してきたのかもしれない。夢遊病感覚で聴いてしまったが、一体どうしたのかと自分を疑いたくなる。

特徴的なことは、第2楽章が約14分。
これはこれまでで最長だけど、聴いている時は長さを感じなかった。
無駄に長かったのは4楽章前の休止。

声楽陣は音楽開始前には着座しなかったので、3楽章の前だろうと思ったが、そこでも入らなかった。
4楽章の前、鈴木優人の手が長く止まっているので、ここで入場かと思いきや入らない。21sも休止したのは何故か分からないけど、たっぷり間を開けて4楽章が始まった。

そこで思い出した。

4楽章開始後声楽陣が入場するのは神奈川フィルのほかに読響にも例があり、昨年のバス妻屋は自分の出番ギリギリに雛壇に飛び乗った。ははん、同じことをやるのか、と思っていたら案の定、合唱は昨日の神フィルと同じで、歓喜の歌のオケTuttiの爆音に紛れて入場した。

独唱は更に遅れて、バス一人がソロの直前に登壇して歌い出し、その後、バスを聴きながら独唱3人も着座した。
独唱が出番ギリギリに入場するのは、もちろん指揮者の意図だが、その真意は分からない。違和感が拭えない。

それでも音楽は素晴らしかった。

独唱陣は櫻田以外は馴染みが薄いが、全員BCJの演奏会では聴いているので、その所属か、関係が深いのだろう。バスのソロに聴きなれない装飾があったのは古楽風なアレンジか。

演奏好感度★98点

弦奏者のMaskも2人だけでパッと見には気付かなかった。これも好感だ。

♪2022-204/♪みなとみらいホール-13

2022年12月24日土曜日

「第九」2022-❽ 神奈川フィル「第九」特別演奏会 2022 フューチャー・コンサート厚木公演

2022-12-24 @厚木市文化会館



沼尻竜典:指揮
神奈川フィルハーモニー交響楽団
プロ歌手による神奈川フィル合唱団

砂川涼子(ソプラノ)
八木寿子(メゾソプラノ)
笛田博昭(テノール)
青山貴(バリトン)

ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125



神奈川フィルの「第九」は三ツ橋敬子指揮@ミューザで既に聴いたが、今回は、沼さんの指揮。

独唱陣も異なって、
砂川涼子❤️Sp
八木寿子Ms
笛田博昭Tn
青山貴Brだ。

これは聴かねばなるまいと、遠路厚木まで出かけた。

厚木市は人口22.4万人。財政力指数県内1、関東で5位という豊かな街だそうな。さぞや立派な文化会館かと思いきや小都市にどこにでもあるような多目的のフツーの造作だった。

が、キャパ1400のこじんまりしたホールは残響は少なめだが明るい軽やかな響きだった。

弦は10型(低域12型風)は昨年同様。

合唱は男女とも14人の計28人。

今年12回聴く「第九」の中で、あと4回を残すものの、オケ・合唱とも最小規模だろう。

そのコンパクトなオケを纏めたコンマスは日フィルの千葉清加の客演だ。17日の日フィル「第九」@みなとみらいでは次席に座っていた。

コンマスとしての仕事ぶりを見るのは初めてだったかもしれないが、やはりボウイングや上半身の使い方が違う。よく、リードしていたと思う。

沼さんの「第九」を聴くのは初めて…だと思うが、こちらも正統派。ケレンはつゆほどもないが、だから面白くないのではなく、安心して聴ける。

10型の編成はキビキビし、弦の透明感も確保できている。もう少し弦を増やしたら厚みが出るけどその分濁りが出る心配がある。今日は、これで良かったと思う。
ホルンのソロも安定して、とくに3楽章の4番ホルンのソロも見事に決まった。

不安だったのは、声楽陣の着座だ。

通常は冒頭から。または3楽章の前に入場着座する。
しかし、今日は2楽章が終わっても入ってこない。
そして3楽章が始まった。
てことは4楽章の前に入るのか?
ところが3楽章が終わると間髪を容れず4楽章に突入。
あれれ。

さらに低弦のレシタが始まり、歓喜の旋律が始まっても声楽陣は入ってこない!

