2021年11月27日土曜日

仲道郁代「シューマン 300日の物語」第4回(最終回) 天の香薬の物語~心のかけらが見出すもの

2021-11-27 @フィリアホール



仲道郁代:ピアノ

シューマン:幻想小曲集 Op12 (約27分)
1タベに
2飛翔
3なぜ
4気まぐれ
5夜に
6寓話
7夢のもつれ
8歌の終わり

Intermissiont

シューマン:クライスレリアーナ Op16 (約32分)
1激しく動いて
2心をこめて、速すぎずに
3激しく駆り立てられて
4きわめて遅く
5非常に生き生きと
6きわめて遅く
7きわめて速く
8速く、諸離(かいぎゃく)をもって

Intermission

シューマン:幻想曲ハ長調 Op17 (的30分)
第1楽章…全く幻想的に、情熱的に弾くこと
第2楽章…中庸に。全く精力的に。
第3楽章…ゆっくり弾くこと。常に静けさをもって。

----Enc-------------

シューマン:子供の情景 Op15 第7曲「トロイメライ」

使用ピアノ YAMAHA CFX


「シューマン300日〜」シリーズは知っていたが、全4回は参加できないのでせめても最終回に出かけた。


作品番号12-16-17という20歳代の終わり、妨害に遭いながらもクララへの熱い思いが結実した音楽ばかり。


そういう文脈で聴けば、すべての作品が愛おしい。


彼女のか細い身体、か細い指でガラス細工を扱うようなタッチが奏でる調べがいつになく穏やかでしみじみと迫る。

もちろん、これでもか、というところもあるけど。


「クライスレリアーナ」全曲は、今月初め、音楽堂でチャクムルの演奏を聴いた。

いずれもかぶりつきで、ピアノも同じCFXという似た条件だったが、紡がれた音楽はだいぶ異なった。もちろん、「みんなちがって、みんないい」のだけど。


「幻想」を冠する2曲にも惹き込まれた。


全体が、仲道マジックにかかっているような不思議な充足感に満ちた世界だった。


もう、Encはいらないと思ったが、彼女はPfに向かった。

弾く前から分かっていた。

弾くなら、もう「トロイメライ」しかないぞ!と。


そのとおりで、彼女の指先からは金粉が降り注ぎ、僕は震えた。


♪2021-142/♪フィリアホール-07

2021年11月26日金曜日

第12回 音楽大学オーケストラ・フェスティバル2021[上野音楽大学/武蔵野音楽大学]

2021-11-26 @東京芸術劇場大ホール



福島康晴:指揮/上野学園大学管弦楽団
ルドルフ・ピールマイヤー:指揮/武蔵野音楽大学管弦楽団

上野⇒ベートーベン:交響曲第1番ハ長調 作品21
上野⇒シベリウス:交響詩「フィンランディア」作品26

武蔵野⇒ブルックナー:交響曲第7番ホ長調 WAB.107(ノヴァーク版)から第1-2-4楽章


上野学園大学はベートーベン交響曲第1番とシべリウスの交響詩「フィンランディア」。

弦編成が極めて小さい。

第一バイオリンは僅かは8名。弦全員でも30人!


山の分校じゃあるまいしと思ったが、演奏は見事。

実に軽快でシャキシャキしている。


シベリウスになると所要の管・打楽器が追加された。

弦5部も拡大して壮大な音楽を聴かせるのか…と思っていたら、1人も増えない⁉︎


30人で「フィンランディア」はないだろう…と思ったが、始まってみると、冒頭の重くて暗い金管の強奏にゾクゾクと来た。

さらに弦が入って管・弦の響きも美しい。


もう少し弦に厚みがあれば良かったけど、下手くそが加わって音を濁すくらいならこのままで十分。


上野学園、恐るべし!


ところが、後刻NETで知ったが、この上野学園が廃学の危機?

それで弦30人?

今年度新規学生募集を停止し、石橋メモリアルホールは売却済みらしい。


なんてこった!


このニュースを読んで、あの見事な演奏を思い出して、泣けてきたよ。


学生諸君がんばれ!


https://smart-flash.jp/sociopolitics/134766


上野学園が終わって休憩に入ったが、ずっと自席で見ていたら、舞台は次の準備が大変。

両校の学生たちが片付けと準備で錯綜して大忙しだ。

それもそのはず、こじんまりとした上野のあとは武蔵野音大が弦14型でブルックナーの交響曲第7番を演奏する。


ブックナーはあまり好きじゃないので積極的に聴かないが、10曲の中では7番は縁があるようで、抵抗感は少ない。


時間の制約から第3楽章は抜きだ。

それ位で丁度いい。

でも抜くなら第2楽章を抜いてほしいよ。もっと短縮できる。


バイオリン高域の濁りはやむを得ないか。

1楽章抜きでも50分超?これを破綻させなかったのは、やはりうまい。


大袈裟で俗っぽくなりやすい部分が散りばめてある!音楽だけど、名前も知らない大学の教員らしい指揮者は、とても抑制的で上品にまとめて、ブルックナーも悪くないぞと思わせてくれた。好感したよ。


