2016年5月13日金曜日

團菊祭五月大歌舞伎 昼の部

2016-05-13 @歌舞伎座


福地桜痴 作
今井豊茂 補綴
一 鵺退治(ぬえたいじ)
源頼政⇒梅玉
猪の早太⇒又五郎
巫女梓⇒歌女之丞
九条関白⇒錦之助
菖蒲の前⇒魁春

菅原伝授手習鑑
二 寺子屋(てらこや)
松王丸⇒海老蔵
千代⇒菊之助
戸浪⇒梅枝
涎くり与太郎⇒廣松
春藤玄蕃⇒市蔵
百姓吾作⇒家橘
園生の前⇒右之助
武部源蔵⇒松緑

河竹黙阿弥 作
花街模様薊色縫
三 十六夜清心(いざよいせいしん)
浄瑠璃「梅柳中宵月」
清心⇒菊之助
十六夜⇒時蔵
恋塚求女⇒松也
船頭三次⇒亀三郎
俳諧師白蓮実は大寺正兵衛⇒左團次

四 楼門五三桐(さんもんごさんのきり)
石川五右衛門⇒吉右衛門
右忠太⇒又五郎
左忠太⇒錦之助
真柴久吉⇒菊五郎


体調がイマイチだった。
「鵺退治」も「寺子屋」もぼんやりと過ごしてしまった。

「十六夜清心」(いざよいせいしん)でようやくシャキッとした。
この芝居を観るのは初めて。
菊之助が初役で清心を演じたそうだ。

本来は「花街模様薊色縫」(さともようあざみのいろぬい)という題名で、「十六夜清心」は通称。
今回上演されたのは「稲瀬川百本杭の場」から「百本杭川下の場」までだけ。本来はこの先に思わぬドラマが展開するようだが、この2場だけでも十分楽しめる話になっている。

ヤサ男の清心(せいしん)と遊女十六夜(いざよい=中村時蔵)が道ならぬ恋をした挙句心中したものの2人とも生き残ってしまうが、2人は互いに相手は死んだと思っている。そういう設定がまず面白い。
水練が達者な清心はその気はなかったけど自力で生き返ってしまった。ここまでは清心はどこにでもいそうな気弱な善人。
しかり、通りがかりに癪を起こして苦しんでいる寺小姓求女(もとめ。女性のような名前だけど男。尾上松也)を助けた際に、彼が預かりの50両を持っていることを知ってしまう。
そこから運命の歯車が狂いだす。
これが清心にとっての逢魔時(おおまがとき)。

金を奪うために求女を殺してしまった清心が自分の行いを後悔し、再び自分も死のうと試みるが、折から雲が晴れて月が見える。ここで、清心の迷いが吹っ切れて「一人殺すも千人殺すも、取られる首はたった一つ」と呟き、求女の死体を川に捨ててしまう。
すると再び月は雲間に隠れてしまう。
別人に助けられた十六夜も実は、同じ時に同じ場所を舟に乗って行き過ぎるど、お互いは気がつかない。
そういう心憎い幕切れ。

ホンに、魔がさすというか、誰の心にも宿っていそうな「悪心」を目の当たりにしてとても怖い、しかし面白い芝居だ。

最後の「桜門五三桐」は、吉右衛門(石川五右衛門)と菊五郎(真柴久吉)が様式美と舞台の豪華さを見せるだけで、中身はないけど歌舞伎らしい華やかさだ。
尤も、桜門がせり上がって3階席からは山門の階上で見得を切る五右衛門は脚しか見えない。


♪2016-065/♪歌舞伎座-04