歓喜の歌が、オケのTuttiで盛り上がったその時、合唱も独唱も入場した。確かに人数が少なく短時間で並び、大音量だから足音もかき消されてしまうのだ。

実は、神フィルには前科があり、少なくとも19-20年も同様のスリルを味わったことを思い出した。
まあ、無駄のない演出とも言える。

ともかく、演奏は見事だった。
会場の大きさや響のタイプの違いを考えてこういう編成にしたのかどうか分からないが、オケの編成は大きければいいというものではない。コンパクトの良さを活かした、快活な演奏が実に心地よし。

演奏好感度★95点

♪2022-203/♪厚木市文化会館大ホール-01

2022年12月23日金曜日

「第九」2022-❼ 新日フィル「第九」特別演奏会 2022 アドバンスクリエイトクリスマスコンサート

2022-12-23 @みなとみらいホール



佐渡裕:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

ソプラノ:高野百合絵
メゾ・ソプラノ:谷口睦美
テノール:福井敬
バリトン:平野和
合唱:二期会合唱団/栗友会合唱団

ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125



今年の「第九」は今年5回目である秋山「第九」がそれまでにない上出来だったが、翌日同じ場所で聴いた東フィルが僅差(合唱力の差)で更に上回った。
そして、今日、佐渡裕の新日フィルがみなとみらいホールという最良の場所を得て記憶に残ると思わせる名演を聴かせた。

新日フィルは、時に、こんな演奏ができるのか!と驚かせる。井上道義との5月定期、6月のデュトワ公演然り。

佐渡裕はがたいが大きいので、みなとみらいホールの大舞台によく似合う。立っているだけでもオケを掌握しているふうに見える…いや、実際細部までコントロールが効いていたのだろう。

3楽章のゆったりとしたテンポ、3-4楽章をアタッカのように半呼吸で続けたのも、終楽章の低弦のレシタの王道の歌わせ方も秋山御大と同じ感じで、全体の演奏時間の両者の差は1分未満…と言ってもこれは測定誤差の範囲内。つまり、全体の音楽構成は両者がよく似ているなと思った。

変わっていたのは低弦の歓喜のテーマに入る前に短く休止したこと。楽譜上は休符もないけど、誰の演奏でもここは一呼吸置くところとは言え、佐渡は明らかな区切りを置いた。否定から肯定への区切りをキッパリさせたのか。

独唱陣中、僕の好みのMrテノールと言いたい福井敬が、今日も煌めいてた。

合唱は、P席を全部潰して市松配置。加えて舞台最後部の上手下手に分かれて配置。そこに挟まれるように独唱陣。
見た目にも頼もしい布陣だ。
100名を超える二期会・栗友会混成も、難所を難なくクリアして見事な出来。もちろんNoMask、NoScore。


みなとみらいホールは僅か6日前に日フィルを聴いたばかりだったが、その後今日まで県民ホール、武満メモリアルで2日連続で聴き、今日、またみなとみらいホールの1F席の入り口に立って、適度なスロープを持って広がる大空間を前にした時、やっぱり、オケを聴くならここだな、と思った。

残響まみれではない適度な原音と残響の混じり具合、弦の共鳴・共振が産む豊かな味わいは上手なオケを一層引き立てる(失敗には容赦ないとも思うが。)。

大きな佐渡氏が、大きな舞台で、大きな音楽を、美しくホールいっぱいに響かせた。

演奏好感度★95点

余談:
第2バイオリンのトップは前N響第2バイオリン首席の大林修子さんの客演だった。あら懐かしや。昨年末のN響サントリー「第九」が卒団の舞台で、僕も客席から大きな拍手で送り出した。そして今日はようこそみなとみらいへ!と大きな拍手を送った。

♪2022-202/♪みなとみらいホール-12

2022年12月22日木曜日

「第九」2022-❻ 東京フィルハーモニー交響楽団 ベートーベン「第九」特別演奏会

2022-12-21 @東京オペラシティコンサートホール



尾高忠明:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団

ソプラノ:迫田美帆
アルト:中島郁子
テノール:清水徹太郎
バリトン:上江隼人

ベートーべン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲 作品43
ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125



「第九」マラソンも6本目でちょうど半分。
今日もオペラシティ。
指揮は尾高忠明。
独唱陣は迫田美帆Sp/中島郁子Alt/清水徹太郎Tn/上江隼人Br。
合唱は新国立劇場合唱団。

今日は、昨日に比べると相当前の方だったので、オケの音圧に塗(まみ)れる喜び。

このホールは、独断と偏見で言えば(いつも断り無しに断じているが)、都内の大ホールの中で少なくとも”音響”に関しては最高だ。シューボックスの良さが存分に生かされて、スウィートエリアが広い。
流石にあまり前の方は遠慮したいが、最後列にも十分な音量が届くのを、遅刻した時に最後列後ろの壁際で立って聴いた時に実感して驚いたことがある。