♪2021-141/♪東京芸術劇場大ホール-05

東京二期会オペラ劇場 NISSAY OPERA2021提携 オペレッタ『こうもり』

2021-11-26 @日生劇場



指揮:川瀬賢太郎
演出:アンドレアス・ホモキ

管弦楽:東京交響楽団
合唱:二期会合唱団

舞台美術:ヴォルフガング・グスマン
照明:フランク・エヴィン
合唱指揮:根本卓也
演出助手:上原真希
原語指導:佐々木典子
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:加賀清孝

アイゼンシュタイン⇒小林啓倫
ロザリンデ⇒木下美穂子
フランク⇒杉浦隆大
オルロフスキー⇒成田伊美
アルフレード⇒金山京介
ファルケ⇒加耒徹
ブリント⇒大川信之
アデーレ⇒雨笠佳奈
イダ⇒内山侑紀
フロッシュ⇒森公美子

台本:カール・ハフナー、リヒャルト・ジュネー
原作:アンリ・メイヤック、リュドヴィク・アレヴィ『レヴェイヨン(夜食)』
作曲:J.シュトラウスⅡ
ベルリン・コーミッシェ・オーパーとの提携公演
オペレッタ『こうもり』
全3幕(日本語字幕付原語(ドイツ語)歌唱/日本語台詞上演)


馴染みの歌の連続なので音楽はとても楽しめるが、半分は地の芝居なので、演技・演出に工夫が必要。

歌は原語、セリフは日本語というのがやりにくい?2017年の初演時ももどかしかったことを記憶している。


歌唱力ではなく喜劇役者としての力量を求められるフロッシュ(森公美子)の独擅場も気持ちが乗らず。無駄に話が長かった。


そのフロッシュが上司フランク(杉浦隆大)にお喋りが「長いっ!」と叱られたのは芝居の台詞というより本音のようでおかしかった。


抜群の歌唱力を見込んで木下美穂子:ロザリンデの日を選んだが、珍しく不発。ファルケ(加耒徹)もオルロスキー(成田伊美)もアデーレ(雨笠佳奈)もダメ。

アイゼンシュタイン:小林啓倫は健闘していた。


演技力のある歌手が集まり、良い演出のもとで歌えば、本当に傑作なのだから、今日のは残念無念。


2018年新国の「こうもり」は目下「マイスタージンガー」出演中のAエレートがアイゼン〜役で、実に面白かった。同じ演出でも昨年版は弾けず。歌だけじゃないのが難しいな。


♪2021-140/♪日生劇場-06

2021年11月25日木曜日

第1944回 NHK交響楽団 定期公演 B-2

2021-11-25 @サントリーホール



ファビオ・ルイージ:指揮
NHK交響楽団
フランチェスカ・デゴ:バイオリン*

パガニーニ:バイオリン協奏曲第1番ニ長調 作品6*
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 作品64
-------------------
ジョン・コリリャーノ:レッド・バイオリン・カプリスから 第4変奏、第5変奏


今日の客演、フランチェスカ・デゴ嬢は、日本デビューwith東響(2016)も聴いたし、都響(2018)でも聴いた。

いずれも指揮はDルスティオーニで、いずれの回も好感したので今回のN響デビューは楽しみだった。


今日の彼女の演奏がパガニーニで、Fルイージと指揮者まで揃ったとなればメインも、レスピーギとか伊イタリアものが良かったな。


なのになぜか、チャイコフスキーが組み合わされた。それも交響曲第5番。10月末からもう5回目だよ。


さて、デゴのパガニーニのバイオリン協奏曲は、生では初聴きらしいが非常に耳に馴染んでいるのはなぜ?

まるでロッシーニのオペラ前奏曲風で明るい超絶技巧。

N響も小ぶりな編成で軽やかにサポートした。


アンコールは映画音楽でも多少馴染んでいるコリリャーノの作品。やはり映画「レッド・バイオリン」で使われた作品らしい。もちろん現代曲だが、イタリアルネサンス期を思わせる古風な作り。それでいて、超絶技巧の難曲のようだった。


本来はN響Bの1日目(B1)会員だが、昨日のオペラを優先したので今日(B2)に振り替えた。それが凶と出た。


大抵、振替席は悲惨だ。


本来席よりずっと後ろだったがこれは許容範囲。

問題は席番がずっと上手寄りで、目線の先はコントラバスというバランスの悪さだ。


前半のデゴ嬢の時はあっさりした音楽で編成も小さかったのでさほど目立たなかったが、編成が14型に膨れ、音楽も複雑になり、大音響も飛び交うとなると、もう管も弦もシャリシャリ言い出して話にならない。


決してN響のせいではない。

5回目のチャイコ5番はN響こそ真打だと期待していたのに、最悪の響きだった。東邦音大@Muzaの方が良かったよ。


サントリーホールはスウィートエリアがホンに狭い。

今日の響きの悪さは「音楽」以前だと思ったな。


♪2021-139/♪サントリーホール-19

国立劇場開場55周年記念 令和3年度(第76回)文化庁芸術祭協賛公演 11月歌舞伎公演『一谷嫰軍記』

2021-11-25 @国立劇場



並木宗輔=作
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)  二幕
国立劇場美術係=美術

序   幕    御影浜浜辺の場
二幕目    生田森熊谷陣屋の場


熊谷次郎直実     中村芝翫
源義経        中村錦之助
梶原平次景高     中村松江
経盛室藤の方     中村児太郎
堤軍次        中村橋之助
亀井六郎       市村竹松
片岡八郎       市川男寅
伊勢三郎       中村玉太郎
駿河次郎       中村吉之丞
庄屋孫右衛門     中村寿治郎
番場の忠太      中村亀鶴
熊谷妻相模      片岡孝太郎
白毫の弥陀六          中村鴈治郎
 実ハ弥平兵衛宗清

ほか


今回は、初日に観劇して、今日千穐楽に再見した。

初日に面白かった、というか、よくできた芝居だなと思ったことと、中心となる「熊谷陣屋」の演じ方の、多分、珍しい方である「芝翫型」は当分観る機会がないだろうからと思い、もう一度観る機会を窺っていた。


N響定期を振り替えたので、ちょうどこれが歌舞伎の楽日と重なって観賞効率が良くなった。


型を重んずる芸の世界なので、アドリブらしき台詞も初日と同じだったのが笑えたが、おそらく、この3週間で磨きがかかったのだろう。


問題は、初日同様入りが悪い。

こんな調子で芝翫型が廃れたのでは寂しい。


♪2021-138/♪国立劇場-10

2021年11月24日水曜日

オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World リヒャルト・ワーグナー ニュルンベルクのマイスタージンガー<新制作>

2021-11-24 @新国立劇場



【指 揮】大野和士
【演 出】イェンス=ダニエル・ヘルツォーク
【美 術】マティス・ナイトハルト
【衣 裳】シビル・ゲデケ
【照 明】ファビオ・アントーチ
【振 付】ラムセス・ジグル
【演出補】ハイコ・ヘンチェル
【舞台監督】髙橋尚史

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団、二期会合唱団
【管弦楽】東京都交響楽団
【協力】日本ワーグナー協会


ハンス・ザックス⇒トーマス・ヨハネス・マイヤー
ファイト・ポーグナー⇒ギド・イェンティンス
クンツ・フォーゲルゲザング⇒村上公太
コンラート・ナハティガル⇒与那城敬
ジクストゥス・ベックメッサー⇒アドリアン・エレート
フリッツ・コートナー⇒青山貴
バルタザール・ツォルン⇒秋谷直之
ウルリヒ・アイスリンガー⇒鈴木准
アウグスティン・モーザー⇒菅野敦
ヘルマン・オルテル⇒大沼徹
ハンス・シュヴァルツ⇒長谷川顯
ハンス・フォルツ⇒妻屋秀和
ヴァルター・フォン・シュトルツィング⇒シュテファン・フィンケ
ダーヴィット⇒伊藤達人
エーファ⇒林正子
マグダレーネ⇒山下牧子
夜警⇒志村文彦

リヒャルト・ワーグナー
ニュルンベルクのマイスタージンガー<新制作>
全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約5時間55分
第Ⅰ幕 95分
 休憩 30分
第Ⅱ幕 70分
 休憩 30分
第Ⅲ幕130分


途中の休憩込みで5時間55分という超大作。
中でも一番の心配は第3幕の130分間だ。

幕間から開演を待ち、終演後のカーテンコールを経て整列退場まで所要見込みは150分間。

この間に”自然”が我を呼ばねばいいがと祈るような気持ちだったが、できるだけ水を断ち、膝から足下まで防寒して臨んだら、これが無問題・無事観了!