昨日の東響も、今日との比較では遠い位置だったが実にエネルギッシュで、音量も申し分なかった。
今日の東フィルは舞台に近い分、更に強力だった。

今日は演奏時間の計測失敗で、厳密な比較はできないが、昨日よりややアップテンポだったような気がしたが、音圧のせいでそう感じたのかもしれない。

昨日の秋山御大もそうだったが、2人とも正統的で、何のケレンもない。安心して聴いておられるのは何よりだ。

とは言え、6回も聴いていると変則を聴いてみたくもなるが、後半戦でトンデモ「第九」が出てくるやしれん。それが楽しみでもある。

昨日と決定的な違い…。それは合唱だ。

行進曲に入る直前にソプラノの最高音がフォルティシモで続くところ。
ここが今日は濁らずに綺麗だった。
昨日の東響コーラスも善戦していたが、やはり、新国立合唱団がプロの違いをはっきりと聴かせた。
当然、NoMask、NoScore。

演奏好感度★90点

♪2022-199/♪東京オペラシティコンサートホール-04

みなとみらいアフタヌーンコンサート2022後期 〜大フーガ〜

2022-12-22 @みなとみらいホール


エール弦楽四重奏団
 バイオリン:山根一仁/毛利文香
 ビオラ:田原綾子
 チェロ:上野通明

モーツァルト:弦楽四重奏曲第18番 蝶々 K464
ウェーベルン:5つの断章 op5
ベートーべン:弦楽四重奏曲第13番変ロ長調「大フーガ」付き op130/133(初演版)




大ホールで室内楽を聴くアフタヌーンコンサート・シリーズなので、比較的前方で聴いている。
前回は堤剛と萩原麻未で、それなりに楽しめたが、今回はダメ。気持ちが乗ってゆかない。やはり弦楽四重奏(SQ)では音圧が決定的に不足する。
過去、みなとみらいホールの大ホールでは1度経験しただけで、その時もあまり楽しめなかった…と記録に。

ミューザでは弦楽(ピアノなし)の小編成を聴いたことは数回あるが、いずれもかぶりつきで聴いているので不満らしき記録はない。

それに今日の演目がキツかった。
馴染んでいるのはモーツァルトSQ第18番だけ。

ベートーベンSQ第13番「大フーガ」付きは、家で聴くときは大抵ベートーベンが書き直した版で。こちらは軽快で親しみやすい。CDにはその後にフーガ楽章も録音されているが楽しんで聴いたことはない。この楽章だけで15分超だもの。しかも親しみやすいとはいえない。

それで、今日は、生演奏の迫力で怠惰に流れやすく凡庸な耳を鍛えたいと思っていたが、現実には音量不足で、これは心構えでどうなるって問題ではない。物足りなくて隔靴掻痒に終始した。

奏者の一人一人はとても魅力的な若者ばかり。
これは是非小ホールで聴きたかったよ。

本日の入場者は、小難しい演目にもかかわらず1,200名程だったそうだ。当然、2階や3階にもお客は少なからず。
果たして、音楽は届いたのか?
か細い音でも聴く人の心次第?


♪2022-200/♪みなとみらいホール-11

2022年12月21日水曜日

「第九」2022-❺ 東京交響楽団 東響オペラシティシリーズ第131回

2022-12-21 @東京オペラシティコンサートホール



秋山和慶:指揮
東京交響楽団
合唱:東響コーラス

ソプラノ:秦茂子
メゾ・ソプラノ:杉山由紀
テノール:村上公太
バリトン:原田圭


ベートーべン:「エグモント」序曲
ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125



東響で「第九」を聴くなら秋山「第九」。
もうひとりナントカという指揮者も演るらしいが興味なし。昔から「第九」は秋山。

一人の指揮者が同じオケで毎年「第九」を40年超も演奏しているなんてギネスものではないか。
ついにオケと秋山御大は同じ呼吸をするに至った!
〜かどうかは知らないけど、オケ面子にしてみればとても安心感があるだろう。聴いている方もこの上ない安心感だ。

18年からは、第九を聴いた全オケの演奏時間などを記録しているが、毎年指揮者が変わらないのは東響だけで、テッパンの秋山「第九」は演奏時間も毎年《ほぼ》変わらない。

厳密に言えば、僅かずつテンポが遅くなっている。
以前は70分を切ることが普通だったが、去年70分を僅かに超え、今日は71分だった。誤差の範囲ではあるけど、秋山御大の場合は、40年以上も振っているので、超安定していてブレはとても少ないと思う。

尤も、去年は楽章間の合唱団入場に1分強かかった。
今日は、合唱は冒頭から着座だったにもかかわらず少し長くなっている。
多分、ここ数年で、呼吸が長くなっているのだろう。