二番目の心配は演出だ。

新国立劇場のサイトに演出家のコメント動画でニュルンベルクを「劇場に設定」したとあったので、やれやれまた劇中劇かと心配していたが、日本版ではだいぶ志を曲げたようだ。

新国立劇場の本来の額縁の中に拵えられた劇場額縁。その中にさらに劇場という3重構造は徹底されなかったので、見かけは気にせずワグナーの台本どおりに脳内転換して楽しんだ。

とはいえ、危なっかしい問題を孕んだ作品。

歌合戦の商品に娘を差し出すとは何たる不埒。
芸術の名を借りたドイツ至上主義が後々ナチズムとの関係を指弾されている。
明示的に示されないがユダヤ人を虚仮にして侮辱する不愉快さ。

ワーグナー唯一の喜劇とされるがこれは笑えない。

しかし、今回の演出版ではラストのアイデアが、それらの鬱憤を晴らす鉄槌となった。


残念ながら全体がそのような方向を目指して設計されていないので(歌詞を変えない限り無理)、不整合で唐突感は拭えないが、フツーの終わり方よりはずっとマシだ。

歌でも光ったエーファ役の林正子が本当に美味しいところを拐った。

音楽はいい。
話に納得できなくとも音楽にはやられた。
とりわけ、3幕の耳に馴染んだ旋律が、合唱を伴い、客席2階バルコニーに陣取ったバンダのラッパを従えて堂々と演奏されるところでは、震えが来た。

♪2021-137/♪新国立劇場-11

2021年11月23日火曜日

第12回 音楽大学オーケストラ・フェスティバル2021[東邦音大/桐朋音大]

2021-11-23 @ミューザ川崎シンフォニーホール


大友直人:指揮 東邦音楽大学/東邦音楽大学管弦楽団
沼尻竜典:指揮 桐朋学園大学/桐朋学園オーケストラ

東邦⇒チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 作品64
桐朋⇒チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 作品74 「悲愴」


音大オーケストラ・フェスティバル、1回目の今日は東邦(大友直人:チャイフスキー交響曲第5番)と桐朋(沼尻竜典:チャイコフスキー交響曲第6番)だった。


チャイコの5番は10月以降今日で4回目だ。25日もN響で聴く。来月も他のオケで聴く予定だ。この音大フェストでは27日の昭和音大も演奏することになっている。何でこんなに、いろんなオケがこの秋に集中して演奏するのかは分からない。


さて、音大オケはどこも巧いね。

特にミューザのように響きがいいとプロのように聴こえる。


チャイコ6番「悲愴」の方は昨夏・読響以来。

コロナ禍じゃ洒落にもならないからか、取り上げるオケは少なかった。

その時の読響の弦の規模は12型だった(コロナ感染対策として楽員同士の距離を取らなくればならなかったから。)。

そんな小編成の「悲愴」は初めてだったが、今日の桐朋オケは何と!16型。

これじゃ高域弦が喧しいのではと心配したが、しっかりと透明感を保って、16型の迫力を見せつけ(聴かせ)た。


学生オケ同士だからどちらが巧い…とかは憚るが、トーホーの方がちょっと上手だったかな😜。


音大フェスティバルは全4回。27日の昭和音大(チャイコ5番)も聴くつもりで4回通し券を買ったが、行けなくなったのが残念。


♪2021-136/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-39

2021年11月21日日曜日

新国立劇場ボックスオフィスオペラ研修生による LE PROMESSE 2021~アリアコンサート~

2021-11-21 @新国立劇場



オペラ研修所
●第22期生(3年次)

程音聡:Br⇒『アンドレア・シェニエ』/「祖国の敵だと?」
鳥尾匠海:Tn⇒『ストリート・シーン』/「独りぼっちな住まい」
原田奈於:Sp⇒『リゴレット』/「慕わしい人の名は」
森翔梧:Br⇒『ロデリンダ』/「キューピットの翼を使うのは」
湯浅貴斗:Bs⇒『アレコ』/「みんな寝ている」

●第23期生(2年次)
内山歌寿美:Sp
⇒『ラ・ボエーム』/「私の名はミミ」
大久保惇史:Br
⇒『エロディアード』/「はかない幻」
河田まりか:Sp
⇒『清教徒』/「あなたの優しい声が」
杉山沙織:Ms
⇒『セビリアの理髪師』/「今の歌声は」

●第24期生(1年次)
大城みなみ:Ms
⇒『ウェルテル』/「手紙の歌」
大髙レナ:Sp
⇒『ラクメ』/「若いインドの娘よ、どこへ行く」
佐藤克彦:Br
⇒『清教徒』/「ああ、永遠にあなたを失った」
長冨将士:Br
⇒『ファウスト』/「門出を前に」
前島眞奈美:Ms
⇒『サムソンとデリラ』/「私の心はあなたの声に花開く


新国立劇場オペラ研修所が開催している研修生の発表会。

研修生になること自体がかなり狭き門らしく、みんなハイレベルだ。

3年前にも聴いたが、その際は開所20周年の記念でもあり、海外からも若手精鋭を招き、卒業生も交えてかなり大掛かりだったが、今回はコロナ禍の為か出演は研修生のみで、会場もオペラパレスから中劇場になり、生のオーケストラもなしでピアノ伴奏だけだった。


4人14曲で、知らないオペラからのアリアもあり、知っているはずのアリアも全然覚えていないものもあり…おかげで新鮮だったよ。


誰が上手かとはそもそも分からないが、よく訓練された肉体は最高の楽器だと、今日も感じた。


数年後にオペラの舞台で会えることを期待しているよ。


♪2021-135/♪新国立劇場-10

2021年11月19日金曜日

鳥木弥生メゾ・ソプラノリサイタル

2021-11-19 @かなっくホール



鳥木弥生:メゾソプラノ
小埜寺美樹:ピアノ
<特別ゲスト>
小林厚子:ソプラノ

ロッシーニ:歌劇「アルジェのイタリア女」酷い宿命よ!
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」手紙の二重唱**
レオンカヴァッロ:歌劇「ラ・ボエーム」これが運命!
プッチーニ:歌劇「外套」あんたがこの袋の中身を
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」ある晴れた日に*
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」花の二重唱**
オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」美しい夜、愛の夜(ホフマンの舟歌)**
ビゼー:歌劇「カルメン」前奏曲 Pf.Solo
ビゼー:歌劇「カルメン」ハバネラ
トーマ:歌劇「ミニヨン」君よ知るや南の国
サン=サーンス:歌劇「サムソンとダリラ」あなたの声に心は開く
ガスタルドン:禁じられた音楽
オブラドルス:一番細い髪で*
マスカーニ:アヴェ・マリア**
----------------
ビゼー:歌劇「カルメン」セギディーリャ
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」アイーダとアムネリスの二重唱**

**二重唱
*小林ソロ


鳥木弥生は過去に結構聴いてきたのだけど、6月の「蝶々夫人」(小林厚子)@日生でのスズキ役で刮目するに至る。

尤も、今回のリサイタルでその陽気で一捻りあるおもしろい人柄に接したので、今やスズキのイメージは壊れてしまったのが良かったか悪かったか。


そして彼女の初リサイタルが何と我が地元かなっくホールとは嬉しや。おまけにゲストが小林厚子と幸せなこと。

もちろんかぶりつき席を確保。


因みにピアノが小埜寺美樹だ。

彼女は先日の「アイーダ」@ミューザでもピアノを受け持っていた。


この3人が一風変わっていて面白い。

歌の合間のおしゃべりタイムは会場を笑いに包み込んだ。


近くで見てよく分かったが、2人とも大柄で恰幅がいい!

新国立劇場最上階にも届く声を、今回は至近距離で聴いたので、僕の頭骸骨は共振し続け、脳みそが煮立つのではと思ったよ。あたかも歌う人間兵器だ。


アンコールを含み全15曲。

独唱は鳥木9曲、小林2曲。二重唱4曲。

いずれも素晴らしかった。


「カルメン」からの「ハバネラ」や「セギディーリャ」、「サムソンとデリラ」から「あなたの声に心は開く」はしなやかで妖艶さもにじみ美しい。


小林との「蝶々夫人」から「花の二重唱」は6月の日生劇場の舞台を思い起こさせる。

アンコールとは思えない「アイーダ」の二重唱は迫力満点。

ホフマンの船歌もしみじみ美しい。


なんとも楽しく贅沢な2時間也。


♪2021-134/♪かなっくホール-02

新日本フィル:すみだクラシックへの扉#3

2021-11-19 @すみだトリフォニーホール



下野竜也:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

篠﨑友美:ビオラ*
長谷川彰子:チェロ アンコールのみ共演

フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』前奏曲
ヒンデミット:「白鳥を焼く男」古い民謡に基づく、ビオラ独奏と小オーケストラのための協奏曲*
R.シュトラウス:「メタモルフォーゼン」(23の独奏弦楽器のための習作) TrV290
フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』から 夕べの祈り~パントマイム
-------------------
ヒンデミット:ビオラとチェロのための二重奏曲*


指揮の下野ちゃんの自己満足プロ。

4曲(5曲とも言える。)も集めた割に全体のコンセプトが不可解。プログラムには牽強付会の説明があったが。


フンパーディンク歌劇の前奏曲とRシュトラウスの「メタモルフォーゼン」は何らの印象も残っていないが、過去数回聴いたという記録がある。そんな程度なので期待もしていなかった。


唯一興味があったのはヒンデミットの「白鳥を焼く男」(初聴き)だ。

オルフの「カルミナ・ブラーナ」には「焼かれた白鳥の歌」というのがある。そんなに白鳥を焼くのが一般的なのか?