全楽章を通じて何となく、その僅かの差を感じながら、秋山「第九」が益々熟成し老成していく過程なのだと思いながら聴いた。

独唱は秦茂子Sp/杉山由紀Ms/村上公太Tn/原田圭Br

合唱は東響コーラス。総勢百人超。NoMask、NoScore。

最後は恒例の蛍の光。乙女チックな気恥ずかしき演出も良き哉。

弦奏者にMaskが多いのは残念。在京オケでMask着用率を競ったら間違いなく1等賞だ(誉めていないよ!)。

演奏好感度★85点

♪2022-199/♪東京オペラシティコンサートホール-04

2022年12月19日月曜日

東京都交響楽団 第963回 定期演奏会Aシリーズ

2022-12-19 @東京文化会館


エリアフ・インバル:指揮
東京都交響楽団
マルティン・ヘルムヒェン:ピアノ*

ベートーべン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 op.73*《皇帝》
フランク:交響曲ニ短調
-------------------------
シューマン:森の情景から第7曲「予言の鳥」Op.82-7*



13日のB定期に続いてA定期もインバルの指揮で、大好物のフランク・ニ短調とあっては楽しみにしていたが、今日は様子が違った。

ヘルムヒェン君の”皇帝”は爽快だった。
ホールの響の良さはピアノに端的に現れる。
サントリーの重くて硬い響とは天地の差。
みなとみらいホールやMuzaには敵わないけど本来のピアノの快音だ。

フランクになるとだんだん気分が沈んだ。
文化会館は弦にも正直だ。
B定期のブルックナーでは見事に澄み切った管の重音や弦のTutti(総奏)が聴けて、都響もやるな!と思わせたが、今日はオケ(特に弦)がざわついていたよ。


フランクDmは人気があると思うが案外聴く機会が少ない。
去年6月に小泉和裕+神フィル。
その前となると17年、やはり小泉和裕+都響。
アマオケを飛ばしてデスピノーサ+N響が14年。
いずれも素晴らしかった。
だいたい、始まる前から好感を持って臨んでいるから好演になる…のかも。

都響に限らず、N響でさえ弦のざわつきに遭遇することがある。高域がキンキン・シャリシャリと不快だ。決まったホールの決まった席で聴いているのに、良かったり悪かったりするのはどうしてだろう(暗にリハ不足を嫌みたらしく示唆している!)。

そういえば、都響名物ハウリングはどうだったのだろう?
僕には今日も聴こえなかったし、僕よりずっと若い隣席氏も前回のBも含め、一度も聴いたことがないと言っていた。とりあえず、加齢性難聴ではなさそうだ。

♪2022-198/♪東京文化会館-14

MUZAランチタイムコンサート12月 東京交響楽団 金管五重奏『Principals!』

2022-12-19 @ミューザ川崎シンフォニーホール



東京交響楽団 金管五重奏団
 佐藤友紀、澤田真人:トランペット
 上間善之:ホルン
 鳥塚心輔:トロンボーン
 近藤陽一:テューバ

アンダーソン:そりすべり
チャイコフスキー:「くるみ割り人形」から行進曲、花のワルツ
ビバルディ:「冬」から第2楽章ラルゴ
ジョン・レノン/オノ・ヨーコ:ハッピークリスマス(戦争は終わった)
讃美歌:星の世界
バーリン:ホワイト・クリスマス
クリスマス・メドレ〜The Joy of Christmas〜、ウェンセスラスはよい王様、きよしこの夜、ひいらぎかざろう、もろびとこぞりて
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ヘンダーソン編:聖者のハレルヤ


今日は、東京交響楽団金管五重奏(トランペット2-ホルン-トロンボーン-テューバ)。
全員東響の首席。この編成は、アメリカ式(ドイツ式はトランペット2-テューバ3らしい)で、オケで使う金管全部含まれている…と解説に。
どこまで学術的に正しいか知らないけど、オケに登場する他の金管楽器も、たいていは今日の金管4種の兄弟縁者だものそう言えるのかも。

この中で、テューバは大小2本、トランペットは1人は2-3本を吹き分けた。

シーズンとあってXmasに因む小品ばかり。
よく知っている曲のタイトルがこんな名前だったのかといくつか新発見したが、いつまでおぼえているか…。

副題に『Principal!』と強調してあったが、首席級の巧さを、はい、楽しませてもらいました。


♪2022-197/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-48

2022年12月18日日曜日

「第九」2022-❹ 横浜交響楽団 第720回定期演奏会 ”横響・第九演奏会”