どうやら、日本でうなぎの蒲焼職人の如く、欧州の何処かには白鳥を焼く専門職がいる(た?)らしい。

しかし、この曲は歌曲ではなく、むしろビオラ協奏曲で、解説を読んでも白鳥を焼く事の意味は分からず。


弦編成が面白い。

独奏ビオラを引き立たせるためか弦はチェロ4、コントラバス3のみに管楽器とハープとティンパニー。

ほとんどゆったりしたテンポで眠気を誘う。

これでも何度も聴いておれば面白いと思うのかもしれない。


次の「メタモルフォーゼン(「変容」の意)」は副題のとおりバイオリン10、ビオラ5、チェロ5、コントラバス3の弦楽合奏。


この曲については聴いた記録はあるがとんと記憶がなかった。

それでも脳内に欠片が残っていたか、これは意外にも楽しめた。

心を鬼にして聴いていないと持ってゆかれそうな気持ちに襲われるところがある。ドイツの壊滅的敗戦の年の作。そういう文脈で聴くと余計に感情が昂ってしまう。

後刻見つけたYoutubeに良い演奏があった。


https://youtu.be/RkqznP-45Nw


問題はフンパーディンクの同じ歌劇からの3曲をどうして最後に纏めなかったのか?1曲目と4曲目にバラした…ステージ・マネージャー泣かせのプログラムの意図は那辺にありや?


前日、N響ブルックナーを聴いていたので、オケは物足りなかったが、そのN響で不安だったホルンは、新日フィル首席日高氏の安定感をN響に欲しかった。


♪2021-133/♪すみだトリフォニーホール-07

2021年11月18日木曜日

第1943回 NHK交響楽団 定期公演 池袋C-2

2021-11-18 @東京芸術劇場大ホール



ファビオ・ルイージ:指揮
NHK交響楽団

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンチック」


今月のC定期は変則でC1とC2が逆転。僕はC1会員だが明日は不都合でC2に振替。それが普段なら金曜日(20日)になるところ、今日(18日)になった。


心配した振替席も本来の指定席のすぐ近くで不満なし。


4年3月ぶり(最後は読響@みなとみらいH。N響との組合せだと4年7月ぶり)のFルイージ。来季はN響主席指揮者に就任することが決まっているので、これからはもっと頻繁に聴くことができるだろう。


コロナ対策で隔離継続中?の為、楽員との距離を保つための変則入退場が、手持ち無沙汰で気の毒だった。


コンマスは白井圭。その隣に郷古廉(彼はよく色んなオケに出没している!)と主要席は客演ばかりだが、強者揃いだから何の不安もない。


さて、ブルックナー第4番「ロマンチック」の出来は…。


ホルンが悪戦苦闘していたな。

5度-6度-8度もの跳躍が多いのでさぞや大変だろう。

それもあって冒頭から管楽器のやりとりがぎこちなくて頼りなかったが、その内落ち着いた…と、言いたいところだが、実は後半にも難所は残っている。


しかし、その点を除けば、随所にN響らしい透明感があり、かつ、厚みのある管・弦のアンサンブルを聴かせた。


ただ、どんな名演奏であったとしても、美旋律の出し惜しみ、意味不明の繰り返し・アタックの濫発、この長さに必然性があるのか?など、ブルックナーはなかなか僕を寄せ付けない。


♪2021-132/♪東京芸術劇場大ホール-04

ランチタイムコンサート パイプオルガン&ソプラノ~イタリア音楽のひと時~

2021-11-18 @ミューザ川崎シンフォニーホール


パイプオルガン:青田絹江◯
ソプラノ:高橋薫子●

●ビバルディ:歌劇「ポントの女王アルシルダ」から「私はジャスミンの花」
◯ビバルディ(バッハ編):協奏曲 イ短調 BWV593
 Ⅰアレグロ Ⅱアダージョ Ⅲアレグロ
●ビバルディ:モテットRV631「天地の静けさ」から
 Ⅰアレグロ Ⅱレシタティーヴォ Ⅲラルゴ Ⅳアレグロ
◯パスクィーニ:かっこうの歌によるトッカータ
●マスカーニ:アヴェ・マリア
◯ペレーズ:前奏曲〜聖ピエトロ大聖堂のクリスマスミサのための〜

----------------
●ソプラノ+オルガン
◯オルガンソロ


オルガン(青田絹枝)とソプラノ(高橋薫子)でイタリア音楽のひと時。

知っている曲は2つだけだったけど、全部楽しめた。


高橋の歌が心地良いので、オルガンだけよりソプラノが入った曲をたくさん聴きたいなと思っていたが、最後のペレーズ作「前奏曲」が締めにふさわしく、これはスゴイ。


作曲家の名前も知らなかったが、2013年作。


現代作品なのだけど、しっかり調性があり、それどころか、ルネサンス期の作品だと言われても「そうか」と思うような古典懐古風。それでいて、オルガンの色んな機能を凝縮して織り込んでいる。

クライマックスのミューザ聖堂?を揺るがす大音響に平伏したくなったよ。


♪2021-131/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-38

2021年11月17日水曜日

横浜18区コンサート 第Ⅰ期 山根一仁(Vn)×新日本フィルハーモニー交響楽団メンバー(弦楽五重奏)

2021-11-17 @リリスホール



新日本フィルハーモニー交響楽団メンバー(弦楽五重奏)
 バイオリン:崔文沫、古日山倫世
 ビオラ:中恵菜
 チェロ:多田麗王
 コントラバス:藤井将矢

山根一仁:バイオリン*

ドボルザーク:弦楽五重奏曲第2番ト長調 作品77から第1、第4楽章
J.S.バッハ :バイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV1041(弦楽五重奏伴奏版)*
J.S.バッハ:バイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV1042(弦楽五重奏伴奏版)*
----------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第3番第3曲 ロンド形式のガボット*



横浜18区コンサートの第1期全5回は、すべて弦楽五重奏団+独奏バイオリン又はピアノの組合せ。
今回はリリスのある本郷台で青春時代を過ごしたという山根君の独奏バイオリンと新日フィルが登場した。

最初は、五重奏だけでドボルザークの五重奏曲から2つの楽章を演奏したが、全曲聴きたかったな。しかし、最初に長尺ものを全曲演奏すれば、バランスは悪いけど。

いよいよ、山根君を迎えてバッハのバイオリン協奏曲第1番と2番。

リリスホールは9月に小林美樹らの室内楽を聴いたのが初めてで音の良さにびっくりしたが、今日の1+五重奏も見事に美しい響きだった。

各人の音が明瞭であればこそ絡み合いも楽しい。

とりわけ、山根君の独奏バイオリンの音色が一際綺麗に抜け出して、流石にオケをバックにソロを取るとはこういうことか、と改めて感心した。

J.S.バッハの原曲も弦楽合奏と通奏低音だから、作曲当時の演奏形態はもう少し大きかったろうけど、今日の山根君と五重奏団のように、仲間がアイコンタクトで合図をしながら”協奏”を楽しんでいたのだろう。

軽妙なバッハを再発見の感。


♪2021-130/♪リリスホール-02

2021年11月16日火曜日

DOTオペラ:ヴェルディ:歌劇「アイーダ」

2021-11-16 @ミューザ川崎シンフォニーホール


指揮:佐藤光
演出:山口将太朗
照明:稲葉直人
舞台監督:伊藤桂一朗
合唱指揮:辻博之

管弦楽:アイーダ凱旋オーケストラ
合唱:Coro trionfo


アイーダ:百々あずさ
ラダメス:村上敏明
アムネリス:鳥木弥生
アモナズロ:高橋洋介
ランフィス:伊藤貴之
エジプト国王:松中哲平
伝令:所谷直生
巫女:やまもとかよ
ダンサー5人

ヴェルディ:歌劇「アイーダ」
(全4幕、セミ・ステージ形式・オーケストラ小編成版、字幕付き)




演奏会形式オペラ。が、大いに凝った作りだ。

まずは「アイーダ凱旋オーケストラ」って名前に惹かれたよ。遊び心十分。実際は、いろんなプロオケメンバーによる一夜限りのオケ。弦19人、打・鍵3人にアイーダ・トランペット4人という小編成だが、全く不足を感じさせない。


合唱は東響コーラスの有志94人!この数を、一昨日同じ場所で聴いた「カルミナ・ブラーナ」でも欲しかったね。


合唱団は舞台周りのP席とバルコニー4ブロックにゆとりを持って並んだ(そもそも、今日の客席は1C-2CAB-3Cだけで4階と周囲のバルコニーはお客を入れていなかった。)。


P席が塞がっているので、歌手の演唱はステージの奥、客席側前方、上手・下手に、時にはバルコニーと縦横無尽。アイーダ・トランペットも2階左右バルコニーに陣取って超ステレオ効果!


演奏会形式と言っても、サントリーの「ホールオペラ®︎」に近い。

衣装、小道具、照明で雰囲気を盛り上げてくれる。


さて、歌手は、百々(どど)あずさ、村上敏明、鳥木弥生、伊藤貴之ら名の知れたベテラン・中堅。

よく響くミューザでは声もよくとおりホンに人間の声の美しさに酔った。特に鳥木ちゃんのアムネリスがけっこうしおらしくて、本作に限っては「アイーダ」というより「アムネリス」というタイトルがふさわしかったよ。


演奏会形式でも手抜きなしで、グランドオペラらしくバレエもちゃんと5人登場して踊ってくれたのも嬉しい。


この贅沢な時空を享受して僅かにS席5千円って大丈夫なのかと心配したよ。

こりゃ少しカンパして帰るかと真面目に思ったが、よく考えたら財布を持たないので現金は1円も持っていなかった。


国のコロナ対策の一環の助成事業ならこそ実現できたのかも。


平日の17:30開演は勤め人には厳しいが、もう少し熱心に宣伝をしていたら、もっとお客が入ったのではないか。カーテンコールは熱く、長かったが、なにしろお客の絶対数が少ないので一生懸命の拍手も嵐のような轟音には至らなかったのが残念。