2022-12-18 @県民ホール



指揮:鈴木衛
合唱指揮:泉翔士

横浜交響楽団
横響と第九を歌う会合唱団/横響合唱団

鳥海仁子:ソプラノ
高橋ちはる:アルト
土崎譲:テノール
池内響:バリトン

ベートーべン:序曲「レオノーレ」第3番
ベートーべン:交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱つき」


2019年まで横響の「第九」といえば、16型オケに合唱団が600人と、まるで「千人の交響曲」並みの規模で、2,500席の県民ホールを満席にできる数少ないコンサートだった。
コロナに倒れ雌伏2年。ようやく大規模な「合唱付き」が復活…とまではいかん。いまだ道険し。

それでも、約200名の合唱団が、舞台に並ぶ…かと思ばこれが変則で、これまで見たことも聴いたこともない合唱2分割。
卵サンドならぬオケサンドイッチだ。

舞台に並びきれなかった合唱70弱を客席前方に降ろした。
それで客席側合唱には別に指揮者が付いた。

1階客席は27列?より後ろしか客席に使えなかったので、1階の真ん中の真ん中で聴きたい!と駄々をこねることもできず、僕は2階中央に座らざるを得なかった。まあ、そこでも格別悪い席じゃないんだけど。

それにしても、眼下に合唱別動隊。
合唱本体と独唱は遥か舞台後方に。

こんな形になったのは、舞台上の合唱人数がホール側から制約を受けたからだろう。音楽堂は40名までという話も聞いた。県民ホールはせいぜい120名といった辺りで決着がついたか(ミューザは230人も並んだのに!)。

3年ぶりなので何としてもう歌いたい!という合唱人の為に苦肉の策が捻出されたのだろう。

でも、そこまでして合唱を増やす必要があったのか?
舞台だけでも120人以上居たのだから。
神奈川フィルの「第九」の合唱はプロだが39名で格別不満もなかった。日フィルはアマ合唱で80人強。それを思えば120名も居たら十分だったが、この日の第九はオケの為でもお客の為でもない。合唱団の為なんだものな。

独唱は鳥海仁子Sp/高橋ちはるAlt/土崎譲Tn/池内響Br。

演奏の出来は、残念なところがポツポツ。特に一番おいしい終楽章低弦のレシタでは2-3名ツボを外している人あり。

終演後は、蛍の光の合唱でお客を送り出してくれるのが恒例だ。
ともあれ、ここまで辿り着くには大変な苦労があったのだろう。蛍の光を背中で聞いて、少しうるっとしながら、帰途に着いた。


演奏好感度★60点

♪2022-196/♪県民ホール-18

2022年12月17日土曜日

「第九」2022-❸ 日本フィルハーモニー交響楽団 第383回横浜定期演奏会

2022-12-17 @みなとみらいホール


太田弦:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
合唱:東京音楽大学合唱団

盛田麻央:ソプラノ
杉山由紀:アルト
樋口達哉:テノール
黒田祐貴:バリトン


ベートーベン:《エグモント》序曲
ベートーべン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125


「定期」に組込まれた唯一の「第九」。以前は、このタイプがもう少しあったように思うが、今やどのオケも定期外で買わなくちゃいけなくなった。
指揮は「第九」は初めてという太田弦。
弦編成は12型(昨年は10型だった!)。
合唱は東京音大83人。P席全部に市松配置。

学生だし、全員マスクはやむを得ない?まあ、しっかり声は出ていたから可。
独唱は盛田麻央Sp/杉山由紀Al/樋口達哉Tn/黒田祐貴Br。声楽で印象に残ったのはBrがTnばりの輝かしい声。

全体印象はこじんまりと手堅くまとめた感じ。独自色は全く感じなかった。ひたすら正統派の安全運転。

個性の現れやすい終楽章冒頭の低弦のレシタが、あまりにもフツーで、味気ない。ここは、前3楽章を否定する主張をもう少しギリギリ表現して欲しかった。3-4楽章へ一呼吸で雪崩れ込むのは、元々アタッカではないので邪道だという意見もあるが、僕は雪崩れ込んでほしい。太田くんは32秒も休止した。声楽陣はすでに着座しているのだからそんなに待つ必要はなかったのだけどな。

全体として巧いけど物足りなさも。
演奏好感度★80点

余談:「エグモント」が良し。
冒頭の弦の重音Tuttiが美しい。
日フィルらしい弦がみなとみらいに響く。そんなちょっとした幸福感。

♪2022-195/♪みなとみらいホール-10