500〜600人の入りだったそうだ。


因みに、「DOTオペラ」とは、主唱者の百々(DODO)あずさ、小埜寺(ONODERA)美樹<コレペティトゥールであり今回のピアニスト>、鳥木(TORIKI)弥生の頭文字を綴ったもの。


♪2021-129/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-37

2021年11月14日日曜日

東京交響楽団川崎定期演奏会 第83回

2021-11-14 @ミューザ川崎シンフォニーホール


クシシュトフ・ウルバンスキ:指揮
東京交響楽団
新国立劇場合唱団
東京少年少女合唱隊

バイオリン:弓新*
ソプラノ:盛田麻央
カウンターテナー:彌勒忠史
バリトン:町英和

シマノフスキ:バイオリン協奏曲第1番 op.35*
オルフ:カルミナ・ブラーナ

「カルミナ・ブラーナ」は今年の最大の楽しみだった。

しかも、指揮は久しぶりに好感度大のウルバンスキだ。


とは言え、「カルミナ〜」は過去にも名演を聴いており、特に2018年のNHK音楽祭におけるPヤルヴィ+N響の素晴らしい演奏が頭にこびりついている。


あれに敵うものはなかろう。

まあ肉薄できたらいい。

いや、生で聴けるだけでもよしとせねば…

と、うんとハードルを下げて臨んだが、どっこい。


バリトンが入るまでは少しもたつきを感じたが、徐々にエンジンが暖まり、オケも合唱も独唱も調子を上げて、こちらも前のめりに、オルフの描く奇妙な世界にズンズン惹きこまれて行った。


重厚で荘厳な響あり、自然賛歌あり、官能的な歌、清らかな世界を描く歌など聖俗混淆のごった煮が、次から次へと繰り出され、原始脳を刺激する狂乱の60分。


NHK音楽祭に立派に肉薄する!上出来だった。


欲を言えば、合唱がかなりの熱量だったとはいえ、薄い。

児童合唱団は10人、新国立劇場合唱団は48人?


これでは弦14型多くの管打鍵盤楽器を交えたオケを圧倒するには至らない。


因みに18年N響の「カルミナ〜」では児童50人、新国80人という編成だった。


今の時期ではやむを得ないが、出来が良かっただけに、やはり大ホールを揺るがす厚みが欲しかった。


前半にシマノフスキのVn協奏曲。急遽選手交代で弓新が登場したが、かつてチャイコを聴いて好感を持ったのでちょっと楽しみだった。

たぶん、技術的は相当難しそうだ。とても歌えない旋律?が延々と続き、決して心地良い音楽ではないけど、緊張感あふれる気迫の演奏にオケも応えて存外楽しめた。


♪2021-128/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-36

2021年11月13日土曜日

NISSAY OPERA 2021「カプレーティとモンテッキ」

2021-11-13 @日生劇場


指揮:鈴木恵里奈
演出:粟國安彦
美術:横田あつみ
照明:大島祐夫
衣裳:増田恵美
舞台監督:山田ゆか
演出助手:橋詰陽子
合唱指揮:大川修司

ロメーオ⇒山下裕賀
ジュリエッタ⇒佐藤美枝子
テバルド⇒工藤和真
ロレンツォ⇒須藤慎吾
カペッリオ⇒狩野賢一

台本:フェリーチェ・ロマーニ
作曲:ヴィンチェンツォ・ベッリーニ
歌劇『カプレーティとモンテッキ』
全2幕(原語[イタリア語]上演・日本語字幕付)


本作は生どころかビデオ映像さえ見たことがなかったが、シェークスピアの「ロメオとジュリエット」と元の話は同じであるとは知っていたので、初見でもすんなり頭に入った。

暗い話だけど、初めて聴く音楽は心地よく、大いに楽しめた。


ベッリーニはベルカントの作曲家として括られることが多いが、9歳年長のロッシーニと比べると遊戯のような超絶技巧はなく、ベルディ作品と言われても何の違和感もない感じだ。


また、オペラはややもすると音楽優先でドラマに無理があったりするが、この作品は理路整然としてストレスを感じさせない。


主要な5人の歌手のうち、佐藤・工藤・須藤はお馴染みだが、ロメーオ役の山下裕賀とカペッリオの狩野賢一は、多分、初聴き。いずれも朗々と歌って気持ちがいい。

特にズボン役の山下はベテラン佐藤相手に健闘。


Wキャストで明日も公演がある、各人1日しか出番がないとは勿体無い。


舞台美術や照明も良かった。

日生劇場の狭い舞台を有効活用して単純だが重厚感のある舞台装置。衣装も手抜き感なし。

ハーフミラーを使った演出も奥行きを感じさせるとともに、客席を舞台の中に取り込んだような不思議な感覚も面白かった。


♪2021-127/♪日生劇場-05